ハンプティ・エッグ

不思議の国』の奥地、刃や棘の如くな鋭い岩が乱立する丘の頂上に鎮座する謎の卵。
卵の大きさは3メートル程。

この卵は時折であるが、青白い光を放ちながら不安定に揺れ動く事がある。
その様子を目にした生き物は何故か卵を守らなければならないという衝動に支配され、揺れる卵を支えに行こうとするようだ。

当然、卵を支えるには鋭い岩の丘へと立ち入らなければならない。
そして最後には力尽き、丘のあちこちに無数の屍を積み上げる事になるという。



+ 【不思議の国で回収された探検家の手記】
【不思議の国で回収された探検家の手記】
噂に聞いた通り、卵の周囲は無数の硬く鋭い岩の棘が雑木林の如く生え伸びている。
そんな『刃の丘』とも言える場所の頂上に、人間よりも大きな真っ白い卵が佇んでいた。

丘のあちこちには白い欠片が幾つも散らばっているが、あれは卵を支えようとした者達の末路なのだろう。
いずれにしても、あの卵を産んだ親は一体どんな怪物なのか。


卵を観察して数日が経過した。
卵は定期的に青白い光を放ちながらグラグラと揺れ動いている。

高い金を払い、精神異常を軽減する魔道具を入手して正解だった。
眼鏡越しでも揺れる卵を見つめていると、心の奥底が不自然にざわつき、卵の元へと駆け出したい衝動を感じてしまう。
そしてこう感じるのは人間だけではないらしい。
これまでにも数多くの獣や怪物が揺れる卵へと誘われ、刃で身を削り息絶えていた。

あの光は一体何なのだろう。
卵を外敵から守る為の機能?
いや、それなら他の生物を卵に引き寄せる様な真似をしなければいいだけだ。
周囲にある刃の丘の存在だけで防備はほぼ完璧とも言えるのに。


今日も卵はゆらゆらと揺れ動くが、卵が孵る様子は一切ない。
観察を始めてしばらく経つが、卵の親が此処に戻る様子も一切ない。


卵の周りの血だまりが異様に早く消えているようだ。
更に屍が朽ちて骨と化し、その骨すらも早々に風化しているよう感じた。

……気のせいか、卵も大きくなっているかのように見える。


魔境とも言えるこの地でこれほど長く滞在できたのは奇跡的だろう。
用意した備蓄の残りもそろそろ底が見えてきた。
今日の観察を最後にして、明日帰還する。

卵は今日も青白く光りながら

違う。
揺れているのは卵の置かれた土台部分そのもの?
一つに気付くと、急に見え方が変わって見えてきた。


(ページが数枚破れている)


(走り書きなのか、読めない程に汚い文字がひたすら並ぶ)

今日、      と目が合っ
あれh  獲物を  びk寄せr    でsかな。

 光が    輝い     いt

もう   向かう塩あ gかういb

(手記はここで途切れている)


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最終更新:2024年10月01日 19:03