「ただ、これだけは言っておく。
俺は住処としての帝国こそ捨てたが、心はずっと帝国に置いてあるままだ。
精神は紛れもない帝国臣民だ、そう自負している。
つまり、この戦いが終わったら、共和国…裏切り者の生み出した刃たるあんたは、その瞬間からはっきりとした敵となる。
魔と離反者には容赦はしない、それは俺も変わってないからな」
ーまあ、構わんさ。
どうせ俺は共和国の歪みが生み出した出来損ないだ。
そういう形で"始末"されるのも悪くないかもな。
ただ、どんな形であれ、俺もこの世界に生を受けた存在だ。死ぬのは嫌だ。
その際は全力で抵抗させてもらうぞ。
出来損ないなりにな…いや、出来損ないだからこそ死を恐怖している、ならば余計に激しく抵抗させてもらう。
「悪くない話だ。
出来損ないだから、死に恐怖する、か…。
俺からすればあんたは出来損ないなんかじゃない、立派な人間だ。人間なら当たり前のことを感じている、それが証拠だ。
だが存在としては人間でも、俺を含めた帝国臣民からすればあんたは討つべき敵に他ならない。
帝国からすれば、あんたの存在は、俺達が今から討伐に行く存在…黒羊と何ら変わりないものでしかない」
ーお堅いですねえ…。
ま、この世界にも運び屋はゴマンといるし、俺一人が討たれたところでどうってことはないから、いいんじゃないかな?
むしろ荷物を真面目くさって確認してトラブルばかり起こす俺なんかより、マヤみたいなヤツのほうが本来はよっぽど向いてるかもしれないしな。
まあ、そんときゃそんときだ。俺だって何度も何度も死にかけてるし、ここいらで本当にやられてもいいような気くらいするさ、
行くときは行こうぜ、むしろ行かせてくれ。
たださっきも言ったとおり、ただで討ち取られるわけにゃ行かないぜ?なんだかんだで俺だって命は惜しいからな。
その時は死ぬ気で…というかお前を殺すつもりで抵抗するぜ?
「上出来だな、こちらも死力を尽くさせてもらうぞ」
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最終更新:2020年10月24日 18:17