メールは何を語るか
―大ウソ吐きのお兄さんへ。
おかげさまで、桐乃と仲直りすることができました。例の趣味を認めたわけではありませんし、先日お話しした意見を撤回するつもりもまだありませんが―しばらくは折り合いを付けないまま、納得しないままで、やっていくことにしました。
仕方がありません。でも、諦めませんからね、わたし! あなたの魔の手から、いつか必ず桐乃を救い出してみせます!
あなたなんかには絶対負けません!
PS.もしも桐乃にいかがわしいことをしたら、ブチころします
これは2巻の最後にあやせが京介に対して送ったメールの文面である。
このメールに関しては、内容に矛盾があると言いうるため、その趣旨をいかに解すべきかに関し議論がある。
すなわち、一行目の「ウソ」は「妹が大好きだ」の絶叫に代表される京介の発言を指すと思われるところ、4行目の「でも」以下の内容がその発言が真実であることを前提としたものであるため、メール全体は矛盾しているというのである。
これを踏まえた上、以下ではメールの内容をいかに解釈可能であるかについて考察する。
まず、メールの内容に矛盾は存在しないとする考えがある(Ⅰ説)。
この考えの中には、「ウソ」が京介と桐乃が愛し合っているという事実(以下近親相姦事実とする)に関する京介の発言を指すものではないとする考え(ⅠA説)と、「でも」以下の内容は近親相姦事実を前提としたものではないとする考え(ⅠB説)、及び「ウソ」を近親相姦事実に関する京介の発言とし、「でも」以下の内容も近親相姦事実を前提としているがメール全体に矛盾はないとする考え(ⅠC説)が存する。
ⅠA説は「ウソ」が何を指すのかに関していくつか立場に分かれ得るが、特に有力に主張されているのが、「ウソ」は京介の発言ではなく桐乃の発言を指しているとする説である。即ち、「大ウソ吐き」は京介ではなく桐乃のことを指しているとするのである。
しかし、この説に対しては第一に、もし京介が嘘をついていると考えていないのであれば、メールの最初で彼に礼を述べるのは不自然であるとの批判がある。すなわち、メール冒頭の文章は京介があやせと桐乃の仲直りのために何らかの行為をしたことが前提となっているところ、もし京介の発言がウソでないとしたらあやせは京介のことを彼の言動通りの行きすぎたシスコンであると考えていることになり、あやせから見て京介に感謝するような行為は存在しないこととなりるはずだというのである。
また第二に、いくらまだ折り合いが付けられていないとはいえ、ウソに対して異常な嫌悪感を持つあやせが、桐乃のことを「大ウソ吐き」呼ばわりするというのは不自然だとの批判がある。
ⅠB説は「でも」以下の内容をいかにとらえるかによっていくつか立場に分かれ得る。一つの説として、「でも」以下の記述は桐乃のオタク趣味を指しているといったものがある。
すなわち、あやせは近親相姦事実の存在について京介が嘘をついていると考えていてその点がメールの前段で述べられているとした上で、桐乃のオタク趣味が京介の影響であることを前提とし、それを自分が除去するという決意を述べたのが「でも」以下のメール後段だとするのである。
この説においては、メールは
「貴方の嘘のおかげで桐乃と仲直り出来ました。それはそれとして、桐乃の気持ち悪いオタク趣味は私が矯正しますからね!」
と意訳できることになる。
この説に対しては、メールのPS以下の文章は近親相姦事実を前提としたものであるため、この点とメール前段の解釈と齟齬が生じるという反論や、メール後段の解釈もその後あやせが桐乃の趣味を理解しようとしている(4巻p22~3)ことと矛盾するという反論がある。
これに対しⅠC説は、個々の部分に関する解釈を変更せずに、メール全体を矛盾無く説明することを指向するものといえる。
すなわち、同説は、あやせは、京介の発言が「ウソ」であること、つまり京介の認識においては近親相姦事実が存在しないということを認めた上で、京介は認識していないが桐乃又は桐乃と京介の両者が相手に恋愛感情を持っており、事実として近親相姦事実ないしそれに近似する事実が存在していると考えていると解するのである。
この説においては、メールは
「貴方の嘘のおかげで桐乃と仲直り出来ました。でも、貴方が嘘だと思ってることって、ほとんどホントなんですよ?
本当にホントにしたら殺しますからね?」
と意訳できることになる。
この説に対しては、あやせが桐乃又は桐乃と京介の両者が相手に恋愛感情を持っていると認識していたとするのであれば、京介の叫びにあれほどショックを受けることは無かったはずだとの批判がある。
もっともこの批判に対しては、京介の叫びを聞いてからメールを送るまでの間に、桐乃の様子などを観察してそのような結論に至ったのだとすれば矛盾はないとの反論がなされている。
次に、メールの内容に矛盾があることを認める考えがある(Ⅱ説)。
この考えの中には、メールの一行目があやせの真意に出たものではないと解する考え(ⅡA説)と、「でも」以下があやせの真意に出たものではない解する考え(ⅡB説)が存する。
これらの説は、文章の表面上の矛盾を認めた上、その矛盾に意味を見出そうとすことを指向するものといえる。
ⅡA説は、あやせが京介の発言が嘘では無いと思っている、つまり京介が近親相姦事実を認識しているとするものである。
これを前提とすると、あやせは、京介の発言を桐乃とあやせとの仲を取り持つため「嘘を装って」したものであると考えた上で、京介に対する感謝と敬意からか、近親相姦事実に関する京介の発言に騙されたふりをしつつ、それが京介の嘘であることに気づいたふりをしていることになる。
この説においては、メールは
「桐乃は貴方には渡しません! …でも、桐乃が好きっていうのは私たちのためについた嘘なんですよね?
(とかいいつつ実は本気で桐乃の事好きなんだろ? 殺すぞ?)。」
と意訳できる。
この説は、ⅠC説と非常に近い考えであるといえるが、同説に比べると説明が複雑である分解釈に無理が多いといえようか。
ⅡB説は、あやせが近親相姦事実が存在しないと認識しているとする。
この説においては、あやせは、京介の発言が嘘であることを認識した上で、あえてその嘘に騙されることによって、折り合いが付けられない納得できないままでも桐乃との関係を保持することができ、メールはそのことを京介に告白するものであると解される。
この説においては、メールは
「貴方の嘘のおかげで、桐乃と仲直り出来ました。 でも、もうしばらく、貴方のついた嘘に助けて貰おうと思います。」
と意訳できる。
この説には、一行目及び「でも」以下以外の部分も含めてメール全体を調和的に解釈できるという利点がある。
もっとも、その後あやせが京介と桐乃の関係を強く警戒している事実があり、この説ではそれらの事実と矛盾するとの批判がある。
しかしこの批判に対しては、その後の桐乃と京介の様子から警戒心が生まれたとすれば矛盾は生じないし、そもそもあやせであれば何時でも誰であろうとも桐乃に近づく人間に警戒心を抱くことに不思議はないのだから、そのような矛盾は大した問題ではないとの再反論もなされている。
上記のメールの件についての回答
議論されていた上記2巻メールでの真意だが、PSP版あやせルート(原作者シナリオ)であやせの口から真意が判明した。
ただしあくまでゲームなので、原作小説も同じなのかは分からない。
しかし原作者書き下ろしのルートであるので、信頼性は高いのは言うまでもない。
詳しくは
妄想/ゲーム(PSP)にて
京介の異常な愛情 ~または彼は如何にして畏怖することを歓びに変え天使を愛するようになったか~
[京介のあやせへ向けた感情の軌跡]
快活でお人好しな女の子
(2巻p85 初めて話をして)
↓
なにこの女恐ッえぇえええええぇぇぇぇぇぇええぇぇ!!
(2巻p282 桐乃に詰め寄るあやせに睨まれて)
↓
あの女とは、もう二度と顔を合わせたくないもんだ。
(2巻p365 あやせから「ブチ殺します」というメールをもらって)
↓
とにかく顔を合わせたくない。
快活な笑顔の裏には『答えによってはブチ殺しますよ』という意図が隠されているに違いない。
(3巻p192~3 正月に偶然あやせと出会って)
↓
出来る限り顔を合わせたくない相手だった。
(4巻p21 あやせから呼出しを受けて)
↓ *注
その嬉しそうな笑顔は、初めて会ったときと同じ、見惚れるほどかわいらしいものだった。
この笑顔のためなら、妹から欲しいものを聞き出すくらいお安いご用ってもんだ。
(4巻p24 桐乃へのプレゼントの相談を受けて)
↓
(あやせがメルルのコスプレをしたら)それはそれで凄く見たいし、魅力的ではあるのだろうがあやせがEXタナトスのコスプレをしたら、さぞかしエロくて人気が出るだろう
(4巻p41~44 あやせにエロいコスプレをするよう必死こいて説得しながら)
↓
こんなに他人を信頼できる純粋な娘は、やっぱ珍しい。
(4巻p75 加奈子のことを嬉しそうに自慢するあやせを見て)
↓
待ってろよラブリーマイエンジェルあやせたん。
(5巻p250 桐乃のことであやせに電話をかける名目を得て)
↓
俺は泣いた。真っ白に力尽き、さめざめと泣いた。
世界の絶望を一身に引き受けたかのように、その場でがっくりと膝をつく。
(5巻p250 あやせから着信拒否されていたのを知って)
↓
「結婚してくれ」
(6巻p30 あやせから相談を受ける見返りとして)
↓
輝くような笑顔を向けてくるあやせ。マジ天使。
怖えー。あやせさん怖えー。
(6巻p36 あやせからの相談を引き受けて)
↓
「まあ、俺っておまえのこと大好きだしな」
(6巻p69 あやせに心のたけをぶちまけて)
京介のあやせに対する感情の経過は以上のようなものであり、まとめると
かわいい→怖い→天使(怖い)
と簡略化できる。
また、一度恐怖心に支配された後に再度好意的な感情を抱くに至った転換点は、上記*注部分の、あやせから相談を受けた時点であるといえる。
では、何故そのような転換が起こったのか。
まずその理由の一つには、相談の内容が桐乃に関するものであったことが挙げられよう。
京介はシスコンであるので、妹を大切にしてくれる娘が憎かろうはずはないのである。
しかし、あやせがどのような形であるにせよ桐乃に対し好意を持っていることは、既に京介も十分知っているはずであるので、単に桐乃に対する好意のみをもってあやせへの感情が変化したとは考えづらい。
思うに、京介のあやせに対する感情の変化は、相談内容ではなく相談をされたことそのものをその大きな理由とするのではあるまいか。
すなわち、京介は、頼られるとその相手に惚れてしまうタイプの男なのではあるまいか。
京介は黒猫との関係においても、色々と世話を焼いてやっているうちに相手を意識しだすといった状態にあるともいえ、基本的に世話焼きタイプの男であるとは言えるであろう。
また、桐乃との繋がりがほぼ相手に世話を焼いてやるという関係にあるため、それと似たような関係に立った相手に対し、桐乃に対する感情がアンカリングされて好意を抱いてしまうという現症も起こっているのかも知れない。
このようなことから、田村麻奈実さんには、見た目を美しくするよりも甘えて世話を焼かせた方が効果的ですよ、との意見を進言したい。
桐乃2Pカラー
あやせの髪型は桐乃を左右反転させたものになっており、10巻でヘアピンまで模倣したためより顕著になった。
2期13話で桐乃と初対面のときすでに現在の髪型だったことから、似せているとするとサイコレズ臭が……
一説には、異常なセクハラは桐乃に対する欲求を外見的類似点のあるあやせで解消していたのではないか、とも言われている。
なお、電撃FCでは桐乃の色変えであやせっぽいカラーにできる。
また、京介の前髪は桐乃の左右反転になっているので、結果的に京介とあやせの前髪は同じになっている。
あやせのお兄さんラブ行動一覧(原作小説版)
- 京介にはじめて出会ったその日に自分から携帯番号を交換
- 京介を電話で呼び出して自分の部屋に招き入れ鍵を閉める(8巻p120-121)
- 京介に手錠をかけライターでソフトSMプレイを楽しむ(8巻p122-123)
- 京介に彼女ができたと聞くと「嘘つき、結婚してくれとか言ったくせに!」と発狂(8巻p127)
- 加奈子がマネージャーをした京介に逢いたいというと「あの女ったらしめ」と嫉妬(9巻p213)
- 京介の彼女を泥棒猫呼ばわりする(9巻p216)
- 夜電話してもなかなか繋がらない京介の入浴シーンを思わず妄想(9巻p217)
- いつの間にか、京介にセクハラされないと物足りなく感じるように(9巻p218-)
- 京介が彼女と別れたと聞いて自分のせいだと思い込む(9巻p219-220)
- 加奈子からのお願いをぶち切れながら京介に伝える(9巻p220-221)
- 冗談で「結婚してくれ」とか言われたのを分かっているのに「冗談だ」と言われるとむかっとする(9巻p223)
- 京介と二人っきりになるためにわざわざ朝の6時に京介のアパートに来襲(10巻P118,146)
- 京介のアパートのチャイムを連打、どこかから入手した合い鍵で京介のアパートへ侵入(10巻p119)
- 加奈子のライブ前控え室でワザと京介に顔を近づけ胸をチラ見せ(10巻p122)
- 京介に引越祝いの包丁を突きつけSMプレイを楽しむ(10巻p123)
- 黒猫を京介の元・彼女と煽り立てる(10巻p135)
- 京介にお弁当を持ってきた加奈子を見て激怒(10巻p188)
- 京介にべたべたする加奈子のスネに蹴りを入れる(10巻p191)
- 京介のアパートで新婚ルックでノリノリクッキング(10巻p217)
- 京介に共同生活と言われて同棲している恋人同士と妄想する(10巻p223)
- モデルの仕事で忙しいのに京介の面倒を見るためにわざわざ予定を開ける(10巻p225)
- 京介に「大事な話があるんだ」と言われて愛の告白と勘違して赤面(10巻p279)
- るんるんスキップで京介のアパートへ(10巻p301)
- 京介についに「好きです」と告白(10巻p347)
- 桐乃に「わたし、あなたのお兄さんに、告白しようと思うの」と高らかに宣言(11巻p334)