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「そのままの君で」


作者:本スレ1-547様

14 :そのままの君で:2011/07/02(土) 20:46:10

どうも、本スレ547です。
760様、2作目の投下乙でした! 本家の平孝は、いつも可愛くて萌えるw
これからも続きを楽しみにしておりますw

さて、760様のお子様をお借りしたスピンオフ(?)な
SSが仕上がりましたので、投下します
まずは、属性等の告知を
 ・本スレ1-760様の作品の二次SSです
 ・平塚君×孝之助君で、孝之助君視点です
 ・設定準拠ではない表記を若干含みます
 ・キャラ&設定が760様の公式設定からちょい外れている可能性もあり
 ・エロはないけど、萌えは詰め込んでみた
こんなんでもよろしかったらどうぞ

15 :そのままの君で:2011/07/02(土) 20:57:39

日中よりも、少し気温を下げた夕刻の風が僕の横を吹き抜けていく。
その幾分涼やかになった風にあたりながら、僕は、今、自分が座っている縁側の木の床に
もう一度触れてみる。
自分の家の床とは異なり、長い年月の間、しっかりと手入れされてきたことを表している
かのような、その温かみのある感触が心地良い。

ここは、いつも僕が生活している家ではない。
僕の友人、平塚の家だ。
彼の家は、古くから続く、旧藩校の薙刀の師範代の家系なので、その家も、由緒正しき日
本家屋といった感じらしい。

といっても、目が見えない僕には、彼の家がどんな風なものなのか、全容を把握する術は
ないのだけれども。
僕は小さな頃に経験した病気が元で、盲目になった。それに加えて、紫外線過敏症と歩行
不全を伴うこととなった。
既に高校一年生となり、その環境にずっと慣れ親しんできた僕にとっては、この暗闇はも
う、あたり前の日常のひとつだ。

それに恐らく、僕は、その分、聴覚や物に触れた時の感覚など、失くした感覚のほかに持
ち合せている他の感覚全てが一般の人と比べると、鋭くなっている気もする。
自分に出来ないことも山程あるが、それは、それで受け止めてきたつもりなので、他の人
が思う程に、僕は、自分の境遇をつらいなどとは、思っていない。

ただ、唯一、時につらいと感じるのは、きっと僕は、このまま、完全に自立した生活を送
ることが難しいのではないかということだけだ。
出来れば、自分の父母や妹−そして、この大切な友人に手を借りることなく、生活を送れ
るようになりたい。

それが、僕の唯、ひとつの望みなのだが。

そんな思いに耽っていた僕の心の内に、僕に付き従ってくれている、カードの聖霊、戦車
のあの言葉が甦る。

―孝之助、私と共に全てのカードを制する者となれ。
   さすれば、私は、君の、その希いを叶えるために、力を発揮する者となるだろう―

「僕の希い、か」

僕は小さな声で、そう呟いた。
僕に付き従ってくれている、戦車は、甲冑を身に纏い、西洋の古代ローマ世代などで良く
見られた、戦馬に引かせた戦車を操る凛々しい騎士の姿をしたイドラと呼ばれる特殊なカ
ードの聖霊だ。
そして、彼のほかにも、残り23枚のカードがあって、それら全てが、一組のものとして
扱われることによって、最大限の力が発揮できるようにと、彼の創造主の手によって創ら
れたらしい。

彼の姿を僕が良く識っているのは、戦車が僕にイメージを直接流してくれたからで、その
時、僕の目が見えていたというわけではない。
彼が、そのイメージを流してくれた時に、直接、語りかけるようにして伝えてくれた、も
うひとつの事柄が、彼の眷属たる他のカード23枚を下し、全てのカードを配下に置いた
者、唯一人が、どんな希いでも1つだけ、叶えられるというものだった。

その為に他の誰かと戦う―それは、僕が持つ信念からすれば、何か相容れないものだ。
それを考えた瞬間、僕の背中に、ぞわりと何か、言いようのない、得体の知れない感覚が
はしった。

その次の瞬間、平塚が、この縁側に通じる木の廊下を素足のままで、こちらに向かって、
歩いてくる音が聞こえてきた。
僕は、その足音に少しほっとして溜息をついた。
そうして、良いタイミングで、僕の思考を現実へと戻してくれた平塚に感謝した。

「孝之助、待たせて悪かったな。ほら、西瓜、切って持ってきたんだ。
 ほら、夏といえば、やっぱり、縁側で西瓜だろう!」

彼は、そう言って僕の傍の床へと、自分が持ってきた西瓜がのった皿と冷たい麦茶が置か
れたお盆を置くと、そのお盆を挟んだ隣に腰掛けたようだ。
それから、その前にあらかじめ持って来ていた蚊取り線香に手際よく火をつけた。
これは、僕が普段、自分の家でもたまに使っているやつで、合成化学物質の含有量が極め
て少ないものだ。
いつもと同じ香りがするので、何となく判るが、恐らく、僕の妹の綾音が平塚に手渡した
んじゃないかと思う。

「孝之助、ほら、おしぼり」
「あ、うん、ありがとう」

平塚は、馴れた様子で、一度、縁側から立ち上がると、僕の手を取って、その掌にひんや
りとしたおしぼりを乗せてくれた。
そうして、僕が手探りで、手を拭いていると、そのタイミングを上手く図るようにして、
僕の手元から、おしぼりを下げてくれる。

「孝之助、西瓜、食う? これ、種なしの西瓜なんだけど、すごく甘くて美味いぞ!」
「うん、ありがとう」 

そう答えた僕に対し、平塚は先程、おしぼりを渡してくれたときと同じように、丁寧に僕
の片手を取るようにして、西瓜を渡してくれた。
それから、余った方の僕の手を隣に置いた、麦茶のグラスと西瓜の皿辺りに導く。

「西瓜の皮を置く皿と麦茶のグラスは、ここだから。
 あ、あとさっき渡したおしぼりもこの右隣に置いてあるから。えーと、まあ、気にせず食え」

「うん、平塚、ありがとう」

僕は、そう言うと、早速、平塚から手渡された西瓜を頬張った。
それは、良く冷やされていて、この縁側の外の空気の中で食べていることも合わさった所
為か、いつもよりも格段に美味しく感じられた。

僕の隣では、平塚も、しゃりしゃりと、僕にとっては、耳触りの良い音を立てながら西瓜
を頬張っているようで、辺りには、西瓜独特の水気を含んだ甘い香りが、より一層、強く
拡がっていった。
そうして、ひとしきり、互いに無言で、言葉を交わすことも無く、西瓜を食べていたのだ
けれど、西瓜を食べ終わると同時に、平塚が僕に声をかけてきてくれた。

「孝之助、体の調子はどう?
 夕方といっても、もう陽は落ちてるし、問題ないとは思うんだけど。
 それに、浴衣とか着てるし、浴衣って、結構、風通しが良くて涼しいからさ。
 それで、逆にちょっと体調が変かなとか思ったら、すぐに言えよ」

「平塚、ありがとう。僕は大丈夫だよ。
 平塚の言うとおり、もう、陽も落ちているし、なら、紫外線過敏症の事は考えなくて良
 いから、今のところ、僕の体調にも問題は無いよ。
 それに、この浴衣、絽生地のものだって、言ってくれたよね。
 さらりとした感じがして、とても着心地が良いよ」

僕は、恐らく平塚が座っている方向に向かって、少し微笑みながら言った。
眼が見えていなくともそれ位は判る。
それに、先程からのこの平塚の心づくしが、本当に嬉しかった。
こんなのは、本当に久しぶりだ。
平塚に手伝ってもらいながらだったけど、浴衣を着て、友達と一緒に縁側で涼むだなん
て、こんなことは、僕が小さかった頃の記憶にしかない。

今でも、綾音や自分の家族とは、こうして過ごすこともたまにはあるけれど、学校での
活動を除けば、他の友人とだけで過ごす機会など、殆ど無くしていた僕にとって、今回
のことは、本当に嬉しいことだった。

「そっか、ならいいや。
 孝之助は肌が白くて、線が細いから、浴衣着てるとなんか綺麗だからさ、
 普段より、ちょっと余計に気を遣ったりしたくなる感じがするんだよな」
「なんだよ、平塚、それ、何か変だよ」
「そっか? 変かな?」

僕等は、互いにそんな風に他愛もない軽口を利きながら、笑いあった。
そうなのだ、たかだか3日間のこととはいえ、平塚のご家族の計らいもあって、僕は、
夏休みを利用して、平塚の家へと泊りに来ているのだ。
少しの間、家族と離れて、過ごす経験とか、他の同年代の友人達があたり前のように経
験していることだとしても、これは、僕にとっては、数少ない、かけがえの無い機会だ
った。

「平塚……本当にありがとう。こういうのって、本当に久しぶりで、嬉しい。
 僕は、自分がこうなってから、彩音や自分の家族と一緒にしか、外泊したことなんか
 なかったんだ。
 だから、平塚と、僕を泊めても良いって、言ってくださった、平塚のご家族にもいく
 らお礼を言っても足りない位嬉しい。あ、もちろん、僕の家族にも、感謝してるけど」

「うん、孝之助が嬉しいんなら、俺は、それで良いんだ」

平塚は、そう言いながら、僕から視線を外し、目の前の縁側から見える景色と夜空に
眼を遣っているようだった。
まあ、これは、僕が、周りに流れる空気感からそう思っているだけで、本当のところ
は、判らないのだけれども。
僕が、そんなことを思っていたその時、ふいに、戦車のあの言葉が僕の脳裏へと甦った。

―孝之助、私と共に全てのカードを制する者となれ。
                        さすれば、君のその希いは、叶う―

「……っあ!」
「どうした、孝之助」

あまりに突然のことで、小さく声をあげて片手で額を押さえた僕の様子に、平塚は瞬時
に反応して声をかけてくれた。
僕は、平塚のことを心配させたくは、なかったので、出来る限り平静な様子を保つように
しながら、平塚に返事を返した。

「ごめん、平塚、大丈夫だよ。こんなのは、良くあるんだ。
 本当に大丈夫だから、あまり気にしないでほしい。頼むから……」
「ん、判った。ただ、本当に駄目な時は、正直に俺に言えよな」

どうやら、平塚は折角の大切な時間を壊しかねない状況になるのが怖くて、不安な表情
をしていた僕の気持ちを察してくれたらしかった。
僕は、そんな平塚の計らいに改めて感謝していたし、正直、少しほっとしていた。

それなのに、僕は気が付くと、いつもはあえて考えないようにと、封じていたあの想い
を、今、改めて自分の心の中に湧き上がってきていた、その心のままに、平塚にぶつけ
ていた。

「平塚、あのさ、もし、僕に障がいなんか無くてさ、
 毎日をもっと普通に過ごせてたら、僕と平塚は、もっと対等な関係で、
 今よりも、もっと、親友みたいな関係になれてたのかな?
 僕は、彩音にも誰にも迷惑なんか、かけないで、もっと普通に過ごせてたんだろうか?」

そう言った瞬間、僕は、はっと、我に返った。
僕の心の中には、しまった、という後悔の念しか残らなかった。

判っているのに。
この宿命を、障がいを負っているからこそ、平塚にも会えたのに。
彩音も皆も、僕のことを迷惑だなどと、思ったことは一度も無い筈で、
僕は、今のままでも、ちゃんと皆に認められているというのに。

僕の瞳からは、涙など零れないけど、僕はそのとき、本当に泣きたい気持ちで一杯にな
った。
そんな僕の様子を見ていた平塚は、色々と察しがついたようで、僕の頭を優しく、数回
撫でるようにしながら、いつものように言った。
そして更に、いつもは言わない言葉も付け加えながら、僕の気持ちに応えてくれた。

「孝之助はさ、今のままでも、俺よりか全然強いよ。
 それに、今でも、十分に俺と対等に渡り合ってるし、とっくに俺の親友だよ。
 だから、俺には、今の在りのままの孝之助が居てくれれば、十分なんだ。
 まあ、孝之助の障がいが無くなれば、それはそれで、嬉しいと思うんだろうけど」

「平塚……ありがとう」

僕はその場で俯いたまま、そう言った。
その場で、昂っていた気持ちを抑えきれていたとは、ちょっと言い難かったので、そう
言った僕の声は、少し震えていたかもしれない。

「さてと……そろそろ、飯でも食いに行きますか!
 そろそろ用意ができてるんじゃないかなぁ……孝之助、悪い! このまま抱きあげるよ」
「えっ、う、平塚! ちょっ、待てって、その、車いす!」

僕は平塚にいきなり抱え上げられて、驚きながら、そう声をあげた。
平塚は、そんな風に慌てていた僕の様子が可笑しかったのか、笑いを堪え切れなかったよ
うで、ほんの少しだが、声をあげながら、微笑っていた。

「まあ、移動の距離も短いし、
 あれを取ってくるの面倒だからさ、たまには良いんじゃない?」

「う……まあね」

そう返事を返した僕に、平塚は、また微笑んでいるようだった。
僕は、そんな風に普段と変わらぬ様子で接してくれる平塚に感謝しながら、こんなのも
たまには、良いかな、と思いながら、平塚へと身体を預けた。

【END】

760様、大切なお子達をお貸しだしいただきありがとうございました!
このSSを書いている間に、自分なりに、二人の関係とかを妄想できて、
本当に楽しかったです!
色々と考えながら、このSSを書いたのですが、きっと至らない点も多々
あると思うので、760様の素敵な世界感を大きく壊したりしてないことを
祈るばかりです。

また、何か違うかたちでもコラボとか出来ると良いな−と思っていますので、
どうぞよろしくお願いします−

※wiki収録後に、一部修正を加えました。
※続きは、創作物スレ 1-056

※以下、wiki掲示板「書き合い・描き合いスレ」より

5 ::名無しさん - 1/3:2011/06/26(日) 16:51:14
はい!
では名乗りを上げちゃいます!

本スレ548ですが、760様の孝之助君と平塚君を
お借りしても良いでしょうか?
よろしければ、スピンオフな感じのSSを書きたいです!

今、考えてるのは、割とシリアスかつ、ほのぼの?なネタなんで、
ご希望に添えるかどうかは解らないですが、ぜひ、お子様達のお貸
出しをご検討くださいませ

もし、OKなら以下のご質問にもお答えをいただけると嬉しいです
SSを書く際の参考にさせてください

6 :名無しさん - 2/3:2011/06/26(日) 16:53:02
1.孝之助くんとチャリオッツさんの1人称を教えてください
 →ちなみに個人的な妄想では、孝之助くん……俺
            チャリオッツさん……私 
                        だったりします

2.孝之助くんがチャリオッツさんのことに本気で気が付いたのはいつ?
 →時期だけでOKですので、できれば教えてください

3.平塚くんと孝之助くんは幼馴染ですか?
 →これも、できればでOKです
  今、考えてる平塚くんのセリフがちょっと変わるかも

4.完成品の投下先は創作物スレとしてもらうスレどちらが良いですか?

7 :名無しさん - 3/3:2011/06/26(日) 16:54:36
以上、レスをお待ちしております!
あ、もちろん、こういう感じでの書き合いはまだちょっと時期尚早かな……
と思われた場合も、遠慮なくレスしてください

どうぞよろしくお願いします

8 :760(1/2):2011/06/27(月) 00:11:19
久しぶりに来たらうちの子を書きたいとおっしゃる方が!!
嬉しい限りです(*´∀`*)どうぞ好きにお使いください
質問にお答えします
1.孝之助とチャリオッツの一人称
  →孝之助「僕」、チャリオッツ「私」です
   ちなみにお互いは「戦車(チャリオッツと読む感じ)」と「孝之助」です
というか基本的にイドラは対応の大アルカナやスートを
日本語表記で読みが英語というのがデフォです        (…つづく)

9 :760(2/2):2011/06/27(月) 00:48:05
2.気がついたのはいつ?
 →持ち始めが中二位で、妹綾音の正義と同時にもらいうけます。
  気づいたのは高一です。この頃にイドラの使い手同士の戦いが激化して彼も巻き込まれ、
  妹に教えられる形で知ります。そっからは相手の話とか聞いたりで使い方が上手くなり、
  主人公の宇宙に出会う頃(設定の時間)にはその世界で有名になる感じです
3.平塚って幼馴染?
 →違います。孝之助はあの学校へ小学校(障害持ちになった)の時に妹と共に転入
  平塚は中二からの仲です。経緯としては
  綾音と平塚が風紀委員(まさかの)→この女できる→兄ちゃんタメだった→話してみよう
  →こいつも色々頑張ってんだなぁ→なかよしさん…みたいなノリです
  いらないかも知れませんが、平塚がイドラについて知るのは設定の時間よりも
  少し後になります。もってないし、見えなければ知るものでは無いので…
4.どっちがいいんだろう?創作物スレなのかなぁ
色々と長いのとせっかくの妄想ぶち壊しの可能性ありですいません。
548さん作品楽しみにしてます

10 :760(追記):2011/06/27(月) 01:22:43
すいません3.に少し追記
孝之助中学二年次の流れとしては
戦車もらった→平塚と仲良くなるです
色々細かくて大変申し訳ないです

11 :名無しさん:2011/06/27(月) 21:49:18
》10
丁寧なご回答ありがとうございました!
考えてたストーリの流れに丁度合うかなぁ……という感じの流れを
ご提供いただけて、良かったw

あまり長いエピソードじゃないんですが、2週間後位を目途に投下
するように、頑張りますんで、どうぞよろしくw

取り急ぎご連絡まで−


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最終更新:2013年02月03日 21:38