「At the time of dusk (黄昏時に)」
作者: SS 本スレ 1-200様
361 名前:オリキャラと名無しさん 投稿日: 2013/10/06(日) 21:45:44
こんばんは、1-200です。またもや懲りずにSSを投下しに参りました
ハロウィンネタではないのですが、以前から書いていたものが完成しましたので…w
今回もwikiに直接投下という手法をとらせていただきます
以下の注意事項をお読みの上、もしよろしければお付き合い下さいませ
※
1-200,201 のキャラ、アレス×ルーシェ(ルーシェル)
※世界観はベタファンタジー
※801ルートで両想いになった後の話、ぬるめのエロ有り
※回想ですが女キャラが出てきますので注意
※暴力描写注意
※厨文章、長文
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「 At the time of dusk (黄昏時に) 」
その日はとりわけ暑く暑く、町全体がゆらゆらと揺れる陽炎に包まれていた。
人も動物も日陰を求めて身を潜め、通りを歩く人影はまばらで、辺りはしんと静まりかえっている。
だが朝に東から太陽が昇れば夕に西へ沈むのが自然の摂理である。
照りつけるだけ照り付けて満足した太陽が、ようやく山々の稜線のむこうにその姿を消す。
残された最後の光が空を橙色に照らし、雲を茜色に染め、地上にあるあらゆるものを
黒々とした影に沈み込ませる時刻。
熱気を冷ますように吹き始めた風を頬に感じながら、ルーシェルは目を細めた。
彼はこの時間の、毒々しい程の橙と茜と紫が混ざる空が好きだった。
窓枠の上で両腕を組み顎を乗せて、灯りのつきはじめた眼下の家々を眺める。
ひときわ明るい一角は、酒場や宿屋が集まる目抜き通りだろう。
冒険を生業とする様々な人々がそこで出会い、笑い合い、時に争い、別れの涙に頬を濡らす。
幾度となく繰り返し目にし、そしてかつては自分もその中に身を置いた、懐かしい場所だった。
町の酒場は単に酒や食事を提供するだけではなく、様々な情報や仕事や人手を仲介する役割も持つ。
ルーシェルにもかつて、そうやって出逢った心強い仲間達がいた。
彼らは今、どうしているだろう。
ザック。遠い異国生まれのソーサラー。多くは語らないが、赤ん坊の頃から壮絶な人生を歩んできた青年。
無口で無愛想だが、実は面倒見が良く仲間思い。ルーシェルが回復法術を使えなくなり
パーティー離脱騒ぎを起した時も、彼の支えがあったから戻って来られた。
ナオミ。女性ながらに腕力とスピードを兼ねそろえたシーフ。後に格闘家へ転身した、
パーティーの切り込み隊長。気が強く、金といい男に目が無い、獅子もかくやの肉食系。
平和主義でお人好しなルーシェルとはしょっちゅう意見が対立したが、口でも腕力でも
彼は全く歯が立たず、いつも負けっぱなしだった。
そして――
「なーにボーっとしてるのー?」
「…!!」
背後から突然抱き竦められ、ルーシェルの意識は今のこの場所へ引き戻された。
「アレス…またそんな格好で…。部屋着くらい着たらどうですか」
「えー、どうせ脱ぐんだしいいだろ?」
「………」
アレスはたった今湯浴みを終えて、髪から水滴を滴らせている。
石鹸の香りと湯の温もりが残る体には、肩から下げた布以外は何も着けていない。
もう何度も目にしている身体なのに、ルーシェルは目のやり場に困って視線を泳がせた。
アレスはわけのわからない鼻歌をうたいながら、濡れた髪を無造作に拭う。
大きく開け放たれた窓から入ってくる心地よい風が、彼の全身を隈なく撫でる。
幸いな事に、ここは町よりも大分高い切り立った岩山の上にあるから、
他人が不用意に見たくもないものを見てしまう可能性はほぼ無い。
アレスは世界各地に隠れ家を所有しているが、ここのように人目に付きにくい高所にある場合が多い。
もちろん安全性や隠密性を考えての事なのだが、何とかと煙は高い処が好き、という
どこかの国の言葉がルーシェルの頭をよぎる。
「さすがに夕方は涼しいね。ルーシェもたまには風を通せば?」
…一体何に風を通せというのか。
真っ裸のまま腰に手を当てて得意気に胸をそらせるアレスの姿に、ルーシェルは思わずこめかみを押さえた。
ナントカと煙は…。
そんな様子を微笑みながら見つめていたアレスは、呆れ顔のルーシェルをなだめるようにもう一度抱き寄せた。
ところで、こう見えてもアレスは露出狂ではない。人前ではいつもきちんとした身なりをしている。
派手すぎるきらいはあるものの、ものは上等なフロックやジュストコール。
誂えたてのように清潔なシャツと磨き込まれたブーツ、しみ一つ無い礼装用の手袋。
襟元を緩めたり、素の手足を露出するような事は無い。
それは初対面の他人の前でも、親しいパーティー仲間の前でも同様で、
重い鎧に身を包んでの戦闘後でさえ、肌を見せる事は皆無に等しい。
更に言えば、人前で腰を据えて食事をしたり、眠る姿を見せる事もない。
当然、仲間と共に町の宿屋に泊まったり、共同浴場に行くような事も無かった。
要するに、油断した姿を晒す事が無いのである。
風呂上りの姿を堂々と晒すというのは、本当に例外的な事なのだ。
しかし彼を全く知らない者が偶然街でその姿を見かけただけならば、全く違った印象を懐くかもしれない。
性格がそうさせるのだろう、精悍なはずの眉目には緊張感というものがまるで無く、
くいと上がった口角の印象も手伝って、軽薄という言葉をそのまま顔に貼り付けたかのようだ。
酒場で、賭博場で、洋上を渡る客船の上で、美女と見れば鼻の下を伸ばして尻を追い回している。
木の上でゴロゴロとくつろぎ、道を歩けば路傍の山羊がマントの裾を食む。
はっきり言って、隙だらけである。
油断した姿を見せないという言葉は明らかに矛盾しているように思える。
にもかかわらず、彼と行動を共にする仲間達は、否応無しにその見えざる武装を常日頃から感じていた。
おそらくそれを決定付けている理由は、彼が徹底して弱った姿は見せないという点にあるだろう。
だがそれは、アレスが仲間を軽んじているとか、信用していないという事ではない。
あるいはそれは、彼の背中や掌に刻まれた、おぞましく禍々しいあの痕跡を
詮索されるのが面倒だからかもしれない。
彼を追う胡乱な追っ手の者から、仲間を遠ざけておきたいのかもしれない。
いずれにせよ、真相は本人にしか分からない事である。
仲間達も彼の人となりを知っているので、ことさら責めるような事はしなかった。
またアレスは、他人に裸体を晒す事に恥じらいを感じているわけではない。
無論である。言うまでもない。
鍛え抜かれた筋肉は太陽に灼かれた血色の良い膚の下で力強くうねり、
体躯の均整は非の打ち所の無い人体の黄金比。
余分な肉など一片たりとも無く、ぴんと張った肌には所々に古傷の痕跡が残るが、
彼の肉体の上にあってはそれすらも勲章の様相であった。
というのは本人による分析だが、あながち嘘というわけでもない。
今、下の町の往来を行き交う人々の前で、生まれたままの姿を晒す事になろうとも、
恥じ入る部分など何ひとつ無い。恐ろしい事に、彼は本気でそう思っている。
実行しないだけの社会性は身に付けているのがせめてもの救いである。
当然のように、その肉体は数多の女達の愛欲を欲しいままにしてきた。
だが。その完璧な肉体も、気を入れさえすれば十分に秀麗と表する事ができる面貌も、
本当に欲しい人の関心をそそる武器とは成り得なかった。
しかし今は違う。
以前は触れる事すら容易に許さなかったその人は、今アレスの腕の中で、
乱れた薄衣一枚というあられもない姿で喘いでいた。
そしてアレスもまた、目に見える武装も見えざる武装も全てをといて、
かの人が腕の中で窮屈そうに身をよじる感触を楽しんでいる。
外は宵闇に沈み始めている。
窓から差し込む茜色の光はいつの間にか消え、辺りは海底のように青く仄暗い。
部屋の隅に置かれたベッドが二人分の男の重みに軋み、鈍い音をたてている。
ルーシェルはアレスの膝の上に向かい合う形で座らせられ、乱れた薄衣から肌も露に、
その端正な顔を快楽と羞恥と罪悪の念によって歪ませていた。
この世で最も人に晒したくない最奥の恥部、そこに異物が入り込んでいる。
表面にたっぷりと香油を纏ったそれは、激しく締め付けてくる肉孔の内壁をなだめるように押し返す。
そうして徐々に開かせたそこに、更にまた異物が進入する。
「苦しい?」
左手の2本の指でルーシェルの中をゆっくりとかき回しながら、アレスはそう聞いてみた。
返事は無い。俯いて声を噛み殺しながら、必死に堪えている。
こういう場面において、黙する事はすなわち続行のサインである。
そう勝手に解釈して、アレスは左手をそのままに、相手の背中に回していた右手を後頭部に移して
その面を引き寄せた。口元にかかる乱れた髪に構う事なく唇を近付け、一気に舌を滑り込ませる。
後孔に、口腔に、愛しい男の身体を受け入れながら、ルーシェルの脳裏にはある光景が浮かんでいた。
既に記憶の辺境に追いやったはずの、故郷の大聖堂。
祭壇と、整然と並ぶ神官達と、そこに重なるオルガンの音色。
過ぎし日にルーシェルがその身を捧げると誓った神は、壁の絵の中であり、祭壇の石像だった。
その神の前に、一人の罪人が進み出る。神の教えに背いた背徳者が、今裁かれようとしている。
聖水と祭壇に捧げられた炎で清められたナイフ、その刃が抉ったものは――
「…ッ」
不意に胸のあたりを襲った感覚に、ルーシェルの思考は断ち切られた。
周囲の肌より赤みの強い突起部分に、アレスが舌を這わせている。
「くすぐったい…です…」
頭を押しやって吸い付いてくる唇を遠ざけようとするが、させまいと額で押し返してくる。
諦めて、ルーシェルは黒髪の頭に両腕を回した。
見た目よりは柔らかな髪の感触を鼻先に感じながら、今度は目の前の人だけに意識を集中させる。
汗ばんだ額にキスをし、背中の筋肉を指でなぞった。
その筋肉のふくらみの表面に、うっすらと蚯蚓腫れのようなものが張り付いている。
熱を持ったように表面が熱くなっているそれが、罪人の証とされるアレスの刻印だった。
なぜそんなものが彼の肉体に刻まれるに至ったのかは、ルーシェルは知らない。
(私と同じですね…)
声に出さずに、ルーシェルは口元に自嘲の笑みを浮かべた。
彼は既に神の御使いたる資格を剥奪されて久しい。
しかし信仰を捨てたわけではなかった。今でも朝に夕に、食物を口にする度に、敬虔な祈りを欠かさない。
だが彼は今、その神が禁じたはずの行為に耽り、溺れている。
穢れたこの身で祈りを捧げる資格はあるのか、何度そう思った事だろう。
頭が何度も否定してきた邪なる欲望、自然の摂理に反する背徳の行為。
今なら認める事が出来る。自分はこの人にこうして抱かれたいと、本当はずっと思っていた。
この体に触れたかったし、触れられたかった。獣にも劣るこの劣情を、神は決して許さないだろう。
ルーシェルの身には――踏み込めば性器には、背徳者の印たる傷痕が、
生涯消える事の無い烙印として刻まれている。
不倫、同性愛、近親相姦、小児性愛。こうした「人の道にはずれる」性愛を貪った罪人が、
戒めとして性器に烙印を刻まれるのだ。
にもかかわらず、彼は未だに神の加護を失ってはいなかった。
聖言も、聖歌も、法術は全て滞りなく効力を発揮している。いや、その効力は弱まるばかりか
近年では一層強まっていると言っていい。
これは何を意味するのか、神の慈悲とはかくも深きものなのか。彼自身にも分からない。
「…明かりは……消してください…」
「だめ」
アレスが手を触れずに枕元の明かりに火を灯すと、ルーシェルは嫌がる素振りを見せた。
他の同種族の者と違いアレスは夜目が効くが、羞恥と快楽にまみれたこの顔は、やはり明かりの元で見ていたい。
「こっち」
「……」
顔を上げさせ、汗で額や頬に張り付いた髪をそっと指ではがし、そのまま掻き上げて後ろへ撫で付ける。
やわらかな銀髪はひっかかる事無く滑らかに指の間をすり抜け、
波打つ度に淡いピンクやブルーの色彩を浮かび上がらせる。
まるで蛋白石のようだとアレスは思った。
髪を掻き分けて現れた目は、苦痛の為か快楽の為か僅かに赤く潤み、
しかし視線はどこか明後日の方向を見ていて、目の前の相手と合わせようとしない。
色素が薄い為に血の色と混じり紫色に見える虹彩には、よく見れば髪と同じような遊色の領域がある。
髪が蛋白石なら、瞳は紫水晶といったところか。
世界各地で様々な種類の人間や亜人を見てきたアレスでも、こんな色は見た事が無かった。
色素の欠乏による白皮症、いわゆるアルビノと似ているが少し違う。妖魔など人ならざるもののそれに近い。
故に、ルーシェルは時に祭り上げられ、気味悪がられ、人身売買を生業とする連中から追われてきた。
その色がどうやって出来上がったのかなど、彼らの知った事ではない。
この世界にはアルビノ信仰というものがあり、その体組織は宝石よりも高値がつくというが、
アルビノよりも更に稀なルーシェルならばさぞや高く売れるだろう。
もっとも、そんな連中にあっさり掴まる程今は愚かではないはずだが。
よい具合に解れてきたルーシェルの様子に、そろそろ追い込み時かとアレスが体勢を変えようとした時。
「…はね……」
「え?」
「羽根…出してくださ…」
「…いいよ」
大型の猛禽が羽ばたく時の音がして、アレスの背中に大きな翼が現れた。
炎のような明るいオレンジから血のように暗く沈んだ赤まで、
様々な種類の緋がグラデーションを描く美しい羽。
その色合いから、ある者達は彼の事を「黄昏の翼」と呼んだ。
黄金の翼を持つ彼の父親「暁の翼」との対比と、「罪人」である彼への揶揄が込められている。
しかしルーシェルは、そんな彼の翼を眺めながら交わる事を好んだ。
持ち主の方は、情事の時は正直邪魔なのでしまっておきたいのだが、
相手の反応が明らかに違うので、求められればばこうして出す事にしている。
舞い上がった小さな羽毛を掴もうと、ルーシェルは無意識にその方に手を伸ばす。
それを遮るようにアレスの右手が伸びてきて、手首を掴んで自分の首に回させた。
ルーシェルの両腕が自分にしっかりと掴まった事を確認してから、
アレスはその背中に手を回して彼を引き寄せ、体を自分に密着させる。
片腕で絞め殺せそうな程細く華奢な体――服を着た状態ではそういう印象を受けるルーシェルだが、
実際は少し違う。弓で鍛えている為か、胸も肩もそこまで薄くは無い。
腹には筋肉の存在を示す溝もうっすらとではあるが刻まれている。
ルーシェルは両腕をアレスの首に回したまま、相変わらず焦点の定まらない目で
彼の背中の翼の方を見つめている。
下半身に加えられる刺激は次第に深くなりつつあり、それに伴い腰から下腹にかけて
何かがたまるような感覚が強くなってゆく。思わず声が漏れそうになり、目を閉じて
アレスの肩先に顔をうずめて堪える。その瞬間、不意に左の耳穴に何か熱いものが差し込まれて、
堪えきれずに声を上げた。
温かく濡れたアレスの舌が耳の中で水音を立て、柔らかな耳朶を吸い上げる。
首筋から鳩尾、背中にかけてを寒気にも似た感覚が走り、滑らかな肌がざらりと泡立つ。
不快なのか快感なのか、自分でも分からない。
ルーシェルは行為の最中にあまり声を出さないが、耳を攻めると悲しげで可愛らしい声を出す事があって、
アレスはその声が好きだった。執拗に攻めると、許しを請うような言葉を吐く事もある。
その言葉を引き出そうと、腕を突っ張って逃れようとするのを強引に抱き込む。
「…っ!」
次の瞬間、アレスは翼に鋭い痛みを感じて顔をしかめた。
何が起こったのかは考えるまでもなかった。手を止めてルーシェルの顔をこちらに向かせるが、
唇をなめながら視線を泳がせて目を合わせようとしない。
手をとると、掌の中央が赤く色付いている。血ではない。
それは赤い羽毛だった。アレスの翼から毟り取ったのだ。
「痛いだろ」
言うと同時に、アレスはルーシェルの頬を張った。
バチンと大きな音がして、ルーシェルの体はぐらりと後ろに傾く。
片手を後につき、尻餅をつくような格好でアレスの膝から落ちた彼の白い頬にはくっきりと赤い跡が残る。
しかし謝罪しない。肩で息をしながら、むしろ目には挑戦的な色を浮かべている。
アレスには分かっている。これはわざとだ。
耳を攻められるのを嫌がったわけではない。
ルーシェルは時々、こんな風にアレスを挑発する事がある。
雑に扱われる事を、自ら望んでいるのだ。
「何煽ってんの?後悔するよ?」
挑戦的な視線に高圧的な視線と言葉を返し、アレスはおもむろに手を伸ばしてルーシェルの髪を掴んだ。
ついさっき優しく撫でた美しい髪を、今度は殊更荒々しく掴んで頭を揺らす。
「痛い思いしたいんなら、させてあげるよ」
ゆっくりと胡坐の姿勢を崩し、尻餅をついた格好のままのルーシェルににじり寄る。
逃れようとしているが、髪を掴まれているので出来ない。
もう一度その頬を張り、腕を掴んで荒々しく引き倒した。
覆いかぶさって肘と体全体で押さえ付けながら、右手て顎を押さえ、口を開かせる。
その中に、さっきまでルーシェルの中に入っていた左手の指を突っ込んだ。
「………!」
進入してきた指を噛もうと必死で顎の筋肉を動かそうとするも、
しっかりと頬を挟みつけられて全く動かせない。
膝を立てて抵抗しているが、そんなものは何の役にも立たない。
指で舌を掴まれて、体を強張らせている。
「ほんと困った人だね君は」
「…………」
舌をヒクつかせ、だらしなく涎を垂らし始めた。
端正な顔が崩壊の様相を呈し始めたところで、指を放して解放してやる。
ルーシェルは涙を浮かべて激しく咳き込んだ。
アレスもここ数年で知った事だが、ルーシェルは乱暴に扱われる事で興奮する傾向があるらしい。
それでも真性のマゾヒストというわけではないようで、苦痛が長く続く事や、血が流れる程の痛みは嫌う。
また、言葉で攻撃されたり、尊厳を傷付けられるような行為も嫌う。
だからさっきも、左手は彼の口に入れる前にシーツで拭っていた。
そうやってアレスはその微妙なさじ加減を完璧に守り、彼が本当に嫌がる一線は決して越えないようにしている。
(…まったく、我侭な王子様の要望に応えるのも大変だよ)
相手の気分を高めたところで、そろそろこちらも本気になろう。
アレスはルーシェルの足首を掴んで両足を開かせ、腰の下に膝を差し込んで持ち上げさせた。
香油にまみれていやらしく濡れ光る恥部が露わになり、「烙印」を刻まれても機能を失っていない性器は
固くそそり立っている。ルーシェルは隠そうと手を伸ばした。
その手を払い退けて固くなった性器を撫でてやると、息遣いはいよいよ激しさを増し、
腰がゆっくりと波打ちはじめる。早く欲しい、声によらずにそう言っている。
アレスの眼が次第に嗜虐の色を帯び始め、血色の翼は相手を威嚇するように半分開かれ、
それはさながら人間を食そうとする悪魔の様相だった。
焦ってはいけない。何しろ久しぶりの事だ。
もし彼の血を見れば、本来の魔性を晒してしまいかねない。今はまだその時ではない。
アレスは自分にそう言い聞かせ、既に限界まで起ち上がった自らの欲望をもう少しだけ抑えながら、
先走り始めたルーシェルの性器に優しく口付けた。
「力抜いて。挿れるよ」
【end】
最終更新:2013年10月07日 20:33