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「-CROSS OVER DEAR YOU-親愛なる君へ-」


作者:本スレ 1-710様

378 名前:-CROSS OVER DEAR YOU-親愛なる君へ- 投稿日: 2013/11/09(土) 23:19:59

本スレ1-710 です
うちの子(設定スレ1-036)のSSを書きましたのでお知らせします
以下、属性表記です
 ・そんな描写は全くないけど、現代風ファンタジー(獣人変化もの)
 ・エイシアさん一人称
 ・登場キャラクターは、エイシア(17歳)、アル(18歳)、ウィル(20歳)、シルヴィア(16歳)です
 ・設定スレ2-037 ベース のSSです
 ・1-091様のキャラ (本スレ1-866)1-510様のキャラ(設定スレ2-047)とも勝手にクロス
  でも前振りだけ、誠に申し訳ない…
 ・そしてエロなし、女装注意?
こんな感じですが、よろしかったら、どうぞ

379 名前:-CROSS OVER DEAR YOU-親愛なる君へ- 投稿日: 2013/11/09(土) 23:21:29

ドレスが届いた。
久し振りだったんで少し驚いたが。これはあいつからのものだ。
別に驚くには値しない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
親愛なるエイシア・ブラン・ディール

久し振りだね。
君は日本でも元気にしているかな。
今度、Conrad tokyoで行われるパーティに出席することになったんだ。
ぜひ君に同席をお願いしたいと思ってドレスを贈らせてもらった。
君のサイズは僕と最後に会った時から変わっていないだろうか。

詳細は別途、ウィリアムに連絡しておくから、後で確認してくれると助かる。
唐突で勝手な依頼にはなるが、久し振りに君に逢えるのを楽しみにしているよ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「……で? 同席するのか?」
「そりゃね、氏は俺にとっては、知性とそれなりの地位にもある
 比較的まともなクライアントだからな」

ドレスに添えられていた手紙を読み終えた俺が顔上げると同時に、アルが俺に声をかけた。
アルから投げかけられた問いかけに、俺は少しため息混じりの声で返事を返す。
そういえば、アルは俺がたまにはこんな格好をするような依頼も請け負う、という事を知
ってはいるが、実際にその場に居合わせるというのは、初めてかもしれない。

ここは俺等が日本国で住まうメゾネットのリビングだ。
先程、このメゾネットのコンシェルジュから、俺あての荷物が届いているとの連絡があっ
たので、それを取りに行ったのだけれど。
俺の同居人等は……アルも、ウィルも、シルヴィアも、その荷物を持って帰って来た途端、
一斉に俺の方に視線を向けた。

俺が受け取ったのは、淡い桜色の箱にピンクのオーガンジーのリボンが掛けられたでかい
プレゼントボックスだ。
そのプレゼントボックスはこれまた上質な紙で誂えられおり、それを態々、俺等の住む、
アパートメントのコンシェルジュに預けていくという念の入れようだった。
折角の美しいプレゼントを更に味気ない外装箱に入れるような気の利かない真似はしない、
ということなのだろう。でも、届けに来たのは、あいつ本人ではないのだが。

可愛らしいリボンがかけられた、淡い桜色のでかいプレゼントボックスを両手で抱えて持
って帰ってきた俺の姿を目にすれば、誰だって引くと思う。
そんなこともあって、俺はリビングのテーブルの上にプレゼントボックスを置いて、皆が
見ているなかで、その箱のリボンを解く事になった。

「これ、どう見ても女物のドレスだけど」
「あの人は俺にこういう格好させたがること以外は割とまともだよ」

アルから再び投げ掛けられた言葉に俺は、ドレスを取りだしながら淡々と返事を返した。
知性も金も権力もあるこの類の奴等からの依頼を断るのは却って骨が折れる。
その事は俺もウィルも身に沁みて解っているから、余程の事が無い限り、断りはしない。
それだけの話だ。そうなのだ、俺等はどんなに人間と等しい姿形をしていても。

奴等からすれば、所詮、人工の作りもので、なおかつ、人間のまがいものといった生命体
でしかない。それも良く解っている。
だから、お呼びがかかれば、余程調整の難しい予定が重なってでもいない限り、あいつに
付き合ってパーティに同席せざるを得ない。その事は心得ている。

「ウィル、パーティの詳細とやらの連絡、電子メールで入ってるんだろ。
 後で俺のタブレットに送っておいてよ」

「解った。それ、どうぜだから、今、試着も済ませておいた方が良くないか。
 そのドレスに君の身体が収まるのなら良いけど。
 日程にあまり余裕があるわけではないだろうから、衣装直しが必要だと面倒だと思うが」

ウィルにそう言われた俺は、箱からドレスを取りだして、それを自分の身体に宛てつつ、
じっと眺めた。
改めて見ると、このドレスは普通、世間一般の女性が誰かから贈られたら、とても喜ぶ品
なのであろうことが一目で解る。
誰の目から見ても高価で上質かつ、繊細な品なのだという事が、今、こうして目にしただ
けで分かるものだ。

俺の髪と瞳の色に合わせたつもりなのであろう、淡いブルーと白銀の光沢を放つ軽やかな
最上級の絹地に繊細な刺繍が施されたマーメイドラインのソワレ。
淡く薄い色合いの軽い生地だけに、以前に贈られた濃紺のものよりも、随分と余計に身体
のラインが目立つ……気がする。

おまけに……このドレス、相変わらず、あいつの好みにあわせてホルターネックのデザイ
ンで仕立てられていて、背中側が……腰の下の方まで随分と大きく開けられている。
ようは、多分、恐らくはケツのセンターのラインが……少し覗きそうな程の際どい位置ま
で、背中側が大きく開いているのだ。
ドレスのパターンが秀逸なのはこうして眼に留めているだけでも分かるので、実際身につ
けてしまえば、婀娜っぽく、かつ、粗野な雰囲気などは微塵も感じさせないのだろうけど。

「失礼な。体型はそうそう変わってないよ、衣装合わせはいいや。少し絞れば入るだろ」

若干の間を置いてから、俺は正面にいたウィルの方に視線を向けながら、そう答えた。
ウィルはそんな俺の方を見て、軽く微笑んだ。これからしばらくの間、俺が自分の身体に
負荷を掛けて少し体型を補正していくつもりなのを解っているからだろう。
体型はそう変わっていないが、最近、背中側に付き始めた余分な肉を少し絞らないと、幾
分滑稽に映ることになる。
多分、あとひと月近くかけて、少し自分の身体に負荷をかけないとならない。
そう思うと少々気が滅入った。

ふと、自分の左隣に視線を遣ると、シルヴィアが少し心配そうな表情で俺の方を見ている
のにようやく気付いた。
ああ、また俺はこの子に心配をかけてるんだな……と思うと余計に気分が落ちる。
そんな気持ちを振り払うように、俺は改めてシルヴィアの方へと視線を向けた。

「……エイシア、パーティに行くんだ……」
「大丈夫だよ。仕事だって、割り切ってるから。もう慣れた」

俺は普段どおりの表情を保つように心がけながら、シルヴィアの肩にそっと肩手を置きつ
つ、返事を返した。でも、シルヴィアの憂いを帯びた表情は変わらない。

「でも……その日には帰って来れないんでしょう?」

シルヴィアは、深いサファイアブルーの瞳の視線を改めて俺の方へと合わせながら、そう
言った。
多分、シルヴィアは、俺が何故、その日に帰ってこないか、何となくは解っているのだ。
俺の方から具体的な内容を話した事は一度もないから、恐らくはこの類の相手と、どの程
度の付き合いをしているのか、といったところは、敢えて考えないようにしてくれている
のだろう。

それでも、こういう事がある度に、俺があいつと一晩を共に過ごしていることは、シルヴ
ィアも解っている。心の奥底では本当は俺がそれを望んでいない事も。
それを俺が望んでいなことは、アルやウィルももちろん知っている。けど、仕方ないんだ。

「うん、でも大丈夫。君は何も心配しなくて大丈夫だから」
「エイシア……気を付けてね」
「ありがとう」

俺がいつもどおりの笑顔を返しながらかけた返事に対して、シルヴィアは自分自身の気持
ちを出来得る限り伝えようとするかのように、真摯かつ、真剣な眼差しで短く言葉を返し
てくれる。だから、それにあわせて俺も感謝の気持ちだけを短く伝えた。
その後で、シルヴィアの方から目線を外した俺は、今度は反対側に居るアルの方へと、再
び視線を向けて、頼みたい要件だけを話そうと声をかけた。

「あ、あと、あのさ、アル、後でいいから、
 フィクス社のジム、何処かで半日位、借りられるように頼んでもらってもいいか?
 欧州連合日本国領事館関連の施設なんかを借用するのはまだ少し、気が引けるから」

「……ああ、構わないけど……」

アルもシルヴィアと同じように浮かない表情のまま、俺の方を見ている。そんな風に気を
使う必要なんてないのにな、時と場合によっては君の方が余程、辛い思いもしてるだろ。
そう声をかけたかったが、シルヴィアが居るこの場でそんな事、言えやしない。
だから、続けて、ただ当たり障りのない言葉だけをアルに向かって伝える。

「ありがとう。助かる。
 ヒール履いて歩くの、久し振りだからさ、一応、練習しておこうかと思って」

そう声をかけた後で、その場に両膝をつくようにして座りながら、俺は先程開けたプレゼ
ントボックスの蓋の上へとドレスを置いた。
続けて薄い桜色の保護用のラッピングペーパーが沢山入ったプレゼントボックスの中を確
認していく。中を確認していくうちに、幾つか足りないものがある事に気付いた。

「……あっ、あいつ、靴が入ってないよ。それにグローブも入ってないじゃないか。
 手元、どうすんだよ」

こういうのも自分で手配するのが面倒なのに。あいつ自身が、そういう事を全く解ってな
いんだろうか。どちらにしても、俺への気配りと配慮が全く足りない。
そんな事を考えて、少しふてくされながら、プレゼントボックスを見ていたら、箱の端の
方に、小さな赤い箱が添えられているのが目に入った。
それをそのまま、手にすると、大きさの割には少し重みがあるように感じた。推測するに、
恐らくジュエリーが入っているんだろう。

このでかいプレゼントボックスの中で、小さな箱の位置が大きく動いたりしないように、
よく上手いこと包装されていたものだと、要らないところに関心しながら、俺は暫くの間、
下を向いていた。
そんな俺の目の前で、その場で片膝をつくような姿勢で座していたウィルが、此方の様子
を目に留めつつ、声をかけてくる。

「靴は後で手配するようにしておく。Christian Louboutin のか何かでいいのか。
 あと手元と腕……ショールとかでごまかすよりも、グローブの方が良いのか」

「折角、背中が大きく開いてるドレスだからさ、ロンググローブの方が良いかと思って。
 まあ、両方用意しておくか。あと、靴はそれで頼む。サイズ、あるかな」

「とにかく、手配してみるよ」

「ん、あと、適当にrougeもね、ひとつ用意しといてよ。
 流石にノーメイクって訳にはいかないだろ、口元位は。派手なやつじゃなくていいから」

「解った」

ウィルは俺との付き合いが長い分、余計な事は一切言わない。ただ、淡々と俺がこうした
格好をするのに必要なものを一緒に確認していく。
他人が目にしたら、ウィルの態度は少し素っ気なくも映るのかもしれないが、俺にとって
は、加減が丁度良くて、心地がいい。

小さな赤い箱を開けると、そこには、やはり、真紅のジュエリーケースがあった。
このジュエリーケースとしては、幾分大きな成りからすると、中身は多分あれだ。
そう思ってそれを開けると、中には予想していたとおりのものがあった。

それは、大きなダイヤが幾つも惜しみなく使われたチョーカーとイヤリングだ。
こういうものの値段を推測するというのも甚だ無粋な事だとは思うけれども、値段にすれ
ば、多分、低く見積もっても数千万円は下らない。ただ、恐らくこれは、後であいつに返
す事になる筈だ。
たとえ、あいつの方から「受け取れ」と言ってきたとしても、こういう度が過ぎたものを
施されるのは御免だ。

俺に施そうとする、この類の行為の端々に、此方側を見下すかのような意図を持っている
事が透けて見える気がするし、受け取れば、それを更に助長することになるような気もす
るからだ。

時として、あいつとは、こうした事柄を含めて、いちいち駆け引きめいた遣り取りをしな
いとならないのが結構、面倒くさい。

――君は首筋のラインも特に美しいから。ネックレスよりもこういう首輪の方が似合うよ。

そんな事を考えていたら、以前、あいつに逢った際、首筋にキスを受けた事を思い出した。
それを思い出した瞬間、俺は無意識のうちに左手を自分の首筋へと遣っていた。
傍から見れば、右手の掌の上に開けたままのジュエリーケースを置いたまま、俺がその場
で、ほんの少しの間、動きを止めていたようにも見えたかもしれない。

「……あの人、これ、本当に好きだな」

小さな声でそう言った俺の様子を目に留めたウィルは、此方側の手元に置いたままのジュ
エリーを見て、ほんの少しの間、笑みを浮かべたかのようにも思えた。
直後にウィルはその場で呟やくような声で俺に声をかける。

「首輪?」
「首輪って言うな。チョーカーだよ、チョーカー」
「あの人も首輪だって言ってた気がするけど」

奴の言葉に間髪入れずに俺が応じたのに対して、ウィルの方も俺の心の内側に、ちくりと
刺さるようなことを、冗談かつ、軽口を利くような口調で言ってのける。
恐らくはわざとだ。ウィルは、俺が嫌がるのを解っていて、たまにこういう事を言う。

「煩いよ」

俺が好きであいつの趣味なんかに、従ってるんじゃないって、君が一番良く解ってるだろ、
とか、意味のない切り返しのひとつもしてやりたくなるが、今、この場で、そんな事を言
っても仕方ないのは解っている。
だから、いつもどおりに短く言葉を返して、此方も冗談として敢えて真剣に受け止めてな
どいない、気になどしていない、という風に振舞う筈だったのだが。

――やはり君にはこういう美しいものが似合う。エイシア、君はいつも美しいが。
――いつもよりも増して、更にきれいだよ――。

ウィルに短く言葉を返した直後に、ふいに俺の耳元で、以前、そんな風に囁いた、あいつ
の言葉が脳裏に甦った。
同時に、ほんの一瞬の間、なんともいえない、嫌な感覚が身体の内側を擦り抜けてゆく。

それは、ほんの一瞬の、その場限りのごく僅かな間の出来事だ。
いつもとは少し違ったが、ほんの一瞬だけ通りすぎた身の竦むような感覚を遣り過ごした
俺はやはり何事も無かったように、軽口をたたくようにしてウィルへと更に言葉を返す。

「もう、いいからさ、これ、当日まで何処かに預かっておいてよ」
「解った。済まなかったな」

多分、俺は幾分不機嫌そうな表情をしていたんだと思う。
でも、その事を敢えて気に留めないようにして、俺は、でかいプレゼントボックスを置い
たリビングテーブルの隣の空いたスペースにジュエリーケースを置いた。
ウィルの方も馴れたもので、そんな俺の様子に殊更大きく表情を変えることもなく、ジュ
エリーケースの蓋を閉めて、それを手にする。
ただ、奴が俺に向かって「済まない」と言ったのは、恐らく、こうした俺の微妙な心境の
変化も踏まえての事なのだろう。

いつもの事だが、こういうタイミングで、そういう言葉を口にされると、逆に俺の方が奴
の事を放っておけなくなる。
大した事を言われた訳でもないのに、少々、ふてくされた態度で応じた挙句、却って逆に
不用意にウィルの事を傷つけたんじゃないかと、そんな思いがほんの少しだけ、頭の隅を
掠めるからだ。

反対に俺がウィルの立場だったら、と思うと、仕事だと解っていても、たまには、ちくり
と刺すようなひと言を口にしたくなる気持ちも解る。
自分自身が普段からそれなりに気にかけている相手が、好きでもない相手と色々と関係を
持つ、というのは、やはり、ふと考えると気分の良いものではないだろうし。

だから、本当はいつも、俺の方こそ済まないって、思ってるって、そんな気持ちをウィル
に対して伝えたくなる。
が、これもお互い様の事ではあるので、敢えてウィルに対して、それを直接的に伝える事
はしない。

同時に、俺は、まあ、その他にも、パーティ当日のあいつ以外の主な出席者とか、会場の
警備配置等々……確認しておきたい事はほかにも色々とあるし……。
それに……あいつ……柳とかも、こういう式典めいた宴席にも来るんだろうか……などと、
その場ではまだ考える必要のない、余計な事まで色々と考えていた。

とりあえず、今、現時点では、そんな細かい所まで、気に留める必要はないだろうに。
俺はほんの少し間を開けて、自身の思考を一度、振り切るように、小さく息をついてから、
再びウィルに向かって声をかけた。

「解ればいい。なあ、その他にも少し確認しておきたい事があるから。
 これ、片付けた後で、君の部屋に行ってもいいか」

「ああ、構わないよ。じゃあ、後で」

ウィルの方は、既にジュエリーボックスを手に、その場から立ち上がっていた。
奴は此方の声に応じて、俺の方へと視線を合わせる。
その場に立ち膝で座したまま、見上げるようにして視線を上げていた、俺に向かって、奴
はいつもと全く変わらない表情で軽く微笑んでから、唯、一人で、先にリビングを後にし
ていった。
奴の後ろ姿を見送った俺は、とりあえず、拡げた桜色のでかいプレゼントボックスを片付
けてしまおうと、再びリビングテーブルの上へと目を向ける。

「さてと、とりあえず、これ、片付けるか」
「本当に断らないのか」

淡々と俺が片付け始めた様子を目に留めて、今度はアルが幾分、険しい表情で声をかけて
きた。
ああ、今、此処に残ってくれている、アルもシルヴィアも多分……先程、俺がほんの少し
の間、身の竦むような感覚を思い出していたのを目に留めてたんだよなぁ……などと思い
ながら、俺は普段どおりの口調でアルへと返答を返す。

「うん、まあ、断った方が色々と面倒だから。いいんだよ。それに。
 やるからには、ああいう場所で下手に悪目立ちして浮きたくはない。相手にも失礼だろ。
 だから、一応、やれる事は手を尽くしておきたい」

「……君もウィルも、本当に……」

『それでいいのか』と、クソ真面目なこいつの事だから、そう言いたいのだろうけど、俺
 はアルの口からその言葉が述べられる前に、それを遮るようにして更に言葉を重ねる。

「……まあいじゃないか、何事にも割り切りって大事だと思うし。
 あと、ジムの手配、本当に頼んだからな」

「ああ……」

アルは未だに遣り切れない思いを抱えているかのような、それでいて困惑したような表情
を見せながら、返事を返してきた。
今、この場で、俺にこれ以上何を言っても無駄だと思ったんだろう。
いつも思うが、こいつは、そういうところの察しが良いから、助かる。
まあ、その他の部分でも色々と……最近、俺はアルにも助けられてばかりだなぁ……などと
少し感慨に耽るように思い返す。

ふと、反対側に視線を遣ると、今度は、アルとは逆隣に居たシルヴィアが心配そうな面持
ちで、こっちの方を見つめていた。
シルヴィアは、俺が彼に対して視線を合わせたと同時に、サファイアブルーの瞳で此方を
見つめながら、再び俺へと声をかけてくれる。

「エイシア……僕もいつかちゃんと……エイシアの力になれるかな」
「もう充分だよ。シルヴィアはいつも、俺の事、ちゃんと解ってくれてるだろ?」

俺はシルヴィアの肩をそっと抱き寄せて、彼の背中を幾度か軽く触れるようにして撫でた。
シルヴィアもそれに応じるように、俺の事を軽く抱き返してくれた。

「じゃあ、また後で」

そう言って、俺はでかい淡い桜色のプレゼントボックスを抱えて立ち上がった。
アルとシルヴィアの二人を残して、リビングルームを後にした俺は、そのまま自室へと向
かう。

そうして、自室に戻ってから、俺は淡い桜色のプレゼントボックスからドレスを取りだし、
ハンガーに掛けてから、クロゼットの傍のハンガーラックに引っかけるようにして吊す。
そこまで片付け終えた俺は、そのまま自分のベッドの上へと身を投げ出すようにして横た
わった。

ベッドに横になった俺は、あいつから贈られたドレスを改めて眺めながら、そういえば、
こんなのは、俺よりも、アルとか……そう、あいつ……繊の方が似合うんじゃないか。
などと、意味のない事を考えながら、いつの間にか、そのまま眠っていたようだった。

まあ、その後も、俺を起こしに来たウィルとちょっとした遣り取りがあったりとか、後日、
フィクス社の借り上げジムを訪れた俺とアルが、向こうの連中とも色々と遣り取りを重ね
る事になったりとか、色々とあったのだけれど。

その類の話の顛末は、いつか日を改めて……いや、改めて思い出したくもないので、早め
に忘れるようにしたいと思う。

【END】

お付き合いいただき、ありがとうございました!
そして色々と中途半端な前振りだけになってしまい、申し訳ない限りです
女装と首輪……とか、色々と書きたかった要素を詰め込んだらこんなことに……orz
フィクス社の皆様との賑やかな様子もぜひそのうち書きたいです!
今後ともどうぞよろしくお願いします

※wiki収録後に、一部修正を加えました。



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最終更新:2013年11月09日 23:58