オリロワ2nd @ ウィキ

不運<アンラッキー>

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不運<アンラッキー>◆o7DW0ESrOc




今野登は医者である。
人を助けるのが仕事である、人々の理想の職業である。
だが、登は今ばかりはそんな肩書きはいらなかった。
登には、愛すべき妻が居る。
名前は今野穂乃香。現在は待望の子供の命をその腹に宿している。

「なんで」

どうして、どうして自分だけじゃなかった。
渡されたディパックにあった参加者名簿に、自分の名前のすぐ後に、自らが最も愛している人の名前があったのを見た時、登は運命とやらを呪った。自らの非力を悔しがった。

「だから―――」

穂乃香を生き残らせる為に、殺し合いに乗ってしまおうか?
医者なんて、そんな神様みたいなもんじゃない。
それでこそ、自分が一人残るとしても、穂乃香が居ないのでは意味が無い。
ならば、自分が出来る事は穂乃香を助ける事。

「…これで殺せるだろうか」

登の手の中にあったのは、一般的なノコギリだった。

家の家具が壊れた時、診療所が休みの日はこれら工具で直したものだが、殺し合いでは凶器に変わる。

「よし、じゃあ行くか」

そう呟いて、足を前に出そうとした時だった。
登の後ろに、一つの影。
そしてその手には、チェーンソー。

「うーしーろー」
「!?」

登が声に気づき、後ろを振り返った時には、チェーンソーは振りかぶられていた。
顔に生々しい火傷の傷があった少女によって。


「…つっ!」
「あれ、おかしいな、中々切れないや…」

登の左肩に、そのチェーンソーの刃が食い込む。
そして、火傷の少女は歪に口元を吊り上げると、チェーンソーのスイッチを入れた。

「ならこうだ!スイッチ、オン!」
「がっ!があっあああああああああああっ」

肩に食い込んだ刃が、重い音をあげ、登の右肩にて作動を始めた。
登は突然の出来事に対応出来ず、更に右肩の痛みは更に増し、登の右肩から下まではほとんど繋がっているかどうかも分からない程になっていた。
それ故か、握られていたノコギリは地に落ちかけている。

「んー、あんまり長くすると、つまらないや」

そう独り言の様に言った女はチェーンソーを登の右肩から抜くと、もう一度、今度は登の頭上から振り下ろした。


…いや、振り下ろそうとした。

「うおおっ!」
「ちょっ!?そんなのあり!?」

なんと、登はちぎれかけていた右腕を自分の力でねじきった。
一瞬、躊躇した火傷の女だったが、すぐに止めていたチェーンソーを振り下ろす。
登の顔は苦痛で歪んでいたが、その顔は、決意に満ちていた。

(どうせ死ぬなら、あいつが少しでも生きられる可能性を高くしてやりたいんだっ!)

登が、右腕をねじきったのには訳がある。
一つは普通に右腕からノコギリを取るより、効率がよく、早く取れるから。
そしてもう一つは、登の穂乃香に対する『生きてほしい』と願う気持ちである。
登が、そのねじきった右腕にあったノコギリを左手で持ち、そのまま、女の胸目がけて刃を向ける。

(ふざけないでよ!まだ大好きな炎を見ないで死ねるもんか!)

女は登に向かってチェーンソーを勢いよく振り下ろす。
それは、同じタイミングで起こった事だった。

◇◆◇◆◇◆◇◆

その後、そこには二つの無惨な死体があった。
片方の長身の白衣の男、今野登は、頭からチェーンソーで真っ二つになっており、体の断面図が見れる程、無惨な死体となっていた。
一方、火傷の女、日村花音は、右胸にノコギリが刺さったまま倒れていた。
そして『二つ』とも、言わずとも周りには血だまりが出来ていた。

理由は同士討ち。
チェーンソーの刃が登の頭に入った瞬間には、花音の右胸に刺さっていた。
チェーンソーがそのまま花音の力ね反動によって登の体を二つに別れさせたのだが、花音はすでに、地面に仰向けで倒れていた。
花音が右胸に刺さったモノを必死に抜こうとしても、変に入り込んで取れなかった。
そして徐々に、彼女の視界はぼやけていき、彼女の服は赤く染まる。

彼女は、最後に自らの尊敬している教祖の事を思った。
ただそれが懺悔か、はたはた歓喜か。
それは今となっては分からないだろう。
一つ。一つあげるとしたならば、彼等は運が悪かった。
そう思うしか、今は出来ないであろう。

【一日目・深夜/E-5】

【今野登】死亡確認
【日村花音】死亡確認

※E-5に、今野登、日村花音の死体があります。かなり見た目がひどいです。
※死体の側に二人分のディパックがあります。


06:二つの決意 時系列順 08:3人
06:二つの決意 投下順 08:3人
今野 登 死亡
日村 花音 死亡


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