OP案:『今から、開始だ』 ◆ORI/A.SOic
――― 面白いゲームがあるんだが、君もちょっと参加してみないかい?
――― なンてったって、勝てばべらぼうな大金が手に入るって話だからね。
――― 危険? ま、0じゃあないさ。そりゃ、当然ね。
――― 違法なんじゃないかッてのは、愚問だな。そーゆーレベルの話じゃあないよ。
――― とにかく、スリリングでエキサイティングなのは間違いないね。
――― なンてったって、勝てばべらぼうな大金が手に入るって話だからね。
――― 危険? ま、0じゃあないさ。そりゃ、当然ね。
――― 違法なんじゃないかッてのは、愚問だな。そーゆーレベルの話じゃあないよ。
――― とにかく、スリリングでエキサイティングなのは間違いないね。
――― この、バトルロワイアルってのは。
◆◆◆
ポトリ。
雫が鼻の頭に垂れた。
目を開けるが薄暗い。いや、薄暗いのではなく仄明るい、というべきか。
地下室、のように見える。瞬間的な印象だ。湿度があり、かびくさい気がするし、壁も床も冷たい石壁。
地下牢か? なんて考えも一瞬過ぎるが、どうも違う気がする。
鈍った頭を押さえて、上体を起こす。痛みはない。怪我をしているわけではないらしい。
がちっ。
気付いたのは、首が引っ張られる感覚と、鉄の音。
一体何事か。そう考え、答えを知り、慄然とする。
自分の首に填められた鉄の首輪と、そこから伸びる鉄の鎖。その鎖が壁に固定されていて、身動きが取れなくなっているという事に。
雫が鼻の頭に垂れた。
目を開けるが薄暗い。いや、薄暗いのではなく仄明るい、というべきか。
地下室、のように見える。瞬間的な印象だ。湿度があり、かびくさい気がするし、壁も床も冷たい石壁。
地下牢か? なんて考えも一瞬過ぎるが、どうも違う気がする。
鈍った頭を押さえて、上体を起こす。痛みはない。怪我をしているわけではないらしい。
がちっ。
気付いたのは、首が引っ張られる感覚と、鉄の音。
一体何事か。そう考え、答えを知り、慄然とする。
自分の首に填められた鉄の首輪と、そこから伸びる鉄の鎖。その鎖が壁に固定されていて、身動きが取れなくなっているという事に。
悲鳴。嗚咽。叫び。そのどれでもあり、そのーどれでもない声が、果たして本当に自分の口から発せられたか。
発せられたのか分からぬうちに、今度は声がした。
その鎖の付け根にちょこんと置いてある、古く汚れたパペット人形からだった。
発せられたのか分からぬうちに、今度は声がした。
その鎖の付け根にちょこんと置いてある、古く汚れたパペット人形からだった。
『――― やあ、お目覚めだね、諸君』
『少々記憶が曖昧で、戸惑っている者もいるだろうが、私の話を聞いてくれ』
『ああ、勿論大事な話だ』
『君たち各所から集められた30名は、今、ゲームの参加者としてここに居る』
『スリリングでエキサイティングなゲーム』
『少々記憶が曖昧で、戸惑っている者もいるだろうが、私の話を聞いてくれ』
『ああ、勿論大事な話だ』
『君たち各所から集められた30名は、今、ゲームの参加者としてここに居る』
『スリリングでエキサイティングなゲーム』
『バトルロワイアルの、だ』
『ルールは単純。ただ時間いっぱい元気に殺し回って最後の一人になれば勝利、だ』
『敗北条件はいくつかある。一つは死ぬこと。もう一つはゲーム会場から逃げ出すこと。そして、入ってはいけない区域に入ること』
『勝者には莫大な褒美が与えられ、敗者には死あるのみ。実にシンプルだ』
『ルールは単純。ただ時間いっぱい元気に殺し回って最後の一人になれば勝利、だ』
『敗北条件はいくつかある。一つは死ぬこと。もう一つはゲーム会場から逃げ出すこと。そして、入ってはいけない区域に入ること』
『勝者には莫大な褒美が与えられ、敗者には死あるのみ。実にシンプルだ』
加工されたようなその声は、ただ淡々と狂ったルールを説明している。
『勿論そのままでは心許ないだろう』
『足元を見てくれ。そのバッグの中にあるのが、君の"支給品"。殺し合うのに便利な道具、だ』
『まずは、食料と水、地図、名簿、灯り等がある』
『そしてもう一つは、武器かそれに類するもの』
『最後に、“スキルカード”だ』
『この“スキルカード”は、実に重要で有意義なものだ』
『この“スキルカード”は、君の首輪に付いている差し込み口に入れることで、特別な能力を与えてくれ、先へと進む重要な“鍵”となるからだ』
『足元を見てくれ。そのバッグの中にあるのが、君の"支給品"。殺し合うのに便利な道具、だ』
『まずは、食料と水、地図、名簿、灯り等がある』
『そしてもう一つは、武器かそれに類するもの』
『最後に、“スキルカード”だ』
『この“スキルカード”は、実に重要で有意義なものだ』
『この“スキルカード”は、君の首輪に付いている差し込み口に入れることで、特別な能力を与えてくれ、先へと進む重要な“鍵”となるからだ』
半ば混乱した頭で、バッグの中を探る。たしかに、言われたとおりのものがある。
『ゲームは72時間』
『今から、開始だ』
『今から、開始だ』
その声と同時に、異変が起きる。
『おっと。人によっては今、開始前の軽いウォーミングアップイベントが起きているかもしれないね』
この地下室らしき空間の上から、水が降ってきた。それも、大量に、だ。
慌てて、バッグを掴む。
掴むが、水は瞬く間に足首、脛、そして膝へと溜まっていく。
慌てて、バッグを掴む。
掴むが、水は瞬く間に足首、脛、そして膝へと溜まっていく。
『さあ、どうする? 君たちは選ばれた存在なんだ。このくらいはクリアしてもらわなとね』
首。首輪だ。首輪が、鎖で壁に繋がっている。
その長さは2メートル前後。この室内の高さは2メートル半だろうか。何れにせよ、水が充満すれば、ゲームどころではない。スタート間もなく死を迎えることになる。
その長さは2メートル前後。この室内の高さは2メートル半だろうか。何れにせよ、水が充満すれば、ゲームどころではない。スタート間もなく死を迎えることになる。
パニックになった頭を必死で巡らせる。首。鎖。これを外さねば。首輪? いやそんなのは不可能だ。つるりとした表面に指を這わせても、まるでとっかかりもなく滑らかで、何より硬い。
膝上。太腿。
鎖? 引っ張れば切れるか? いや或いはあの付け根に何か仕掛けが?
股下。腰。
見回す。何か無いか? 斧か、工具か。
臍下。鳩尾。
頭を掻きむしり、首を激しく動かす。
胸。首下。
水はどんどん溜まって行き、体がそれに応じて浮力を感じる。
何だ? 何かが必要だ。
口の中に水が入る。なんとか吐き出すが、止めどもない。
何が? 鍵だ。これを外す鍵。首輪を外すか
膝上。太腿。
鎖? 引っ張れば切れるか? いや或いはあの付け根に何か仕掛けが?
股下。腰。
見回す。何か無いか? 斧か、工具か。
臍下。鳩尾。
頭を掻きむしり、首を激しく動かす。
胸。首下。
水はどんどん溜まって行き、体がそれに応じて浮力を感じる。
何だ? 何かが必要だ。
口の中に水が入る。なんとか吐き出すが、止めどもない。
何が? 鍵だ。これを外す鍵。首輪を外すか
◆◆◆
夜だ。
薄暗いのではなく、仄明るいのだという推測は当たっていた。
今は夜だ。
星空を見上げる。見たこともない星空だ。
数度咽せて、気管に残っていた水を吐き出す。
後ろを見ると、階段の下は水に寝れているが、既に排水され、今はただの地下室でしかない。
先程、自分を殺しかけた事が、信じられぬほど静かな。
薄暗いのではなく、仄明るいのだという推測は当たっていた。
今は夜だ。
星空を見上げる。見たこともない星空だ。
数度咽せて、気管に残っていた水を吐き出す。
後ろを見ると、階段の下は水に寝れているが、既に排水され、今はただの地下室でしかない。
先程、自分を殺しかけた事が、信じられぬほど静かな。
鍵は、スキルカードだった。
先へと進む重要な"鍵"。文字通り、スキルカードを首輪に付いたスロットに差し込むことで、鎖が外れ、排水が始まり、そして上へと登る階段が作動したのだ。
ふざけたジョークの様なこの仕掛けだが、その事に気がつかねば、やはり自分は死んでいただろう。
水に濡れたバッグを肩に掛ける。
体が冷えている。何処かで休まないとままならないだろう。
しかし―――、と、考える。
30人が同じように集められ、同じように殺し合えと言われている?
尋常ではないこの状況で、しかし一体どうすれば良いか。
一つだけ。一つだけ、最後にあの人形が発した言葉を思い出す。
先へと進む重要な"鍵"。文字通り、スキルカードを首輪に付いたスロットに差し込むことで、鎖が外れ、排水が始まり、そして上へと登る階段が作動したのだ。
ふざけたジョークの様なこの仕掛けだが、その事に気がつかねば、やはり自分は死んでいただろう。
水に濡れたバッグを肩に掛ける。
体が冷えている。何処かで休まないとままならないだろう。
しかし―――、と、考える。
30人が同じように集められ、同じように殺し合えと言われている?
尋常ではないこの状況で、しかし一体どうすれば良いか。
一つだけ。一つだけ、最後にあの人形が発した言葉を思い出す。
『――― 覚えているかな? 忘れているだろうけれど、一応言っておこう』
『私は、君たちの中にいる』
『いずれ、会えるだろう ―――』
『私は、君たちの中にいる』
『いずれ、会えるだろう ―――』
何処かさほど遠くない知覚で、音が聞こえた。
聞こえた気がしただけかも知れない。
誰かと会うことになるか、それとも誰かと ――― 殺し合うことになるか。
背後を再び見てみると、ただ僅かに仄明るい地下の空洞が広がって居るのみだった。
聞こえた気がしただけかも知れない。
誰かと会うことになるか、それとも誰かと ――― 殺し合うことになるか。
背後を再び見てみると、ただ僅かに仄明るい地下の空洞が広がって居るのみだった。