鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎

登録日:2023/11/24 Fri 05:26:41
更新日:2025/07/16 Wed 21:44:16NEW!
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引き返して下さい。警告はしましたよ?


暴いてやろうぜ


何を見ても逃げるでないぞ?

















なぜ、生まれてきた…



初めて明かされる、鬼太郎の父たちの物語




『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』とは、2023年11月17日に公開された日本のアニメ映画。
通称「ゲ謎」。


【概要】

漫画家の水木しげる生誕100周年を記念して製作された、水木の代表作『ゲゲゲの鬼太郎』の東映アニメーションによるアニメ化シリーズのうち、第6シリーズの前日譚を描いた長編映画である。
上映時間は105分と、『鬼太郎』のアニメ映画シリーズの中では最長の長さを誇る。*1
また、『ゲゲゲの鬼太郎』アニメシリーズにおいては史上初の、製作委員会に水木プロダクションが参加して本格的な監修を務めた作品でもある。

監督は第5期の劇場版である『ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!』で監督を務め、他に『ドキドキ!プリキュア』のシリーズディレクターを務めた古賀豪。
脚本は第6期で脚本を担当した吉野弘幸
キャラクターデザインは『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』副監督の谷田部透湖。
音楽は『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』『機動警察パトレイバー』の川井憲次。
なお、古賀監督と脚本の吉野は第6期第14話「まくら返しと幻の夢」の演出と脚本を手掛け、その縁で今回の映画化企画を任されたという経緯がある。
また、谷田部は水木しげる作品のいわゆるガチ勢で、彼女の原作に対するディープな知識と愛情が作品に大きな影響を与えている。

本作は水木しげる生誕100周年記念プロジェクトの一つで、貸本漫画『墓場鬼太郎』などで描かれてきた「鬼太郎の誕生」をテーマとし、アニメ『鬼太郎』の記念碑的な作品とするべく制作された。
往時の実写傑作映画『犬神家の一族』*2や『八ツ墓村』*3などのオマージュもふんだんに取り入れ、「不気味な因習の村」のイメージを作り上げている。

物語のコンセプトは「鬼太郎の父たち」。
鬼太郎の実父である「目玉のおやじ=ゲゲ郎」と、後に鬼太郎の養父となる人間の男「水木」の二人を主人公としている。
アニメ第6期における鬼太郎が如何なる想いを託されて産まれてきたか、そして第1話からしばしば語られていた「水木が赤ん坊の鬼太郎を育てた経緯」にまつわる物語が紡がれる。

ちなみに、古賀監督はトークショーで『映画の序盤で会社で水木が席を立つか立たないかで、本編(第6期)と墓場(『墓場鬼太郎』)にルート分岐する』と語っているが、これは悪童の墓場鬼太郎とは異なる、ヒーローとしての鬼太郎が誕生するきっかけについて、脚本の吉野と語った部分が切り取られ、広まってしまったもの。映画の世界が繋がるのはあくまで6期。
鬼太郎の各作品はそれぞれ異なる設定を持つ独立した世界であり、本作品および第6期で語られる水木と、墓場鬼太郎に登場する水木も全くの別人。

2024年10月4日には、新たに327カットのリテイクに加え、音も再ダビングし“真正版”として全国の劇場で再上映された。対象年齢も通常版とは違いR15+に引き上げられた。
古賀監督曰く、「“恐ろしさ”というより、“妖しい美しさ”が増した事でより深く物語に陶酔し、感動していただけることでしょう」との事。
同時に、一部の劇場では4DX上映も行われた。


【作風】

第6期の前日譚であることを踏まえても、戦後かつ昭和中頃の孤立した村が舞台なため、(視聴者が持つような)現代的な倫理観はまともに機能しておらず、問題発言や常軌を逸した思考を持つ人間がポンポン出てくるのが特徴。
そして、登場する人間のキャラクターは、一部を除いて人間の暗部を凝縮したような下卑た性質を持つ者ばかりで、生理的嫌悪感を催すことは必至。
そうした人間により、弱者が容赦なく蹂躙されるあまりにも救いのない展開が連綿と続くため、間違いなく人を選ぶ作風である。
また、出血・切断描写等のグロシーンが大量に含まれているため、映倫においてPG12指定を受けている。
ある意味「人間の悪意」にも焦点を当てたエピソードの多い第6シリーズを踏襲した作品と言える。

しかし全体としては、これらの悪意に立ち向かっていくゲゲ郎と水木の二人が織りなすバディものとしての側面が強く、アクションシーンも盛り沢山で、エンターテインメントとしても十分楽しめる。
そして、主役二人の未来を見据える姿勢が一縷の希望となっており、妖怪と人間の希望の架け橋「鬼太郎」の誕生へと繋がっていくのだ。


【ストーリー】

現代パートと昭和時代パートが交錯する構成となっている。

現代パート

今はもう廃村となっている、かつて山奥にあった閉鎖的な村「哭倉(なぐら)村」。
そこに、巷で話題の人間の味方をする妖怪「ゲゲゲの鬼太郎」の出生の謎を解く鍵があると掴んだ記者・山田は取材に赴くが、入ろうとするなり当の鬼太郎が現れ、「ここから先は立ち入らない方がいい」と警告される。
警告を無視して村へと入った山田は、建物に入るうちに深い穴に落ち、そこで恐ろしい妖怪と遭遇してしまう……!

昭和時代パート

第二次世界大戦後の日本が高度経済成長期に踏み込まんとする、昭和31年のこと。
東京の帝国血液銀行に勤めるサラリーマンの水木は、哭倉村へと向かっていた。哭倉村の支配者・龍賀家の当主で、かつ自社の重要な取引先である龍賀製薬のオーナーである時貞が急逝したためだ。時貞の娘婿の龍賀製薬社長・龍賀克典は水木の担当で、彼は克典の当主継承を自身の出世に繋げる腹積もりだった。
だが、水木を待ち受けていたのは、閉鎖的で厭世的な奇妙な村の人々と、時貞の長男の時麿への当主継承という「不都合な事態」であった。

複雑な事態に心が休まらぬ水木だったが、翌朝予想外の事態が起こる。
当主継承の「御籠り」の儀式の最中に、時麿が何者かに殺されたのだ。
不安と恐怖が村を包む中、「怪しい余所者」が村人に捕まる。
その男―――銀髪に全てを見透かしたような右目を持つ男に、水木は見覚えがあった。

銀髪の不思議な雰囲気を持つ幽霊族の男、後の鬼太郎の父であるゲゲ郎。
人探しのために村へとやって来たというその男と、村に伝わるあるものを探したい水木は協力関係を結び、村の秘密を探り始める。
だが、それは世にもおぞましい人間の悪意へと繋がっていた!

互いの出会いが人間と妖怪の未来の希望へと繋がっていくことを、二人はまだ知らない……。


【登場人物】


昭和31年

○ゲゲ(ろう)/鬼太郎の父
声:関俊彦

「お主が生きる未来、この目で見てみとうなった」

主人公その1。哭倉村に現れた、銀髪で長身痩躯の男。
作中では本名は名乗らないが、ねずみがその姿を見て「ゲゲっ!」と言ったので、水木は「ゲゲ郎」と呼ぶことにした。

その正体は幽霊族の数少ない生き残りで、目玉おやじのかつての姿。
第6期第14話とは目の形等、デザインが異なり、鬼太郎と似た姿になっている。*4
風呂好きも妖怪・怪異についての博学ぶりも後と変わらず、水木の監視の目を盗んで天然の露天風呂に浸かりながらカッパから情報を得たり、村に巣くっている妖怪の正体を状況から推察して突き止めたりしている。

かつては人間嫌いで、人間と関わらずに生活していたが、妻となった幽霊族の女性の影響で人間とも交流をするようになったという。
だがある日妻が突然失踪し、情報を得て哭倉村に入ったところで村人に捕まり、水木と出会った。
当初は野心塗れの水木を軽蔑し、言いつけをまるで無視していたが、行動を共にする中で本心を語り合うようになり、彼に信頼を寄せていく。

戦闘力は凄まじく、単純なパワーやスピードですら修練を積んだ達人が十数人相手だろうと一蹴する。
リモコン下駄を駆使して遠距離の妖怪の群にも対応し、終盤のバトルでは毛髪操作や体内電気といった技も見せる*5
そんなゲゲ郎が、なぜ『ゲゲゲの鬼太郎』第1話において全身が爛れた姿と成り果て、しまいには目玉だけになったのか……?

序盤の「はよう行け」と終盤の「はよう行け」とのイントネーションの違いは必聴。


水木(みずき)
声:木内秀信

「約束しろ。絶対に生きて戻って来ると」

主人公その2。
帝国血液銀行に勤めるサラリーマン。高度経済成長期のビジネスマンらしく、出世欲に満ちている。

第二次世界大戦中に徴兵され、生きて帰れぬ地獄と言われた南方戦線に送り込まれる。
さらに司令部の連絡ミスを誤魔化すため、二度にわたって特攻命令を受けるが、奇跡的に生還。
しかし帰ってきてみれば故郷は焼け野原となり、たった一人の家族である母は、頼りのはずの親戚に、なけなしの財産を全て奪われていた……。

こうした経験故に人間不信となり、二度と使い捨てられない立場になるため、強者への成り上がりを目指す。
その一方で、「安全圏から他者に大義のための犠牲を強要する人間」「底辺を見下しながら弱者を虐げる人間」には反感を抱くなど矛盾した思いを抱えてもいる。

龍賀時貞の急逝を知り、お得意様である製薬会社社長の克典が当主に指名されると睨んで哭倉村へと向かう。
が、村のあまりの異常さに疑問を抱くようになった折にゲゲ郎と出会い、成り行きから彼の正体を知り、互いの目的の為にバディを組むこととなる。

幼少期、乳母だった老婆から妖怪の物語を聞かされていたためか、妖怪の実在を知らされた当初こそ混乱したもののすぐに受け入れた。
また、ゲゲ郎と親しくなる中で受けた忠告は反発することなく聞きながら、苦しい胸の内を打ち明けている。

要は心身に負った傷と戦後の社会で生き抜くために偽悪的に振舞っているだけで、根は素直で心優しい、つまり非常にいい奴である。

なお、水木のキャラクター造形のうち、南方戦線での経験や名前のイントネーション*6は、原作者の水木しげるに由来。
またルックスや演技には、作中の時代に活躍していた二枚目スターの佐田啓二がエッセンスとして取り入れられている*7

龍賀(りゅうが) 沙代(さよ)
声:種﨑敦美
本作のヒロイン。龍賀家長女・乙米と克典夫妻の娘。

淑やかで心優しい少女で、余所者である水木にも分け隔てなく親切に接する。
当主直系の令嬢にもかかわらず実の親からさえも粗末に扱われ、哭倉村での生活を苦痛に感じており、いつか東京に出ることを夢見ていた。
そんな中で水木と出会い、彼に救いを見出し、自分をこの村から連れ出すよう懇願するが……。

長田(おさだ) 時弥(ときや)
声:小林由美子
龍賀家三女・庚子と村長・長田の息子。

病弱であまり外では遊ばないよう言われており、最近は更に体調が悪化しているという。だが、その苦境を跳ねのけるかのように、いつも明るく未来への希望に満ち満ちている。
時貞の遺言により、時麿の次の当主として育てられるよう言いつけが下るが……?


龍賀(りゅうが) 時貞(ときさだ)
声:白鳥哲
日本の政財界を裏で牛耳る龍賀家の当主。
太平洋戦争を利用して巨大製薬会社を一代で築き上げ、地元の哭倉村に凄まじい富と名誉をもたらした。
物語冒頭で死亡しているが、彼の死をきっかけに物語は動き出す。

その影響は死後も延々と残り、また残された遺言から序盤から老獪な性格が示唆されているが、次第に醜悪な実態が浮き彫りになり、存在感も増していく。


龍賀(りゅうが) 時麿(ときまろ)
声:飛田展男
龍賀家の長男。
白い神主装束に白粉にお歯黒で時貞を「ととさま」と幼児語で呼ぶ。しかし一方で騒然とした場を的確な動作で鎮めたり、乙米には神官として頼られ、理性的な会話をしていたりなど、謎めいた奇怪な男。

ある事情により世間から隠されるように生きていた*13が、時貞の遺書により次期当主に任命される。
だが、継承の儀式「御籠り」の翌朝に、神社の本殿で左目を仏具の独鈷、あるいは文鎮のような置物に串刺しにされた死体で発見される。


龍賀(りゅうが) 孝三(こうぞう)
声:中井和哉
龍賀家の次男。
かつて禁域とされた湖の小島に侵入し、精神が崩壊した状態で帰還。その後は車椅子に座り屋敷の離れに幽閉されている。
帰還後は、記憶にないはずのゲゲ郎の妻の絵を描き続けている。
経緯等は不明だが、囚われていた彼女を助けようとして長田達に捕まり、「龍賀の血でなければ死んでいた」という程の強い呪いで精神を破壊され記憶を無くしてしまい、彼女の絵を描き続けるだけの廃人となってしまった。


龍賀(りゅうが) 乙米(おとめ)
声:沢海陽子
龍賀家の長女。
時貞亡き後の龍賀家を束ねる、苛烈な女傑。
龍賀家の栄光を守ることを第一に考え、それ以外の人間を見下しており、夫の克典でさえ無下に扱っている*16
度重なる龍哭と殺人事件に怯え、「次の当主」を選出し、娘の沙代にある「役目」を果たさせようとする。


龍賀(りゅうが) 克典(かつのり)
声:山路和弘
乙米の夫で龍賀家の婿養子。
龍賀製薬の社長を務めており、その縁があって水木は彼に取り入ろうとした。

強欲で尊大な態度、高級洋酒に葉巻、口には金歯、腕時計も金と、古き昭和の成り上がり社長のテンプレのような人物。一方で誠意や情を重んじる部分もあり、やや詰めが甘い。また、村の風習や信仰は重んじながらも、閉鎖的な姿勢を嫌い、未だに余所者扱いされることに不満を覚えるなど、常識的な都会人としての一面を持つ。

肩書こそ「社長」ではあるものの、経営の手腕を利用されるのみで、血の繋がりを理由に龍賀家の実権を握れずにいる。秘薬「M」についても精製以降の工程にしか携われていない。
加えて時貞の遺言で次期当主の座はおろか、龍賀製薬の経営に関する最終決定権さえ乙米に奪われた*18ことに危機感を抱き、沙代との縁談を餌に水木を引き入れ、「M」の秘密を突き止めようとする。


龍賀(りゅうが) 丙江(ひのえ)
声:皆口裕子
龍賀家の次女。
かつては美しい容姿を持っていたが、男と駆け落ちから強引に連れ戻されて以来やさぐれ、酒浸りの穀潰しとなり、かなり印象が変わっている。
水木が来て3日目の夕方、背の高い木の頂上に串刺しにされた死体で発見される。死体の左目はカラスによって啄まれていた。
一見、酒と男にだらしない浪費家というだけに見えるが、一族の呪縛について知った後では、駆け落ちの理由や相手の男が辿った末路などが推察され、がらりと印象が変わる人物。

担当声優の皆口は、映画 妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活ねこ娘、第6期で犬山まなの母・純子を演じていた。


長田(おさだ) 庚子(としこ)
声:釘宮理恵
龍賀家の三女で、現在は村長の長田の妻。
くたびれ、やつれた身なりをした幸薄そうな女性で、息子の時弥が当主となって龍賀家の実権を握ることに狂気的なまでの執念を抱いている。


長田(おさだ) 幻治(げんじ)
声:石田彰
哭倉村の村長で、庚子の夫。
常に飄々とした態度と笑みを崩さず内面が読めない糸目の男。
どこからともなく村の男衆を従えて現る神出鬼没さで、余所者である水木には慇懃無礼に接するが、滲み出る厭らしさを隠そうともしない。
庚子の夫ではあるが、妻よりも龍賀家を牛耳っている乙米に対して忠誠を誓っているようだ。
配下の男衆に人間離れした巨漢が複数いるため分かりにくいが、自身もゲゲ郎より背が高く骨太という、作中屈指のガタイの持ち主でもある。


ねずみ似の少年
声:古川登志夫
龍賀家の下人として仕える少年時の彼。
何にでもこびへつらうが、煽てと金には滅法弱い。
ゲゲ郎とは顔見知りらしく、彼の頼みは断れないようだ。
台本に書かれていた通称は「ねずみ小僧」。


○鬼太郎の母
声:沢城みゆき
ゲゲ郎の妻。
人間が幽霊族を迫害してきたにもかかわらず、人間との共存を望み慈しんでいた女性で、ゲゲ郎にとっても最愛の人でもある。

夫とは違いアクティブで、人間社会にもいち早く適応しており、仕事*21をし、ファッションにも凝り、ゲゲ郎と一緒にデートするなどその生活を楽しんでいた。
ある時夫と生き別れ、現在行方不明。哭倉村にその気配があるというのだが……。

本作での彼女は、原作とは対照的に(両目が揃った)美人。スタッフインタビューによると、そのデザインには第5期の猫娘の容姿が取り込まれている。
その髪色と声と心優しさ*22は、息子の鬼太郎に受け継がれている。

現代

時系列は6期最終回の後、概ね2026年頃にあたる。そのため犬山まなは登場せず。

鬼太郎
声:沢城みゆき
ご存知「自分と異なる物を認められない奴が大嫌い」な、一見クール、実は熱血漢。
現代パートにおいて、ある目的のため哭倉村を訪れる。

村に向かう際、たった一言「お母さん…」と呟いているが*23…?

目玉おやじ
声:野沢雅子
ご存知お風呂が大好きなお父さん。
哭倉村は彼にとって因縁深い土地であり、「ある人物」と会えることを踏んで村まで来た。

ねこ娘
声:庄司宇芽香
ご存知ツンデレねこ姉さん。
鬼太郎親子が特に気を許しているからか、彼らにとって特別な場所である哭倉村に同行している。
山田の恐れ知らずなところに呆れていた。

山田(やまだ)
声:松風雅也
廃刊寸前のオカルト雑誌の記者。
愛する雑誌の最後をスクープで華々しく飾りたいと考え、『妖怪少年ゲゲゲの鬼太郎、その出生の秘密』を記事にしようと、鬼太郎を追い回していた。その挙句に世間から忘れられた因縁の地、哭倉村へと足を踏み入れることになる。
そのしつこさにはねこ娘も辟易としていたようだが、彼の記者根性は本物であり、終盤で放つ言葉は冒頭でのイメージを鮮やかに覆す。

【登場妖怪】

○山嵐
○山颪
○山鬼
○百足
○松明丸
○さがり
○黒眚
小島に侵入した水木を襲った妖怪達。窖から漏れる膨大な怨念にあてられて正気を失っているが、ゲゲ郎に軽くあしらわれる。

○河童
↑の妖怪達から逃げるために船を押してくれた、比較的友好的な妖怪。
哭倉村近辺には少数生息しており、人間が妖怪に襲われそうになる度に助けていたという。

○釣瓶火
水木とゲゲ郎の墓場での飲み会のムード作りをしてくれた火の玉の妖怪。

○狂骨
一件すると骸骨の幽霊に見えるが、その正体は井戸に放り棄てられた人間の怨念が具現化した妖怪。
小島の窖が「巨大な井戸」と解釈され、そこから湧き出た怨念が形になった。
哭倉村に潜む狂骨は優に数百年を超える怨霊が累積された、少なく見積もっても数百年物の類稀な大物だと言う。
哭倉村の因習が原因の、悪意によって踏みにじられた者たちから産まれた結晶である。
本作における狂骨は、その殆どが幽霊族によるもの。
後述の裏鬼道に捕縛され、妖樹・血桜によって血を吸い尽くされて死んだ幽霊族の怨念による結晶体と言える。
狂骨は本来人間と大差ない大きさの妖怪だが、窖全ての狂骨を集結させると、体長数十メートルもの龍と見紛う巨大な狂骨となる。
第一の封印をベースとしているが、依代があれば一時的にそこから一部を引き抜くようにして比較的小規模な狂骨を外界に権限させることも可能。

哭倉村の狂骨は、窖の底にある泉に施された、二重の封印によって制御されている。
狂骨の根源となる怨念が薄らいで霧散することを阻止する為に、半永久的に窖を止め置く。髑髏の塔と神鉾槍で築かれた第一の封印。
そして、狂骨達が抱え込み放つ怨念を反射・蓄積する呪詛返し。窖から地上に繋がる出入口を蓋をする形で施された第二の封印。

これが、極めて強力かつ効率的。
この封印術式であれば、幽霊族の怨念は癒されて薄れることなく蓄えられ続けるため、その肥大化し続ける怨念によって産まれる狂骨の規模と力も増幅の一途を辿る。
その一方で、蓋をした呪詛返しによって、その強化された狂骨の呪詛を受け流しつつ蓄えることが出来る。
そうして、蓄えてより強大になった対幽霊族の力を用いて、強力な狂骨を傀儡にしたり、傀儡にした狂骨に呪詛返しとしての対幽霊族の力を付与して別の幽霊族を捕縛させたり。
こうして龍賀一族と裏鬼道は、対幽霊族特攻の兵器を完成させた次第である。

第6期で解説された鬼道衆の操る鬼道の欠点として「妖怪由来の術も基盤としているため、文明が発展し妖の力が弱まるにつれて、鬼道の力も薄れていった」というものがある。
だが、この封印術式があれば話が別。時代が経ても風化することのない怨念に根差した強大な鬼道を、裏鬼道が独占することが出来る。かつては自分達を狩り立てた本家鬼道衆は、その大半が時を経て弱体化していると目されるので、彼らに対抗する手段としても機能している。

ただし、一連の封印術式は呪詛返しを保つだけの強大な霊力が大前提になり、土地の龍脈といった力や術式の力を借りるにせよ、封印を維持する要である龍賀家当主には相当な霊力が求められると推測される。
龍賀家が近親相姦を繰り返したのも、血を濃縮して強大な霊能者を得なければ、強大になり続ける狂骨に対抗できるだけの封印を保てなくなる、といった切羽詰まった事情もあると考えられる。
龍賀一族と哭倉村の封印は、自家中毒に侵されて長くはもたなかったかも知れない。

【キーワード】

某県の山奥*24に位置する、人里離れた村。
外界とは隔絶しており、娯楽らしい娯楽もなく、村民の大半は村の因習だけを忠実に守り、外界の法律や人間を全く受け付けない。
土着の神を信仰しており、祟りを何より恐れている。
ただ龍賀一族の恩恵かあちこちに電柱が立ち街灯が整備されていたりと、意外と近代的な一面もあり……?

現代では出入口となっているトンネルやそこまでの道すら、ほぼ自然に還って草木に埋もれており、村そのものも丸ごと廃墟となっている。
村の地下に迷い込んだ山田は、日本人形や折り重なった大量の金属ベッドと医療器具、千本鳥居など異様な光景を目にしている。

  • 龍賀家
哭倉村の大地主である名家。当主は哭倉村の土着の神を祀る神社の神主も兼ねている。
製薬業により日清戦争、日露戦争を支え、当主の龍賀時貞は日本の政財界を裏で牛耳っているとされる。
その時貞の逝去により発生した後継者争いが、水木を哭倉村に向かわせることとなる。

  • M
龍賀製薬が密かに開発し、特定顧客のみに卸す。「不死の妙薬」とさえ謳われる血液製剤。
龍賀一族が誇る権勢の礎となった薬であり、人間に抜群の生命力を与え、痛みを怖れず不眠不休で働き続けることも可能とするその効能によって、日清戦争以降の戦闘で日本を勝利に導いてきたと噂されていた。
水木は重役の椅子を約束することを引き換えにこのMの原液の謎を探ることを了承した。
その原液とは幽霊族の血液
窖の最深部には巨大な桜の木があり、その根に捕らえられた幽霊族は生かさず殺さずの状態になり、血を吸い上げられ続ける。
その木から樹液のように集められた血がMの原料となっている。
もっとも、これを直接注入された人間はただ死なないだけの生ける屍となってしまう。
そこで、まず村人が誘拐してきた人間に幽霊族の血液を注入し、その人間の血液を採取することで初めて実用できるMとなる。

  • 幽霊族
人類の有史以前に地上に存在した種族。彼らは妖怪のようなものと自称するが、厳密には旧人類とでも言った存在である。
戦闘力や生命力がとりわけ強いが、温厚で平和を愛する種族だったために人間によって住居を追われ、妖怪と共に狩られるうちに、数を減らしていった。

  • 霊毛組紐
ゲゲ郎の左手首に結ばれている紐。
同じ幽霊族の毛で出来ており、霊力反射のお守りとして機能する。
終盤、多くの幽霊族の骸が鬼太郎の泣き声に反応するかの様にその身を霊毛に変える。
狂骨に襲われそうになるゲゲ郎の妻とそれを守ろうとするゲゲ郎を助ける為に、組紐と融合する形で霊毛ちゃんちゃんこが誕生した。

  • (あなぐら)
哭倉村が要する湖畔の中央にある小島、その中心に位置する巨大な穴。
入り口には巨大な結界が張られており、内部から湧き出る怨念を防ぐ役割を持っている。

  • 裏鬼道
陰陽道にして、第6期にも登場した鬼道衆の分派の一つである。幽霊族滅亡の一因を担っている。
幽霊族を狩り絶滅寸前に追いやってきた妖怪狩りの達人であるが、人の道から外れた悪質な外法を好んで用いた末に本流の鬼道衆から破門にされ、その数を減らして戦後の世では既に滅んだと目されていた。

なお、鬼道衆は原作漫画に登場する敵役だが、TVアニメではかなり異なった存在になっている。ゲゲゲの謎ではこのTVに登場した鬼道衆にヒントを得て裏鬼道の存在を創作している*25



【受賞歴】

第47回日本アカデミー賞、『優秀アニメーション作品賞』を受賞。
センス・オブ・ジェンダー大賞を受賞。
アニメージュ、第46回アニメグランプリ受賞。*26
東京アニメアワードフェスティバル(TAAF)アニメファン賞*27」を受賞。
第55回『星雲賞』のメディア部門ノミネート。
アヌシー国際アニメーション映画祭『コントルシャン部門』ノミネート。



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最終更新:2025年07月16日 21:44

*1 正確には104分59秒。シナリオ時点で120分もの尺があり、「もう少し尺がほしい」とお願いしたところ「105分を超えるのは難しい」と返答されギリギリまで詰め込んだとのこと。

*2 1976年。BGMの作曲を大野雄二が担当しており、『ルパン三世 カリオストロの城』などは実にこの映画のBGM感を色濃く残している。ほかにも『新世紀エヴァンゲリオン』の「黒字に白い大文字でタイトルを表記」という演出や、「スケキヨ」と俗に呼ばれるパロディネタなどにもつながった、いわば現代のオタク文化のご先祖様とも呼ぶべき映画。昭和31年部の序盤の流れは全体的に今作のオマージュである。

*3 1977年。CMの「祟りじゃぁ~~~~!」という声で大変有名になった、同じく横溝正史原作の映画。よく連続殺人ものでおばあさんが発狂して「祟りじゃー!」と叫ぶ演出の元祖といえばこれである。監督曰く「今まで見た映画で一番怖かった」とのことで、この作品のイメージを下地に敷いている。

*4 第6シリーズ第14話で見せた目玉おやじの姿については脚本家曰く、「夢の中だから目玉おやじの理想の姿に美化されたんじゃないか」とのこと。

*5 人間相手には幽霊族の技を使わない様に手加減していたり、狭い場所での戦闘がほとんどだったからか、さすがに指鉄砲までは披露しなかった。

*6 水木プロからの要望による。

*7 監督および木内の談話による。実際に劇中で丙江も彼を佐田啓二に似ていると評している。

*8 時麿は祖父同様沙代を手篭めにしようとした、丙江は時貞の慰みものにされていた事を水木に黙っている事を条件に金を集ろうとした、庚子は次期当主の母となった権力欲から、沙代の自由を奪い、支配下に置こうとしたためにそれぞれ殺されている。

*9 これについては後に古賀監督へのインタビューによれば、沙代はその後も哭倉村に留まっており、時弥を迎えに来たのではなく、一緒に旅立っていったのではないか?と言っている。

*10 バックベアードは世界を征服し得るその絶大な妖力を振るい、この世全ての妖怪を服従させて、人間はその存在すら認めずに、妖怪奴隷へと強制的に変貌させて隷属させるブリガドーン計画を着々と進めていた。そうして自分以外の命や尊厳を一切認めず平然と踏み躙る彼に対して、ちゃんちゃんこの霊毛に宿る歴代幽霊族はかつてない激昂や義憤を見せて鬼太郎に力を貸し、ベアードは鬼太郎に敗れた。時貞自身は脆弱という違いはあれど、その精神性と迎えた顛末は近しいものがある。

*11 死人と魂が入れ替わっている=代わりに収まる体が無い為、追い出された時点で死亡した事になる。

*12 ゲゲ郎曰く「この姿になってしまえば死ぬこともできず、永遠に苦しみ続ける」とのこと。ただそもそもこの男、一度死んでからも一定期間は現世に留まり、マブイ移しに成功して復活しているので生死とか関係ない存在なのだが…

*13 水木は彼の健在を知って心底驚いている。

*14 後のイベントやインタビューで、彼の奇怪な様子は時貞のスパルタ教育により精神を病んだためと明かされている。

*15 長年抑え込んできた欲求のタガが外れて暴発したとも、父親からの洗脳教育で龍賀の女の役目を信じ込まされていたとも考えられる。なんなら時麿自身も女たちと同じ事を父親に強いられていた説すら上がっている。

*16 一方、妹の丙江に対しては情があったようで、彼女の死体を見たときには絶叫し、手を差し伸べていた。ドラマCDに収められた様子からしても、呪われた家の取り纏め役としての重圧を感じながらも、彼女なりに親族に対して情は抱いている。

*17 それどころかシナリオのト書きによれば、実の娘であり妹である沙代に対し、時貞の寵愛を奪った存在として嫉妬していたとされている。

*18 時貞から口約束を取り付けていたが、ものの見事に裏切られた。

*19 日本で初めて運転席エアバッグが搭載された乗用車は1987年発売のホンダ・レジェンドである。

*20 結果的に乙米の仇をとり、沙代に絞殺されかけた水木を助けることにもなった。

*21 タイプライターのキーパンチャー。男性に比べ女性には差別的な待遇が当たり前だった当時においても、実力次第で家族を養えるほどの給与が得られる破格の職業だった。

*22 ついでにゲゲ郎を超えるという戦闘力(脚本の吉野による談話)も。

*23 古賀監督によると、あんな場所でも鬼太郎にとっては、数年を大好きなお母さんと過ごした思い出があるから、ということである。

*24 監督によると「実在しない架空の村だが制作するうえでなんとなくのモデルがある」ということで、ファンの間では岡山や鳥取、長野が候補に挙げられる。

*25 スタッフインタビューによる。

*26 キャラクター部門では水木が1位、ゲゲ郎が2位を獲得、鬼太郎が19位に入賞。声優部門では龍賀沙代役の種﨑敦美が1位、水木役の木内秀信が2位、ゲゲ郎役の関俊彦が4位、鬼太郎役の沢城みゆきが15位となった。

*27 2024年度のアニメーション全417作品を対象とし、ファンの投票により決定。