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239 : 転生八犬士封魔録 ◆l1l6Ur354A : : 2006/06/25(日) 21:58:48 ID:??? [692回発言]
   三章 ~生きた人形~ルート

   江積が最近学園内で起こっている、ある騒ぎについての話を始める。

   「夕方、中庭や校庭から校舎を見上げると、長い髪の毛をしたゾッとするような美人の女子生徒が
   校舎の廊下の窓からこっちを見ている。なんだろうって見返すと、フッと消えちまうんだと。
   その女子生徒はこの学園のどこにも存在しないから、幽霊ってことになってる。見たやつは結構多いぜ。」

   江積本人も目撃者の一人で、しかもその幽霊が知り合いに似ているらしい。
   だが、チラッと見ただけだから、知り合いかどうかは確信が持てるわけじゃないとも言う。

   「知り合いに似ている幽霊か。それは気になるだろうな。
   もともと八犬士探しの有力な手がかりはないことだし、この幽霊騒ぎを調べてみよう。」

   まず幽霊が本当に実在しない生徒かどうかはっきりさせるため、飼葉と江積が調べ
   他の三人は幽霊についての情報収集をすることで決まる。
   飼葉は知り合いについてなにか思い出したらすぐに報告してくれと江積に言うが、
   江積はわかったと口では言いながらも、その表情は沈んでいた。

   幽霊が本物なら学園内で亡くなったか、学園に関わる事件で亡くなったのではないかと考え
   学園内の図書館へと足を運んだ結奈。するとそこでいびきをかいて居眠りしてる江積を見つける。
   呆れながら、飼葉と一緒に幽霊について調べたんじゃないかったのかと聞くと
   それはもう調べ終わった、やっぱりこの学校には存在しない生徒だったと江積は答える。

   お前はなに調べてんだ?と聞かれた結奈は図書館に来た目的を素直に話すが、それに対して江積は
   なにも出てこないだろうと言ってしまう。
   即効で否定した江積を不思議に思って理由を問うが、
   彼はうっかり本心を漏らした自分に舌打ちし、忘れろとしか言わない。
   結奈は明らかになにかを隠してる江積の様子に怒りを露にする。

   「わかった、わかったよ。話してやるから機嫌直せ。
   第一、面白くもない話だけど、それでも聞くのかよ?」

   「先輩が話してくれるのならちゃんと聞きます。」

   「まあ、はっきり言っちまうとな、俺、あの幽霊が誰かわかってるんだ。
   あの幽霊はな、俺の幼馴染に似てるんだよ。似てるってもんじゃねぇ、そのものだって言っていい。」

240 : 転生八犬士封魔録 ◆l1l6Ur354A : : 2006/06/25(日) 22:00:28 ID:??? [692回発言]
   「……あいつ、生きてれば俺たちと同じ高校生だったはずだ。」

   子供の頃に隣の街まで探検に行ったとき知り合い、それから何度か遊ぶようになったが
   学校も違い共通の友人もいなかったため、彼女が病気になっても入院するまで知らなかった。
   そして最後には会ったのは、葬式。

   「あの、えっと、その……。幽霊は美人だって評判ですけど、その人もきれいな人だったんですか?」

   「ガキだったし、美人だったかはわかんねぇ。でも、将来きれいになるってよく言われてたな。
   まあ、少なくともお前よりは、ずーっとかわいかったな。」

   「……。思い出は美化されるものですよ、先輩。」

   「言うじゃねぇの。まあ、辛気くせえ空気出されるよか、全然マシだけどな!」

   しんみりした雰囲気から、明るい雰囲気に戻りつつあったとき……

   「見つけたぞ、このドロボウ女!」

   人形を抱えた男子生徒が現れ、腹話術で結奈を泥棒扱いする。
   男子生徒は1年の藤岡で、常に人形を持ってるために学園でも有名な生徒だと江積が説明する。

   「腹話術までやるようになったとは、さすがに知らなかったけどな。」

   藤岡の後を追いかけ、彼を止めようとしている香澄に事情を聞くと、
   友人と会話をしてた最中に藤岡が急に教室に入ってきて、結奈はどこだと騒ぎ出し
   ここまでやってきたのだという。

   「俺の大事な人形、盗んだんだろ!」

   身に覚えのないことで責められた結奈は反論するが、何を言っても藤岡は耳を貸さず
   「人形を返せ」の一点張り。
   ついに怒りが頂点に達した藤岡は、人形を動かして襲ってくる。

   (あかねちゃんと同じ……敵なの!?)

   まだ三章の途中ですが、今日はここまで。 


244 : 転生八犬士封魔録 ◆l1l6Ur354A : : 2006/06/26(月) 20:29:22 ID:??? [692回発言]
   「うわぁ! 人形が、人形がっ!」

   襲ってきた藤岡を江積と撃退すると、人形を傷つけられた藤岡は錯乱したまま、その場から逃げ出す。
   飼葉への連絡を香澄に任せ、結奈は江積と藤岡を追いかけることにしたが
   藤岡の姿をなかなか見つけられない。かわりに廊下で女子生徒が倒れてるのを発見した二人は
   慌ててその場へ駆けつけるが、少女のそばへ近寄った江積は急に言葉を失う。

   彼女の胸にはナイフが刺さっているのに、なぜか血が一滴も流れてなかった。

   「……なんだ。よく見たらこれ、人形ですね。
   もしかして、これが藤岡くんの探し物でしょうか?
   これだけの人形ならとっても大事にしてるだろうし、あれだけ取り乱してもおかしくないですよ。」

   「………。」

   「……先輩? あの、どうしたんですか?」

   口を開いた江積は予想外のことを言い出す。
   こいつは怪我人だから、早く保健室に運ばなければいけない、だからお前も手伝えと。

   「こいつは人形じゃない、生きてるんだ!」

   自分の言葉を信じない結奈に痺れを切らした江積は、一人で人形を抱えて保健室へ行ってしまう。

   (どういうことなのかさっぱりだけど、とにかく先輩を追わないと!)

   保健室へたどり着き、校医の村崎に急患として人形を見せる江積。
   突然人形の診察を頼まれた村崎は話がわからず、戸惑いを見せる。
   そこへ飼葉と香澄もやってきた。

   人形は生きてるという自分の主張を信じない周りに対して、
   とにかくこいつに触ってみろと言い出す江積。
   彼の言うとおりに村崎や飼葉が人形に触れてみると、確かに体温があり、脈もしている。
   事情を聞かれた江積は、俺にもよくわからない……でも
   この人形は知り合いにそっくりで、しかもそいつは心臓の病気で死んだのだと答える。

   結奈はその知り合いが、図書館で話してくれた幼馴染のことだと気づき、
   だからあんなに取り乱したのかと納得がいく。

   「……わかった。目の前に怪我人がいるんだ。助けるのが私の務めだね。」

   江積の答えを聞いた村崎は人形を治療すること意思を見せ
   治療に必要な物を集めるくるよう、皆に指示する。結奈も手芸用の糸を探してくることにした。

   治療が終わった後、結奈が保健室に向かうとそこには江積しかいなかった。
   ずっと目を閉じたままで息もしていない「生きた」人形を見つめながら、江積は
   幼馴染の思い出を結奈に語る。

   「なんでいまさら、あいつが……俺と同じように年を重ねて、
   着れるわけねぇ制服着て、ここにいるんだ?
   これ、藤岡の仕業なのか? だとしたら……俺は……。」

   (藤岡くんの仕業としても、目的もどうして先輩の過去を知ってるのかもわからない。
   本当に……なにが起こってるんだろう?)

245 : 転生八犬士封魔録 ◆l1l6Ur354A : : 2006/06/26(月) 20:34:54 ID:??? [692回発言]
   再び人形を診察した村崎は、薬が効いて落ち着いたようだと診察の結果を告げる。

   「薬が効くということは、やっぱりこの人形は生きてるんですか?」

   「わからない。私の印象だと人のふりをしている人形、という感じだね。
   人形が無理やり、人のふりをさせられている。そう言えばいいのかな。
   ……君たちはこの人形の正体を知っているんじゃないかな?
   それだけじゃない。先日のプールの一件も、なにか事情があるんじゃないかい?」

   村崎から問われ、返事に窮してると、突然、部屋が大きく揺れ動き
   怪我をした袴田が駆け込んでくる。
   袴田は僕ひとりではやっつけることができなかったと謝る。

   「見つけたぁ! 俺の人形! 俺の人形!」

   袴田に続いて、たくさんの人形を連れた藤岡が現れ、
   やっぱりお前が人形を隠してたんだと結奈に襲い掛かる。

   とっさに村崎が庇ってくれたために、結奈は怪我をしないで済むが
   村崎から押し倒されてるような状態になり、肌に触れてしまう。
   だがその瞬間、過去に数度体験した、ある感覚に襲われる。

   「この感じ……! 八犬士の封印が解けた?」

   先生が八犬士だったのかと驚く江積たちに対し、事情を知らない村崎は当然ながら困惑する。
   ところが、暴走した藤岡が説明する時間を与えてくれるはずもなく
   説明は後にし、藤岡から生きた人形を守るため、村崎も他の犬士と共に戦うことになる。

   結奈たちに負けて力が尽きた藤岡は気絶し、それと同時に
   生きた人形もしおれて普通の人形に戻った。

   「藤岡ぁ! お前、これはどういうことなんだ、説明しやがれ!」

   殴りかかる程の剣幕で、気を失ってる藤岡に詰め寄る江積を、村崎が冷静に止める。
   そして藤岡や痣のことなど、さっき起きた不思議な出来事について尋ねるのだった。

   「いまなら……話してもらえるかな?」

   一連の事情を聞いた村崎は、八犬士として協力してくれることになったのだが
   結奈は彼にお礼を言いながらも、どこかすっきりしない気分だった。

   (四人目の犬士が見つかった。でも、なんだかスッキリしない。これでよかったのかな……。
   とにかく、藤岡くんが目を覚ましたら詳しいことを聞いてみるしかないか)

246 : 転生八犬士封魔録 ◆l1l6Ur354A : : 2006/06/26(月) 20:35:34 ID:??? [692回発言]
   夜の屋上

   「報告は、以上です。また、先ほど藤岡健吾の反応が消えました。いかがいたしますか?」

   「放っておけ。それで予定通りに事は進む。多少陳腐な演出を施してやったが
   しょせん駒のひとつ。奴がどうなろうと、どうでもいいことだ。」

   「はい。おっしゃる通りです。」

   三章終了

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最終更新:2011年05月15日 01:37