小さい頃から、わたくしはかなりふまじめでした。
どういう巡り合わせか、わたくしは所謂お金持ちの家のお嬢様をやっております。いつの時代もどの創作の中でも、お嬢様というのは沢山習い事をさせられるようで、ピアノや茶道、書写、単純に勉強など沢山の家庭教師をつけられましたが、あまり面白く感じず、その多くをさぼっておりました。作法、言葉遣い位は米原家に恥じぬようにと、川崎──わたくしの家政婦に叩き込まれましたのですが。
どういう巡り合わせか、わたくしは所謂お金持ちの家のお嬢様をやっております。いつの時代もどの創作の中でも、お嬢様というのは沢山習い事をさせられるようで、ピアノや茶道、書写、単純に勉強など沢山の家庭教師をつけられましたが、あまり面白く感じず、その多くをさぼっておりました。作法、言葉遣い位は米原家に恥じぬようにと、川崎──わたくしの家政婦に叩き込まれましたのですが。
わたくしには、小学生の頃から友達と言えるものがありませんでした。まだ幼く、反抗すると言いましょうか、そういったこともございませんでしたので、放課後は素直に習い事を受けておりました。そのせいでしょうか、遊びに行こうと言っても、いつも予定が入っていると伝えていて、わたくしをつまらない人だと思ったのか、皆離れていかれました。……そういうことにしておきたいと、思っているのかもですが。
友達がいないというのに、お稽古を抜け出してどこに行っていたのかと言われると、少し困るものがございますね。友達のいない子供と言えば、……まあ大概ゲームやアニメ、漫画なんかのみで育ってしまったりするわけでございまして。これだけふまじめでも、お金だけはもらえてしまうもので、さまざまな物を買い漁っては、見て読んで遊んでをしておりました。
小学校に友達がいないのですから、中学生になってもそうそうそれは変わることはございませんでした。むしろ、元クラスメイトが同じ学校にいたもので、「高嶺の花の孤高のお嬢様」という噂は広がって、余計に避けられることが増えてゆきました。ここまで来ると、オタクみたいな性格を晒すこともできないと言いますか……、まあ臆病な性格になってしまっていたということなのでしょう。
中学一年の夏でありましたでしょうか。いつものように家庭教師が来ることを忘れたふりをして町を歩いておりますと、ゲームセンターなるものを見つけました。かれこれ10年以上この辺りに住んでいることになっていたはずですが、少し道の外れの方にあり、小さいお店でしたので、今まで気づいておりませんでした。
店に入りますと、多種多様な機械の数々が並んでおりました。わたくしは既にゲームを山ほどプレイしておりましたが、どれも見たことがないものばかりで、とてもわくわくいたしました。しかしながら、ここがどういう場所なのかもよくわからなかったもので、恐る恐る店員様に遊び方の心得を尋ねた覚えがございます。
その日は色々と遊び、そのどれもが新鮮なものでありましたが、特に「maimai」というゲームが気に入りました。わたくしの好きなアニメの曲が沢山遊べる、というだけでとても胸が高鳴りました。そもそもからして、音楽ゲームというジャンルが初めてで、その中毒性の片鱗に触れてしまったというのが、大きそうですが。
かくして、わたくしは用もなく町をうろつくことは減り、代わりに、例のゲームセンターにまっすぐ足を運ぶことになっておりました。ここまでハマることになったのには、今までやってきたゲームと違い、上達に全く天井が見えないというところが大きいのでした。アニメ曲をひとしきり遊ぶと、オリジナル曲にも手を出し始め、イベントなんかにも参加するようになっておりました。
まあそんなことを繰り返していると、すぐに時間は過ぎていくもので、所謂受験シーズンと呼ばれる時期になっておりました。まともに勉強していれば、良い高校に入れる頭をしているのに、と川崎に嘆かれましたが、まじめなんてわたくしには合っていないのでございます。
そうして決めた私立高校の受験日、わたくしの人生は、思いもよらないことで大きく転換を迎えるのでございました。
まじめでないとは言っても、なんだかんだ当日は緊張するものでして。前日は五回も荷物確認を済ませたのですが、当日の道端でもやってしまう始末。今振り返ってもやりすぎと思います。そんなことをやっていると、受験票がカバンにないことに気づきまして、顔がさーっと青ざめたのを覚えております。ああ、バカみたいに何度も確認しているからそれのせいで失くしたんだとか、思えばこんなこともそんなこともと自分を悔やみ始めた、そのときでした。
「あのー、受験票、あなたのですよね?」
振り向いたら、めちゃくちゃ可愛い顔があった。
赤いリボンをつけた頭がポニーテールになっていて、わたくしより小さい背丈の女の子。それ以上に言うことなんてない、素朴な見た目のはずですのに、心底心配そうな顔でわたくしを見るその瞳に、一瞬で惹かれました。
受験票なんてどうでもよくなって、形容しがたい可憐さの前に、わたくしは立ち尽くしておりました。こういうことを、一目惚れというのだろうと、はっきり分かったのです。
「あ、あの~……」
「は、はい! この節は誠に有り難く存じておりますの!」
「は、ははは……」
わたくしの完全に上がってしまってる口調に苦笑いしながらも、
「受験、頑張りましょうね!」
という、笑顔の一言に、完全にオトされました。
通りすぎていく彼女のカバンには、「あかり」と書かれたタグがついておりました。
そして、ちらりと見えた彼女のミュージックプレイヤーの画面に、「Garakuta Doll Play」のジャケットが見えて、その瞬間。
(うん、わたくしも、頑張りますわ……)
彼女に会うため、全力を尽くすことを決意したのでございました。
「……のんちゃん」
「かり……あ、かり……」
「花音ちゃん!」
「あかり……?」
目を開けると、恋をした人の顔がございました。……え、これあかりの膝……?
「そんなに私の膝、気持ちよかった?」
脳が情報を処理できておりません。
「ベンチに座ってたら急に倒れかかってきて……最近なんか疲れてそうだったし、別に良いかなと思ったんだけど」
「あ、ありがとうございます……?」
「どういたしまして……かな?」
なぜか互いに疑問系の会話をして、ひとしきり笑う。
「どうする? ゲームセンター行っちゃう?」
「当然ですわね」
「あはは……」
いろんな境遇はあるけれど、これだけは言える。
わたくしがあかりに出会えたことは、最高の巡り合わせだっていうことですの!