こなた×かがみSS保管庫

決意表明

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匿名ユーザー

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机の三番目の引き出し、彫刻刀や色鉛筆などの下。隠すように入れてあったそれを取り出す。
ハートマークのついた封筒と一通の便箋。宛名と差出人、それからただ一言だけ。
それらを確認するとかがみはため息をついた。生まれて初めて書いたラブレターは全然中身がない上に役目を果たせてないまま。
別の方法で告白はできた。いや、勢いに任せて言ってしまった。でも結果から言えば伝えることができて良かった。後悔はない。
甘い妄想とは違って現実では望んでいた返事は得られなかったけど、最悪の事態は回避できたし、可能性も残されているから十分すぎる。
好きと言われて嬉しいと、こんな自分でも好きだと、そう言ってくれたこなたをますます好きになっていく。
あの日から一月経とうとしている。スキンシップを増やしてみたり、優しくしてみたり。時にはいじわるして困り顔のこなたを楽しんだりもしたけど。
毎日が楽しかった。こなたと過ごす時間が幸せだった。好きな人と一緒にいるだけで満たされてしまう。
椅子に座り直してペンを手に取る。思い浮かぶかけがえのない日々と、胸の奥で大きくなった気持ち。
人生で初めての恋は同性の女の子。悩み諦めかけたりもしたけれど、今は全て受け入れられる。
様々な想いを書き綴って最後の一文。好きや愛してるじゃない伝えておきたい言葉。
『こなたと出逢えて良かった』
書き終えたかがみは満足そうな笑みを浮かべて眠りについた。


「つかさー、そろそろ起きなさい。待ち合わせ遅れるわよ」
翌朝、休日ということでいつもの四人で遊びに行く約束をしていた。習慣として早起きしたかがみは朝食を済ませた後、つかさを起こしに部屋越しに呼び掛ける。
「あ、お姉ちゃんおはよう」
すんなりと部屋から出てきたつかさは寝癖をつけてのほほんとした笑顔を見せる。遅れるなんて言いながらも本当は余裕があるので大丈夫だろう。
顔を洗って寝癖を直して、と告げて背を向けるかがみ。自室のドアノブに手をかけたところでつかさが呼び止めた。
「あのねお姉ちゃん、今さらだけど今日私行けないの」
いつもみたいに起こしてくれてありがとうとか言うかと思ったら。弾かれたように振り向く。
「え、なんで?今日のこと楽しみにしてたじゃない」
「えーっと、急な用事が入ったから?」
「なんで疑問系なのよ……」
残念そうな素振りはなくなぜか照れ笑いを浮かべるつかさ。天然だとは思っていたがちょっと意味分かんない。
「行けない理由はなんでもいいの。こなちゃんにごめんって伝えておいてほしいな」
「理由がないなら一緒に行けばいいじゃない。みんなでいるから楽しいんだし」
「うん。でも……」
言い淀むつかさが何を考えているのか思い当たる節が全くない。第一つかさらしくない、四人の集まりを大事にしないなんて。
それでも譲れない何かがあるのだけは理解できた。仕方ないが、こなたには上手く伝えておこうと思う。……そう言えばみゆきは?
「えっとね、お姉ちゃん。怒るかもしれないんだけれど……」
「何よ?と言うか理由もなしにドタキャンするほうが怒りたいけど」
「ご、ごめんね。あの、さ、お姉ちゃん」
寝間着姿で右耳の辺りの髪がぴょんと跳ねたまま。ぼんやり寝ぼけ顔だったのが不意に真剣な面持ちに変わる。思わずかがみの背筋も伸びていた。
「お姉ちゃん、こなちゃんのこと好きでしょ」
「え……」
まだ覚醒していなかったのかつかさの言葉の情報処理が遅れる。おかげで早朝から近所迷惑な大声を上げずに済んだ。
ややあってかがみの顔面がヒートアップする。つかさは嬉しそうに笑みを浮かべる。からかいではない、純粋に喜んでいた。
なんで、どうして、とか。平気なの、おかしいと思わないの、とか。色々と聞きたいことはあるのに、恐怖心が勝って声にならないでいた。
真っ赤になったかがみが少し震えているのに気付いてつかさはその両手を包みこんだ。自分のために決して弱みを見せなかった姉にできること。
「お姉ちゃんとこなちゃんならきっと大丈夫だよ。私も、ゆきちゃんも応援してるから」
「つかさ……」
「最近のお姉ちゃん、こなちゃんのことばかり見てたから。あと、夜に電話してるの聞こえちゃった。ごめんね」
最初にこなたと友達になったのはつかさだった。だからちょっと嫉妬してた時もあったけれど、大好きな姉と大好きな親友が仲良しというのが嬉しかった。
みゆきはもう少し早く気付いていたらしい。つかさが相談を持ちかけた頃には二人の味方になるという意思を固めていた。
「だからお姉ちゃん今日は二人で楽しんできて。こなちゃんなら絶対大丈夫だから、頑張って」
二人の現在の微妙な距離感を話したことはない。告白したことを伝えるなんて恥ずかしいし、何よりどう思われるか怖かったから。
曖昧な関係のまま。もちろんこなたの言葉を信じているけれど、万が一この想いがおかしいと思うようなことがあったら。そう思うと押し続けるのは間違っているのではないかと。
そんなかがみの心の内を知り得ることはできなくても、つかさには支えることができた。二人の未来が明るく輝いたものにと願う。
妹と親友の気持ちを知ったかがみは昨夜書き上げた恋文を鞄に入れて家を出た。


意を決して待ち合わせ場所に着いたはいいが、想い人は今日も今日とて遅刻してくる模様。
腕時計で時間を確認してはため息を吐き、携帯を開いて連絡を取るべきか否か。こんな日に開口一番怒鳴りつけるのもどうだろう。
家を出た時の胸の高鳴りはすっかり収まって、未だ姿を見せないこなたにまず何を言ってやろうかと。かがみのボルテージが漸次上昇中。
「ごっめーん、遅れた」
「おっそい!何時だと思ってるのよ!?」
15分の遅刻。待ち合わせ10分前に到着したかがみにすれば約30分の待ちぼうけ。別に待ちくたびれたって感じはないけど。
駆け寄ってきたこなたは遅刻の弁明をする余裕もなく浅い呼吸を繰り返していた。ほんのり赤くなった頬と、申し訳なさと走った直後のせいか、涙目で見上げてくる。
「……で、なんで遅れたのよ」
ぶっきらぼうに言ったのは怒りが理由じゃなかった。視線は明後日を向いている。ちょっと込み上げてくるものがあったので。
そんなかがみを不思議に思いつつ、ようやく落ち着きを取り戻したこなたは事情を説明し始める。
「ちょっと出かける準備に手間取ったんだよ」
「またあんたは……って、何に?あんたが手間取るようなことって?」
「失敬だなかがみんは。私だって色々気を遣ってるんだよ」
こなたはむくれて見せた後、かがみに見せつけるようにその場でくるりと一回転。珍しくスカート姿で黒のニーハイと翻ったスカートの間の肌色が。
「絶対領域~、なんてね」
「え、あ、いや悪くないわよ、うん。こなたは可愛いんだから、もっとそういうのに積極的でいるべきよ」
「鼻の下伸ばしながらじゃなかったら素直に喜べるんだけどネ」
やれやれといった表情のこなた。カーディガンの下はキャミソールで鎖骨とか、ワンポイントのアクセサリーが顔を覗かせる。
「うるさい。って、あれ、こなたそれって」
「大事にしようと思ってたらどこに仕舞ったか忘れちゃってね。いやあ、探すのに時間かかっちゃったよ」
ごめんねと舌をちろり。それから改めて今日の自分を見て、とかがみを見つめてくる。
心の底から可愛いと思った。らしくない恥ずかしさからか少し照れた表情も、思わず抱き締めたくなるくらい愛しい。
いつまでも見ていたいくらい。じっくり観賞しているとこなたがますます赤くなり、そっぽを向かれた。ところで気付いた駅前の往来で。
つられたように真っ赤な顔を見られないよう視線は斜め上。似合ってる、なんて蚊の鳴くような声で言ったところでどうしようもないな。


「つかさがさ、メールしてきたんだよ」
どういう風の吹き回しか尋ねようとしたらこなたのほうから説明しだした。少し落ち着こうということで今は近くの公園のベンチに腰を下ろしている。
たった一行では理解できず続きを促すかがみ。いつもより2割増しで愛らしいこなたとは努めて視線を合わせないようにした。我慢が利かなくなりそうだったから。
「お姉ちゃん、本気なんだよって。もちろん私のことも信じてるからって付け加えてさ。みゆきさんも似たようなこと言ってたし、私なりに一歩進めてみようと思ったから」
自分勝手で認められない想い、なんて考えていた時もあった。でも本当はこんなにも支えられていた。感謝する、と同時に。
「なに、それ。もしかして私の気持ちはバレバレだったわけ?」
「あー、まあここ最近のかがみは私も持て余し気味だったし」
抱きつかれた時に離れろと言いながら腰に手を回そうとしていたこととか。寄り道を一旦は断るけど実は楽しみにしてることとか。からかわれたりツッコミを入れたりする時顔は笑っていることとか。
全てみんなに気付かれていた、なんて。
「いや、だからさ、そういうの承知の上でなんだよ。つかさとみゆきさん、それから私も」
頭を抱えていたかがみが顔を上げる。真剣な瞳でこなたが見つめていた。
「かがみにチャンスをあげる。せっかく二人きりなんだから、デートしようよ。最高の一日にして、私をその気にさせてみてよ」
ニンマリと小憎らしい笑みを浮かべてこなたが言う。それでも甘い響きに溺れて怒りとは別の理由で頬を染める。
「絶対に好きって言わせてみせるから。覚悟しなさい」
恋心を自覚したあの日から幾度となく夢見てきた光景を、現実のものにすべくかがみは意気込んだ。



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  • GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-11-30 09:26:03)


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