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あたしがのっちの前で、ベソをかいてから3日経った。
その日から、のっちはちゃんと学校へ行くようになった。
大学内では、近寄ってくる人とイチャコラしなくなった。

逆にあたしとべったりいるようになった。
これはあたしが仕向けた訳じゃない。
のっちが自主的にあたしにくっついてくるようになった。
お昼はもちろんの事、のっちは自分が授業がない時間でも、あたしが受ける講義をこっそり一緒に受けている。

のっちが常に隣にいるのは嬉しいけど、周りの視線が怖いし、痛い。
一緒にいた友達も妙によそよそしく接してくる感じがするし。

なんでのっちはあたしと一緒にいるようにしてるんだろ?
でもそんな事、面と向かって訊けないよ。

「ん?あ〜ちゃん、どしたん?食べないの?」
「えっ・・・あぁ、ちょっと考え事してたんよ」

「そうなんら。その、から揚げいらなかったら、貰おうと思ったんだけどw」
「ええよ。あげるけぇ」
「マジで!?ヤッタ!!ありがとう」
今は、のっちとふたりで大学の食堂でお昼を食べてる所。
のっちはあたしから貰ったから揚げをおいしそうにほうばってる。

そして、のっちといるとあたしに向けられる視線がすごい。
のっちはそんな事には気付いてなくて「あ〜ちゃん」「あ〜ちゃん」とあたしを呼ぶ。

急にのっちがあたしに甘えてきて、正直戸惑ってる。
なんで急に甘えてくるようになったんだろ?

ほんと、のっちの思考や行動は予測不可能。

この間までは、どうでもいいみたいな態度だったのに、今はべったりの甘えん坊な態度。
そんなコロコロ変わると、どう対応していいかわからなくなる。



後ろから「のっち!!」と呼ぶ声が聞こえた。
「はい?」
のっちは気の抜けた声で返事。
振り返ると、のっちを呼んだ子があたしのすぐ後ろに立っていた。

「何で携帯出ないの!?あたしずっと連絡してたんだけど!!」
あれ?このやり取り、前に同じような事があったような・・・。

「へ?そうなの?」
のっちは自分の携帯を取り出して、カチカチいじってる。

「あー、ごめん。気付かなかった・・・。えっと、○○ちゃんだっけ?」
「あたしの名前△△だけど・・・のっち、ひどくない?」
のっちはその子の名前を言い間違えた。

「ごめんごめん。で、なんか用なの?」
「なんか用って・・・のっち、昨日の夜会うって約束してたでしょ?忘れてたの?あたしずっと待ってたんだから・・・」
のっちが冷たい態度で接したから、その子は泣いてしまった。

あたしも好きな人に、名前を間違えられたり、冷たい態度で接しられたら、きっと泣く。

あたしはまた修羅場になるんだろうなと思って、席を外そうとした。
あたしが立ち上がると、のっちはあたしの腕を掴んで首を横に振った。
これはきっと「あ〜ちゃんは、そこにいて」ってサイン。
あたしはそのサイン通り、また椅子に座った。

「今、この子とお昼食べてるから、話があるなら後にしてくれない?」
「最低・・・もう、いいよ!!」

あーあ、まただ。
また、女の子を悲しませて泣かせて怒らせたよ。
これで何度目よ。
呆れるわ。

でもそれを見てホッとしてる自分がいる。
絶対あぁはなりたくないと思ってる自分もいる。

「また、最低って言われとったね・・・」
「そうねw」

「もう、やめれば?そういうコト・・・」
「ん?そういうコトって?」

「・・・夜遊びとか、体だけの関係とか・・・」
「んー、そうね〜。あ〜ちゃんがあたしと付き合ってくれるなら考えようかなww」

「はぁぁぁ!?」
「ぎゃはは。冗談だよ。冗談wwあ〜ちゃんは、ちゃんとしたマトモな人と付き合うべきだよwwあたしみたいなのに引っかかっちゃダメだよw」



なにそれ・・・。
ショック。
冗談で付き合ってって言ったのもショックだったけど、のっちはあたしの事はそういう目で見てないって事なの?

ちゃんとしたマトモな人ってなに?
誰よ?

のっちは、どういうつもりであたしと一緒にいるの?
本当にただの友達として?
あたしだけ舞い上がってるだけなの?

「のっちはあたしといて楽しい?」
「へ?うん。チョー楽しいよ?どした?急にw」

「あたしも一緒にいて、楽しいよ・・・」
「うお!!デレあ〜ちゃんキター!!ヤベ!キュンときたんれすけどww」

「のっちのバカ。噛むな!!」
「ぎゃははwwあ〜ちゃんが怒ったーーwww」

あたしが素直になると、のっちはおどけてふざける。
あたしが本音を言うと、のっちはスルリとかわす。

「やめるよ」
急に真面目なトーンの声。
顔つきもキリっと変わった。

「え?」
「夜遊び。最近、体がキツくなってきたし、財布もキツくなってきたし、やっぱりあ〜ちゃんといた方がいいもん」
それは本音なの?

「ほんまに?」
「ほんまじゃw」
その笑顔は信じていいの?



その日の夜から、本当にのっちは夜遊びに出かけなくなった。
夜はのっちとテレビ見たり、ゲームしたり、おしゃべりしたり忙しくなった。
おかげで寝る時間が短くなった。
でものっちといる時間が増えた。
眠かったけど楽しかったし、嬉しかった。

「ねぇ、あ〜ちゃん。鞄の中から使い捨てカメラが出てきたんだけど使う?」
「カメラ?別に、使わんよ?」
「あと、3枚残ってるんだよねー」

カシャ。

「あっ!!酷い!!今、撮ったでしょ!?」
「でへへ。不意打ちショット、いただきましたww」

「もう貸してよ。あ〜ちゃんが撮るけぇ」
「ダメダメ。あ〜ちゃんの写真もっと撮りたいもんww」

カシャ。

「あー!!勝手に撮るな!!」
「怒ったあ〜ちゃんも可愛いよww」

「もう!!変態じゃ!!」
「ひでーww変態呼ばわりですか?」

「あっ。残り1枚になっちゃったww最後の一枚は一緒に撮ろ?」
のっちはあたしの肩を抱いて、頬がくっ付くか、くっ付かないかのギリギリのラインで顔を寄せてきた。

「はーい。イチ足すイチはぁ?」
のっちの長い腕が伸びてあたしたちに向かって、シャッターを押す。

あたしは今までで一番の笑顔を作って写った。
そしてこれが、最初で最後ののっちと一緒に写った写真だった。

チャラいのっちが他の子たちよりも、あたしを選んでくれたのが嬉しかった。
あたしの一言で夜遊びを止めてくれたのが、嬉しかった。
でもひとつだけ気になった。

どうして、あたしを選んだの?
のっちもあたしの事が好きなの?
のっちがあたしの事を好きなら、あたしは喜んで抱かれるよ。



でもこの時はただただ、ハノ字眉で情けない笑顔を向けてくれるだけだった。
思えば、この時期が一番楽しかったかもしれないね。

やっぱり、超えちゃいけなかったの。
ダメだったの。

この時ののっちは、それをわかってたのかな。
だからやっぱり・・・ああなっちゃったのは、あたしのせいなのかな。

3年経って、やっと気付いたよ。

気付くのが遅すぎたあたしは、バカだ。





最終更新:2009年08月01日 22:47