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PV撮影の仕事も無事終わった、約一名を除いて…。
今にも死にそうな顔してフラフラで足元も覚束ない感じ。
(露骨に態度に出過ぎよ、のっち…。)
明日は久々のオフ。仕方ない今夜はのっちの相手をしてやるか。
あ〜ちゃんを見習って少しはあたしも素直に感情を吐き出してみよう。

帰り道の途中、おもむろに携帯を取り出しのっちにメールを打つ。
『今夜暇ですか?少し時間を下さい。』
なぜかかしこまった文章を送ってしまい少し後悔した。
軽い感じでさらっと言ってしまえばよかったのに重い空気をわざわざ自分で作ってしまった。
(やば、送信しちゃったっ。)
と携帯を見つめていると間を開けずにメールを受信した。
開くとそれはのっちからで珍しく返事が早い事に驚いた。
『はい、暇でし。』
(………文字でも噛むんじゃね。)
『んじゃ、今から行くね。お土産何がいい?』
なるべく普通の内容を心掛けたつもり。
でも返事がさっきの感覚で返って来ない事に少し不安になった。
(えっ?なんか変な事送ったかな…。ま、まぁいいや。とりあえず急ごう。)

あたしは歩く速度を速めた。
それと同時に胸の鼓動も速まって行くのがわかる。

(今夜、ちゃんとあたしの気持ちを伝えよう。のっちが大好きな事を。)


のっちからの返信はないまま目的地に到着してしまった。
(どうしよ、やっぱなんか買いに行こうか…。)
いまさらながら臆するあたし。

今までのっちから返信ない事なんて山ほどあった。
今日はこんなにもそれが気になってしょうがない。
(まさか、寝オチ?いやいやゆかじゃないんじゃけぇそんな早くは寝れんじゃろ。)
多分、覚悟を決めた今だから些細な事が気になって仕方ないんだ。
どっかでネガティブな自分が不安にさせる。
(もう、いい。早く話してしまってスッキリさせよう。嫌な事から逃げても逃げきれんしね。)
そう決意してチャイムを鳴らす。

ピンポーン。

ものの数秒で玄関のドアが開く。

ガチャッ。

ドアが開いたそこには少し緊張してる顔ののっちがいた。
K『こんばんは。』
N『あ、は、はやっかったねぇ。』
K『何その微妙な噛み具合。』
出来るだけ普通に振る舞った。
K『中には入れてくれんの?』
と我ながらぶりっ子過ぎなんじゃないかと思う角度で首を傾げて見せた。

N『あっ!ど、どうぞどうぞっ』
と言いながらのっちはスペースを作り私を中へといざなう。

K『お邪魔しま〜す。』
(わざとらしい……?)
のっちの横を摺り抜け、我が家のような足取りで迷わず進むあたしに怖ず怖ずと着いてくる犬が一匹。
(ヤバイ、またイジワルしたくなってくるじゃん。)
しょぼくれた犬の姿にあたしのS心はくすぐられたけどなんとか抑え込む。
K『返事がなかったけぇ、お土産買ってきとらんよ?』
N『え?!あぁ…、ごめん。』
ここだけを切り取って見ればいたって普通。
でも昼の撮影の流れが違和感を倍増させている。(なんか白々しくて余計変かな……。)
変ついでに気になった事を突っ込んでおく。
K『のっち、メールでも噛んどるよ。』
N『マジでっ!?うわ〜ホンマじゃ……。』

うわぁ…、また一段としょぼくれちゃったよ。




ゆかちゃんが家に来るらしい。
私は部屋で正座しながらそれを待っている。自分ん家だけどくつろげる訳もなくて……。
(なんか大事な話なのかなぁ…。)

メールの感じはなんか重たかった。
(こんなヘタレな私に愛想尽かしてバイバイって事だったらどうしよ…。そうだったら早過ぎるよっ。しかもお土産って冥土の土産っ?!)
なんてあれこれ考えて悩んでたら家のチャイムが鳴った。

ピンポーン。

(えっ!?まだお土産返信してないっ。)

ドタバタ走りながら玄関へ急ぐ。

ガチャッ。

ドアを開けるとゆかちゃんがいた。
K『こんばんは。』
N『あ、は、はやっかったねぇ。』
K『何その微妙な噛み具合。』
クシャッとゆかちゃんの顔がほころぶ。

(あぁ……、やっぱ可愛いなぁ。)
なんて見とれていると
K『中には入れてくれんの?』
とゆかちゃんが可愛く首を傾げて言った。
N『あっ!ど、どうぞどうぞっ』
と言いながら私は体を少しずらした。

K『お邪魔しま〜す。』
(あれ?普通な感じ………?)
私の横を摺り抜け、我が家のような足取りで迷わず進むゆかちゃんについて歩く。
(なんだろ遊びに来ただけ?いやいや、あの流れでそれはないよのっち。)
自分で自分にツッコミを心の中でいれてみた。
K『返事がなかったけぇ、お土産買ってきとらんよ?』
N『え?!あぁ…、ごめん。』
(なんか普通に会話出来てない?)
昼の撮影の空気を考えると逆に今の方が不自然で怖い。
嵐の前の静けさでない事を祈りながらリビングへと到着した。
到着するなりゆかちゃんからの突っ込みを浴びせ掛けられた。
K『のっち、メールでも噛んどるよ。』
N『マジでっ!?うわ〜ホンマじゃ……。』

もう、違う人間に生まれ変わって人生やり直したい……。


N『なんか飲む?お茶でいい?』
K『あ、うん。なんでもいいよ。』
N『OK、じゃちょっと待ってて。』

私は動いてないと不安で仕方なかった。
いつ引導を渡されるのか気が気でなかったし、話を切り出されるのを無意識で阻止しようとしていたのかも知れない。
そんな事してもムダなのにね。

N『はい。』
コトッ。
コップを置く手が少し震えていた。ゆかちゃんに変に思われないよう取り繕う事に必死で、

N『今日は撮影押しちゃったねぇ。』
K『誰かさんがNG連発するからねぇ。』
(しまった、地雷踏んだっ!)

取り繕ってるつもりが墓穴を掘る私。
(なんで私ってこんなグダグダなん?!泣きたくなってきたよ………。)
何も言えないでただ固まるしかない私。
重苦しい沈黙が私達を支配する。


(何か言わなきゃ、何か言わなきゃ。)
まるで呪文のように頭をループする。
(でも何を言えばいいの?また地雷踏んで自分の首を絞めるだけなんじゃ…。でも何か言わなきゃ!)
そう決意して唇を動かし始めたその時だった。

N『あ、あの…。』
K『グダグダなのっちも大好きよ。』
N『えっ!?』
私の言葉を掻き消すゆかちゃんの柔らかい声。
意外すぎる言葉と何の前触れもないタイミングに頭が真っ白になる。

K『ゆかはグダグダでもなんでものっちが大好きじゃけぇ、無理して背伸びせんでもええんよ。』
N『ゆかちゃん…。』
(ヤバイ、不意打ちすぎて泣きそうっ。)
別れの言葉を覚悟してたのに、予想もしてない愛の告白。
私は知らない間に涙を溜めていた。

K『のっちがゆかにカッコイイとこ見せたい気持ちもわかる。けど空回りしてグダグダになっても心配せんでいいんよ。』
いつの間にかゆかちゃんは私の頭を撫でていた。
K『のっちがどんなあたしでも好きなように、ゆかもどんなのっちでも大好きなんじゃけぇ。』
最高の甘い笑顔で私を見つめてくれるゆかちゃん。
その笑顔で張り詰めてた私の緊張の糸が切れる。
N『ゆかちゃん……。』
呟いて私の目から涙が一粒零れ落ちた。


−Side K−


さっきからのっちは落ち着かないのか何もないのに立ったり座ったりしてる。
心の中ではどんな事考えてるの?
嬉しくてソワソワしてるって感じじゃないよね。
何かをごまかすような打ち消そうとするような。

N『はい。』
コトッ。
目の前に置かれるお茶の入ったコップ。
それを持つ手は震えていた……。
(のっち…。)
胸が少し苦しくなった。あたしのせいでのっちが震えてる。
あたしがのっちを苦しめてる……。
そう思うとあたしも言葉を失ってしまった。
N『今日は撮影押しちゃったねぇ。』
のっちが精一杯の普通を装う。
あたしもそれに合わせる事が少しの優しさになるのかな?
K『誰かさんがNG連発するからねぇ。』
いつもの私を意識しすぎてホントにいつも通りの受け応えをしてしまった。
癖って怖いよね。
(あ、間違えた。今日はいじめに来たんじゃなかった…。)
案の定、のっちは固まりグダグダな雰囲気を漂わせ始める。
しばしの沈黙。今日何度目だろう。
前は沈黙も苦痛じゃなかったのにね。
昨日までのあたしならここで一気に畳み掛けていただろう。
でも今日は伝えに来たから。不安に思わなくていいんだよって。
N『あ、あの…。』
K『グダグダなのっちも大好きよ。』
N『えっ!?』
意を決したのっちの唇の動きを遮るタイミング。

のっちは鳩が豆鉄砲くらったような顔してる。
いつも目はくりくりしてるけど一際大きく見開きゆかを見ている。
K『ゆかはグダグダでもなんでものっちが大好きじゃけぇ、無理して背伸びせんでもええんよ。』
N『ゆかちゃん…。』
そのこぼれ落ちそうな瞳にこぼれ落ちそうに涙をいっぱいためている。
K『のっちがゆかにカッコイイとこ見せたい気持ちもわかる。けど空回りしてグダグダになっても心配せんでいいんよ。』
その瞳があまりにも愛しくてのっちの頭を撫でながら、あたしの気持ちを素直に伝えた。
K『のっちがどんなあたしでも好きなように、ゆかもどんなのっちでも大好きなんじゃけぇ。』
N『ゆかちゃん……。』
呟いたのっちの瞳から涙が一粒こぼれ落ちた。
K『ごめんね、不安にさせて。あたし、真剣なのっちの目が苦手でちゃんとのっちの気持ち受け止めてなかった。』
そう言いながらギュッとのっちを抱きしめる。
K『のっちに見つめられると、どうしていいかわからんくなるんよ。自分に自身がないから…、どう応えてあげたらいいのかわからんくなっていつも逃げてしまってた……。ごめんね、のっち。』
気付けばのっちはボロボロ涙を流していた。
(こんなにも好きでいてくれるんだね…。)
愛しさが溢れ出してくる。
やっぱりあたしはのっちが大好きだ。その瞳も唇も体も、全てが狂おしい程に愛おしい。

のっちの全てが欲しいの。だからいっぱいあたしに頂戴。
そのかわりゆかをあげる。あたしの全てはあなたのもの……。


−Side N−


K『ごめんね、不安にさせて。あたし、真剣なのっちの目が苦手でちゃんとのっちの気持ち受け止めてなかった。』
そう言いながらギュッと私を抱きしめてくれた。

K『のっちに見つめられると、どうしていいかわからんくなるんよ。自分に自身がないから…、どう応えてあげたらいいのかわからんくなっていつも逃げてしまってた……。ごめんね、のっち。』
よしよし、と背中を摩りながら子供をあやすように優しく囁くゆかちゃんの声に私はボロボロ涙を流していた。
K『でもだからってこんなに不安にさせちゃいけんよね。ホントにごめん…。』
ゆかちゃんはそう言いながら体を離し、私の頬に手を添える。
私はクシャクシャになった顔を見られたくなくて顔を背けようとした。
K『ダメ、よく見せて?のっちのカッコ悪いところ。』
N『やだよ、恥ずかしいじゃん……。』
視線だけ反らすので精一杯。
K『………ゆかもそんな気持ちじゃったんよ。』
(あぁ、そっか。私を嫌いな訳じゃなく照れ隠しだったんだね……。)

N『のっちよりよっぽどゆかちゃんの方がツンデレじゃん。』
拗ねたような口調にゆかちゃんは優しく微笑んでくれる。
K『うん、そうみたい。ゆかも初めて知ったけど、のっちにはツンデレみたいね。んっ!』
冗談まじりにクスクス笑ってるゆかちゃんに私は不意打ちでキスをした。

なんか、負けたような気がして悔しくて最初から私の全てをぶつけるような激しいキスでゆかちゃんの自由を奪う。

私なりのささやかな抵抗と主導権確保の手段。
私の下でもがくようにしていたゆかちゃんも次第に素直になっていく。

N『ゆかちゃん、大好き。』
K『ん……、あたしも。』
伏し目がちなその瞳も、今なら不安に思わない。
N『今夜、泊まってく……?』
K『帰りたくない…。』
そんな可愛い言い方されたら……。
私の理性なんて軽く吹き飛んでしまうよ…。


(続く)






最終更新:2008年10月12日 19:53