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戯作・終熊猫世話物語 ~其一 御仕舞衆ノ事~

パンダム杯の直前。Duplicate Eroica VS 御仕舞衆の後の事。

キキョウの部屋。上半身裸でベッドにうつ伏せたキキョウ。

「さてこんなモンかなっ! まだ暫くは痺れるかもしんねェが、じきにそれも引く。
 そしたら、骨のズレも筋肉のコリも神経のマヒも全部治ってるはずだぜ?」

ケンジが頭や首の汗を手拭で拭いながら言う。
大仕事だったのか、半纏の腋下や背中に大きな黒い汗染みが出来ている。
「・・・噂に違わぬ鬼按摩でした。撃墜される時のほうが楽でしたよ?」
キキョウがゆるゆると身を起こす。ケンジは―視覚がないので―気配を察して帰り仕度の手を止めた。
「こいつァたまげた驚いた… オィ大丈夫なのか?」
さすがに立ち上がれはしません、とキキョウ。
「へえーっ 俺の按摩を受けてすぐ起き上がったのはキキョウちゃんが初めてだぜ!」
言われたキキョウが少し微笑む。

「休める時に休んでおく、ってのも大事だぜ? 無理すんなよ。
 それに、あんまりケロッとされてちゃ鬼按摩の名が廃っちまうもんでよ?」
ケンジは茶化す。
「で、いい加減に前隠せよ?」
ああ、とキキョウ。
「見えるのか?」
気配だけよ。とケンジ。
「…グラサンは今、法定12ヶ月点検に出してるんでね。」
「そう、か…」
キキョウは気の無い返事をする。


「さ・て・と。 じゃあ、行くわ。」
「ん… 済まないがやはり動けない。ここからで。」
「いいって事よ! じゃあな!」
「…ああ兄貴!!」
キキョウが声を張る。

「…ありがとう。」
ケンジはドアを開けながら、振り向かずに右手を挙げて応え、部屋を出て行った。


これが、白拍子のキキョウが鬼按摩のケンジに会った最期の事である。

*


戯字洞。

「アラストルさんっ! なんかもの凄く空気が重いんですけどっ!」
「ぬぅ。。。拙者に振らないでくれソシエ殿。重いどころの話ではござらん。
 さっきから嫌な汗が全身から滲み出しておる。堪らんわ。」

クズがいつも仕切をする時と同じく中央に座っている。
顔つきは弛緩し切っているにも関わらず、脚はガタガタと激しく貧乏揺すりをしている。
見苦しい事この上ない。

クズは、以前と人相がすっかり変わってしまったことについて、
キキョウの霊力を受託するうちに全身が霊子レベルでほぼオーバーライトされた、と説明した。
御仕舞衆のメンバーでこれが理解できたのは戒とイエスマンだけだった。

「そいつぁえらく興味深い話だねぇクズの御頭!
 つまりキキョウさんのエネルギーがそれだけ大きかったって事かい?
 それとも毒素ってか不純物みてぇなモンがあって、そいつに御頭がヤラレタって事かい?」

戒の問いに対してクズは、男の子だった時の、とか、村が一つ消えた、などと意味不明な答えしかしなかった。
訳が判らないところは相変わらずである。

そしてクズの左右に一人づつ、見慣れない女がいる。それが重圧の元だ。
ただそれぞれに重圧の種類が違う。

右側の女性は、日本人形のような古風な出で立ちだ。幼いようにも老けたようにも見え、年齢がまったく読み取れない。
また、その身から放つ重圧は重く、ねっとりとしている。
まるで性交直後の部屋に知らずに立ち入ってしまった時に感じるような、妖しくて猛々しいモノだ。

左側の女性は、いかにもキャリアウーマンといった風情のキリリとした雰囲気だ。
ただそれが度を越しているのか、実際にキャリアが長いのか、仕草の端々にこれみよがしの余裕が感じられる。
すなわち威圧感だ。

さらに言えば、日本人形は不敵な微笑を浮かべ、キャリアウーマンは逆に酷く機嫌が悪そうだ。

「ぱんぱかぱ~ん! 本日のメインイベント~!!」

突然クズが奇声をあげた。
「こちら皆さんから見て右手の方、熊猫シティ領主のご閨房よりお出でいただきました、エステルの方様~~~。
 そしてそして、左手の方、熊猫シティの平和を表で司る御目付役より、ヨーコ様~~~。
 ・・・
 二人に今度の大戦を助けてもらうんってことで! ヨロシク!!」

「あらー! お偉い人ばっかり来ちゃいましたね、アラストルさんっ!!」
「ソシエ殿お願いだ、拙者に振らんでほしい。
 拙者はあのお二方を見知っているが、なぜこんなことになったのか判らん。
 いやいやまさか、裏で共に仕事をする事になろうとは。。。」

「そこな二人!」
エステルが発声した。厳かだ。
「苦しゅうない。もそっと近う寄れ。」
おすおずと二人が前に出る。
「ここな女子がなにやら言いたい事があるらしい。聞いてやれ。」
目線で示した先にはヨーコが居る。
クズは、我関せずという風で、物凄く指を突っ込んで鼻毛を抜いている。
アラストルとソシエは、ヨーコの方に向き直った。

「私は…」
ヨーコがゆっくりと口を開く。と見るや一転、二人を睨み付けて叫んだ。
「私は確かに今は『おひとりさま』だが! ちっとも焦ってなどいないっ! 判ったかっ!!」

「はあああああ? …アラストルさんっ!?!?」
「だから拙者に振らないでくれとっ!!! んー大丈夫なのか御仕舞衆。。。。
 クズ殿、いや御頭、これは? これからどのように?!」

「以上!! 解散~~~ン♪♪♪」

「ええええええええええええええっ!?」

エステルの、今度はコロコロコロと少女のような笑い声と
ヨーコの去る、ヒールが鳴るガスガスという足音が聞こえた。

「…拙者が気張るしかないのか。。。」
とアラストルが嘆き、
「応援します! 頑張れっ!!」
とソシエが明るく言った。


「あ痛ててっ抜けたっ! …こんなの喰らってるようじゃ俺も不甲斐ねぇな。
 パンダム杯、勝てるかねぇ? あ゛?」

クズの指にはEroica戦で受けた銃弾があった。

――――――――――――――――――――――――戯、戯、戯々々の戯――――

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最終更新:2009年11月04日 22:17
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