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食客のレインボウの夜

熊猫シティを東西南北で区切った南の区画のさらに南の外れ。
人通りがほぼ無いとも言えるその場所に一軒の酒場がある。
今回スポットライトを当てるのはその酒場・・・・・・ではなく、
その酒場を毎日同じ時間に同じ席で利用してるある二人組みのお話。


「んー、やっぱここの焼き鮭おにぎりは美味しいわねぇ、いくらでもお腹に入りそうだわ」
「レインボウ様、食べた量が貴方様の今月の給金で払える額を超えていらっしゃるのですが」
レインボウと呼ばれた少女の前にはおにぎりが4個乗った皿の他に、お代わりをしたと思われる皿が20枚近く積んであった。
周りの客たちも見慣れた光景であるのか、特に注目することも無く仕事の愚痴だの今の政治がどうなのといった世間話を続ける。
しかし、ちょっと待って欲しい。
この酒場で提供される「焼き鮭おにぎり」というのは、大人の拳大に握って軽く焼いたおにぎりを、皿に8個のせ、たくあんなどの4品を付け合わせたものを料理として出す。
これは、酒を飲みに来た人たちが最後にガッツリ腹に入れたいという要望の元から考案された、3~5人前用メニューなのである。
おにぎりをほうばっている少女は16,7ぐらいに見える顔立ちをしており、
身長も17歳女子の平均身長と比べてやや低い。
しかし、深めに被ってる帽子から溢れるきれいな亜麻色の髪と、食事を美味しそうに食べてる姿、
周りを元気にさせる陽気な声から見た目以上に元気が溢れている少女だということが分かる。
それに対し、少女の向かい側に座っている女性は落ち着いた雰囲気を漂わせ、10人に聞けば9人が綺麗と返すであろう容姿をしている。
そしてハイム家特有の女中の格好が彼女を更に目立たせている。

「それでレインボウ様、いくらソシエお嬢様推薦の食客である貴方でも、こうもハイム家の資産を使って飲み食いされては困ります」
「いいじゃない、貴方だって相伴に預かってるでしょ。それにここの料理美味しいって褒めてたじゃない」
「それはそうでございますが、だからといって貴方様の食費は通常の人の数十倍。
 一般家庭で言えばありえないエンゲル係数を叩きだしてるのでございますよ」

====================================天の声======================================
この酒場の「焼き鮭おにぎり」は1皿700G
一般家庭では月2~4万Gの食費がかかるが、レインボウは毎日30皿食べるので
ハイム家のエンゲル係数は名家といえども無視できないものになっていたのであった。
700G×30皿×30日=ガクガクブルブル
================================================================================

「ははは、相変わらずよく食べるねぇ君は。一体何処に入ってるんだい」
「あ、店長こんばんは。何処に入ってるかと聞かれてもそれは乙女の秘密ですよ」
「こんばんは、店長。いつもすみません、ご迷惑ばかりおかけして」
「いやいや、こっちこそ毎日これだけ大量に注文してもらってありがたいよ。
 お客様は神様だって言うけど、本店のほうじゃこんなに繁盛してないからね」
「しかしレインボウ様の食事をいつも割り引いていただいてる身としては・・・」
「それ以上いいっこなし。最初に出した条件通りお得意様になってもらってるしね。
 っと、他にも注文が入ったからもう行くね。ではごゆっくり」
「はーい、ありがとうございまーす。あとおにぎりお代わりー」
近所の奥様方に好青年と評判の店長を前にしても、食事を続けるレインボウ。
まだまだ色気より食い気なのであった。


既に夜も更け始めて大通りさえ人がほとんどいなくなった時間。
レインボウとセツカの二人組みは談笑しながら歩いていた。
「ふう、今日も食べたわねぇ・・・・・・満足♪」
「レインボウ様、食事をなさるのはいいのですが、やはり毎日こんな調子では」
「もう、聞き飽きたわよ。第一、ハイム家の食堂じゃ他の使用人たちが食べる暇も無いほど私の料理を作るのが忙しいって言うから、
外まで食べに来てるんじゃない。必要経費と割り切りなさいよね」
「はぁ、その必要経費がかつてないほどだからこんなに頭痛ませてるんですよ。
 あの店長様がサービスしてくれていなかったら今頃どうなっていたやら。
 この前もソシエお嬢様に見せた食費の帳簿で散々怒られたんですから・・・・・・」
「まあ、でも流石は白の酒場の分店ってとこね。
 あの組織が運営してるだけあって入ってくる情報も新鮮かつレアだわ」
その言葉と同時に二人の空気が変質する。
常人には分からないほどの変化だが、逆にそれが二人の戦闘者としての能力の高さを示しているとも取れよう。
「では、早速帰ったらレポートの提出のほうをお願いします」
「分かってるわ、安心しなさい。私の耳は30人の声だって同時に聞き分けるし、聞いた事だって重要なことなら絶対忘れない。
 だから貴方たちも私を雇ってるんでしょ」
「ええ、貴方の情報を扱う能力は疑うことを必要としないほど正確ですからね。
 しかし、やはり腑に落ちないのはあの組織がスパイに気を配らないということですね」
「正確には泳がされてるのよ。気付かなかった?あの店長、私の気配だけでどの情報を持ち帰ってるか把握してるのよ。
 流石は歴代のトップに名を連ねただけのことはあるわね」
「・・・・・・・・・・・・そんなことが、いえ、報告にあったとおりならあの組織なら(ぶつぶつ」
「もう、いい加減そんな辛気臭い顔はやめなさい。いつも元気に明るく快活に!
 じゃないとチャンスも婚期も逃すわよっ」
「なっ、私の婚期などレインボウ様には関係ないじゃないですか。大体ですね貴方様だって・・・」
「言ったわねぇ、明日の昼を楽しみにしてなさい。ひぃひぃ言わせてあげるんだから!!」

こうして彼女達の夜は終わる。



おまけ

「で、先代様は敵を招きいれてるわけだ。だから僕は分店なんて反対だったんだよ」
「まあそう言うなよ。鮮度が高く目新しい情報を手に入れようとするならそれぐらいのリスクはあってもおかしくないさ」
「安心して、この馬鹿は私が黙らせておくから。ほら、あんたもそんなとこで落ち込んでないで働きなさい!!」
「はは、・・・も元気になったね。あの頃よりいい顔だ」
「あの馬鹿にはずっと頭悩まされっぱなしですけどね。じゃあ明日の定期連絡でまた」
「ああ、またね・・・・・・・・・・・・やれやれ、あの二人も仲がいいんだか悪いんだか。
 いや、きっといいんだろうね。兄さんには敵に塩を送るなって言われるだろうけど、
 まあこんな生活もありだし苦労するのは彼らだしね。
 引退した僕は面白おかしく見物させてもらおうか・・・・・・明日も楽しみだ」

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最終更新:2010年05月13日 14:12
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