ベクトル量

"大きさ"と"向き"を併せ持つ量。単一の数値では表せず、扱いには一定以上の数学の知識が必要になる。
"大きさ"はスカラー量と同じものの、"向き"の扱い方や表記は状況により数種類使い分けがあり、慣れない内はややこしい。
主に何次元か(直線上か、平面上か…)というところで扱いが分かれる。

例:速度
ある物体の速度という場合、大きさ部分は3km/h、向きは北向きなどと表記する。
この物体の上に乗って3km/hで移動したとしても、合せて6km/hとは限らない。どちら向きに移動するかに依るからである。
詳しい計算は速度以降で紹介する。

ベクトル量の表記について

"向き"の扱い方や表記は何通りかあり、それぞれ長所短所がある。

1."北向き"など、どちら向きかを言葉で表記する
例えば、『北向きに3Km/h』という。
東西南北や上下左右の組み合わせはよく使われる。話題になるベクトルの向きが2次元までで扱いきれて、かつ単純な場合には、この書き方で済ませる事も多い。普段日本語で言う感覚にも近くわかりやすいが、微妙な向きを表現できない、数学との対応は都度考えなくてはいけないなど、複雑な問題を考える場合には使いにくい。

2."+"など、記号で表記する。
例えば、『北向きを正の向きとする』と宣言したうえで、『+3Km/h』という。
この時の+は増減ではなく、「正の向き」=北向きである事を表しており、-と書けば負の向き=南向きを意味する事となる。つまり、『-3km/h』と書けばこの場合「南向きに3km/h」という事を意味する。この表記方法の+や-は四則計算で使うものとほぼ同じように扱えるため、数学との対応が分かりやすく、文字数も少なく済むが、基本的に1次元(直線上)での問題・計算にしか対応出来ない。
高校物理では2次元(平面上)以上の問題も1次元(直線上)の問題の組み合わせと解釈することで、計算そのものはこの考え方を元にする事がよくある。

3."進行方向から30°左向き"など、角度をまじえて言葉で表記する
1の書き方のバリエーションともいえる。微妙な向きも正確に表記でき、あくまで日本語なので比較的わかりやすい。単に角度を表記するだけではわからないので、基準となる向きが必要にはなる。ベクトルの計算には三角比を利用した方法もあるため、角度が表記してあるとその計算がしやすい利点がある。ただし、3次元以上のベクトルの向きはやや表現しにくい。

4."(0,3)"など、数学のベクトルの表記をする。
例えば、x軸が東向きを正、y軸は北向きを正、目盛は1km/h刻みと定義すると、例の速度は大きさを含め『(0,3)』と表記できる。この方法はベクトル同士の和や積等の処理が分かりやすい上、3次元以上のベクトル量にも対応できる(※大学レベル)。高校までの物理ではやや出番が少ない。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2015年04月01日 14:03