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放射能漏れ「生活今まで通りに」

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放射能漏れ「生活今まで通りに」



 東京電力福島第1原子力発電所の事故で、放射性物質(放射能)への動揺が広がっている。水道水や農産物からは暫定基準値を超える放射性物質が見つかり、被曝(ひばく)の相談も増えた。そんな中、放射性物質や放射線医療の専門家らが集まった「福島原発災害チャリティー講演会」(主催・医療放射線防護連絡協議会)がメルパルクホール(東京)で開かれた。専門家らは「健康被害のリスクはきわめて低い」「正確な知識を持ってほしい」と訴えた。

 講演会では、専門家の立場から放射線防護について勧告する国際放射線防護委員会(ICRP)の委員、丹羽太貫・京都大名誉教授が基調講演を行った。放射性物質について説明し、福島県の住民も他都道府県の住民も健康被害を受けるリスクがきわめて低い理由を科学的に説明した。

 また現在、1ミリシーベルトとされている年間被曝限度量についても「100ミリシーベルト以下では、健康に影響はないというのがICRPの公式的な見解だ」として、見直しを議論すべきだという見解を示した。

 このほか、4人の専門家が講演を行い、その後、丹羽氏らとパネル討論を行った。会場には医療関係者ら約150人が集まり、パネリストとなった講演者らに質問した。

 また、募金も行われ、参加者から義援金計24万4538円が寄せられた。福島原発に関連する機関や事故の対処に努める機関に送られる予定。

パネル討論の詳細は以下の通り。

■母乳も大丈夫


 会場の参加者「被災者から『乳児に母乳を飲ませているが、放射性物質が母乳に蓄積されないか』と相談を受ける。『母乳が不安ならミルクに変えなさい』という報道もある」

 菊地透氏「母乳を与えるべきでないというニュアンスなら、それはウソ。母乳はすばらしいもの。お母さんが放射性物質を取り込んだとしても、お母さんの体がフィルターになっているので、母乳の放射性物質のレベルは下がる。それに、そもそもお母さんの体に取り込まれる放射性物質自体も少ない」

 大野和子氏「(放射性物質の母体からの)母乳への移行率は、4分の1程度といわれる」

 参加者「福島県の牛から放射性物質の基準を超えた生乳が出たということだが、福島県に住むお母さんも同じ空気を吸っている」

 香山不二雄氏「牛で放射性物質がどのように吸収されたか。福島県の空気に現在、どれくらい濃度があるか分からないが、(呼吸器ではなく)消化管から吸収されたのではないか。(母乳に蓄積という話は)女性の母乳にダイオキシンが含まれていたという問題から類推して出てきたのかもしれない。ダイオキシンは(人間の体に含まれる脂などに溶けやすい)脂溶性物質だが、放射性物質はそういうことはなく、(母乳における)濃度が高いことはない」

 清哲朗氏「放射性ヨウ素は分子量が大きく、重いので地面に落ちるのではないかと思う。空気中にいつまでも漂っているという考え方には賛同しかねる」

■日常通りに


 参加者「私は助産師で、普段から育児製品を煮沸して消毒するよう勧めている。煮沸は安全か」

 菊地氏「放射性物質は煮て濃縮されるということはない。水中にあるものだから、熱すると気化するだけ。今までやっている通りやってもらえばいい」

 大野氏「放射性物質は水に溶けているわけではなく、混交しているだけ。濃縮されていくということはない」

 菊地氏「このほか、洗濯物を外に干していいかとか、外で履いた靴はポリ袋に入れるとか、よくメディアで言われている。専門家がコメントしているものもあるが、『余裕があれば…』という前提で少しコメントすると、その部分だけが大きく掲載されてしまう。私は日常通りにやっていくのがいいという考えだ」

 参加者「行政機関や研究機関などで、発表される(放射性物質などの)数値が異なったり、後から修正されたりする。何とかならないか」

 菊地氏「そのために今回のようなシンポジウムをしている。専門家集団が共通の認識を持って動くようにすべきだ」

 清氏「そして、私たち専門家団体がそれを周知していくことが重要だ」

■汚染といえるか


 司会・中村仁信氏「原発の近くまで行って正確な報道をしたいというマスコミや、もっと近くまで行って被災者を助けたいというボランティアもいる。私は被曝の基準値1ミリシーベルトは低すぎるのではないかと考えている」

 丹羽太貫氏「『汚染』という言い方も気になる。コンタミネーション(汚染、汚染物質)というと捨てるものというイメージで、われわれはすぐにレッテルを貼ってしまう。同じように、このレベル(の放射性物質の濃度)で、福島県の人を『被曝者』というとおかしくなる。それをいうなら、『日本国民が被曝者』『世界中が被曝者』といわなければならない。『汚染』『被曝者』という言葉は軽々しく使ってもらいたくない」

 参加者「しかし、自然界には存在しない(人工的な)放射性物質が出ているのだから、『汚染』と言わざるを得ないのではないか」

 丹羽氏「『汚染』という言葉は強すぎる」

 参加者「野菜から検出された放射性物質は、健康影響とはほとんど関係ないレベルということだが、出荷制限、摂取制限が行われている。そうならないために何かすべきではないか」

 大野氏「専門家が阻止すべきということだが、これから、容認できる放射性物質の濃度を決めていかなければならない。(ほかの農産物にも暫定基準値以下の放射性物質が含まれていることが知られ)、私たちも一般の人から、『こんなに含まれているなんて、隠していたでしょう』といわれる。まずは、あらゆるものに含まれていることを多くの人が知っていることが重要だ」

◆講演者ら


 丹羽太貫・京都大学名誉教授

 香山不二雄・自治医科大学教授

 清哲朗・元厚生労働省医療放射線管理専門官

 大野和子・京都医療科学大学教授

 菊地透・医療放射線防護連絡協議会総務理事

 《司会・進行》中村仁信・日本医学放射線学会防護委員長


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