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Place to stay

ash

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振りほどかれた腕と、シャリスが入っていった扉を交互に見る。
なんか妙に慌ててたっつーか…逃げてった?
不自然に思ったけど、今は置いとこう。
とりあえず沸き続けてるお湯を止めないと。
欠伸を噛み殺しながら立ち上がろうとして、柔らかい何かを踏んだ。

足元に視線を落とすとクリーム色の毛布。
そういえば、確か寝る前にかけて寝たような…。
同時にこれがシャリスの手から落ちたことも思い出した。

…かけなおしてくれようとしてたのか?

状況から考えて、寝首掻こうとしてたとは思えないし。
俺のことなんか大して気にかけてないと思ってたけど…案外優しいんだな。
少しシャリスに対する認識を変えながら今度こそソファから降りた。

暖炉から薬缶を下ろして2つのカップにお茶を淹れる。
片方を一口飲んで、身体の中に広がる温かさに安堵を覚えた。
暖かい部屋に居るとは言っても身に沁みた寒さに身体は堪えてるらしい。


隣の部屋を軽くノックして返事を聞く前にドアを開けた。
シャリスは何処か強張った表情をしてる。

なんだ、分かりやすいところもあるんじゃん。
どんな事態でも冷静で、無感動無表情を貫いてたのに。
こんな些細なことで動揺してるなんて。
何とか無表情を取り繕おうとしてる様子が分かって、笑いがこみ上げてきた。
でも笑えばきっと機嫌を損ねるだろうから耐えないと。
不機嫌そうな様子でも感情が動くさまは見ていて楽しいけど、流石にな。

「はい、お茶。さっき淹れようとしてたんだろ?」

耐えようとしたけど、声は少しだけ笑いの余韻が含まれてた。
それに気付いたのかシャリスの表情が少しだけ険しくなる。
けれど照れ隠し、と思えば大して怖くは感じない。

「さっきは毛布サンキュな」

実際にはかけなおされる前に俺が気付いたみたいだったけど。
でも気持ちが嬉しかった。

「…僕は」
「俺、寒いの苦手だから嬉しかった」

何か言いかけようとしたシャリスの言葉をさえぎって軽く続ける。
不満げな表情からして否定しようとしたってところだろうから。
礼なんてただ受け取っておいてくれればそれで良いし。

「シャリスって、無感情な奴かと思ってたらそうでもなかったんだな。
 今みたいに感情出してくれる方が俺は好き」

書庫から出る寸前に笑って告げて扉を閉めた。



鞘から剣を抜くと、刃が室内光を反射した。
今回の騒動では鞘から出してないせいか刃には一点の曇りもない。

ソファに腰掛けたまま1、2度剣を振るった。
暖炉の薪が爆ぜる音に混じりヒュ、と空を斬る音が室内に響く。
手に馴染む感覚に、やっぱり慣れ親しんだものが一番だと再認識した。
達人ならば武器の良し悪しなんか気にしないのかもしれないけど、生憎俺はそこまで熟練してない。
剣を取り戻すまでの心許無さを思い出して溜息が漏れた。

今後、武器をとりあげられるような場所には行かないようしよう。
気をつけなくとも普通に生きてればそんな機会は早々あるものでもないけど。

「手入れ、しとくかな」

下手すると今夜は戦闘になるかもしれないし。

時間を確認すれば夜まではまだ時間がある。
ついでに装備一式確認して補充も…いや、街での買い物はできそうにないから補充は無理か。
ひとまず床に放ってある鞄を引き寄せて中から手入れの道具を取り出した。


武器の手入れ、というのは割と好きだ。
武器というのは見ようによっては命を奪うことができる無機物。
けれど自分の命を…仕事時は俺だけでなく人の命を護ることになる相棒でもある。
だからこそより慎重に、集中して最良の状態にしておかなければならない。


現在の手持ちの武器である剣とナイフの手入れを終え、それぞれを鞘に収める。
剣の柄にはめられたコアが暖炉の炎を受けて真紅の輝きを放つのを眺めた。
ディゼバ石とかいう鉱石に、母さんが俺のために魔力をこめた石。
これだけでも十分な力を持っているのは俺が一番良く知ってる。
でも、右手の「雪の結晶」の秘める「禁忌の力」っていうのはきっとこれ以上なんだろうな。
手入れの邪魔になるからと革手袋を外したから、ふとした瞬間に甲の魔石が目に入る。


剣を振るえば、コアを使って魔術を行えば命を奪うことができる。
奪いたくないなら振るわなければ良い。使わなければ良い。
なら使い方のわからない「力」はどうするべきなのか。


「かといって調べるのも面倒だし、調べて分かるならシャリスが突き止めるはずだしな」

ずっと本見て調べてたらしいシャリスの姿を思い出す。
魔術にも詳しいらしいシャリスに分からないなら俺に分かるわけない。

まぁ良いか。
革手袋をはめなおし、思考を切り替えて此処を出る準備を始めた。






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