【side:Chal】
当てもない旅路。
アッシュが提案したのはアッシュの故郷でもある西国サイルスだった。
父の蔵書の中に目ぼしいものがなかった以上期待は出来ないかもしれないが、他に行く当てもない。
アッシュが提案したのはアッシュの故郷でもある西国サイルスだった。
父の蔵書の中に目ぼしいものがなかった以上期待は出来ないかもしれないが、他に行く当てもない。
少し考えた後僕は頷いた。
「……出来れば夜のうちにここを離れた方がいい。少し休んだら発とう。」
そう言って治療道具をしまうと、ついでに段々と薄くなっているアッシュの血の残った跡を雪を払ってかき消した。
……この寒さの中では少し休んだところで疲れは取れないだろう。
アッシュの怪我もある。
本当ならば少し休みたいがそのうちに追っ手に追いつかれたのでは意味がない。
出来るだけ死角にになりやすい場所で、一時の休憩だけ取る。
アッシュの怪我もある。
本当ならば少し休みたいがそのうちに追っ手に追いつかれたのでは意味がない。
出来るだけ死角にになりやすい場所で、一時の休憩だけ取る。
「……なぁ」
「…何?」
「…何?」
不意に口を開いたアッシュに視線を向ける。
アッシュはちらりと自分の手を見てから呟くようにいった。
アッシュはちらりと自分の手を見てから呟くようにいった。
「……どうして、蘇生や呪殺は禁忌なんだ?」
それは独り言のようで、もしかしたら答えなんて求めてなかったのかもしれない。
けれど、僕は同じように小さな声で答える。
けれど、僕は同じように小さな声で答える。
「……倫理的には人の命に直接関わるからだと言われてる。
しかし、一部の見解では力の源に問題があるとも言われていたらしい。」
「力の源?」
しかし、一部の見解では力の源に問題があるとも言われていたらしい。」
「力の源?」
アッシュの問いに小さく頷く。
「…普段使う魔術は、自然に働きかけそれを魔力を解して具現化することで発動する。」
小さく言葉を切るとまっすぐアッシュを見る。
訝しげな視線とかち合った。
訝しげな視線とかち合った。
「だけど、……呪殺や蘇生は違う。」
直接生命を失わせたり、与えたりする呪殺や蘇生。
それは自然の摂理に根本から反する。
……普段使っている魔術とは、力の質が大きく異なるのだ。
そして、人の生命を左右できるのは、それと同じ量の生命力とそれを他者へと変換する多大な魔力。
このどちらも伴っていないと発動しない。
それは自然の摂理に根本から反する。
……普段使っている魔術とは、力の質が大きく異なるのだ。
そして、人の生命を左右できるのは、それと同じ量の生命力とそれを他者へと変換する多大な魔力。
このどちらも伴っていないと発動しない。
「ディアン、さっき魔石が発動した時のことは覚えてる?」
「………ああ」
「………ああ」
そう聞くと、心なしかアッシュの顔が強張るが、アッシュは小さく頷いた。
「……ディアンも感じたはずだ。
魔力と体力を根こそぎ持っていかれるような感覚を。」
「………」
魔力と体力を根こそぎ持っていかれるような感覚を。」
「………」
先ほど使ったと思われるその禁忌の力が発動できたのは、"雪の結晶"と呼ばれる多大な魔力を秘めた魔石が、その必要な魔力と過分の生命力を負荷しているからだろう。
そうでなければ魔力どころか生命力まで空っぽになって僕もアッシュも生きてはいない筈だ。
……その魔石に人格がある、なんていうおとぎ話は以外にも魔石の性質を言い当てているのかもしれない。
そうでなければ魔力どころか生命力まで空っぽになって僕もアッシュも生きてはいない筈だ。
……その魔石に人格がある、なんていうおとぎ話は以外にも魔石の性質を言い当てているのかもしれない。
「………だからこそ、禁忌なんだ。」
実際にそれだけの魔力と生命力のある人間など、そうは居ない。
だから、これは術者共々身を滅ぼす禁忌の術。
こんなものが出回ったりすれば、世界は混乱の興中だ。
だから、これは術者共々身を滅ぼす禁忌の術。
こんなものが出回ったりすれば、世界は混乱の興中だ。
「そっか…」
アッシュは小さく呟くように頷いた。
それ以外、互いに言葉を発することはなかった。
それ以外、互いに言葉を発することはなかった。
「……そろそろ発とう」
しばらく沈黙が続くと、アッシュが立ち上がった。
その姿はいつもと変わらない様にも見えるが…それが尚不自然だ。
しかし、僕も何もいわずに立ち上がる。
その姿はいつもと変わらない様にも見えるが…それが尚不自然だ。
しかし、僕も何もいわずに立ち上がる。
「サイルスを目指すならまずは公道沿いのレデニスを目指そう。」
あそこは旅人も多い商人の町だから、そう早く見つかることはないし、何より追っても大きくは動けないだろう。
これから遠い西国を目指すのなら準備がいる。
これから遠い西国を目指すのなら準備がいる。
僕の言葉にアッシュが頷くのを確認すると、僕達は歩き出した。
雪はいつのまにか降り止んでいて、木々の向こうに見える空には細い月が掛かっていた。