【side:Ash】
見渡す限りの雪景色の中、1人佇んでいた。
どこからともなく声が、聞こえた。
殺せ…もっと沢山殺せ、と。
殺せ…もっと沢山殺せ、と。
「イヤだ…俺はワケも無く誰かを殺したくなんてない」
「偽善者。それって理由があれば殺せるってことだろ?」
「偽善者。それって理由があれば殺せるってことだろ?」
呟くと即座に帰ってきた言葉に、慌てて振り返る。
そこに立っていたのは見慣れた人影。
肌や髪の色、服までが真っ白の中、瞳だけが血の色をしていた。
そこに立っていたのは見慣れた人影。
肌や髪の色、服までが真っ白の中、瞳だけが血の色をしていた。
色彩こそ違うけれど、如何見ても、俺…?
今じゃなくて、15の…丁度、両親を失った頃の俺が其処に立っていた。
今じゃなくて、15の…丁度、両親を失った頃の俺が其処に立っていた。
「違う!」
「違わない。殺せるんだよ、理由が無くても、誰でも」
「違わない。殺せるんだよ、理由が無くても、誰でも」
俺と同じ声がそういうのを聞いていると、自分で言ったように錯覚してしまう。
俺は本当は…
俺は本当は…
「殺したいんだろう?」
そう、なのか?誰かを殺したい?
そんなことないと思うのに、否定できない。
何も言えない自分に戸惑う。
そんなことないと思うのに、否定できない。
何も言えない自分に戸惑う。
「お前が願えば、簡単に叶う」
ああ、そうだった。
この前…俺が願ったとおりに、人が死んだんだ。
死を願ったわけじゃなかった。
ただ、死にたくないと強く願った。
結果的に相手の死を願ったのと同じだったけれど。
それだけで呆気なく命が失われた。
この前…俺が願ったとおりに、人が死んだんだ。
死を願ったわけじゃなかった。
ただ、死にたくないと強く願った。
結果的に相手の死を願ったのと同じだったけれど。
それだけで呆気なく命が失われた。
「生あるモノに死の祝福を。その為の力で…その為の存在だ」
俺の力は、その為のもの…?
俺の力は、その為のもの…?
小さく首を振った。
俺は、そんな力なんて要らない。必要ない。
俺は、そんな力なんて要らない。必要ない。
目の前の、俺の顔が歪む。
心底楽しそうな笑みを形どっているのに何処か泣きだしそうな、複雑な表情に。
それは歪みとしか形容できなかった。
心底楽しそうな笑みを形どっているのに何処か泣きだしそうな、複雑な表情に。
それは歪みとしか形容できなかった。
「足元を見てみろよ」
俺の姿をした何かが、肩を抱いてきた。
冷やりとした感覚に背筋に寒気が走る。
冷やりとした感覚に背筋に寒気が走る。
これは、人の体温じゃない。
…死体の冷たさだ。
…死体の冷たさだ。
視線を逸らそうとして、結果的には相手の言葉に従っていた。
足元にあるのは真っ白な雪…
雪のはずだった。
足元にあるのは真っ白な雪…
雪のはずだった。
けれど今広がっているのは白い、骨。
何処を見渡しても漂白したかのように綺麗な白い骨が広がっていた。
何千、何億の髑髏の眼窩が、俺を見つめている気がした。
ドロドロと、少しずつ景色に混じる赤黒いものは…血?
その証明のように空気が粘り気を帯びて鉄の臭いが鼻についた。
何処を見渡しても漂白したかのように綺麗な白い骨が広がっていた。
何千、何億の髑髏の眼窩が、俺を見つめている気がした。
ドロドロと、少しずつ景色に混じる赤黒いものは…血?
その証明のように空気が粘り気を帯びて鉄の臭いが鼻についた。
「――ッ」
あげたはずの悲鳴は音にならなかったらしい。
耳に届いたのは相手の笑い声だけだったから。
あげたはずの悲鳴は音にならなかったらしい。
耳に届いたのは相手の笑い声だけだったから。
「こうやって屍の山を築くんだ」
耳元での囁きに身体が震えた。
「嫌だ…」
「嘘つくなよ、嫌じゃないくせに」
「絶対に嫌だ!」
「嘘つくなよ、嫌じゃないくせに」
「絶対に嫌だ!」
目を閉じて、耳を塞いでしまいたかった。
それなのに身体は少しも動かない。
瞬きすることすらもできなかった。
それなのに身体は少しも動かない。
瞬きすることすらもできなかった。
目の前には血塗れで骸の上にたつ自分。
心底愉しそうな顔で笑っている。
心底愉しそうな顔で笑っている。
その姿を見ているとこれが自分の望みの気がしてきた。
違うのに…こんなこと、望んでなんかいないはずなのに…。
違うのに…こんなこと、望んでなんかいないはずなのに…。
――人殺しの癖に。偽善者ぶるなよ。
目を開けた。
すぐ傍で相変わらず何を考えているのか分からない表情でシャリスが俺を見ていた。
ほっそりした首が視界に入り、この体勢からでも簡単に殺せるんだろうなと思った。
身体能力は俺の方が上だし、少し力を入れればそれだけで。
手が勝手に持ち上がって…
すぐ傍で相変わらず何を考えているのか分からない表情でシャリスが俺を見ていた。
ほっそりした首が視界に入り、この体勢からでも簡単に殺せるんだろうなと思った。
身体能力は俺の方が上だし、少し力を入れればそれだけで。
手が勝手に持ち上がって…
「ディアン?」
今度こそ、目が覚めた。
「…シャリス?」
声が震えた。
俺は、今、何をしようとした…?
辺りを見回すと、屍の山なんか何処にもない。
普通の森が広がっていた。
俺は、今、何をしようとした…?
辺りを見回すと、屍の山なんか何処にもない。
普通の森が広がっていた。
ああ、そうだ。
今はサイルスを目指すためにレデニスを目指していたところだった。
見つからないために遠回りをしていたから、野宿をして、今日にはもうレデニスにつけるはず…。
今はサイルスを目指すためにレデニスを目指していたところだった。
見つからないために遠回りをしていたから、野宿をして、今日にはもうレデニスにつけるはず…。
「寝ぼけてるのか?」
俺のしようとしたことを分かっていないシャリスは呆れたように言っただけだった。
それだけで、警戒する様子もない。
それだけで、警戒する様子もない。
「目が覚めたなら早く出発……ディアン?」
シャリスの手をとると、ちゃんと温かい。
生きている人の体温だ。
生きている人の体温だ。
戸惑うシャリスの声を聞きながらも、俺は暫く手を離せなかった。
安堵なのか、良く分からない気持ちで一杯になって涙が溢れていた。
安堵なのか、良く分からない気持ちで一杯になって涙が溢れていた。
ああ、いつか俺はこの温かさを失うのかもしれない。
俺の手で。俺の意思で。
あの兵士はシャリスの力で生き返った。けど、シャリスを殺してしまったら?
その瞬間が訪れることは、何よりも怖いと思うのに。
ハッキリと否定できない自分が恐ろしい。
これも雪の欠片のせいなのか?それとも俺は心の底でそんなことを思っていたとでも?
――分からない。
俺の手で。俺の意思で。
あの兵士はシャリスの力で生き返った。けど、シャリスを殺してしまったら?
その瞬間が訪れることは、何よりも怖いと思うのに。
ハッキリと否定できない自分が恐ろしい。
これも雪の欠片のせいなのか?それとも俺は心の底でそんなことを思っていたとでも?
――分からない。
右手の雪の欠片がぼんやりと光っていた。