【side:蓉】
彼女は、聖夜の言葉に涙を流しながらも嬉しそうに微笑んだ。
それはとても綺麗で、純粋な微笑だった。
それはとても綺麗で、純粋な微笑だった。
「……大丈夫ですか?」
そうかけられた声にはっとする。
怪我の確認をしていた、柔らかな金髪の青年が気遣わしげに此方を見ているのに慌てて首を振る。
怪我の確認をしていた、柔らかな金髪の青年が気遣わしげに此方を見ているのに慌てて首を振る。
「…はい。すみません。」
僕がそう答えるとほっとしたような表情をした彼は気にしないで下さいと首を振った。
オーナーに急かすように呼ばれた青年は、静(セイ)と呼ばれており聖夜たち同様ここの従業員…ホストだ。
彼は医療の心得があるらしく、医者が来るまでの応急手当をしてくれた。
右腕と右足には照明の割れた破片が入っていたらしくそれを出来るだけ取り除き止血する。
それでも来ていたスーツのお陰か細かい破片は防げたらしい。
しかし、スーツの中で血で湿ったワイシャツが気持ち悪かった。
彼は医療の心得があるらしく、医者が来るまでの応急手当をしてくれた。
右腕と右足には照明の割れた破片が入っていたらしくそれを出来るだけ取り除き止血する。
それでも来ていたスーツのお陰か細かい破片は防げたらしい。
しかし、スーツの中で血で湿ったワイシャツが気持ち悪かった。
それでも、見届けなくてはならない。
彼女をきちんと送らなければ。……それが、僕の仕事だ。
彼女をきちんと送らなければ。……それが、僕の仕事だ。
控え室から出てきたらしい数人のホストとオーナーは不思議そうに聖夜を、心配そうに僕を見るも聖夜には声をかけない。
先ほど、聖夜に駆け寄ろうとした鮮やかな赤髪の利紅と呼ばれた少年を引き止めたから…そしてなによりこのフロア内に満ちる普段とは違う雰囲気を感じている為だろう。
先ほど、聖夜に駆け寄ろうとした鮮やかな赤髪の利紅と呼ばれた少年を引き止めたから…そしてなによりこのフロア内に満ちる普段とは違う雰囲気を感じている為だろう。
一通り手当てが済んだのを確認すると、聖夜たちに視線を戻す。
彼女は、聖夜が触れている手に嬉しそうに触れている。
彼女は、聖夜が触れている手に嬉しそうに触れている。
『……ごめんなさい。』
微笑んだ後彼女はそう呟いた。
こちらに背を向けている聖夜の表情は伺えない。
しかし今ならば、彼女をきちんと送ることが出来るだろう。
こちらに背を向けている聖夜の表情は伺えない。
しかし今ならば、彼女をきちんと送ることが出来るだろう。
『私…聖に会えて良かった。』
「…そうか。」
「…そうか。」
聖夜が答えたのに満足そうに微笑むと、ふと此方に視線を向ける。
その視線に促されるように僕は立ち上がった。
その視線に促されるように僕は立ち上がった。
「…ダメよ、動いちゃ!」
慌てたように制止するオーナーに小さく首を振った。
近くのソファに手をかけて左手で体重を支え何とか立ち上がる。
右足は床につくだけで痛んだが、今はそれより先にやるべきことがある。
近くのソファに手をかけて左手で体重を支え何とか立ち上がる。
右足は床につくだけで痛んだが、今はそれより先にやるべきことがある。
「…蓉?」
オーナーの声にこちらを振り返った聖夜が、驚いたような諌めるような訝しげな視線をこちらに向けた。
「……大丈夫です。」
そう答えるのとほぼ同時に彼女は僕の前まで滑るような動きで移動した。
『……怪我、させてごめんなさい。』
視線を伏せて言う彼女に、自然と笑みが毀れた。
聖夜の言葉で素直になった彼女も、聖夜の為にここまで出来る彼女も、聖夜に触れて綺麗に微笑んだ彼女も。
……僕は素直に羨ましいと思った。きっと僕には出来ない。
聖夜の言葉で素直になった彼女も、聖夜の為にここまで出来る彼女も、聖夜に触れて綺麗に微笑んだ彼女も。
……僕は素直に羨ましいと思った。きっと僕には出来ない。
「……もう、大丈夫ですね?」
確認するように言えば彼女は頷いた。
その彼女に支えにしていない右腕を伸ばす。
引きつるように痛んだが、なんとか彼女に触れることが出来た。
見えているのに、感覚の無い手。しかし、空気に触れるのとは少しだけ違う感覚。
奇妙な感覚には未だ慣れきれない。
その彼女に支えにしていない右腕を伸ばす。
引きつるように痛んだが、なんとか彼女に触れることが出来た。
見えているのに、感覚の無い手。しかし、空気に触れるのとは少しだけ違う感覚。
奇妙な感覚には未だ慣れきれない。
けれど触れるだけで同調するように感じた彼女の想いは、先ほどとは違いとても穏やかだった。
「……きっと次は、もっと幸せになれるはずです。」
『…ええ、そうね。』
『…ええ、そうね。』
ふわりと素直に微笑んだ彼女は、そのまますぅっとその姿を薄れさせた。
そして見えなくなる頃にはその存在も感じなくなる。
冴え冴えしていた空気も、緊迫したような空気も、彼女の存在も。
…それらはもう全て無くなっていた。
そして見えなくなる頃にはその存在も感じなくなる。
冴え冴えしていた空気も、緊迫したような空気も、彼女の存在も。
…それらはもう全て無くなっていた。
彼女は今度こそ、きちんと行くべきところにいけたのだと確認すると、安堵からそのまま手をかけたソファに座り込んだ。
「…大丈夫か?」
歩み寄ってくる聖夜に頷いてみせる。
「ええ、彼女は無事に行けました。」
何処かものいいたげな聖夜にそう返せば、何が起こったのかわかってない周囲を代表するようにオーナーが声をかけた。
「終わったの…?」
そちらに視線を向け、しっかりと頷いてみせる。
ほっとしたように息を吐いた周囲に、僕は申し訳なさそうにオーナーを見返す。
ほっとしたように息を吐いた周囲に、僕は申し訳なさそうにオーナーを見返す。
「すみません…僕の力が足りないばかりに、事を大きくしてしまって…」
「とりあえず、後でいいわ。まずはきちんと手当てしなくちゃ」
「とりあえず、後でいいわ。まずはきちんと手当てしなくちゃ」
フロアのドアが開き、楽杜と呼ばれていた青年と共に医者と思われる男性が入ってきたのに気づいたオーナーは僕の言葉を遮るように言った。
それにもう一度申し訳ありません、と呟いて、一応仕事が結果無事済んだことに今度こそほっと息を吐いた。
それにもう一度申し訳ありません、と呟いて、一応仕事が結果無事済んだことに今度こそほっと息を吐いた。