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「マンムー、じしんよ!!」

丸太のような前足が大地を粉砕する。
円形に広がり荒れ狂う亀裂にニダンギルは容易く飲まれ、その衝撃がはがねのボディにも及ぶ。
輝石の力を持ってしても、その破壊力は到底抑え切れるものではない。
瞬く間にニダンギルの体力の80%近くが失われた。

「フン……ニダンギル、せいなるつるぎ!」

二本の刃が眩い輝きを放ちながら、マンムーの肉体を次々に切り刻む。
その切っ先は弧を描きながら厚い毛皮を貫き、それと共に体液が四散する。
だが、その切れ味では、マンムーに痛手を負わせるに至らなかった。

「残念。いくら効果抜群でも、その程度の火力じゃマンムーを落とす事なんて出来ないわ。
 そ、れ、に、タイプ一致のアイアンヘッドの方がもう少しマシなダメージになったんじゃないかしら?」

ブロンドの髪を右手でかき上げながら、リゼはそう言って笑った。


――エリートトレーナー

ポケモンバトルの道を歩む者には、これほど誇らしい称号は無いだろう。
リゼは強い。
彼女が使うポケモンは、選りすぐり強さを持っている。
彼女の脳内には、勝つための戦略が叩き込まれている。
彼女の瞳は、敵がどんな行動をするか見透かしている。
ポケモンリーグのチャンピオンを超えた先、バトルのエリート達の集う世界……そこが彼女のフィールドだった。

ゆえに、このバトルロワイアルでも勝ち残る自信があった。
どんなポケモンであっても、自分なら十二分に使いこなす事が出来る。
だから、こんなところで惨めに殺されたりはしない。

「ふ~ん、敵に塩を送るなんてずいぶんと甘ちゃんなようね……。
 でも笑ってられるのも今の内よ。お嬢ちゃんは本当の戦いを知らないみたいだものね」
「ハッ、本当の戦い? 最良の選択すら理解してないような、ド素人のオカマが何を言うの?」
「こんなのは所詮お遊びなのよ。アナタがやってるのはお遊び。
 だからワテクシが現実を見せてあげる、せいぜい地獄で後悔なさい、悪党」

そんな彼女と敵対する男、りょうりにんのオーレン。
趣味の悪いヒョウ柄のシャツと、黒いベスト。
黒のターバンと獣毛のマフラーを身に着けた、筋肉質で体躯のいい男だ。
彼もまた不敵な笑みでリゼを迎え撃っていた。

「悪党? フン、この状況で善も悪もあるわけないでしょ。
 全部正当防衛よ、結局は最後まで生き残った者だけが笑う事を許されるの」
「だったらアナタが笑うのは間違いよ」
「好きにほざいてなさい、ド素人」

舌戦に区切りが付き、お互いが第二撃を放とうとする。
だが、その時に第三者が割り込んできた。


「ちょっと待ったああぁぁぁ!!!」

活発的な恰好をした少年、キャンプボーイのケイイチ。
どこからリゼとオーレンに気付いたのかはわからないが、走ってきたのだろう。
ぜぇぜぇと息を切らしており、ポタポタと汗が顎から流れ落ちていた。
深く息を吐き、ケイイチは二人に言った。

「アンタら、あんなオッサンの言う事に従う必要なんてないだろ!
 ポケモンバトルで殺し合う? そんなの間違ってる!
 なぁ、だから二人ともポケモンをしまって……」
「そんな綺麗ごとが通用すると思ってるの?
 このオカマをぶっ倒したら、次はアンタの番よ。覚悟してなさい」
「そんな……!」

リゼはケイイチの言葉を切り捨てた。
こんなガキのくだらない正義感()なんて、いちいち構う必要があるものか。
この首輪が嵌められている限り、自分達には戦うしか選択肢が無いのだから。

一方、オーレンは微笑ましそうな顔を浮かべた。
小さく拍手をしながらケイイチに言葉をかける。

「ぼうや、良い事を言うわね。
 そう、ワテクシたちは結束して、あの悪党に立ち向かわなくちゃいけないのよ。
 でもそのためには、危険要素は排除しないといけないの。
 ……だから、あの平然と殺し合いに乗ったそこの女を倒すのよ!」
「待ってくれよ! だから……だからなんでバトルしようとするんだよ!」

非力な少年の声は、どちらにも届かない。
リゼもオーレンも既に戦闘態勢に入っていた。

「こちらから行かせてもらうわ、地震よッ!」
『ムウウゥゥゥゥッ!!』

轟音。
マンムーの引き起こす地震が、オーレンのポケモンに襲い掛かる。
大地の牙が足元から攻め入った先には……。

『マ~タドガ~~~スwwwwwwwww』

だが、そこにニダンギルの姿は無い。
嘲るような笑いを浮かべながら、マタドガスがそこに入れ替わっていた。
浮遊しているマタドガスに、地面からの攻撃は通用しない。

「へぇ、ド素人でも地震読みで交代するくらいの機転は効くようね。
 でもって物理耐久が高く、炎技も撃てるマタドガス……これではマンムーじゃ分が悪いわね。
 でも残念、私の控えには相性のいいポケモンが居るんだから。さぁ戻りなさい、マンムー!
 そして――出番よ、ランクルス!!」
『らんらんらん』

マンムーに代わって繰り出されたのは、緑色のゼリーのようなポケモンランクルス。
タイプ相性も然ることながら、その耐久力はマタドガスに対して圧倒的な優位を持っている。
相手の手持ちが判明した今、リゼの勝利への道筋が明確なものとなった。

だが次の瞬間、リゼの不意に視界が真っ黒に染まる。
瞬く間に周囲が黒い煙に包まれ、マタドガスの姿を見失った。

「へぇ、ここでえんまくね……なるほど、運ゲーに賭けてくるつもりね?」
「違うわよッ!」

距離が開いていたはずのオーレンの声が、すぐ間近で聞こえた。
リゼはすぐさま声の方へと顔を向ける。そこには。


――両手にニダンギルを構え、飛び掛かってくるオーレンの姿があった。


「なッ……!?」

呆気に取られた。
このオカマの動きは予想外だった。
こんな事態、今までに一度も無かった。

――トレーナーを、直接攻撃……!?

「ちょ、待っ」

制止の声を叫ぶ暇もなく、ニダンギルの鋭利な刃がリゼの華奢な胸を貫いていた。

「がほッ……ご……」

びちゃびちゃっ、と溢れんばかりの大量の血液が吐き出される。
右手のニダンギルが引き抜かれ、力なく膝を付くリゼの首に、左手のニダンギルが横薙ぎに払われる
鈍い音と共にリゼは倒れる。首の半分ほどまで、パックリと斬られた。

「本当の戦いにはね、ルールなんて存在しないのよ?」

それが最後に耳に届いた言葉。

――卑怯だ、死にたくない、嫌だ……こんなの、イヤ……

彼女の意識が途切れる寸前、頭を巡っていたのは不条理に対する抗議だった。


【エリートトレーナーのリゼ 死亡確認】
【残り39人】



 ◆


「やめろ―――!!」

地震によってバランスを崩してへたり込みながら、ケイイチは叫んでいた。
彼らを止めるために、やむを得ずに自分のポケモンを取り出そうとする。
だが、周囲が煙幕に覆われてから、視界が晴れる頃には既に……。

「あ」

既に戦場は惨状となっていた。
ブロンドの女の人が血だまりの海に体を浸らせている。

「う……うわああぁぁぁ――!!!」

ケイイチは悲鳴をあげる。
そこへ、ニダンギルに付着した血をふき取りながら、こちらへと歩み寄る大男の姿が。

反射的に恐怖を感じ、脱兎のごとく逃げ出した。

――人が死んだ、殺された。平然と。

恐ろしい事だ。もう何を言ってもダメだ、俺も殺されるかもしれない。

――誰か、誰かほかに頼れる人が……どこかに……!

取り乱していなければ、この大男には話し合える余地があると判断出来ただろう。
だが、現実のスプラッタを目の当たりにして、彼の冷静さは吹き飛んでしまった。
逃げた先に居るその"誰か"が、殺し合いに乗ってない保証などどこにも無いのに。

あてもなく走りだす少年は、その思考に至らずにいる。




オーレンはその様子を残念そうに見送っていた。

「何よ、このくらいの光景で逃げるなんて、ヘタレなぼうやね……。
 ワテクシもぼうやと同じ、サカモトに対抗しようと考える同志だと言うのに」

今でこそ、オーレンは洋菓子店を営む料理人である。
しかしかつての彼は、海外の傭兵部隊に所属している武人であった。
そこで培われた肉体と身体能力は、サカモトに抗う勇敢さの源である。
しかし同時にその経験は、危険分子を切り捨てる冷徹さの源ともなっている。

「ちょっと心配だけど……あの子ばかりに構っては居られないわ。
 とにかく他に殺し合いに乗ってない人を探しましょう。
 数を集められない事には、大きな力に立ち向かう事なんて出来ないもの」

オーレンは自らのポケモンをボールにしまった。
そしてリゼの亡骸に両手を合わせると、彼女のポケモンたちも手持ちに加えた。


【A-6/どうろ/一日目/日中】

【りょうりにんのオーレン 生存確認】
[ステータス]:良好
[バッグ]:基本支給品一式、ランダム支給品×3(自身2、リゼ1)
[行動方針]:対主催過激派
1:主催に立ち向かうための同志を集める
2:ぼうや(ケイイチ)が心配

▽手持ちポケモン
◆【ニダンギル/Lv50】
とくせい:ノーガード
もちもの:しんかのきせき
能力値:均等振り
《もっているわざ》
せいなるつるぎ
シャドークロー
きりさく
つじぎり

◆【マタドガス/Lv50】
とくせい:ふゆう
もちもの:なし
能力値:均等振り
《もっているわざ》
えんまく
ヘドロばくだん
どくびし
ちょうはつ

◆【ランクルス/Lv50】
とくせい:さいせいりょく
もちもの:きれいなぬけがら
能力値:HP、特防特化
《もっているわざ》
サイコキネシス
きあいだま
リフレクター
でんじは

◆【マンムー/Lv50】
とくせい:あついしぼう
もちもの:かいがらのすず
能力値:攻撃、素早さ特化
《もっているわざ》
じしん
つららばり
こおりのつぶて
ストーンエッジ



【キャンプボーイのケイイチ 生存確認】
[ステータス]:混乱
[バッグ]:基本支給品一式、ランダム支給品×3
[行動方針]:殺し合い反対派
1:とにかく殺し合いを止めたい
2:オーレンに恐怖

▽手持ちポケモン
◆【????/Lv?】
とくせい:
もちもの:
能力値:
《もっているわざ》
????

◆【????/Lv?】
とくせい:
もちもの:
能力値:
《もっているわざ》
????



【エリートトレーナーのリゼ 死亡確認】
[ステータス]:--
[バッグ]:基本支給品一式
[行動方針]:--


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第1話 にわかのパーフェクト対戦考察 第2話 かたやぶり 第3話 死んで花実が咲くものか

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最終更新:2014年11月20日 23:47