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目が覚めると、俺は森の中にいた。
なにやら珍妙な夢を見てしまったようだ。

いや、夢ではない。
見覚えのないモンスターボール。
いつの間にか巻かれていた首輪。
そして何より、今ここにいる森そのものが、夢ではないことを物語っていた。
どうやらあの男は本当に殺し合いとやらを開催するつもりらしい。

こんな物騒な催しに巻き込まれてしまったというのに、俺の気分は高揚していた。
勘違いしないで欲しいが、俺は殺人に快楽を見出す異常者というわけではない。
その理由は、俺が見ているこの風景にある。

風が木の葉を揺らし、空からは木洩れ日が差し込む。
川には綺麗な水が流れ、日差しを反射して輝いている。
寒くもなく暑くもなく、程よい穏やかな気候。

普通なら、こんなことはごくごく当たり前で、自然なことなのだろう。
だが俺にとっては、これら全てが新鮮で、愛おしかった。
俺の住んでいる場所では、何もかもが止まってしまっているのだから。

俺の暮らす星は停止している。
時を司る、時限の塔とやらが崩壊したのが原因らしい。
塔の管理者であるディアルガも、今や全く使い物にならない状態だ。

何を言っているのか的を得ないとは思うが、停止しているとしか形容できないのだから仕方ない。
太陽は昇らず、草木も成長を止め、荒れ果てた大地には空に浮いた岩盤があちこちに漂っている。
未だ生き残っている者たちを取り残し、時だけが止まっている世界。

そんな所と比べたら、例え死の危険があろうとも正しく時が進んでいるこの場所の方がよほど素敵だ。
どうやって連れて来たのか知らないが、そういう意味ではサカモトとやらには感謝している。
当分はここでのんびりと日差しを浴びていたいものだ。

しかし、ずっとこうしているわけにもいかないだろう。
あの男は一日経っても誰も死んでいない場合は強制的に全参加者の首輪を爆発させると言った。
流石に全員無事のまま二十四時間経過するとは思えないが、可能性はゼロではない。

それに、何度も言うがここは殺し合いの場。
油断したが最後、あっさりお陀仏だ。

死にたいかと聞かれれば、答えはノーだ。
未来なき世界で何年も生きてきたのだ。自殺するくらいならとっくにしている。

では、他の参加者を皆殺しにし、優勝を狙うのか。
それも違う。
元の世界に帰ったところで、再び荒廃した大地で暮らすだけだ。
莫大な報酬を貰っても使い道などない。

では、この殺し合いを破綻させ、この世界で生き続けるのはどうか。
それは面白そうだ。
この美しい土地で生活できるなんて、考えただけで心が躍る。

だがそれは恐らく不可能だろう。
首輪があっては脱出も出来ないし、参加者全員に協力してもらうことも現実的ではない。

「帰りたくもなければ死にたくもない。どうしたもんかな……」

アイツならどうするだろう。
破滅の未来を変えると息巻き、一匹の相棒と共にひたすら奔走したアイツなら。
やはり殺し合いをやめさせるべく行動しただろう。

誰もが「無理だ」「出来るわけがない」と言っても、アイツは聞く耳を持たなかった。
俺だって、無駄なことはやめろと何度も忠告したものだ。
それでもアイツは諦めようとしなかった。
そういう奴なんだ。
目的に向かってひたむきに行動すれば必ず実現すると、本気で信じている。

――やはり誰もいないと少し寂しいな。
荒んだ世界でも、俺と同じく震えて過ごす同志たちがいる。
アイツのことを考えていたら、置き去りにしてしまった彼らのことを思い出してしまったようだ。

俺はモンスターボールを一つ取り出す。
俺のいた場所ではほとんど使われることのない道具。
ヒトとポケモンは基本的に共存しており、ボールを必ずしも必要としなかったのだ。

ポケモンでもいれば気休めにはなるだろうか。
そう思い、俺は取り出したボールを空高く投げた。



「嘘だろ……お、お前……」

開いた口が塞がらなかった。
出てきたのはなんと、アイツが一番頼りにしていた相棒、ジュプトル。
流石に同じ個体ではないだろうが……。
もし意図してコイツを支給したのなら、ここの主催者はとんでもなくタチが悪い捻くれ者だ。

なのに、何故だろう。
不思議と悪い気はしない。

本来なら、ジュプトルは決して強いポケモンではない。
だが俺は知っている。ジュプトルは誰よりも強い男、いや、オスだった。
意志は鉄のように硬く、刃は鉄をも切り裂く。
アイツとジュプトルのコンビなら、本当に未来を取り戻せるかもしれないと思ったことすらある。

コイツを見ていると、どんどん自信が湧いてくる。
錯覚してしまう。こんな俺でも、アイツのようになれるかもしれない、と。

そんな都合のいい話があるはずもないことはわかっている。
けれど、どうしても賭けてみたくなる。
もう二度と拝むことが出来ないと思っていた太陽の光すら見ることが出来たのだ。
奇跡が二度起きたっていいじゃないか。

これはチャンスだ。
残された皆には悪いが、俺はこの殺し合いを脱出し、失われた時を取り戻してやる。

【C-5/森/一日目/日中】

【さぎょういんのクロノ 生存確認】
[ステータス]:良好
[バッグ]:基本支給品一式、ランダム支給品×3
[行動方針]対主催?
1:殺し合いを破綻させ、この世界で暮らす
2:脱出できるようなら必ずしも主催を倒そうとは考えていない

▽手持ちポケモン
◆【ジュプトル/Lv50】
とくせい:しんりょく
もちもの:???
能力値:せっかち、攻撃・素早さに特化
《もっているわざ》
すいとる
でんこうせっか
リーフブレード
あなをほる

◆【????/Lv?】
とくせい:???
もちもの:???
能力値:???
《もっているわざ》
????


第16話 貝になりたいか? お断りだね 第17話 ときわたり 第18話 貴女がいなくてAndante

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最終更新:2014年11月19日 05:57