決戦開始
――――午前零時
俺はベットの中に入ったものの寝れなかった。
フルーラを起こすわけにもいかないので、何もせず二時間を過ごすことにした。
隣ではフルーラが寝ている……大丈夫だ、起きてない。
バッグの中からモンスターボールを一個投げ、リーフィアを出す。
「いいかリーフィア……
俺はこれから出かけるから、俺の代わりにフルーラを護っていてくれ、分かったな」
小声で声をかけた、リーフィアを顔を縦に振っている。
自分の最も信頼できるポケモンを、
これから行われる、過酷な戦闘に連れて行かないのは、無謀かもしれない。
しかし一匹だけでフルーラを護ることができるのは、フルーラに懐いているリーフィアだけだ。
俺はバッグの中からモンスターボールを五つ、腰のベルトに装着しフルーラの家を出た。
外は夏だが夜ということもあり寒かった。
騒音は立てられないので、ギャロップに乗ることもできず
自分の足で走って、約束の港まで来た。
港には一人の人間が居た、眼鏡を掛けていて、青髪の青年……フィレンテ。
いつもは優しい雰囲気なのだが、今は厳しい顔をしている。
「おや?一人ですか?フルーラさんも連れて来て欲しい、と言ったはずですが?」
「悪いな、どうしてもこの場所には連れて来たくなかったんだ……」
『………なぜですか?これから僕達は敵のボスと決戦をするのですよ…戦力は多い方がいいはz』
「もう分かってる……お前だろ?宝を盗んだのは……」
「…………………………」
『はっきり言おう、宝を盗んだのも、今朝俺達を襲った奴らを嗾けたのも、お前だフィレンテ!!』
生暖かい風が通り過ぎる、俺とフィレンテの間には緊張が走り抜ける
「何をいうのですか?ふざけたことを言うのはよして欲しい
僕はあなたを信用して、唯一突撃の仲間に加えたのですよ」
「俺は確信があってそう言っている、お前は俺達の罠に引っ掛かったんだよ……
実はな……無くなった宝がどの宝か知っているのは、俺とフルーラと……そして宝を盗んだ犯人だけだ」
「どういうことですか?」
―――十二時間前
「ほぉ……どんな策じゃ?」
「盗まれた宝玉がどの宝玉か知っているのは、俺とフルーラ……そして宝玉を盗んだ犯人の三人だけだ
それは俺とフルーラが口外しなければ、それは変わる事が無い。
もし、俺達以外でどの宝玉が盗まれたか知っている奴が居たら、そいつが犯人だ」
「なるほど……それなら犯人を捕まえられるじゃろう……」
「そしてお前は祭りの時と電話したときにはっきりと"氷の宝玉"と言ったよな?
とぼけても無駄だ、携帯に会話を録音してあるからな」
俺は携帯電話を取り出し、ボタンを押す。
二時間前の、俺とフィレンテの会話が、無音の空間に響いた。
「……こんな些細なミスで気づかれてしまうとは思いませんでしたよ……」
「何が目的だフィレンテ?」
「ここまで来た以上話さない訳にはいかないですね……
僕の目的はフリーザー、サンダー、ファイヤー……そしてルギアを自分の支配下に置くことです」
「なに言ってんだお前は?そんなことできるわけないだろ」
「それが出来るんですよ、この島の巫女の一族の所有する笛には、アーシア島周辺を生息地域とする
伝説のポケモンの感情を、コントロールする力が存在します…それは知ってますよね?」
「しかしそれは、代々この島の巫女の血を引く者だけができるはずだ」
「そんなこと百も承知ですよ……そうなればやることは一つでしょう?」
『そう……脅迫すればいいのですよ、まず僕とあなたで障害となる長老とその仲間を撃破する
その後にフルーラの目の前であなたを殺せば、絶望を与えることが出来る……そしてその後に服従させる
でもあなたがフルーラを連れて来れずに……しかも私の作戦に気づいていたとは……」
「残念だったな、これでお前の作戦は失敗だ。早く氷の宝玉を返してもらおうか」
「ククククク……何か勘違いしてませんか?
僕の計画は少し狂っただけであり、失敗した訳ではありませんよ」
「氷の宝玉を使ってあなたを呼び出すのにも成功しましたし
あの雑魚共を使って、フルーラにあなたが強いということを植えつけるのにも成功しています
長老ならあなたを殺した後にでも、なんとでもなりますしね」
『そうか……なら俺がその計画を打ち砕いてやる』
「やはりそう来ますか……しかし僕があなたを殺すのは、プランの最も重要な要素です
フルーラの目の前で殺せば、最も絶望を与えることは出来たのですがね……」
「最後に一つ質問させてもらう……お前はフルーラの気持ちに気づいていたんだろ?」
「えぇ……もちろん、そういう類の物は精神にダメージを負わせるには効果的ですからね」
こいつは、最も俺が聞きたくない回答を返してきた、考える間も無く俺は前に踏み出していた。
しかしそれはフィレンテのポケモン、グレイシアの水の波動により、阻まれてしまった。
「生身の人間が、ポケモンに勝負を挑むとは愚かですね。
まぁあなたが自ら、死んでくださるのなら嬉しいですけど」
「ゲホッ、ゲホッ……誰がこんなところで死ぬかよ…」
「フン、あなたは簡単には死んでくれないようですね……冷凍ビームです」
グレイシアの口内から、冷気を帯びたビームが発射される。
標的は……俺だ。
「二度も同じ手を食うほど俺も甘くは無い、ジュゴン、冷凍ビームを防ぐんだ!」
出てきたジュゴンは、冷凍ビームを体で防いだ。
ジュゴンは水、氷タイプ……さらに特性は厚い脂肪だ。
氷タイプの攻撃でのダメージは、無に等しい。
「ジュゴン、アクアジェットだ!」
ジュゴンは水を纏いながら、グレイシアに突撃する。
「水の波動です!!」
再び水の波動が発射され、ジュゴンのアクアジェットと相殺された。
「このままグレイシアとジュゴンでは、埒が明きませんね……
グレイシア、フルーラの家へ行ってきなさい、そして彼の残りのポケモンを抹殺して来るのです」
命令を聞いたと共にグレイシアは俺の横をすり抜けて行った
「この場所から逃がすな!!オーロラビームだ」
ジュゴンの角から、七色の光線がグレイシアに向かって、発射される。
「そうは行きませんよ……グレイシアを援護しなさい」
オーロラビームはグレイシアには当たらず、フィレンテの別のポケモンに当たったようである。
「グレイシアは逃がしたが、お前のポケモンは痛手を負ったな」
「クックックッ……僕が考えもなしに、他のポケモンを盾にするとでも思いましたか?」
オーロラビームによって発生した霧が晴れる。
そこに居たポケモンは、ヌケニンであった。
「ヌケニンの特性は不思議な護り……弱点以外の攻撃は一切受け付けません」
まずい、ジュゴンにはヌケニンの弱点をつける技は、一つも無い。
「戻れ、ジュゴン!!」
ジュゴンを、モンスターボールの中に収容する。
代わりに出すのは、ヌケニンの弱点をつけるポケモン…ギャロップだ。
「行け、ギャロッp」
『シャドークローです……ヌケニン』
この声が聞こえた瞬間に、目の前に黒い何かが現れた。
そして次に俺の目に飛び込んできたのは、赤い何か……
その赤い何かが"鮮血"であることを理解するのに、時間は必要なかった 。
理解すると同時に、腹部に猛烈な痛みが走ってきた。
最終更新:2007年03月30日 00:39