トオヤの裏ハンドアウト
 アキレスで待つトオヤの元に、首都ドラグボロゥのレア姫から、以下のような手紙が届きます。なお、大前提として説明しておきますが、ヴァレフールの地方領主のうち、七男爵は全員「独立聖印」の持ち主であり、その他の君主に関しては、大半が伯爵もしくは七男爵のいずれかの従属君主です(ただし、ブラギスの死後、現状は一時的に独立聖印となっている人々が大半です)。そのことを踏まえた上で、以下の手紙への返答をお考え下さい。

 トオヤ。あなたは言ってくれましたね。いつまでも、私の騎士でいてくれる、と。その言葉を信じて、誇り高き騎士である貴方に、あえて私は君主として、主君として、そのあなたの誇りを踏みにじるお願いをさせて頂きます。
 あなたの聖印を私に預けて下さい。そして、私の従属君主となって下さい。
 ガスコイン卿の聖印を吸収した時点で、今のあなたの聖印は、既に子爵級です。今のヴァレフールにおいて、あなたはもはや七男爵をも超える力を手に入れてしまった。あなたをケネス殿の後任として騎士団長に据えた場合、これまでの七男爵家の均衡は間違いなく崩れます。貴方にその気があろうと無かろうと、あなたへの権力集中を危惧する人々が必ず現れるでしょう。
 幸い、今の男爵家の方々と貴方は概ね友好的な関係を結んでいるという話は私の耳にも届いています。しかし、これから先、レクナ家あるいはドロップス家が「子爵家」として確立されることで、あなたの息子や孫の世代において、新たな軋轢が発生する可能性は否定出来ません。
 ですので、あなたには「独立君主」としての「七男爵」の一人ではなく、「子爵級の従属聖印を持つ従属君主」として、一代限りの「護国卿(Lord Protecter)」の座に就いて頂きたい、と私は考えています。これは七男爵制度が確立される以前の時代に存在していた、伯爵位継承者がまだ幼かった時代における後見人の称号です。実際、私はまだ幼い。あなたは私と歳はそれほど違いませんが、君主としての名声は遥かに上です。あなたがその名を名乗り、私の補佐役となることに対して、異論を挟める者は少ないでしょう。
 ただし、これはあくまでもあなたが「従属君主」となることを前提とした上での話です。あくまでも「私の一存でその聖印を奪える立場」という条件でなければ、おそらく皆は納得しないでしょう。だからこそ私は、あなたがそれまで築き上げてきたその聖印を、私の従属聖印とすることを、認めて頂きたいのです。私と、この国と、この国の人々を守る騎士として、あなたのその一生を、私に捧げて頂けませんか?


チシャの裏ハンドアウト
 チシャの元には、特殊な文字で書かれた手紙が届きます。それは異世界の文字だったのですが、召喚魔法師であるチシャには解読が可能でした。そして、その手紙の送り主の名は「ネネ」と書かれていました。以下がその内容です。

 チシャ、あなたは私を恨んでいるのでしょうね。あなたを慕ってくれていた幼子を、あなたの元から引き離してしまった私のことを。そんな私が、こんなことを書いても信じてもらえないかもしれない。書いている私自身、今のこの状況が信じられない。でも、今からあなたに告げることは、紛れもない真実です。
 先日、ドギ様の身体を乗っ取っていた新世界派の首領であるジャック・ボンキップが、突然、意識を失いました。そして、ドギ様が意識を取り戻したのです。より正確に言えば、ドギ様はもともと混沌への親和性の強い体質だったようで、その身にジャックが憑依した後も完全にはその意識が消えることはなく、ずっとジャックの支配に対して抗い続けていたのですが、どうやら何らかの外部からの干渉があったようで、その身体を取り戻すに至ったのです。その詳細な経緯については、私もよく分かりません。
 しかし、ドギ様は今もなお「ジャック」として振舞っており、新世界派の殆どの者達は、そのことに気付いていません。一部には、何か異変が起きたことに勘付いた者もいるようですが、その真相を完全に把握している者はいないようです。均衡派から「ドギ様のお世話係」として出向していた私がそのことに気付けたのは、私が(あなたに伝えるのは初めてですが)時空魔法の使い手だから、というのもありますが、幼い頃からドギ様のことを知っていたためでしょう。
 「私が気付いたこと」に気付いたドギ様は、私に対してこう言いました。「僕はこれから先も『ジャック』として生きる。そして、この力を利用して、この世界の人々を救う道を探し出す」と。どうやらドギ様は、ジャックだけでなく、パンドラ新世界派そのものを乗っ取って、御自身の目指す理想郷を作ろうと考えているようです。
 実際、それまでパンドラの中でも特に無秩序な集団であった新世界派は、ジャックになりすましたドギ様の手で、少しずつ変わりつつあります。無意味な殺戮や破壊行動は徐々に制限され、本来の目的である「混沌の中で生きていく技術の開発」に向けての研究機関としての方向性を強めつつあります。とはいえ、それでも「君主中心の世界秩序」を明確に否定する立場である以上、エーラムの一員であるあなたとは、相容れない立場であることは間違いありません。
 そのことに関して、ドギ様の中では今でも葛藤があるようです。ドギ様にとって、あなたは今でも特別な存在であり、あなたを敵に回していることに対して、今も心のどこかで割り切れていないのでしょう。ですので、おそらく、いずれあなたの前に、ドギ様は現れることになると思います。あなたを「こちらの世界」へと導くために。その時、あなたがどんな答えを導き出すのも自由です。あなたにとって、一番大切なものを選んで下さい。決して、後悔することのないように。


ドルチェの裏ハンドアウト
 ドルチェの元には、ドラグボロゥのレア姫から、以下のような手紙が届きます。なお、現状におけるトオヤとドルチェに対する世間の認識は「写真週刊誌にスクープされた状態で、本人達も事務所も正式に否定も肯定もせぬまま堂々とデートを繰り返している状態」のようなものだと思っておいて下さい。

 パペット、いえ、今はドルチェ、だったわね。あなたに対しては、私の中で言いたいことはまだ沢山あるし、全ての気持ちを消化出来た訳ではないですが、それでも、今は少しずつ、前を向いて生きていけるようになりました。
 その上で、あなたの「元主人」として、あなたに最後に一つだけお願いがあります。少しでも早く、トオヤと正式に結婚、もしくは婚約を発表して下さい。私がこの国を治めていくにあたって、トオヤは私の片腕として、常に傍にいてもらわなければならない存在です。だからこそ、彼が「独り身」で居続ける限り、私と彼の「特別な関係」を疑う者は必ず現れます。そのような状態では、いつまで経っても、私は「次の恋」に向かえません。伯爵家を継ぐ者として、この血を後世に伝えなければならない以上、いつまでも私が独り身でいる訳にはいかないのです。
 無論、結婚を焦るつもりはないですし、立場が立場である以上、相手の立場や人格を見極めた上で、慎重に考える必要性は理解しています。私が駄目男に引っかかりそうになった時は、あなたやトオヤに止めてもらいたいとも思っている。でも、それ以前の問題として、まず、周囲からの色眼鏡を取り払わなければ、私の縁談はまともに進めることすら出来ないのです。そのことは、あなたなら分かって頂けますよね?
 トオヤにも、貴族家の一員としての立場があるのは分かります。素性不明の邪紋使いの妻を娶るとなると、様々な軋轢が発生するのかもしれません。しかし、あなたもトオヤも、そんな軋轢が発生することは承知の上で、私を出し抜いてまで、二人で共に生きると決めたのでしょう? それなら、少しでも早くその関係を公式に発表して下さい。
 おそらく、今のトオヤはこの国を守ることで頭が一杯で、自分自身の結婚という私事のために時間と労力を割くだけの精神的余裕がないのでしょう。でも、安心して下さい。近いうちに、複数の男爵家の方々の間での縁談が水面下で進みつつあります。その流れの中で、トオヤにも結婚を決断せざるを得ない状況が発生する筈ですので、その頃合いを見計らった上で、彼に結婚を迫って下さい。


カーラの裏ハンドアウト
 カーラの元には、以下の手紙が届きます。差出人の名前は書いていないというか、どうやら書き忘れたようですが、おそらくその内容から、察しはつくでしょう。とはいえ、差出人の正確な所在地が不明なので、返事を出すことは出来ません。

 よぉ! カーラ、元気か? 俺は今、色々あって、クレア師匠と別れて、ヴァンベルグの港町ハルペルに来てる。ここの領主は、実はヴァレフールの貴族家の親戚らしくて、俺の母ちゃんのことも知ってるらしい。ただ、俺がそのことを言うと、なんか微妙な顔するから、あんまり触れない方がいいのかもしれないけど。
 で、このヴァンベルグって国は、聖印教会の信者が多い国で、強い君主が沢山集まってるんだ。アキレスにいた頃は、聖印教会ってのは頭おかしい連中の集まりだって聞かされてたけど、実際に会ってみるとそうでもないというか、普通にいい奴ばかりで驚いた。まぁ、ちょっと頭が堅い奴も多いけど、皆、この世界を救うために必要なことが何なのかを、真剣に考えてる。正直、俺には言ってることが難しすぎてよく分からないんだけど、少なくとも、悪い奴らじゃない。聖印教会にも色んな奴等がいるってことが分かっただけでも、旅に出た甲斐はあったと思う。
 とりあえず、剣の修行相手には事欠かないし、実際、それなりに腕も上げたつもりだけど、やっぱり、ここでも俺は「お客さん」扱いだから、なかなか本気で戦ってくれる相手がいない。今の俺がどれくらい強くなったのか、試してみたいんだけど、手頃な相手がいないんだ。
 それでさ、相談なんだけど、俺、やっぱり、一度トオヤとちゃんと戦ってみたいから、協力してくれないか? と言っても、あいつも相手が俺だと分かってる状態だと手加減するだろうから、お前を人質に取りたいんだ。俺が正体を隠して、お前を奪って逃げて、それをあいつが取り戻しに来たところで、一対一の勝負を申し込む。な? いい考えだろ? これなら、あいつも本気で戦うだろ? さすがにチシャねーちゃんに加勢されると勝ち目がないから、あくまであいつ一人を呼び出す形での勝負に持ち込みたいんだ。協力してくれるよな? とりあえず、次の満月の夜に、アキレスの港の第三倉庫に来てくれ。ってことで、よろしく!

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最終更新:2018年07月27日 11:11