ジェネシスグリモワール 2018年度後期キャンペーン 『禁じられた秘宝』

ジェネシスグリモワールって?

 遥か昔、「創世の書」と呼ばれる魔導書によって生み出された、「魔法使い(メイジ)」たちが活躍する世界。それが「ジェネシスグリモワール」の舞台だ。
 人間や動物たちは様々な「知識」を持ち、多くの知識を持つ者は不思議な力、「魔法」を操る魔法使いとなることができる。魔法を駆使し、邪悪な存在と契約を交わした悪しき魔法使い「契約者(コントラクター)」達と戦い、人々を救うことが魔法使いの役目だ。

※このシステムは、エイブが作ったオリジナル(?)システムです。ガバガバな点は温かい目で修正を見守ってください。なお、このシステムの一般公開は今のところ予定にありません。

トレーラー

 人々に仇なす邪悪な存在、悪魔。強大な力を持つ彼らは、その力を象徴する魔法具「堕落のアーティファクト」を作り出した。しかし、悪魔たちは堕落のアーティファクトを所有し、管理しているわけではない。あえて野放しにし、その強大な力に手を出して翻弄される人間たちの様子を見て愉悦に浸っているのだ。魔導協会でも発見及び管理が難しいとされるそれらは、今も世界のどこかに眠っている。
 だが、もしもその秘宝を手にし、自在に扱うことができたらどうだろうか?堕落のアーティファクトには多くの謎があり、誰も知らない秘密が眠っている。もしかしたら、それを創り出した悪魔でさえも倒せる力を手に入れることができるかもしれない。
 この物語は、そんな禁じられた秘宝を求める魔法使いたちの物語だ。
+ ハンドアウト
PC①
 あなたはプリミアという小さな村に住む魔法使いだ。「堕落のアーティファクト」に興味があり、一度は目にしたいと思っている。以前村を訪れた魔導協会の魔法使いが言うには、あなたには特別な力があるらしい。


PC②
 あなたはプリミアという小さな村に住む魔法使いだ。あなたの一族は、秘密裏に「堕落のアーティファクト」の一つを管理している。あなたはこのことを誰にも口外しないように、そして、決して堕落のアーティファクトに触れないように言われている。


PC③
 あなたは「堕落のアーティファクト」を求めて旅をしている魔法使いだ。あなたの故郷はとある悪魔とその契約者によって滅ぼされてしまった。なんとか生き残ったあなたは、彼らを倒すために「堕落のアーティファクト」を求めて旅をし、その道中でプリミアへと至る。


PC④
 あなたはPC③と共に旅をしている魔法使いだ。PC③と同じ故郷の生き残りかもしれないし、道中で同行することになっただけかもしれない。いずれにしても、あなたの目的はPC③と共に堕落のアーティファクトを手に入れることだ。


PC⑤
 あなたはプリミアという小さな村に住む魔法使いだ。昔の記憶が欠落しており、思い出せないでいる。生まれはプリミアではないらしく、プリミアに来る前にどこにいて、何をしていたのかもわからない。


+ 十大悪魔(今回会いに行く人たち)
“強欲の雷帝”クレイド
“破壊王”バーシア
“好色の水魔”セラニア
“時空の統制者”メリストリル
“狂気の王”ガルゴゾード
“風来の病魔”パージール
“異形の狩人”デゼルグ
“喰らうもの”ライア
“夢を呼ぶ者”ファーデン
“魂の支配者”アルカイト


PC一覧

+ テンプレ
キャラクター名 (PL:○○)
性別:   年齢:   職業:
スタイル:
クラス: /
パーソナルデータ:

+ ランディ・L・ギブソン
ランディ・L・ギブソン PL: ゲイル
性別: 男性 年齢: 18 職業: 配達屋
スタイル: 魔導士
クラス: エレメントマスター 風
パーソナルデータ:
プリミアのメイジ。堕落のアーティファクトに興味を持っており、レナールと一緒に探している。何かしらの噂や文献を見つけるたびに2人で探検に出かけている。基本的にノリが軽く、ポジティブ。

+ 第1話メモ
第1話メモ:
1年以内にバーシアを倒さなければならなくなってしまったようだ。だが、要はバーシアを倒せればいいわけだ。だったら、修行に出て強くなればいい。どうやら堕落のアーティファクトを使えるようになったみたいだしこれも活用できれば可能性はあるだろ。というわけで行ってきます!

+ 第2話メモ
第2話メモ:
堕落のアーティファクト、ゲットだぜ! とりあえずこいつを使いこなようになるために修行するか!


+ コライド
コライド PL:妖精
性別:男性  年齢:16  職業:家事手伝い
スタイル:ファミリア使い
クラス:クレリック/ガーディアン
パーソナルデータ:
プリミア出身のメイジ。16歳の誕生日に突然父親から堕落のアーティファクトの守り人の家系であると言われ、即日侵入を許し封印を解かれる。
封印を解いて祝福(/呪い)を受けたランディと共に責任を取ってなんとかするため、旅へ出ることになる。
性格は頭脳寄りで責任感もあるが、いかんせん経験が足らずプレッシャーに弱い。
その上で事態に怒涛の勢いで状況に流されている為自覚がまだ追い付いていない段階。
がんばれ、早く覚悟を持てないととこの先つらいぞ。

守れるかも知れないものを、非効率と諦めて無くなるのを眺める。
その行為から生まれた後悔は、今でも彼の心にわだかまっている。
だからこそ彼は、守ると決めたものを今度こそ見捨てないし、見捨てられない。


+ アーロン・ヴェルテック
キャラクター名 アーロン・ヴェルテック (PL:K.O.U)
性別:男   年齢:22   職業:旅人(元薬屋) 
スタイル: 魔戦士
クラス: エレメントマスター(雷)/ソーサラー
パーソナルデータ:
かつてソグールの街で薬屋を営んでいた男。
ある日、街を契約者に滅ぼされたことで復讐を誓い、同じく生き残りのセレーネと共に旅へ出た。
旅の途中、契約者の主が雷帝クレイドであると知り、対抗するため雷の知識を得てメイジとなった。
かつての心の傷からどこかスレており、時には他者を利用したり我を忘れて復讐を果たそうとする面があるが、
地は困っている人を放っておけない性格である。
戦闘においては二本の槍で戦う。片方は薬屋時代、材料を採取する際の護身用として使っていたもので、もう一つはソグール兵士の遺品である。

+ セレーネ・クロネッカー
セレーネ・クロネッカー (PL:⊕φω)
性別:女   年齢:16   職業: 使用人(メイド)
スタイル: 魔導士
クラス:サモナー / バード
パーソナルデータ:元お嬢様、今メイド。故郷ソグールの滅亡の際にアーロン(PC3)に命を救われ、彼の復讐の路に同行することを決めた。
(実は、旅に出るまでメイジですらなかった。『影にて付き従う』メイドとしての知識『闇』は、彼女にとって最後のピースだった。)
感情の起伏はそこまで激しくはないが、主人が絡むとちょっと、というか割と慌てる。まあしょうがない。
バードで戦況を整えつつ、サモナーで蹴散らすという丁寧な戦い方を好む。しかし、彼女のメイン火力である『サモン:サンダーバード』からは、何故かたまに雛鳥が出てくる。まあしょうがない。

+ 第1話メモ
第1話メモ:
ランディーはいま、事実上もっとも堕落のアーティファクトに近付ける存在となった。それはそのまま、自分とアーロンが堕落のアーティファクトから遠ざかったことを意味する。
どうにかして新たなアーティファクトをものにできないかと考えを巡らせてはいるが——「もしアーロン様がランディーと同じ状態になってしまったら?」「私はアーティファクトを負いきれるだろうか?」——複雑な心境である。表面には努めて出さないようにしておく。
+ 第2話メモ
第2話メモ:
堕落のアーティファクトを安全裏に使用できる可能性が出てきた以上、少し落ち着いた。
ひとまずはプリミアの三人に同行を続け、ソグールを滅ぼした彼奴についても探りを入れていくことにする。
——タローの暗示は月の正位置。『完成、絶頂、非のうちどころのない美しさ』を意味する。対して逆位置は、『理性の崩壊(獣と化す)、絶頂の後の下り坂』。
もしもひっくり返ったら? そんな仮定を考えるよりかは、あのコントラクターに刃を届かせる方法を模索しよう。
大丈夫、月はまだ沈んでいない。
+ 第3話メモ
第3話メモ:
ついに。ついにソレとの邂逅を果たした。 ベルシアの街中で思いがけず見つけたのは、間違いなく故郷ソグールを滅ぼした男、ワーニーだった。
彼と対峙し、何も出来ず倒された自分と傷付いたアーロン。主人の悲痛な叫びを、しばし自分のものとさえ錯覚した。『足りない』——誤魔化しようもない所見だ。もっと強くならなくてはならない。
その手段[アーティファクト]は、これまた思いがけず手に入れた。否、もともと自分の中にあったものを、自分で手にした。『幻想槌』。文字通り手に余ってしまいそうな、あまりに大きい武器だ。
それでも。ワーニーの暴虐を思い出すたびに、不安は過ってシミのように残る。彼に比肩するにはあとどれだけの力が必要? それが努力で補えるものだったらと、今は願うばかりだ。
そして、ファーデンが自分を選んだ意味とは? 課された宿題はまだ白紙のままで、手のつけ方さえ迷ってしまう。
『私の中にあったそれは、確かに完成を迎えた。でも、肝心の“私自身”は——』
この問題は、自分で解かなければ意味がない。生きるため、明日もアーロンの傍らで魔導書を取る。
+ 第4話メモ
第4話メモ:
女二人、夜中、同じ部屋、何も起きないわけがなく——女子会。『セレーネって、アーロンのことどう思ってるの?』その質問には思わず動揺したけど、やはり同性だとつい気が緩んでしまい、心中を打ち明けることになる。
......アルミアは迷いなく、それでいいと言ってくれた。好きになってもいいのだと。ただ、今抱いているその感情にちゃんとした名前を付けるには、もうちょっと時間がかかりそう。
コントラクター・ティアナを保護した。殺せなかった、という方が正しいかもしれない。彼女とのこれからの旅路がどうなるかは全くもって分からないが、最後に『連れて行って良かった』と思えるように頑張る。

あれ?
クラーケン殺ったの誰だ?
+ 第5話メモ
第5話メモ:
セラの誘惑に対する反応といい、乙姫に魅了されたことといい、『もしかして......?』という感じはしなくはないけど、まあ男が男をカッコイイと思うのは良くあることだし、その逆もまた然り。きっと大丈夫。ただ、アーロンを好きかどうかはまだよく分からない。そろそろはっきりさせたい。
+ 後日譚
月夜もすがら星に酔う

プリミア村の空は広い。見渡す限り背の高い建物はなく、まだ少し埃っぽい住処を出れば、全天を望むことができる。特大のスクリーンには青空も夕暮れも良く映えたが、それらよりも私は星空を第一に好んだ。
日付も変わろうかという深い夜、古びた木製のドアを慎重に開けながら外に踏み込む。秋の風はつんと引き締まっていて、吸い込んだ空気が私を乱暴に冷やした。とはいえ、それで外に出たくなくなるわけでもない。
十数歩、細々足を進めて最適な場所を探す。手段としては寝転がってしまうのが一番良いのだろうけれど、流石にはしたないと思う。誰も見ていない、を理由にする気もなかった。足元でざわめく雑草を感じながら、少し開けた場所で歩を止めた。
夜空を美しく見るための作法を、私は一つだけ知っている。むろん、寝転がる以外に。他のやり方もあるとは思うけれど、それらを知らなくてもいいと思うほどに、私はその一つの方法が好きだった。
家々の明かりも消え、虫の鳴き声だけが遠慮がちに響く黒い静寂。そこに委ねるように、私は目をゆっくりと閉じ、そのまま顔を空に向けた。
三分間。
今でも決して忘れない、約束の時間。


「もう目を開けていいぞ、セレーネ」
昔の私は人を疑うということをしなかった。特に(九歳という年齢ではやむを得ないけれど)親の言動に関してそれは顕著だった。ある夜唐突に起こされ、目を瞑ったまま、父親に手を引かれながら相当の時間歩かされても、私は一抹の不安さえ抱かずにいた。
「はいっ」
元気よく返事をし、ぱっ、と音が出そうなほどの勢いで瞼を開く。見たことのない景色だった。いや、それ自体は何度だって見てきた。だけど私は——満天にこんなにたくさんの星々があることを知らなかった。
「......わぁ......」
ため息に近い声を漏らして、顔を高く上げる。期待通りの、期待よりも美しい憧憬。いつも冬に見えていた三つ並びの星の周りを、小さく鮮やかな光点が飾り立てるように浮かぶ。北方に一つ孤独だった一番星も、今日はいくつもの仲間を連れて光っている。そして夜の主役とばかりに、真ん中に白金色の月が輝いていた。
「どうして」
思わず口にしていた疑問を、言い切らなくとも父は理解したようだった。『どうして、いつもより賑やかで楽しげな星空なんだろう?』
「うーん、説明は難しいな......。——魔法、かな。そう、セレーネ、これは僕の魔法だ」
父はロマンチストではなかったけれど、子煩悩な人で、私を喜ばせるための答えを(例え真実ではなくとも)頑張ってひねり出してくれた。『暗順応』なんて興醒めな名前よりずっと素敵な答えだ。
「魔法? 私も使えるようになりますか!?」
「あ、ああ。いつか使えるさ。お前が良い子でいればね」
歓喜に父の袖を引っ掴んで問うた私に、父は動揺気味に返事する。そこまで感情を昂らせるとは思っていなかったようだ。きっと父は知らなかったのだろう、私が書庫でメイジに関する本を読んでいたこと、不思議を操る彼らに密かに憧れていたことを。
「じゃあ、ずっと良い子でいます! 約束は全部守るし、嘘だってつきません! それで魔法使いになって、いつかお父様とお母様にもっと綺麗な星空を見せるんです」
「それは楽しみだ」
広がる絶景に負けないくらい目を輝かせた私を、大きく分厚い手が撫でた。
それからしばらく、うっとりするような天望に浸っていた。会話はなく、動きもなく。十数分くらい経った後だろうか、父は神妙に話しかけた。
「セレーネ」
「はい」
「お前の名前の由来を知ってるか?」
「え?」
突然の話題に何も言えなくなる。七年後の今思えば、それこそがこの日父が伝えたかったことなのだろう。反射的に見上げた父の顔は暗くてよく見えなかったけれど、優しい表情をしていることがなぜか分かった。
「“あれ”なんだよ」
父の伸ばした指先を追うと、再び月が目に入る。
「異国の言葉で、あの星を『セレーネ』というそうだ。僕もお母さんも、綺麗な響きだと思ってその名前をお前に付けた。
それだけじゃない。お前には、月になって欲しいと思ってな」
「月に、ですか?」
「ああ。世界がすべて暖かな昼だったら良いとは僕も思う。だけどそうじゃないんだ。必ずどこかに夜があって、冷たい現実に苦しんでいる人がいる。
だから、セレーネにはその夜を照らす光になって欲しい。お日様の届かないところで黒く重たい荷物を背負わされている人を、支えてあげて欲しいんだ」
「......すみません、よく分からないです」
「今は、それでいいさ」
父は囁くような声でそう言うと、「帰ろうか」と私の手を取った。名残惜しそうに少しだけ抵抗した私に、父は諭すように告げる。
「大丈夫。セレーネが大きくなるまでは、この魔法はかけておいてあげよう。夜が来たら三分間目を閉じて、今日みたいに星空を見上げるんだ。そうしたら、この景色を何度だってみることができる」
「ほんとですか!?」
「ああ、本当だとも」
「お父様はすっごい魔法使いです!」
そう言った私を抱き上げて、父は家路へ向かった。いつもはおんぶで運んでいたのに、この日だけは抱きかかえるようにしていた。もしかしたら、照れた顔を隠したかったのかもしれない。今となっては分からずじまいだ。
気が付いたらベッドの中にいたので、恐らく知らずに寝てしまっていたのだろう。それ以来、私は機会を見つけては夜空を眺めるようになった。父に教えてもらった、ただ一つのおまじないを使いながら。


目を開く。星が、いつもより滲んで見えた。ああ、こんなことを思い出してしまったのは、月があの日と同じ真円だからだろうか。それにしても、私はちょっと涙もろいのかもしれない。二、三回まばたきをすればピントが合い、頬を熱い雫が流れた。
幻想的な色彩は今日も変わらない。この現象の理由はもう知っている。父が『セレーネが大きくなるまでは』と言ったのは、きっと大人になればその正体が魔法でもなんでもないことが分かってしまうからだ。
それでも、私に取ってはまだ魔法だった。メイジじゃなくとも覚えることのできる、誰も悲しませることのない素敵な魔法だった。多分これからどれだけ時間が過ぎても、それは変わらない。
父が種明かしをすることも、もう絶対にない。
「......ッ!」
やたら感傷的になってしまう夜だった。涙を落とすためにかぶりを振る。ついさっきまで不親切に思っていた冷たい風は、火照った感情を冷ましてくれる優しいものに変わっていた。
月を、月だけを見る。大きな明かりは私をそっと慰めた。同時に眩しいまでの白金色が、私に一つの誓いを思い出させる。ソグールが滅ぼされた日のこと、業火に包まれる中、胸に刻んだ大切な思い。

『大丈夫か!?』
差し伸べられたあの手を忘れることはないだろう。その手がなければ、私の人生はもう閉じていた。命が、ということではない。例え生きていても死んでいても、きっと私に『それから』はなかった。
『どうすれば、良いんでしょう』
『......復讐する』
目的も気力も剥奪せんとする炎と崩壊の中、絞り出すような声を聞いた。その時だった。その時初めて、父の言葉の意味を理解した。
この人は、強い。突然人生の暗闇に放り出され、絶望を強いられても、それに抗えるだけの心を持っている。
だけど、余りに孤独だ。真っ暗な道をしるべもなく歩もうとしている。確かにその強さがあれば最後には目的地にたどり着けるのだろう。躓いて転んでも、何度でも立ち上がるのだろう。
——ボロボロに傷つきながら。
『......では』
それは。
それは、残酷すぎる。
『では、私もお供させて下さい』
ならば私は、そこを少しでも照らそう。彼が躓いてしまったのなら、今度は私が手を伸ばそう。道の途中で避けられず傷付くのなら、私も同じ痛みを背負おう。

この全霊を尽くして、あなたの月[セレーネ]になろう。

「......ふぅ」
長い時間見上げていたせいか、頭に血が上ってしまったようだ。フラつく程ではないが、睡眠不足のときのように少しぼーっとする感覚がある。——今日はここまでにしようか。返しかけた踵を、ふと止める。
そういえば、と思い至った。この不定期的な天体鑑賞は、今まで私と父だけの秘密だった。幼い頃は『魔法は隠すもの』という認識があったから、頑として内緒にしていたし、旅に出てからはこんなことが出来る機会は滅多になく、それについて話す余裕もなかった。
魔法を、誰かに教えてもいいのかもしれない。この星空を誰かと共有して、語り合ってみたい。夜中にこっそりどこか小高い場所へ出かけ、あの日のような幻想を見てみたい。
願わくば、隣にあの人がいる中で夜を過ごしてみたい......なんて。
そんな惚けたことを考えている時点で、やはり私は逆上せている。明日のことを思うとそろそろ寝たほうがいいだろう。それでも、足は家へは向かわない。
もし次に誰かに伝えるとすれば、一人で夜空を見るのはこれで最後になるかもしれない。それを悪いことだなんて思わないけれど——そう、名残惜しく思えるのだ。だから今日は、もう少しだけここにいたい。今をじっくりと記憶に焼き付けたい。
元いた場所に戻る。目を閉じ、三分を数える。意味なくやり直したわけじゃない。この魔法が一番の効果を発揮するのは、目を開けた瞬間だから。思い出として残すとするなら、それがいいと思ったのだ。
気持ち長めにカウントしたあと、瞼を開く。今度は滲んでいない空が映っている。
降り注ぐばかりの星々と月の光が私を包む。この光景を的確に表現する言葉が出てこない。だから声に出るのは、やはり“それ”になってしまう。

「......わぁ......」

私たちの旅の終着点、プリミア。
静かな村の夜半で、私は一人星空に酔う。

+ アルミア・ルイス
アルミア・ルイス (PL:はんこつ)
性別:女   年齢:17   職業:家事手伝い
スタイル:魔戦士
クラス: ウェアビースト(猫又)/チェイサー
パーソナルデータ:
3年前に「プリミア」の近くの森で倒れていたところを発見された。
記憶を失っていたこともあり、身寄りがないため、ルイス家の家事手伝いとして居候させてもらっている。
自身がチェイサーの魔法使いであること、そしてアルミアという名前だけは憶えていたが、ウェアビーストの魔法を使えることは記憶になかった。3年も村に住んでいるため、村にはすっかり馴染んでおり、ランディやコライド、レナールとも顔見知りである。

+ 第1話メモ改
悪魔バーシアを1年以内に倒さないと、ランディが死んでしまう…。
そう思った時、私は直ぐに、ランディが強くなるための手助けをすることに決めた。ここでランディだけが旅に出てしまったら、もしかすると一生、彼には会えないかもしれないのだから。ランディは私の失った記憶のことを案じてくれたけれど、忘れてしまった記憶よりもランディの方が大切だもの。

+ 第2話メモ改
ランディの特別な力。それは堕落のアーティファクトの大きなデメリットを打ち消す力だったけれど、その力の行使の代償にランディの命は削られてしまう。堕落のアーティファクトを入手するまでは大丈夫、と思っていたけれど、あっさりと一つ目を入手してしまった。
堕落のアーティファクトを使うとランディが危ない。でも、堕落のアーティファクトなしでバーシアを倒せるのか…?倒せなかったら、ランディは…。そんな板挟みに頭を悩ませる。

+ 第3話メモ
エミリアという女性が、自分のことを探していたとランディから聞く。そして、彼女は自分に会うつもりはないらしい。彼女の名は記憶にないが、自分の記憶のための手がかりになるかもしれない。しかし、ランディのため、堕落のアーティファクト探しが優先。先ずは、ファーデンの祠へ。
ファーデンに見せられたメモリーランドで、謎の光玉に問いかけられる。なんとなく、彼(彼女?)に対して懐かしみを感じる。それは自分のことを知っているらしい。そして、自分のランディへの想いさえも、それにはお見通しらしい。「君は今、思っている以上に崖っぷちにいる」。そう言われつつも、その正体は掴めぬまま、目が覚める。
アルミア自身は知らないが、ランディは夢の中で創世の書…カインと名乗る声に遭遇し、アルミアのことをよろしく、と伝えられた。カインは何故、アルミアのことを知っていたのか。

+ 第4話メモ
夢の中。失われた記憶から、エミリアのことを思い出す。彼女は私と親しかった筈だ。この先も、夢の中…メモリーランドで、記憶を取り戻していくのかもしれない。
セレーネと女子会。いきなりの質問で戸惑わせてしまったけれど、彼女はアーロンへの気持ちの悩みについて打ち明けてくれたし、私は、ランディが生きるためには堕落のアーティファクトで傷つかなければならないことに悩んでいることを打ち明けられたし、ランディが迷った時に助ければ良い、という言葉も貰えた。
…もし女子会をせずに眠っていたら、ティアナに何をされていただろう…。

+ 第5話メモ
飲み比べに負けたら、ランディ・私がセラ・ニアと一晩"寝る"…!?!?
それはダメー!!でもランディはただ寝るだけじゃないかーとか言ってるし、絶対意味分かってないよ…。
…やるしか無いのか…!ようは勝ちゃあいいんでしょ!?

(5,6)=30、(5,5)=25…【巻き戻し】!!

(6,6)=ファンブル …うっ…もうダメ…。

※後でコライドに怒られた

ところで、アリサさんによると、アルミア・シェルストレームという人が、創世の時代に居たらしい。ただの偶然かと思っていた。
でも、ランディによると、創世の時代のカインという人から「アルミアをよろしく」と伝えられたらしい…私と関係があるかしら。

+ 第6話メモ
ガルゴゾードが消え去ったあの時。それは、思っていたよりもすんなりと、私の中に入ってきた。
それでも、すぐに整理はつかなかった。当然かな…。
そのせいもあって、気にかけてくれたランディに咄嗟に「なんでもない」と答えてしまった、けれど…。伝えなければならない。
この事がランディや皆の為になるかどうかは分からない。けれど、心配させるわけにはいかないもの。

+ 第7・8話メモ
私は、過去の時代、悪魔『ゼグバ』を倒す力を得るために、十大悪魔『ライア』の力を借りた。でも、そのせいで、運命は捻じ曲がり、エミリアを、ライアのコントラクターにしてしまった。
エミリアは助けを求めていたのに、私は未来へと逃げた。知らなかったとはいえ、私はエミリアを裏切ったのね。

私に迫られた選択は、二つ。食人衝動に駆られるがまま、人間でなくなるか、もしくはライアの言う通り、エミリアを殺して、私の食人騒動を消してもらうか。

エミリアは復讐のため、私を×すと言う。エミリアをこれ以上裏切れない…殺せない。でも、そのまま私が生き延びれば、また私は食人衝動によって、罪を犯すのだろう。それに、彼女はコントラクターで、堕落のアーティファクトも持っている。…それなら、せめて彼女の復讐を果たさせて、私が死ねば…。

エミリアの本音を感じた時…、私は最初から最後まで判断を誤っていたのだと気づいた。エミリアの気持ちに応えるなら、私は本気で彼女と戦わなければダメだった。

ごめんね、エミリア。そしてありがとう。

ランディにも、皆にも心配をかけさせてしまった。
私は、迷うだけ迷って間違った選択肢を選んでしまうばかりだ。
ごめんなさい。

+ 第9話メモ
アーロンとセレーネの敵討ちの相手、ワーニーは、コントラクターに自分の故郷を滅ぼされ、自分もコントラクターになって、その復讐を果たしたらしい。でも、ワーニーは、その力が原因で、他の街…アーロンとセレーネの街を滅ぼした。

私は、ワーニーに対して…自分とよく似ている、と思った。力が足りないから、悪魔に頼って…そして、そのせいで罪を犯した。私と、同じだ。

ワーニーはこの世を去った。もしかすると、それを望んでいたのかもしれない。自らの罪に殉ずるために。
…私は、罪を犯してなお、生き残っている。それは、エミリアのお陰だ。ある意味、ライアの悪趣味のおかげでもある。

私に出来ることは、このまま前に進むだけ。ランディのために、バーシアを倒すため。もう迷ってはだめだ。一直線に進むんだ。
いつでも迷わず、真っ直ぐ前に進んでいるランディみたいに。

+ 第10話メモ
まさか、師匠…カインさんに、こんな形で会うことになるなんて、思わなかった。
師匠は、ランディと堕落のアーティファクト、彼の力、そしてバーシアとの関係について、私達に教えてくれた。

バーシアを倒すには、堕落のアーティファクトの力が必要。
でも、バーシアは、ランディと魂を繋げ、力を得ようとしている。私達がバーシアに勝てなければ、世界が滅んでしまう。

とにかく、最後の堕落のアーティファクトを持っている、アルカイトのコントラクターを、捜しに行かないと。

+ 第11話メモ
レナール!そんな…。こんな形で再会したくなかった…。
でも、彼も自分の立場から、私達を助けてくれていた。最後までずっと、私たちのことを心配してくれた。本当にありがとう。

…私達はバーシアをきっと倒せると、彼は言った。でも、彼はその後のことを考えて欲しいって、ランディに言ってた。

確かに、バーシアを倒したとしても、問題は山積み。
集めた堕落のアーティファクトは、どうするの?
許されざる存在、コントラクターであるティアナちゃんは、どうするの?
…私のランディへの好意は、どうなっちゃうの?

ランディは、倒してから考える、って言ってた。ここまで真っ直ぐ進んできたランディが、後のことで躊躇したり、しないよね。
私も、全力で戦うよ。バーシアを倒さないと、何も始まらないもの。私は心の中で、そう誓った。

+ ...
(第12話(最終話)メモ)
...


NPC一覧

+ レナール・カークマン
レナール・カークマン
「必ず、帰ってくるんだよ」

 プリミアに住む本屋で魔法使いの青年。堕落のアーティファクトに関心があり、それに関する多くの情報を仕入れるが、眉唾がほとんど。魔法使いが村からいなくなることを危惧した彼は、村から旅立つランディたちを見送り、村に残った。

 第一話にて、バーシアにランディたちを助けるよう頼む代わりに、自ら彼の契約者となる。その後、バーシアより二つの堕落のアーティファクトを授かり、ランディたちの旅が失敗しないよう影でサポートをするよう命じられる。本人なりにランディと世界を救う方法を探したが、結局見つからず、ランディたちに全てを託して絶命する。

+ アリサ・ランドベルグ
アリサ・ランドベルグ
「堕落のアーティファクトについて教えてあげよう」

 魔導協会の研究員で魔法使い。以前プリミアを訪れたことがあり、その時にランディ、コライド、アルミラ、レナールとは知り合っている。ランディの「特別な力」を見抜いた人物であり、堕落のアーティファクトを始めとして、様々な魔法の分野に精通している。


+ ワーニー・フレーザー
ワーニー・フレーザー
「お前ら、あの時の死にぞこないか」

 “強欲の雷帝”クレイドの契約者。かつて堕落のアーティファクトと思われる『籠手』を求め、アーロンとセレーネの故郷であるソグールを滅ぼした。かなり欲深く、自身の為ならば周りへの被害も顧みないが、必要のない面倒事は嫌い。
 過去に自身の村を他の契約者に滅ぼされ、復讐のためにクレイドと契約をした。復讐の過程でクレイドの堕落のアーティファクトを求めてソグールを滅ぼした。悪魔の力によって欲望が増していき、善悪の区別すらなくなってゆく自身を止められる誰かを求めて旅をしていた。最期はアーロンによって倒される。


+ ティアナ・ドネロン
ティアナ・ドネロン
「デゼルグ様が言ってた。『狩り』は獲物が強いほど面白いって」

 “異形の狩人”デゼルグの契約者。幼いころに両親を亡くし、生きる術を失くしていたところでデゼルグに出会い、契約した。森の中に住み、動物や人間を狩ることでデゼルグから褒美をもらい、それを糧に生活していた。一度魔導協会の魔法使いと戦い、それに勝利した褒美として堕落のアーティファクトをもらっている。ランディたちに敗北し、『獲物』として旅に同行することとなった。
 趣味は手芸。家にあるぬいぐるみのほとんどは彼女の手作り。しかし、彼女がいつも大切に抱えているクマのぬいぐるみ『コロちゃん』は彼女の母親が作ったもの。戦う時は、コロちゃんはメタリックなでかい熊に変身する。


+ エミリア・セルデン
エミリア・セルデン
「これで…これでやっと…あなたを殺せる」

 アルミアのかつての姉弟子で友人。アルミアがタイムスリップしたことで発生した『時空の歪み』により食人衝動に襲われるようになり、アルミアの代わりにライアと契約した。アルミアの食人衝動を抑えるため彼女と戦い、敗北する。


セッション概要

+ 第一話「禁じられた秘宝」
第一話「禁じられた秘宝」

 堕落のアーティファクトを求めて旅をする魔法使い、アーロンとセレーネは、辺境の小さな村「プリミア」へと至る。そこでは、とある一族が堕落のアーティファクトを陰ながら管理していた。

 そして、この村に住む魔法使いであるランディとレナールはプリミアの近くの祠に堕落のアーティファクトがあるという情報をどこかから聞きつけ、夜間に探検に出かける。その堕落のアーティファクトを管理する一族であるコライドと、村に住む記憶を失くした魔法使いアルミアも探検に同行(コライドは堕落のアーティファクトを発見されないようにするために同行)し、祠に隠された紅い刀身の短剣を発見する。それを手に取ろうとするランディであったが、謎の爆発が起こり、吹き飛ばされてしまう。その爆発に気が付いたアーロンとセレーネも祠へと至るが、そこには悪魔の一体、「"破壊王"バーシア」が現れていた。バーシアは魔法使いたちの実力を見るために手に持っていた大剣を振り下ろし、攻撃を行う。魔法使いたちはそれに耐えきれず、そのまま気絶してしまった。

 目を覚ました魔法使いたちの目の前には、傷だらけのレナールと、バーシアの僕である「番人(自律して動く空の鎧)」が一体立っていた。レナールはランディたちが気絶している間、バーシアが召喚した番人と戦い、一体は倒したが傷を負ってしまったらしい。残った一体は起き上がった魔法使いたちに刃を向け、襲い掛かってきた。魔法使いたちは全力で戦い、無事に番人を打ち倒すことができた。

 その戦いをどこかから見ていたバーシアが再び姿を現し、魔法使いたちの力に興味を持つ。そして強者との闘争を求める彼は、「特別な力」が秘められているランディに手を伸ばす。バーシアに何かをされたランディの左手の甲には「破魔の印」という不思議な紋様が浮かび上がっていた。この印により堕落のアーティファクトを自在に扱えるようになったランディであったが、その代わりにバーシアから呪いのようなものを刻まれてしまい、一年以内にバーシアを打ち倒すことができなければ、ランディは破壊衝動に駆られる獣になると伝えられる。何れ来るランディとの戦いを楽しみにしていると言い、バーシアはそのまま姿を消した。また、祠にあったはずの堕落のアーティファクトもどこかへと消えてしまっていた。

 堕落のアーティファクトを探し、バーシアを倒すための力をつけるためにランディは旅立つことを決意する。それに協力することを申し出たコライドとアルミア、そして同じく旅をし、堕落のアーティファクトを求めるアーロンとセレーネも同行することとなる。レナールは魔法使いがプリミアからいなくなることを危惧し、彼だけは村に残ることとなった。必ず村へと戻ってくることを約束し、レナールに見送られ、一行は禁じられた秘宝を求めて旅へと出た。


+ 第二話「鼠の街」
第二話「鼠の街」

 プリミアを出立した一行は、一先ず魔導協会本部へ行き、情報を収集することにする。ランディたちはそこに所属する研究員、アリサと面識があり、彼女を訪ねてみることにした。アリサは堕落のアーティファクトやランディの「破魔の印」について一通りレクチャーし、堕落のアーティファクトがあるかもしれない場所をランディたちに教える。ランディたちはそのまま、協会の転送装置を使用してその場へと移動した。

 移動した先の街、スリラリロへと到着した一行は、そこで疫病が流行していることを知る。鼠がキャリアーとなっている病気であり、症状が進みすぎると死に至るらしい。情報を集めると、キャリアーである鼠が最近下水道に大量発生し、凶暴になっていると言うことがわかる。さらに、症状自体は深刻だが、キャリアーがいなくなれば流行は抑えられ、症状の進行を止められることが分かった。

 そんな中、疫病に関する話を聞くために、街の薬屋へと足を運んだアーロンとセレーネ。元々薬屋であるアーロンは、その薬屋が調合しているものが何の効果も持たないものであることに気が付く。病院へと支給されたその薬を調べてみても、やはり治療薬としての効果はなさそうであった。

 薬屋を疑いつつも、とりあえずキャリアーである鼠の退治に協力することにした一行は下水道に入り、鼠の群れに襲われながらも撃退する。逃げる鼠たちを追いかける一行が目にしたのは、巨大な蟻塚のような鼠の巣であった。破壊を試みる一行であったが、そこに薬屋の男が現れる。彼は「“風来の病魔”パージール」の契約者であり、キャリアーである鼠を繁殖させ、疫病を広めていたのだ。敵意をむき出しにする彼の手には緑色の指輪がはめられており、そこから強い力を感じたランディたち。一行はそれが堕落のアーティファクトであると確信していた。堕落のアーティファクトの力に怯みながらも、一行は薬屋の男を打ち倒し、巣の破壊に成功することができた。

 そして、男が手にはめている指輪をランディが手に取った瞬間、どこからかペスト医師の恰好をした男が現れる。彼こそが“風来の病魔”パージールであった。彼は任務に失敗した契約者を始末し、堕落のアーティファクトについては好きにしろと言い、一行の元を去る。去り際に彼は「堕落のアーティファクトには、まだ君たちの知らない秘密がある」と言い残していった。一行はその言葉に疑問を感じながらも、一つ目の堕落のアーティファクトを手にし、再び地上へと戻るのであった。


+ 第三話「夢中の歩み」
第三話「夢中の歩み」

 堕落のアーティファクトを手にしたその日の夜、睡眠をとっていたはずの一行は、気が付くと見知らぬ荒野に立っていた。不気味な紫色の地面や、自由に動き回る光の球体に戸惑いっていると、彼らのもとにバーシアが現れる。彼曰く、ここは『アフターランド』と呼ばれる死後の世界であり、堕落のアーティファクトにはこの世界とつながる力があるらしい。バーシアはその場を去り、堕落のアーティファクトを通じて、一行は無事に元の世界に戻ることができた。

 翌日、レナールやアリサからアドバイスを受け、一行は悪魔を祀る建造物を探ることにする。ここから最も近く、大きな建造物を目指し移動することにした。数週間の移動の後、目的の建造物近くの街ベルシアで情報を集める一行であったが、その中でアーロンとセレーネは見覚えのある人物を目にする。彼らの故郷、ソグールを滅ぼした契約者が街中を歩いていたのだ。その契約者、ワーニーに怒りのままに戦いを仕掛けたアーロンであったが、圧倒的な力の差に敗北してしまう。彼はアーロンにとどめを刺すようなことはせず、街から去っていった。

 街中での戦闘について衛兵から事情聴取を受けた後、この町にいる魔法使いに建造物探索の協力を仰ごうとしたところ、衛兵であり魔法使いであるダグラスが協力してくれることとなった。翌日建造物へと向かった一行は、警戒しつつ中を探索するが、中で倒れている人物に気を取られているうちに、急激な眠気に襲われて眠ってしまう。その中でダグラスはただ一人立っており、一行は眠りに落ちる寸前にそれはダグラスの罠であったことを悟った。

 眠りに落ち、それぞれが様々な夢を見る中、セレーネは暗闇の中で何者かに話しかけられていた。その語り掛ける何者かこそが、この建造物で祀られている“夢を呼ぶ者”ファーデンであった。セレーネはファーデンの姿を見ると、幼いころに夢の中でファーデンに出会ったことを思い出す。その時ファーデンはセレーネに『何か』を託しており、それを『完成』させるためには、セレーネが戦う理由を見出す必要があるという。戸惑いながらも、自身の強い思いを吐露したセレーネは、『完成』されたファーデンの堕落のアーティファクト、『幻想槌』を手にし、そのまま目が覚める。

 目が覚めたセレーネは新たに手にした知識をもとに、魔法を駆使して他の魔法使いたちを目覚めさせる。『眠り』を打ち破ったセレーネに驚きながらも、ダグラスは戦いを挑み、ランディたちを消し去ろうとする。しかし、破魔の印によって使用された堕落のアーティファクトの力に、ダグラスはなすすべなく敗北した。

 ダグラスはそのまま気絶し、ファーデンによって永遠に目覚めることのない眠りへと誘われる。ファーデンは姿を現さず、ランディたちを見逃し、幻想槌をそのまま託すことを告げる。そして、「なぜ私があなたにそれを託したか、考えてみなさい」とセレーネに言い残して、彼女の声は聞こえなくなった。一行は新たに堕落のアーティファクトを得ることができたが、夢の中でそれぞれが新たな疑問も抱えていた。


+ 第四話「獲物の定め」
第四話「獲物の定め」

 デゼルグの堕落のアーティファクトがあったと言われる、北方の森へと海路で向かった一行。コライドが船酔いしたり、クラーケンに襲われたりするなどのトラブルが起こったりもしたが、無事に目的の村まで来ることができた。

 村で情報を集めるが、それらしき物を見かけた、と言う情報はない。しかしこの村の長老から、『近くの森に入った者は戻ってこない』という言い伝えがあるという話を聞くことができた。しかし普通に狩人などが森へ入り、戻ってくることができているため、所詮言い伝えとして扱われている。しかし他に行く当てもない一行は、翌日森へ向かうことにした。

 その夜、アルミアは夢の中で一人の女性の姿を見る。アルミアが思い出せるのは、その女性の『エミリア』という名と、親しい仲であったという事だけであった。実は以前ベルシア(第三話)にて、ランディはアルミアを探していると思われる女性に出会っており、彼から聞いていたその女性の特徴とエミリアは一致していた(その女性もランディにエミリアと名乗っている)。自身の記憶に関係があるであろうその女性のことが気になりつつも、目覚めたアルミアたちは森へと向かった。

 森には特に目立った異常もなく、一行は問題なく奥へと進んでいっていた。獣の咆哮が時折聞こえたが、動物が出ることは事前に知っていたため、特に気にも留めなかった。やがて日が暮れそうになり、野宿する場を探そうとしていた一行は、何者かにつけられているような気配を察知する。その何者かに声をかけたランディであったが、彼は潜んでいた影(陰ではない)から現れ、一行の元から足早に去っていった。不審に思ったアーロンやアルミアは魔法で自らの身体を加速させたうえで潜んでいた何者かに追いつく。体つきから男性と思われるその人物は、仮面をつけており、顔を見ることはできなかった。彼はアーロンたちに何をするでもなく、ただその場を去っていった。不審ではあるが、深追いするべきではないと考えた彼らはそのまま元の場所へと戻った。

 改めてキャンプ地を探そうとしていた一行であったが、森の中に一軒の小屋を見つける。扉を叩くと、中から現れたのは『ティアナ』と名乗る10歳ほどの少女であった。彼女はこの家に一人で住んでおり、ランディたちをこの家に泊めてくれると言った。ランディたちは少女の誘いに乗り、小屋へと泊まることにする。少女が一人で生活していることに疑問を感じる一行であったが、『親切な人が助けてくれる』とティアナは答えた。ともかく疲労がたまっていたので、一行はそのまま部屋を借りて床へとついた。

 すぐに眠らずに女子会をしていたセレーネとアルミアは、部屋の外から視線を感じた。扉を開けてみると、そこには包丁を持ったティアナがいた。ティアナは彼女らを『獲物』と言って襲い掛かり、アルミアたちはそれをどうにか防ぐ。その騒ぎを聞きつけ、起きた男性陣もその場に遭遇する。ティアナは“異形の狩人”デゼルグの契約者であり、『狩り』と称して人や動物を襲っているそうだ。そのままランディたちに襲い掛かったティアナであったが、一行を追い詰めながらも敗北してしまった。

 ティアナは戦いの中で堕落のアーティファクトのものと思われる力を見せており、気絶したティアナを調べてみると、強力な魔法の力を感じる首飾りを発見した。それを手にすると、小屋にあったぬいぐるみの一つが動き出し、形を変え、片腕が機械の人狼のような姿となる。彼こそが“異形の狩人”デゼルグであった。デゼルグは他の悪魔たち同様、堕落のアーティファクトについては好きにするよう伝える。そして、敗北したティアナを始末すると思った一行であったが、『獲物をどうするかは狩人が決めることだ』と、他の悪魔たちとは違い、契約者の運命をランディたちに委ねた。それが彼の『狩人』としての考えらしい。デゼルグがその場を去った後、ランディたちはティアナを連れて村へと戻り、彼女から事情を聞いた。幼くして両親を亡くし、生きる術のなかったティアナは、彼女の目の前に現れたデゼルグと生きるために契約し、契約者として、狩人としての力を得たそうだ。ランディたちの『獲物』となった彼女は、『狩り』をしないのであれば生きるための支援をするという条件の下で、ランディたちの旅に同行するよう言われる。『獲物』であるティアナは断ることなく、素直にうなずくのであった。しかし、彼女とデゼルグの契約は終わったわけではない。彼女はこれからも、デゼルグの契約者として『狩り』の衝動と戦わなければならないのだ。一抹の不安を抱えつつも、旅に新たな仲間が加わったのであった。


+ 第五話「おいでませ!竜宮城」
第五話「おいでませ!竜宮城」

 ティアナを旅に同行させることにした一行は、ティアナに改めて旅の目的を話す。すると、ティアナは自身がデゼルグからもらった堕落のアーティファクトの他に、もう一つそのありかを知っているという。一行はその情報を頼りに、南の港町へと向かった。

 目的の港町にて、情報を集めようとランディとアルミアが酒場に入ると、一組の美男美女が酒を飲んでいる姿が目に付いた。何となく彼らに話を聞いてみると、彼らはランディについて(厳密には、堕落のアーティファクトを自由に扱える存在について)知っているらしい。女性の方は『セラ』、男性の方は『ニア』と名乗り、二人合わせて『セラニア』となるそうだ。つまり、彼らこそが二人で一人の悪魔、“好色の水魔”セラニアなのである。彼らの堕落のアーティファクトは近海の海底神殿のような建造物にあるそうだが、彼らの契約者がそれを手にし、それを利用してそこで好き放題しているようである。彼らは契約者を始末しようと考えたが、面倒になって酒を飲んでいたそうだ。もしもランディたちがその契約者を始末してくれるのであれば、そのまま堕落のアーティファクトを持って行っていいそうだ。ランディたちはそれを了承し、海底神殿へと向かう準備を始めた。(ちなみに、もっと情報を聞き出そうとして酒飲み勝負を始めたが、ランディたちはボロ負けした。)

 港町にて船を借り、目的の場所へと船を出した一行。その途中で、急に発生した巨大な渦に一行は船ごと巻き込まれ、気を失ってしまう。しばらくして目が覚めた一行は、見知らぬ石造りの部屋のベッドに横たわっていたことに気が付く。そこへ一人の女性が入ってきて、『ここは竜宮城です』と教えてくれた。この竜宮城には『乙姫』と呼ばれるボスがいて、彼女が一行を助けてくれたらしい。一行は彼女へ挨拶と感謝の意を伝えるため乙姫の元へと向かった。

 一旦建物の外に出た一行は、この竜宮城が海底に存在し、その周囲がドーム状のバリアのようなもので覆われているということが分かった。強大な魔法によるもののようだが、詳しいことはわからない。一行はここが件の海底神殿ではないかと考え始めた。そして謁見の間のような場所へ行くと、豪華な衣装を身に纏った女性、乙姫に会うことができた。乙姫は『好きなだけここにいると言い』と言って、一行を迎え入れてくれる姿勢を見せた。

 その後、竜宮城にいる人々から情報を集めることにした一行。竜宮城に住む人々はどこか楽しそうであり、皆朗らかである。彼らは最初からこの竜宮城に住んでいたわけではなく、地上にいた記憶はあるが、いつからここにいて、どうしてここへ来たのかは思い出せないでいるようだ。どうやらここにいると時間感覚が狂ってしまうようだ。また、この近海で海難事故がここ数年で多発しており、行方不明者が続出しているという情報を一行は事前に持っていた。ここに住む人々がその行方不明者であり、乙姫は件の契約者でないかと考えた一行は、とにかく傷が癒えたらこの竜宮城からすぐに出ようという考えに至った。

 翌日、乙姫に竜宮城を出たいと伝えると、乙姫の態度は急変し、杖を取り出して一行に襲い掛かってきた。この杖こそがセラニアの堕落のアーティファクトであり、乙姫はそれを駆使してランディたちをを苦しめる。しかし堕落のアーティファクトの力に慣れてきた一行の前に乙姫は敗北してしまった。乙姫が倒れると、それと同時に彼女の手から杖が離れ、さらにそこにセラニアが現れる。セラニアいわく、彼女はこの杖を媒介にして強力な魔法を放ち、竜宮城を作っていたそうだ。なぜこのようなことをしたかはわからないが、戦いの中で彼女は正気ではないとランディたちは感じていた。セラニアは後の処理と竜宮城の人々の救出を請け負い(無事に救出するが、人々を性的な意味で襲う可能性はあるとのこと)、ランディたちも海上へと浮遊させる。色々あったが、一行は無事に四つ目の堕落のアーティファクトを手に入れることができた。


+ 第六話「勇者降臨」
第六話「勇者降臨」

 竜宮城から港町へ戻り、そこで一泊した一行であったが、コライドは夢の中で“狂気の王”ガルゴゾード と出会う。ガルゴゾードは『堕落のアーティファクトが欲しかったら僕に会いに来てよ』と言い、自身を祀る祠がある場所を教える。目が覚めたコライドは他のメンバーにこのことを伝え、再び船を使ってそこへ向かうことにした。

 一週間後、どうにかその場所へたどり着いた一行はガルゴゾードと邂逅を果たす。ガルゴゾードは『堕落のアーティファクトを渡してもいいけど、普通に渡しても面白くないからゲームをしよう』と持ち掛ける。近くのグーズと言う街に堕落のアーティファクトを持った人物がいるから、その人物から堕落のアーティファクトを入手すれば良いそうだ。そこで気になるのがその時間制限だが、すぐにわかると言ってガルゴゾードは答えようとしない。さらに、それだけでなく『サブクエスト』も用意しているという。これについてもすぐにわかると言って答えようとしなかった。何にしても堕落のアーティファクトを求める一行はこのゲームに応じたのであった。応じた直後、一行は黒いモヤに包まれ、しばらく周りの状況がわからず身動きも取れなくなってしまった。数分ほど経過するとモヤは晴れ、再び身動きが取れるようになった一行であったが、コライドは一人身体に違和感を感じていた。どうやら彼の背中に、ガルゴゾードの紋を刻まれたようだ。この紋が刻まれた者は身体の内からガルゴゾードの声が聞こえるようになり、その声を聴き続けると発狂するか彼の契約者となってしまう。どうやらこれが先ほど彼が言っていた『時間制限』らしい。さらに一行は違和感に気が付く。一緒にいたはずのティアナの姿がない。これが『サブクエスト』であると考えた一行は、一先ずグーズにて堕落のアーティファクトとティアナを探すのであった。

 情報を集める中、自らを『勇者』と名乗る人物がこの街に来ており、『伝説の剣』と『伝説の盾』と『伝説の姫』を探しているらしいことが分かった。堕落のアーティファクトに関係している可能性を考えその人物について注意しながらティアナを捜索していると、ティアナによく似た10代後半の女性に出会った。彼女は街をふらふらと歩いていたが、どうやらつい数時間前の記憶しかなく、気が付けばこの街にいたそうだ。彼女がティアナに関係している可能性を考え、何より放っておけないことから、彼女を連れてグーズの街を巡ることにした(女性は自分の名前も思い出せず、『大きいティアナ』で『ダイアナ』と仮に呼ぶことにした)。

 ダイアナと出会った直後、『勇者』が『伝説の盾』を手にしたという情報を手に入れる。これが堕落のアーティファクトであると考えた一行は、手分けして勇者、ティアナを探すことにした。そしてアーロンとセレーネは街中の広場で群衆を見つける。何事かと駆け寄ると、『勇者』と名乗る人物が、以前森の中で出合った仮面をかぶった男(四話参照)と剣を交えている姿が見えた。『勇者』の手には剣と七色に輝く盾が、仮面の男の手には紅い刀身の剣が握られている(プリミアで見たバーシアの堕落のアーティファクトと似ているが、大きさが異なる)。仮面の男は魔法を駆使し、その場から離脱してどこかへと消えてしまった。改めてアーロンとセレーネは『勇者』に話を聞き、彼が持つ『伝説の盾』が堕落のアーティファクトであると確信する。彼は先ほど仮面の男が持っていた『伝説の剣』を求めて戦っていたそうだ。話しているうちに、彼は正気ではないと二人は感じていた。その後、彼は再び『伝説の剣』を求めてどこかへ行ってしまった。

 それから合流した一行は勇者を追おうとするが、急激に体調を崩したダイアナを気遣い、コライドとセレーネはダイアナを宿屋で看病し、ランディ、アーロン、アルミアは勇者を追うことにした。ランディたちは何とか勇者に追いつき、話を聞くことができた。勇者は『伝説の姫』である『ティアナ姫』を探しているという。伝説の盾によって彼女の呪いを解いたが、副作用からかどこかへ行ってしまったという。この話によってますますダイアナがティアナである可能性が高まり、一度宿屋に戻って考えることにした。

 宿屋にて勇者の話をし、これからどうするか考えていると、突然勇者が一行のいる宿屋の一室へと押し掛けてきた。ここにティアナがいるという天啓(ガルゴゾードの声)が聞こえてきたらしい。さらにランディたちを、ティアナを連れ去り、勇者の邪魔をする魔物とまで考えるようになり、ランディたちに向けて敵意をむき出しにする。ダイアナ(ティアナ)は自身を差し出し、ランディたちに迷惑をかけまいとするが、ランディたちによってそれは止められる。その様子を見た勇者は目の色を変え、ティアナをも敵として視認するようになった。今にも戦いが始まろうとしていたが、ランディは場所の移動を提案し、勇者もこれに賛同した。

 場所をガルゴゾードの祠近くの草原へ移した一行と勇者。勇者はティアナをティアナに化けた魔物であると考え、それが気に入らないのか真っ先に魔法を駆使して襲い掛かる。その瞬間、コライドの頭の中にガルゴゾードの声が流れ込んできた。『ティアナは契約者だ。このまま見過ごせば、自分たちの手を汚さずに彼女を始末できる。』とささやきかける。しかしコライドは守りたいものを守ると強い思いをもって反論し、ガルゴゾードはからかった様子で、しかしどこか納得した様子で声は遠ざかっていった。そしてコライドの防御魔法によってティアナを救い、そのまま戦いによって勇者は倒れた。

 勇者の手から伝説の盾を回収すると、勇者は自らの手で喉をかきむしり始め、ランディの介錯によって絶命する。そしてその瞬間、ティアナが頭を抱えたかと思ったら姿が消え、数秒経つと元の10歳のティアナがそこに現れた(『呪いを解いた』と言うのは、盾を媒介にして魔法を使用し、別の時間軸のティアナを連れて来ていた。しかしその副作用で別の場所に現れたり、体調を崩したりしていた)。そしてその場に笑い声を上げながらガルゴゾードが現れ、その盾は“時空の統制者”メリストリルの堕落のアーティファクトであると説明する。そして彼の堕落のアーティファクトは現在メリストリルが行方を知っているそうだ。彼は今回の『ゲーム』に満足した様子で、宙を飛び回りながらどこかへと消えていった。ティアナには今回の記憶はないが、しかしコライドたちに助けられた、ということは覚えているようだった。

 一件落着、かと思ったが、ガルゴゾードが消えた直後からアルミアの様子がおかしい。ガルゴゾードは『言葉』を司る悪魔であり、そして『言葉』は『記憶』を含んでいる。彼は一体、アルミアに何をしたのだろうか?

+ 第七話「罪と罰」
第七話「罪と罰」

 5つ目の堕落のアーティファクトを手に入れたのち、一先ずグーズにある宿屋に泊まることにした一行。そこで、アルミアが「記憶を取り戻した」と語りだす。どうやらガルゴゾードがアルミアの記憶を強制的に引き出したようだ。彼女は、自分の過去についてランディたちに語りだした。

 アルミアの本当の名は「アルミア・シェルストレーム」。「創世」の頃に生まれた魔法使いで、強力な力を持つチェイサーであった。彼女は当時の偉大な魔法使い『カイン』の弟子であり、『エミリア』は彼女の姉弟子で友人であった。彼女がいた時代では、『ゼグバ』と呼ばれる悪魔が発達した科学の力を利用し、猛威を振るっていた。アルミアはゼグバに対抗すべく、“喰らうもの”ライアから『ゼグバを倒したのち、100年間ライアの僕となる』という条件で力を借り、ウェアビーストとしての力を得た。『創世の書』によってライアが実質封印された後、アルミアは持てる全ての力を使ってタイムスリップを行い、現代へと時間移動した。こうしてライアとの契約を反故にしようとしたわけだが、その際に記憶と力の一部を失ってしまった。

 そんなアルミアの過去を受け入れつつ、一行は堕落のアーティファクトを求めて西へと向かう。一行が向かった先の街では、奇妙な巨人が村の外から現れ、暴れて消えるという事件が数日間隔で起こっているそうだ。そして村から離れた場所に祠のようなものがあるらしく、そこが関係しており、悪魔の情報が手に入るかもしれないと考えた一行はそこへ向かうことにした。

 祠へ向かう途中、向かっている方向、つまり祠の方向から巨人のような、しかし何とも言い難い色合い(透明なような発光しているような虹色のような)をしている『何か』が走ってくる。一行は、これが村を襲っていた『巨人』であると考えた。巨人はランディたちに近づいてくると、そのまま拳を振り下ろし襲い掛かってきた。一行が魔法や武器を用いて対抗すると、巨人は傷つき、霧のように消えてしまった。一行が巨人について疑問に思っていると、遠くの方(また祠の方角)から異音がする。アルミアには、それが彼女がいた時代の「バイク」と呼ばれる物の音であるとわかった。バイクはそのままこちらに向かってきて、一行の前で止まる。バイクに乗っていた男(フレデリックと名乗った)は、アルミアに用があるとして話しかけてきた。彼は“時空の統制者”メリストリルの契約者であり、アルミアを『罪人』と呼び、メリストリルの祠の元へと来させようとする。彼曰く、この世界には『時空の歪み』と呼ばれる、大規模な時間移動や空間移動、多くの人間が過去のものに手を出す、などといったことが起きると発生する怪現象が存在するという。『時空の歪み』は様々な形で発生し、先の巨人もそれの一種であるという。アルミアが時間移動を行ったことによって『時空の歪み』が発生したため、『時空の歪み』を嫌うメリストリルはアルミアを『罪人』として扱っているそうだ。

 どちらにしても祠へと向かう予定であった一行は、フレデリックに導かれるままに祠へとたどり着く。祠にたどり着くと、メリストリルの声が一行の頭に響いてきた。メリストリルは、『アルミアの罪を許してもいいですが、誠意を見せてもらう必要があります』と語り掛ける。悪魔の世界で『誠意を見せる』と言うのは、『契約』を行うと同意義である。悪魔との契約を拒んだアルミアであったが、メリストリルが他の方法を提案する。フレデリックと戦い、『審判』に耐え抜くことができれば見逃しても良い、と言うものであった。他に方法が見当たらない一行は、そのままフレデリックと戦うことを決意する。それを受けたフレデリックが戦闘態勢に入るのと同時に、少し離れた場所にある『遺跡』から、先の巨人が現れ、一行の元へと襲い掛かってきた(どうやら巨人はこの遺跡から発生した『時空の歪み』のようだ)。バイクに乗りながら戦い、さらに黒い魔導書から謎の力を使用するフレデリックであったが、一行はフレデリックと巨人に危うげなく勝利した。

 フレデリックはバイクから転げ落ち、そのまま動かなくなる。その時、彼の手から黒い外装の魔導書が落ちる。それは、ガルゴゾードの堕落のアーティファクト、『漆黒の魔導書』であった。それを手にし、偶然にも堕落のアーティファクトを手にしたことを喜ぶ一行であったが、アルミアは気が付くとフレデリックの死体に手を伸ばし、彼の肉を食べようとしていた。ランディによってそれは防がれたが、アルミアの身体には異常が起こっており、それはライアから借りた力によるものであると推測された。一方、メリストリルからは『審判』に耐えたと認められ、彼女がアルミアを『罪人』として追い詰めることはもうないとされた。

 一行が街へと戻ると、ランディとアルミアは見覚えのある女性が道を歩いていた。アルミアのかつての姉弟子、エミリアであった。彼女がなぜこの時代にいるのかはわからないが、アルミアは思わず声をかける。
エミリアはその声に反応し、アルミアへと駆け寄り、抱きしめる。
「アルミア…!本当にあなたなのね…!」
 やはり彼女は、アルミアが知っているエミリアのようだ。疑問はあるが、エミリアとの再開を喜ぶアルミアであった。
 しかし、同じ心境であると思っていたエミリアが不穏な一言を発する。
「これで…これでやっと…あなたを殺せる」
その瞬間、アルミアは腹部に強烈な痛みを感じる。エミリアの異形化した右腕が、アルミアの腹部を貫いていた。突然の出来事に、アルミアは成す術なく気絶してしまう。アルミアの姉弟子であり、そして友であったはずのエミリアが、何故こんなことをしたのだろうか。


+ 第八話「例え化け物になっても」
第八話「例え化け物になっても」

 エミリアが右腕をアルミアの腹部から引き抜いた直後、戦闘態勢に入ったティアナ(のコロちゃん)がエミリアを街の外まで弾き飛ばす。彼女はアルミアのことをランディたちに任せ、エミリアを追っていった。

 一方、アルミアは貫かれた傷が何故か急激に癒えていき、完全に傷がふさがった状態でふらふらと立ち上がる。しかし、何故か彼女はウェアビーストの力を使い猫又へと変身し、ランディに襲い掛かった。ランディに拳を振るい、彼に噛みつこうと瞬間、彼女の動きは止まり、そのまま再び気絶してしまった。

 その後、運ばれた宿屋にて事情を聞いたアルミアは、自身の身体に何らかの異変が起きていることを察知し、ウェアビーストの力を自身に授けた“喰らうもの”ライアに会いに行くことを決意する。その前にティアナを捜索することにした一行であったが、街の外で捜索しているところへ、度たび目にしてきた仮面の男が気絶したティアナを運んできた。彼は何を言うでもなく、ティアナを彼らのもとに送り届けたのち、去っていった。起き上がったティアナから話を聞くと、エミリアとの戦闘で敗北しそうになっていたところを彼が助けてくれたそうだ。仮面の男のことは未だわからずじまいだが、とにかくこれでライアの祠がある西方へと向かうことができるようになった一行であった。

 数週間後、一行は目的のライアの祠へとたどり着く。そこに現れたのは、巨大な肌色の球体に人間の口と二本の腕が付いた醜悪な生き物であった。彼こそが、“喰らうもの”ライアである。アルミアは、彼に自身の異変のこと、そしてエミリアのことを尋ねた。彼によると、彼女の異変は彼が与えた不安定なウェアビーストの力によるものであるらしい。正式に契約したわけでもないのに完全な力を与えるわけがない、と言うのが彼の言い分だ。さらに、アルミアが時間移動を行ったことにより発生した『時空の歪み』は、『本来起こるはずだったことを誰かが肩代わりする』という形で起こったそうだ。つまり、アルミアが本来行う予定だった『ライアとの契約』を、エミリアが行うことになった、と言うことらしい。その過程でライアの契約者から拷問を受け、凄惨な目に遭ったエミリアは、この原因となったアルミアに憎しみを抱くようになったそうだ。彼女はファーデンとその契約者が使用する特殊な睡眠ガスを使用し、アルミアがタイムスリップしてきた現代へとコールドスリープのような状態でやって来た、と言うことらしい。

 ライアは、アルミアに起きている異変について、条件を満たせば完全な力を与えて解決してもいいという。その条件とは、アルミアがエミリアを殺すことだ。エミリアは当然ライアに対しても憎しみを抱いており、仮に彼女がアルミアを殺せばその後には彼に矛を向けるだろう。元々ライアの命令を素直に聞くことがほとんどなく、利用価値が薄い彼女をそのままにしておく理由はないため、ライアはこのような条件を提示したようだ。しかし本音は、ただ友人同士であった二人の殺し合いを見たいだけのようだ。どうするかの決断はアルミアに任せ、ライアはその場から姿を消した。

 アルミアが頭を悩ませながら一行が近くの街へ向かおうとすると、そこにエミリアらしき人影を見つける。アルミアは、ランディたちに『自分が危なくなったら助けてほしい』と伝えてエミリアの元へ向かった。アルミアは、自身のせいでエミリアが苦しんだことを謝罪し、そのうえで契約者と化したエミリアを倒さなければならないと伝えた。エミリアは、そんな彼女の態度に納得いかない様子で、自身の魔法の力を解放させてアルミアに襲い掛かる。アルミアもウェアビーストの力を解放させるが、エミリアと本気で戦うような気配は感じられない。一方でエミリアも、どこか躊躇したような様子である。それを見かねたランディ、コライド、アーロンは彼女らの元へ駆け寄り、エミリアに向けて魔法を放つ。一方エミリアも、煮え切らない態度のアルミアに向けて渾身の一撃を放つ。何とか耐えきったアルミアであったが、とてもまともに戦う意思は感じられなかった。『せめて、エミリアの復讐だけでもかなえてあげたい。』彼女はそう思って、わざわざエミリアに殺されに来たのだ。そんなアルミアに向けて、エミリアは『本気で来なさい』と言い放つ。彼女の言葉と表情を受け、アルミアはエミリアの本音を感じ取った。そして本気になった彼女は渾身の一撃を放ち、それに対してエミリアも堕落のアーティファクトである槍を手に迎え撃つ。その結果、二人とも倒れることになったが、エミリアはもう虫の息であった。彼女はアルミアに堕落のアーティファクトを託し、いくら憎んでいても友であるアルミアを殺すことを戸惑ってしまったことを語り、自分と友でいてくれたことに感謝する。アルミアはそれを受け止め、エミリアを抱きしめる。エミリアは安らかな表情で、アルミアの腕の中で息絶えていった。

 その後、アルミアは自身の力が安定したように感じる。ライアは約束を守り、アルミアに安定した力を与えたようだ。アルミアたちはエミリアを埋葬し、彼女から託された堕落のアーティファクトを手に、再び旅立っていった。


+ 第九話「果て無き欲望」
第九話「果て無き欲望」

 一行がクレイドの堕落のアーティファクトを求めて、彼の祠があるとされる東方へ進んでいると、その道中で荒れ果てた村らしきものを発見する。かなり荒廃しており、人は住んでいないようだった。どうやら魔法によって滅ぼされたようだが、そこでセレーネが一つの人影を見つける。一行が近づいてみると、そこにいたのは“強欲の雷帝”クレイドの契約者、ワーニーであった。仇である彼を目にしたアーロンとセレーネは彼に話しかけたうえで、戦闘態勢をとる。ワーニーもそれを受けて戦おうとするが、アーロンが堕落のアーティファクトを手にした時点で、彼は『やめだ』と一言言って、その場を立ち去ろうとする。そのまま見逃すつもりのない二人はワーニーに向けて魔法を放つが、彼はそれらを容易く跳ね返す。彼は『三日後の夜にここに来れば相手をしてやる』と言い、その場を去っていった。疑問は残るが、準備をして臨まねば勝てない相手だと悟った一行は、最寄りの街で宿をとることにした。

 翌日、村について気になった一行が村について調査をしていると、その村はかつて『ベレソア』と呼ばれる村であり、20年ほど前に契約者によって滅ぼされたそうだ。また、町人にワーニーの顔を魔法によって見せて情報を集めていると、彼は昔ベレソアに住んでいたらしいことがわかった。つまり、アーロンやセレーネと同じく、ワーニーは滅ぼされた村の生き残りであるということだ。

 その夜、眠りについた一行が気が付くと、アフターランドに立っていた。数週間前からなぜか(ランディたちの意思に反して)このようにアフターランドに来ることが多くなったが、特にこの日は様子が違った。ただの荒野でなく、街のような場所に立っていたのだ。すぐに現世に戻ろうとするランディたちであったが、何故か戻ることができない。彼らの周りを人魂たちがふわふわと珍しそうに集まってくるが、その中の一つ(一人)がアーロンに話しかける。彼は、ソグールにいたアーロンの友人で、ワーニーによって殺された村人の一人であった。彼はアーロンから軽く事情を聴いたうえで、『あの人なら解決できるかもしれない』と言い、一行を近くの建物へと案内する。案内された先にいたのは、ボロボロの帽子とマントを身に着けた髭面の男性であった。他の人魂たちとは明らかに雰囲気が違うことはすぐに全員分かったが、アーロンだけは彼に以前(夢の中で)出会ったことがあった(第三話)。そのただならぬ雰囲気と、事前に調べていた情報から、彼こそが“強欲の雷帝”クレイドであるとアーロンは確信した。
 ワーニーのことについてクレイドに尋ねるアーロンであったが、クレイドは自分の祠に来れば話してやる、と言ってその場では語ろうとしなかった。そしてアフターランドから帰る方法をランディが尋ねると、クレイドは一行が持っている堕落のアーティファクトの一つを手にし、何かを念じたような仕草をした。何をしたかはわからないが、これで帰れるようになったらしく、一行は素直に現世へと戻っていった。

 目が覚めた一行はクレイドに言われたとおり、彼の祠へと向かった。たどり着いた祠の中ではクレイドが待っており、そのまま彼はワーニーについて語り始めた。大方の予想通り、ワーニーはベレソアの生き残りであり、彼の村を滅ぼした契約者に復讐すべく、クレイドと契約を行った。彼はソグールで発見したクレイドの堕落のアーティファクトを手にし、復讐を果たすことができたそうだ。しかし結果として、新たに復讐を求めるアーロンとセレーネが現れたということである。クレイドはアーロンに対して、『ワーニーに勝つには、お前は欲望が足りない』と語り掛ける。その真意が理解できないアーロンであったが、クレイドは話を切り上げ、一行の前から姿を消した。

 その夜、アーロンの部屋にセレーネは赴く。彼が復讐を果たしたのち、どうしたいかを聞きたいそうだ。アーロンはこのことについて頭を悩ませる。彼はワーニーとの決着の後にどこへ行けばいいのか、何をしたらいいのか結論が出せていなかったのだ。もしかしたら、自身もワーニーとアフターランドでかつての友に出会い、そこへ行きたいとさえも考えていた。セレーネは彼の言葉に寄り添いつつ、それでも未来を考えて彼の結論を待つ。やがて、彼はセレーネと、そしてランディたちと共に生きていくことを決断し、これからの未来を見据える。それこそが彼が持つ『欲望』であった。決断を済ませた彼を見届け、安心したセレーネはそのまま自室へと戻っていった。

 そして翌日の夜、荒れ果てたベレソアの村で、ワーニーは一人アーロンたちを待っていた。彼はクレイドの堕落のアーティファクトを取り出し、そのまま一行へと襲い掛かる。優秀な魔導士であるワーニーの力に押されるが、堕落のアーティファクトの力を駆使し、少しずつ彼の体力を削っていく。そこにアーロンの槍による攻撃が命中し、ワーニーはそれを避けることなく、そのまま倒れ伏す。彼が倒れる瞬間、アーロンに『よくやったじゃねえか』と声をかけ、そのまま息絶えてしまった。
 一行は彼が持っていた堕落のアーティファクトを回収し、彼をベレソアの地に埋葬して簡素な墓を作った。彼は悪人であり、ソグールを滅ぼしたことは確かであったが、復讐の被害者であったことも確かだ。彼を一人の人間として敬意を払い、彼のように『欲望』に身を滅ぼされないよう固く誓ったのであった。


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最終更新:2019年01月21日 11:37