Opening 1
ヴァレフールの南西部にあるヴィルマ村のある朝のことだった。アスリィとグランがいつも通り早朝に起きて、アレックスの部屋の前に貼られた「そこそこ遠い場所まで旅に出ます。ちゃんと帰ってくるので探さないでください。あとお土産買ってきます。」というメモ書きを見つけ、その紙のほかに有給休暇の届け出の紙が書かれており、期限の欄には二週間と書かれているのだった。
朝練に行こうとして、それを見たアスリィは「適当なうえにお土産とかいりませんよ!それに有給休暇の届け出くらい提出しに来てくださいよ!本当にアレックスさんはフリーダムですね。」
「お土産はリリちゃんさんに全部あげるとして…」
「どうしたのだ、呼んだのか?」
「いえ、呼んでませんよ。早いですねリリちゃんさん。」
「朝早くとも目が覚めるときもある、眠いけど。」とあくびをしている。
「あぁ、おはよう。」
どうやらグランも起きていたようだ。
そして、アスリィは、「それなら一発やりあって目でも覚ましますか?」といつもの準備を始めている。
「うん?アスリィが毎朝やっている朝練とかいうやつか?」
「そうそう!」
「それは私に対する挑戦か?」
「まぁ、挑戦ですけど。」
「ならば、答えぬわけにもいくまい!いいだろう、外に出るがいい!」
「もう外だよ!」
「もう外ですよ。」
「そうだった。」
リリスはどこにいてもリリスだった。
というと、朝練をするための準備を二人ともするのだった。グランは、そんな二人の様子を見て審判をしてくれるようである。
こうして、唐突にアスリィとリリスの朝練が始まるのであった。
Mini Combat
最初に、リリスが翼などを生やして戦闘態勢に入り、アスリィが拳をリリスに振りかざすが、避けきれないと判断して矢を即座に撃ちどうにかアスリィの拳を避けることが出来た。
「やりますねリリちゃんさん!」
「では、今度はこちらの番だな。」
そして狙いを定めてエネルギー弾のようなものをアスリィに向かって撃った。しかしさすがはアスリィ、華麗にその攻撃を避けた。どちらも当たらずに避けきり互角の戦いを見せた。
「あー、いい汗かいた。」
「こんなところかな。さすがだなアスリィ!」
「いえ、リリちゃんさんこそまさか矢で撃ち落としてくるとは思いませんでしたよ。」
「とりあえず二人とも汗でもぬぐっておけ」とタオルを二人に渡していた。
「感謝するぞ、領主。」
Opening 2
少し落ち着いたところで、アスリィが「まあ、アレックスさんがいないところで今日の開拓にも支障はないんですけど」とグランと話していると、「アレックスいないのか?」とリリスは不思議そうにしており、それを見て何かを察した彼女はアレックスの扉の前にあった休暇届の話をした。
彼の部屋の前にきた彼女は「あー、これを見てください。」と扉の前の紙を指さし、「なんだこれは」とその紙を見ると、そこにはアレックスが不在であることが書かれた紙があった。
「せめて有給休暇の届け出は外にそのまま出してほしくないんだが」「そうですね。」と二人は呆れている。
「なるほど、なるほど。私に黙って出て行っただと!まぁ、そのお土産とやらには期待しておこう。」
「じゃあ、アレックスさんのお土産は全部リリちゃんさんにお渡しするのではい、安心してください!」
「うーん、なんかそういわれると嫌な気がする。」
「そんなことないですよ。アレックスさんからのお土産ですよ!嬉しいでしょうリリちゃんさん。」
「それは嬉しくないと言えばそういうわけではないが…」
「じゃあ、仕事にいきますか。」どうやら余程この話題に興味がないようであり、「いや、まず朝ごはんにしようか。」とグランは真面目に答えている。
「アレックスが選んで来てくれたものならなんだって…別にそういうわけじゃ!二人ともいないではないか。」
どうやら置いてけぼりにされていた。
Opening 3
とりあえず朝食を食べ終え、何か知っているかもしれないと思ったアスリィはアイディに話を聞こうとした。
「アレックスさんがどこかに行っちゃったんですが、アイディさん何か知りませんかね?」
「そうね、私は彼がどこかに行ったか何も聞いてないわね。いないことすらしらなかったくらいですし。まぁ、戻ってくるとは思うわ。」
「そうですか、アイディさんも何も知らないんですね。」
もう少し村を調べてみると、どうやら村にロキもいないようだということもわかり、放っておいてもいいだろうと判断した。
こうしてヴィルマ村の面々は何事もなく村で生活をすることになった。
Middle 1
そしてアレックスとサラ抜きの開拓がはじまるようである。
「チーズなら町ごとに特色があるものだったぞ、その土地ごとの特色も出しやすいし!」とグランやアスリィにプレゼンをしているようだ。
「それにヴァレフールの港町で食べたチーズケーキはうまかったぞ。」
「何、チーズケーキだと?」
どうやらグランはこの話に食いついたようである。
「この村の反対のちっちゃい町だったが、甘未は充実していたぞ。」
「今度取り寄せてみるか…」とグランは乗り気であった。
こうしてリリスの初めての開拓が着々と進んでいくのであった。
その他にも、グランはボルドヴァルドの方の測量に赴き、アスリィはドラグボロゥへの橋を作るための設計図を書いて橋を作っていた。
そして、二週間が過ぎたがアレックスが帰ってくることはなかった。
Middle 2
その二週間と数日後にテイタニアからヴィルマ村方面へと移動する巨大な混沌を感じたため、現地調査をサラは頼まれるのでした。
とある日の早朝に、サラはテイタニアにて、新たな仕事の話を聞いている。
「すみません、魔法師様。先程緊急の連絡が入ったのですが、どうやらヴィルマ村近辺で強い混沌が感知されたようです。まだ、大事には至ってはいないと思うのですが、念のため確認していただきたいのです。テイタニアでの視察の仕事は終わっているので調査にいってくださると非常に助かるのですが…。」
「こちらの方としても何かあると困りますし、わかりました。ではそちらのほうに調査に行ってまいりますね。」
「ありがとうございます。あともう1つ、魔法師様も当事者なので知っておられると思いますが、魔法師様のいなくなられた後のヴィルマ村の現状報告もついでと言ってはなんですが、していただけると助かります。現場でみないとわからないこともあると思いますので、それに援助が必要なものは今後もまだありそうですし。」
「わかりました。そちらの方も見てきますね。」というと、彼女は相棒であるペリュトンに乗りヴィルマ村へと向かうのであったが、せっかく行くのであれば役に立つかもしれないと、グランが喜ぶであろう菓子職人を早急に探して連れていくことにした。
Middle 3
一方、お昼前のヴィルマ村では、ヴィルマ村に慣れるためにあちこちを見ていたリリスが炭焼き小屋をチラッと覗いた。すると、小屋の片隅に紙ペラを見つけた。そこには、「真相を知りたくば、村中にメモを隠したので全部探してね!はじめの一歩は台所の香辛料のツボの下にあるよ。 アレックスより」というものであった。
「なかなか帰ってこないと思ったら今度はこんないたずらか!これは私に対する挑戦と受け取った!」
「リリちゃんさんそこで何してるんですか?」
「ん、見るがいい!」威勢良く紙を渡すと、
「そういえば、アレックスさんまだ帰ってきていませんでしたね。」と完全に忘れ去られていた。
「忘れられていたのか。」
「あまりに支障がなかったので。」
「さすがに私は忘れてなかったぞ!」
「えらーい。」
「そうだろう、そうだろう。」とリリスは上機嫌になっている。
「リリちゃんさんてんさい!」と二人で間の抜けた会話をしている。
「台所の下の壺だったな。探しに行くぞ!」
「いってらっしゃいませ。」
「ついてこないのか?」
「仕事があるんですけど…」と話していると、アスリィとリリスは「あのー、すみません。ヴィルマ村というのはここでしょうか。」という声が聞こえてきます。
外を見ると、どことなく不運そうな青年が立っていた。
「何奴だ!」
「すみません。アレックスの友人のディラン・ガルバというものなのですが、ヴィルマ村の領主様か魔法師様はどちらにいらっしゃいますかね?」
「えっと、アスリィさんが魔法師です。」
「そうなんですか。いつもご迷惑をおかけしています。」
「はい、本当に。で何か御用ですか。」
「ちょっとお渡ししたいものがありまして」というと彼は麻袋に入っていた何かを渡されます。
「古びたでっかいランプですね。これが何か?」
「これは遠い地に伝わる魔法のランプというものだそうでどのような建造物も建てられる、というものだそうです。この村の発展に役立てていただければと思いまして…」
「それはどうも。でも、このような便利なものをもらう道理がないのですが。」
「アレックスがご迷惑をおかけしているようですし…」
「お前はアレックスの何なのだ!」とリリスが切り出す。
「悪友と言いますかなんといいますか…。言うなれば香辛料被害者第1号といったところでしょうか。彼がこの村に定住したと聞いたので、村中が香辛料にまみれてないか不安で…」
「まみれてはいますけど」
実際この村の特産品はアレックスが植えた香辛料が主になっているので、手遅れとも言える。
「とりあえず、たぶん有用だと思うので使っていただければと思います。ランプを運んでくるので疲れてしまったので宿屋があれば行きたいのですが。」そして彼はアスリィに連れられて宿屋にたどり着いた。
Middle 4
そうこうしているうちにサラが菓子職人をつれて領主の館に辿りついた。
「今日は来客の予定あったっけ。はい、どうぞ。」
「突然すみません。お久しぶりですグランさん。」
「珍しいね、連絡もなしにくるなんて。」
「すみません。少しこちらの方で調査に来ていまして。」というとサラはヴィルマ村近辺での混沌の異変について話した。
「それとドラグボロゥの方からヴィルマ村で働きたいというお菓子職人さんがいたということだったので一人お連れしたんですけど。」
「ようこそ!」とグランはサラが話し終わると食い気味に歓迎の挨拶をした。
「よく来てくださいましたね。お待ちしておりましたよ。」
「驚くほど厚遇ですね…」
無理もない話なのである。ヴィルマ村では甘味類は領主が取り寄せる以外は、アレックスが作ったという不安要素しかないうえに見たこともない形状のお菓子であることが多いため、安心して食べられる甘味が極端に少ないのである。
「グランさんは甘いものに目がないものでして。」
「なるほど。」
「この辺で菓子職人というとなかなかいらっしゃらないものでして、わざわざタイフォンから取り寄せたりしていたんですよ。」
「それはなかなか大変ですね。」とヴィルマ村の内情について話していると、「あ、サラさん!」とアスリィが帰ってきた。
「連絡くらいしてくださいよ。」
「アスリィさん、お久しぶりです。連絡もなしにすみません。」と後ろから話しかけられて驚いている。
「ヴィルマ村の方に一人の人と何かしらの影が行ったと聞いて、今のヴィルマ村の様子を少し見に来ました。」
「そうだったんですか。それで、そこでグランさんに固く握手されている方は?」
「あぁ、ドラグボロゥの方で菓子職人さんがこの村で働きたいということだったので、来てくださったんですけど。」
「それはそれとして、グランさん。」と言って、ディランからもらったものを見せた。
「サラさんは召喚魔法師でしたしこのアーティファクトについて知らないですか?」と話している裏で「厨房はこっちの方か!」とリリスが領主館の中を大声で叫びながら移動していた。
そして、メイジの二人はこのランプについての知識があるか思い出してみたが、「私はエーラムで勉強していないのでこういうアーティファクトには疎いんですよね。サラさんなら知ってるかな、と思ったんですけどね。」
「さすがに細かい異界の専門知識となると私もわからないことが増えていってしまうんです。ところで、このランプは一体どなたから貰ったのか、それともどこかから見つけてきたんでしょうか。」
「先ほど炭焼き小屋の方でディランさんというアレックスさんの旧友だか悪友だか知りませんけど、その人に渡されたんですよ。」
「その方は誰かから貰ったとかは…」
「さぁ、宿に案内しちゃったんでそこに行けば聞けると思うんですけどね。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「正直怪しいですよね!」
「そうですね、少し気になりますから後で聞いてみたいですね。」
「いざとなったら壊せばいいですよ。」
「壊して何かあっては大変ですし…」
「なるほど。」
「先に情報だけは収集しといた方がいいと思いますよ。」とサラは冷静に答えた。
そのように、真面目にランプについて考えている間にグランは菓子職人に「では、店舗の場所についてもまた考えたいところですがひとまず厨房の紹介をしておきましょうか。それと、領主館のこの部屋を一時的に使ってもらいましょう。」と話を進めていた。
Middle 5
一方、厨房に行ったリリスは「香辛料の壺はこれか。」といい蓋の下にあった紙をとり中身を読んだ。そこには『蓋をよく見て、僕は目の前にいるよ。』と書かれていた。
「どこだ!」と必死に彼女は探しているが見つかったのは蓋の上にあった青色の二等辺三角形の記号、『多分一人で探すと死ぬと思うよ、皆で仲良く協力してね。』という言葉、ヒントの三つが書かれた紙を見つけただけだった。
「あれリリちゃんさん何してるんですか?」
「つまみ食いか?」
「違うぞ、というかアスリィは知っておろうが!」
「リリスさんお久しぶりです。一体どうしたのですか。」
「サラではないか。ドラグボロゥに行ったのではないのか。」
「少しこちらで調査をしておりまして。」
「それで、リリスさんは何をなさっているんですか。」
「リリちゃんさんはアレックスさんの宝探しで遊んでるんですよ。」
「アレックスさんの宝探しですか。」
「アレックスのやつこんな書置きを残してどこかにいきおって。あとこれも見つけた。何の話かサッパリわからん。」といい厨房にあった紙も見せた。
「とりあえず追加の有給の申請書とかはないのか。」
「なかったですね。」
「じゃあただの無断欠勤か。」
「アレックスさんらしいというか、リテラシーがないというか。」
「最初の有給もしょうがないから認めたけれど、追加分がないとどうしようもないぞ。」
「有給休暇も出していないんですか?」
「もう二週間経つんだ。」
「二週間くらいで帰ってくるみたいだったので二週間待ってたんですけどね。忘れてたとも言いますけど。」
「それはそれでさすがに心配ですね。」
「それにしてもいつのまにアイツ入ったんだ。」
「出禁にしたはずでは。」
「そういえばそうだな。」
「誰かにお願いしてやってもらったんですかね。」
「この村にアレックスさんの言うことを聞く人がいるんですか!」
「それか、アイディちゃんがやったなんてことないですかね。」
「アイディに聞くだけ聞いてみるか。」
「聞いたときには何も知らないって行ってましたけどね。アイディさんが悪意のある嘘をつくとは思えませんし。」
「逆にアイディがこれを聞いて何か思いつくかもしれないしな。」
「一度お話を聞いてみますかね。」
「菓子職人さんの厨房見学はメイドの方々に任せておきましょうか。」
「ついでに村の見学もしてもらえばいいか。」といい菓子職人と別れることになった。
Middle 6
そして、アイディのもとに皆でむかった。
「どちら様で、皆さんどうかしましたか。あら、サラさんお久しぶりです。」
「アイディさんお久しぶりです。こんなに大勢で押しかけてきてしまってすみません。少しお聞きしたいことがありまして。」というとアレックスが残したメモについてを彼女に話した。
「何か思いつくことはないか?」
「そうですね。このヒントというのは場所についてですかね。」
「リリスが見つけた紙にも次の場所への誘導があったんだよな。」
「そうだ、最初は炭焼き小屋にあった。」
「宝探しゲームだと思えば次の場所っていうのは確かにそうだな。」
「本当に私達の仕事の邪魔をするのが得意ですね。」
「ヴィルマ村内のどこかだとは思うんですけどね。」
「文面からして宿屋だと思うんですけど」とみんなして悩ましい顔をしている。
「ディランさんにもお話を聞きたいですし、宿屋に行ってみるのもいいかもしれませんね。」
そして、アイディの部屋を去る時にグランが「そういえばアイディ、調子はどうだ?」
「おかげさまで毒などもなくなったので特に何事もないですよ。」
「それならいい。これから君一人で生きていくことになるわけだから、自立は後々していってもらいたい。」
「そうですよね。いくら見た目がコレとはいえ…」
アイディはもともとヴィルマ村がワトホート・インサルンドの手によって焼き討ちされた時に死ぬ運命のはずだった。それを、依り代を必要としていたロキにより助けられて、色々なことがあり今は見た目は少女、中身は20歳という訳ありな状態なのである。
「というわけで、君さえよければ書類の整理や事務仕事を手伝ってもらえないか?」
「一度考えておきますね。」
「返事は急ぐ必要はないからな。検討だけしておいてくれ。じゃあ、失礼したな。」といい部屋を後にした。
Searching 1
それなりに広い宿屋には一階のスペースに冒険者が魔境などでみつけてきた、暇つぶしになりそうな本が所狭しと並べられた棚が置いてある。そして、その中の一冊に見覚えがあった。あれはどうやらアレックスが持っていた異界魔書のようだ。
「これはアレックスのではないか。ヤツが置いて行ったのか。」と宿屋の人に聞くと「うーん、そのような本はなかったと思うんですけどね。」と不思議そうにしています。
グランが確認のためにその本に近づくと突然、本が空中に浮き、開きあたりが閃光に包まれます。
「誰だこんな危険物を持ち込んだやつは!」と叫ぶがその声は空虚に消えていった。
気付くとあたりが魔境化しており、どうにかしてこの状況を打破しなくてはならないという窮地に立っているようであった。そう、異界魔書に隠されたページを探すために様々なページをめくらなければならなくなった。
まず全員が一度ページをめくってみると、どうやら誰も目的のページを見つけることができなかったようである。しかし、特に何かが起こったような様子もない。実はそれぞれ、アスリィとグランはサラとリリスへの感情が変化しており、リリスは趣味嗜好が変わり、サラにいたっては禁忌が変化しているのだが、あまりに普段と大差ないものだったので自身のことといえど誰も気づかないのであった。
そして、魔書はこの結果に満足したかのように勝手にページをペラペラとめくるのであった。まるで、まだあるよとでもいったように。
次にまたページをめくっていると、アスリィとリリスは目的のページに近づいていったが、サラがめくると上からMPポーションが落ちてきた。
最後にグランがページをめくると…
アスリィが胸のあたりを見るようにジェスチャーする。
「えっ、なんじゃこりゃ!」と声がいつもより高い。
リリスは「誰だお前は!」と驚く。
サラは「魔境のようですからこともあるかもしれませんね。」としみじみとしている。
どうやら性別が変わるトラップのページだったようだ。
「ボルドヴァルドの奥の方とかだとたまにある話とは聞くがな。」
「リリちゃんさんはなったことあるんですか。」
「今のところないぞ。」
「いいなぁ、アスリィさんもなってみたいな。」
「あまりいいものではないと思いますか。」
こうして、どうにか目的のページを見つけるけることができた。また、グランは元の姿に戻っていた。
「ところでこの本どうするのだ。」
「サラさん、これエーラムに報告したほうがいいのでは。」
「有無を言わずに報告案件ですよ。なんでこんなものがあるんですか。」
「では、めんど、いえ報告に関してはサラさんお願いします。」
「私の方が詳しいでしょうしわかりましたよ。それでディランさんにもお話を聞いてみましょうか。」といい宿屋の人に聞くと部屋を教えてもらったが、訪ねてみても出てくる気配が全くしない。
「そういえばアスリィ、ディテクトカオスをちょっとやってもらえないか。」
「オッケイです。」といい周りを調べてみると、周囲の空気がもやっと反応する。それを伝えた。
「普通はそんな反応はしないんだろう。」
「そうですね。」
「本当にこれはアレックスさんが仕掛けたものなんでしょうか。」
「だとしたら解雇ですよ。」
「本当にもしアレックスが仕掛けたことなら、少なくともこの本に関してはアウトなんだが…」
「帰ってきたらとっ捕まえて尋問しましょうよ。」
「その辺は色々検討しなければならない。」
こうして謎が深まるばかりであったが、ディランの話を聞けていないことに気付いたアスリィはおもむろに扉を壊そうと拳を構えた。
それを見かねたグランは「待て待て。」
「大丈夫です。後で直せば。」
「積極的に物を壊そうとするんじゃない。」
それから宿屋の主人にディランの外出の有無を聞いてみたが「ずっと部屋にいると思いますよ。」という返事しかもらえなかった。
「さすがにこの時間に呼び掛けても返事がないのは心配ですね。中の様子を見ることは可能ですかね。」
「宿屋の主人さんですから鍵とか持ってるでしょ。でないと扉を壊しますよ。」
「このままだとアスリィが壊しかねないな。」
「では、ちょっと確認してくるので少しお待ちください。」
宿屋の人が確認して戻ってくると「寝てらっしゃいましたよ。」と伝えてくれた。
「そうでしたか。」
「じゃあ、書置きだけでも」とサラが言っているのと同時に「じゃあ起こすしかないですね。」と恐ろしいことをアスリィが言っていた。
「では、起きたら領主の館に向かうように伝えてほしい。」といい、紙を渡すと「はい、わかりました。」と主人は伝言を預かった。
Searching 2
落ち着いてから、次のヒントの紙を見て、「黄色の甘い香りと緑と茶色に包まれてます。」とサラが読み上げた。
「黄色の甘い香り、甘い香り…カスタードか!」
「グランさん甘いものに関しては頭が回りますね。」
場所にカスタードを指定するほどアレックスもバカではない。
「南の方にはバナナという果物があるらしいぞ。」
「茶色、シュークリームの生地だな。緑は何だ。抹茶のパウダーでもかけたのか?」
グランにしては珍しく的を得ていない発言をしている。
「バナナであれば、以前に見ましたよね。」
「そうですね。」
「バナナがある場所なら木とかも勝手に生えているよな。」
「木の幹で茶色もありますし。」
「土もあるしな。」
「バナナというとあれか、黒い毛むくじゃらの凶暴な獣が好むとかいう。」
「ゴリラが好むやつだな。」
「それでは、そっちの方に一回行ってみるのもいいかもしれしれないですね。」
「魔境じゃないですか。」
「魔境か!」
「準備してから行くぞ。」
みんなしていつも通りの準備を行い魔境の近くまで来たが、バナナの木は魔境の入り口近くにあり中に入ることなく見つかってしまった。
「随分と近くにあったな。」
「こんなところまで繁殖してたんですかね。」
「知らなかった。」
そして近くにあったバナナの木をよく見てみるとその中に枝に何かが括り付けられているということがわかり、アスリィがそれをとろうとしたときにどこからともなくサルが現れて「ウキーー!」といいくくられていた物を持って行ってしまった。
「待つのだ、このサル!」といい追いかけると少し奥まった場所に辿りつきそこには四匹のサルがいた。
「これはゴリラではありませんね。」
「小さいゴリラだな」
「ゴリラにしては何か少し違うような。」
「つまりゴリラ亜種か。」
「それはゴリラより強いのではないか。」
と会話している片手間にアスリィの拳とグランの弓矢によってサルたちは叩きのめされてしまった。そして、倒されてたサルたちからは四本のバナナと奪われた紙を手に入れた。
それを見たサラがリリスに調理器具をもらいたいまつを作る程度の火を用いて焼きバナナを作った。
「そっちの紙には何が書いてあるんだ。」と紙をみると、またもや色の図形とヒントが書かれていた。
「僕は今植物の赤の中にいるよ、か。」
「何を言っているんだ。」
「唐辛子だな。」
「アレックスが言いそうだ、間違いないな!」
「そうですよ、赤ですし。」
「香辛料畑に行けばいいんじゃないか」と言い全員で畑に向かってみた。
畑には木の看板があり「香辛料畑のルール 手でもぎ取らないこと。専用のハサミを畑に置いておくのでそれで切ってください。」と書かれていた。
「手で触ってはいけない唐辛子ってやばいのではないか?」
「あいつは何を栽培してるんだ。唐辛子としか聞いてないぞ。」
「何を育てているんですかね。」
看板には注意書きが付け足されており「かじりつく場合は味見とみなすのでもぎ取ることを許します。ちゃんとルールは守りましょう。」と付け足されていた。
「誰も噛り付きませんよ!何言ってるんですかこの人は。」
「怖いわ!」
「リリちゃんさん試しに食べてみますか?」
「嫌だ。」
どうにかしてハサミで切ろうとするが普通に切ってもしょうがないことがわかったのでリリスがデーモンの姿になってアスリィに魔法で助けてもらいながらも全力で唐辛子を刈りとった。
「こんな唐辛子があるか!」
「アイツは何を栽培しているんだ!」
といい恐る恐る唐辛子の中をちぎってみてみた。すると中には丸められた紙が入っており、記号とヒントが書かれているのであった。
「次は酒場か。」
「アレックスは何がしたいんだ!」
「なんなんですかこの唐辛子は。」
「その仕込みをするくらいなら追加の有給届を出してくれ。」
「もう、さっさと終わらせましょう。」と各々彼に対する怒りをぶつけていた。
余談だが、この場にアレックスがいれば「このはさみは唐辛子を傷つけずに切れるんですよ。すごいでしょう。」というだけで唐辛子の方は触っても問題ないのであった。更にルール違反をしていないかの確認のためだけに彼は部屋の窓から携帯端末を用いてこの畑を留守の間監視していたのである。
Searching 3
そして、酒場までたどり着くといくつかの机の中にクッションが置かれており、そこに紙が挟まっているが、その上にはガタイのいい男が座って酒を飲んでいる。
「クッションの下にある紙を取りたいのでどいてくれませんか?」とアスリィが頼むと「なんだい、ビール飲み大会の参加者か。」とどうやら話が通じないらしい。
「全く要件は違うんですが、一度お尻を浮かせていただければ幸いです。」
「そいつはできねぇなー。この俺に勝ったやつならこの席に座れるからな。そう簡単にはこの椅子には座れねぇよ。」
「レグザさん、どうにかならないんですか!」
「レグザさんめんどくさい酔っ払い客がいるんですけど。」
しかし、レグザはどうにもならねえという表情で首を横に振った。
「レグザさんができないとか重症じゃないですか。」
諦めて彼と対決することになった。
「リリちゃんさん!勝負挑まれてますよ!」「普段酒は飲まんが勝負事だ、とあっては仕方ないな。」「すみませんリリちゃんさん。」と申し訳なさそうにしている。
「なんだお嬢さんからやるのか、マスター酒を用意してくれ。」
そしてレグザは渋々ビールを持ってきた。
「それにしても、私を最初にしてよかったのか?私だけで決着をつけてしまうかもしれんぞ。」
「やってしまえ。リリス、一発でできると信じているぞ!」「それならそれでオッケイです!」「どうぞどうぞ。」
どう考えても背水の陣である。掛け声とともに両者飲み始めるが、さすがは酒飲みである、後れを取ることなくリリスより先に飲み切った。一方、負けてしまったリリスの方は酔っぱらって、ひゅうとその場に倒れてしまった。
「リリちゃんさん尊い犠牲でした。」
「さて、次行くぞ。」
「ハハハ、私の勝ちだ!」
リリスは1人で狂ったように叫んでいた。
「いけ、アスリィ!」とアスリィが挑むがやはり勝てそうにない。またも酔っぱらってしまった。サラは二人にひとまず水を飲ませたりと介抱している。
「さて、いくか。」とついにグランが勝負するようであった。
さすがに相手もかなりの量を飲んでいるので、互角の勝負であった。しかし、酒飲みは凶暴である。このままいけば負けてしまいそうだったがどうにか持ちこたえて、グランはギリギリの所で相手よりも早く飲み切った。それにしても、お酒の飲みすぎは危険なのでサラだけでも助かって結果よかったかもしれない。良い子のみんなは一気飲みダメ絶対。
「おぉ、さすが領主様だ。」
「一応な、元傭兵である以上酒は飲みなれてはいるんだ。」
「いいから、サッサとどいてくらさいよー」
アスリィも完全に酔っている。
「もちろんだ、好きなだけこの椅子に座るがいいよ。」といい男はどこかに行ってしまった。紙を取り、グランは酔いを醒ますためにオレンジジュースを飲み「しかし、アイツはなんて所に仕込んでくれたんだ。」とまっとうな愚痴をこぼし、アスリィはふらふらになりながらも魔法を使い、いつもの感覚を少しだけ取り戻し、リリスはサラによって近くの椅子に座った状態でくたばっていた。
サラはというと、レグザに水をもらうついでに「こちらにアレックスさんが一人で最近来たとかはないんですか。」
「あるんじゃないか。それなりに人が来るから何とも言えないが。」
「それじゃあ、この紙を仕込んでいる人とかはいましたか。」
「そこまで覚えてねえな。というかあのテーブルは、ほら、なぁ。」
「アイツ出禁にしてくださいよ!」
「いろいろあってな。まぁ、あれでいて絡み酒以外はまともだから何とも難しくてな。」
「むしろ気にかけてくださいよ。出禁ですよ、出禁!あんなの。」
「あと、もう一つなんですけど。テイタニアからこちらに来たという人っていらっしゃいますか。」
「この店にそんな奴がいたかはわからないな。」
「そうでしたか、ありがとうございます。すみません、お騒がせしまして。」
「むしろこちらこそすまないな。」
「サラさんが誤る事じゃないですよ。あの男が悪いんですよ、あの男じゃないですかー!」とまだ酔いが醒めきっていないアスリィも混ざって話していた。
「リリスさんもう大丈夫ですか。」
「まだなんか頭はくらくらするが、動くのには支障はないぞ。」
そんな会話をしている間にグランは冒険者にテイタニアから来た人がいないかを聞いていた。
その結果として、見慣れない変な格好の人が来ていたような気がするということがわかった。
「具体的にどんな格好か覚えているか。」
「なんか赤いローブを被ったメイジっぽい人だったかな。」
「すごく怪しくないかそれ。」
「その人はお一人でしたか。それとも何か連れているようでしたか。」
「いや、ぱっと見一人だったな。」
「ありがとうございました。」
「新しい紙が出てきましたしこの紙についてを解決するために、とりあえず出ましょうか。」こうして次の目的地になるだろう牛小屋に行くことにした。
Searching 4
牛小屋の中には沢山の牛がおり、グラン達はその中の一匹の首元に紙のような何かがつけられているのに気付いた。
「今までからパターンが見えてきました。」
「面白くなってきた!」
「よーしよし。」と近くにいた牛をなだめていた。
「暇なのかアレックスは!」
「暇なんじゃないでしょうか。」
「仕事の時間を返してくれ。」
「ホントですよ。」
「暇じゃないんだぞ。アイツと違って。」
その牛に近づこうとしたときに牛が突然暴れだして、右に左にと突進しているようです。
すると、近くの柵に「奥の方の牛は気性が荒いので追突されないように気を付けてください」と看板が立ててありました。
「追突?」
「追突!あの人絶対暇ですよ。」
「わざわざなぜ看板に。」
次に待っていたのは、牛を避けてあの紙を取る、ということであった。
「もう、牛を倒した方が速いですよ。ブラッドファウンテンを使わなければいい話ですし。」
「ちょっとかわいそうですよ。」
「牛も大事な財産ですからね。」
と言い、アスリィは牛の突進を避けて、紙を取ることができた。また、リリスも相当酔っていたがアスリィが辿りつくのと同時に牛を避けている間にその酔いも醒めてきた。
「今度は何だ。」といい紙を見ると、またヒントが書かれた紙があった。
「消臭…」
「炭焼き小屋か?」
「結局戻るじゃないですか。」
「最初の所ではないか。」と面喰らっていた。
そして、炭焼き小屋へとまた移動するのであった。
Searching 5
炭焼き小屋にやってきたのだが、炭と炉があるだけで他には何もなかった。もしかしたら、この炭の下に紙があるかもしれないので、どかしてみることにした。
途中で火の粉が炉から舞ったりしたが、どうにか炭をどかすことが出来た。その炭のほとんどをアスリィがどけたのは言うまでもない。
「ペリュトン無理させてごめんなさいね。」
どうにかして、紙を取ることができ、中身を確認するといつもの紙以外にもう一枚紙が入っていた。
「か、ぎ、の、あ、り、か、は、く、ま、ち、ゃ、ん、に、き、い、て、ね、ですか。」
「アレックスが前に持ってきていたな。」
「あれ、アイディさんにあげてませんでしたっけ。」
トピアサークルという、ボルドヴァルド大森林の魔境へ行った時に巻き込まれた事件によりアレックスはなんともいえない顔のぬいぐるみを混沌によって飛ばされた世界でもらい、それを幼馴染のアイディにプレゼントしていたのである。
「確かそうだったな。そういえばあの時は何かくれると言っていたのに結局その約束は果たされていないぞ。」
余談だが、アイディがぬいぐるみを貰った時にリリスに用意していたのはライオンに乗って魔境に行くという乙女心を微塵もわかっていないものであった。
「でも、今回はお土産があるんだろ。」
「お土産持って帰ってくるらしいじゃないですか。」
「持ってくると言っていたが。ただ、あのアレックスだぞ!」
お土産は欲しいが命は惜しいようである。
「まあ、とりあえずアイディの所に行こうか。」と彼女の部屋を訪ねた。
Detecting 1
「アレックスが宝探しゲームを用意していて、行きついたのが君の持っているそのクマだったんだ。」とみな疲れ切った様子で彼女の部屋を訪ねた。
「クマのぬいぐるみに鍵なんてついていなかったような。」といいカギを渡した。
「アレックスがこっそり括り付けていったということか。」
アレックスの部屋へと向かうことにした。
「ここがアレックスのハウスだな。」
「一生ハウスしていて欲しいですね。」
家の中には謎の文字が書かれた紙が乗っている皿が7枚と謎のメモが残されていた。
どうやら答えが分かったようで並べてみると、「お、す、し、た、べ、た、い」と読むことが出来た。
「だから何ですか!」
「お寿司ですか。」
「自分でオーキッドにでも行ってこい!」
「勝手に極東でも行けばいいんじゃないですかね!」
「アレックスさんもしかして東の方に行っちゃったんですかね。」
実は誰も確認しなかったが行き先の欄には大陸と書かれていた。
「山葵とか持ち帰ってくるつもりなんですかね。」
「そういうものがあるって一回聞いたことがあるような。」
アレックスが残したメモを探し、謎を解いて彼がすしというおそらく食べ物であろうものを買いに遠出をしている、ということがわかるのであった。
Combat 1
すると建物の外から「盗人は出てくるのじゃ!」という声が聞こえてきます。外に出てみると赤いローブを着た少女と小さい何かが立っていました。
すると少女が「す、すみません!彼女のお家みてませんよね?宝石があしらわれたランプなのですが…」と訪ねてきた。
「どっかで見た気がするぞ。」
「これでは?」といいアスリィがもらったランプをみせると、 「ソフィーこいつらが犯人なのじゃ!そこにあるランプは妾の住処なのじゃ!」とビシッと指をさした。
「じゃあ、どうぞ。」
ランプを差し出そうとした。
「この大罪人を許してはおけぬのじゃ!」
「は?」
「えぇー!悪い人たちには見えませんよ。それに勝てなさそうですしやめときましょうよ、アネッサ。」
「いやじゃ、いやじゃー。こやつらを倒すのじゃー!」
今にも戦闘になりそうなところを冷静に考えたヴィルマ村の面々は説得をしようと試みた。
「君たちは誰なんだい。」
「私は彼女の家を探してまして。」
「で、それがこれなんですよね。」とランプを見せる。
「た、たぶんそうなんです。」
「でもなんでこんなところにあるんだ?」
「それはですね、アレックスさんの旧友とかいうディランさんから貰ったものなんです。」
「なんで君、家が盗られたんだ。」
「そんなの知らないのじゃ。妾に聞くでない。気付いたら妾の家がなくなってたのじゃ。」
「もともとどこにいたんだい。」
「あれはどこだったかのう。」
「そちらのお嬢さんに聞いた方が早いのでは。」
「でどこにいたの。」とメイジの方に聞きなおした。
「えっと、遠い方の森ですかね。」
「具体的な方向は?」
「大陸の方です。」
「大陸の方から来たんですね。」
「まぁ、いろんなところをあちこちしてますね。」
「大陸のどこら辺なんだ。」
「うーん、どこと言われると…」
「服装としてはダルタニアンの方に見えるぞ。違うのか。」
「実は地名が分からなくてですね。森の中でランプをなくしたのは確かなんですが。それでいろんな所に行っているうちにという感じでして。」
「じゃあ結構長い間旅をしているんですね。」
「まぁまぁ長いこと旅してますね。」
「俺たちは貰っただけなんだ。」
「返せというなら返しますよ。」と話していると突然ランプがガタガタ震えだした。
Combat 2
するとランプが煙に包まれそこから、見たこともない赤い化け物が出てくるのだった。
「何こいつ。」
「ようこそ、紳士淑女の皆さま。本日の演目はー、ファンタスティック?デンジャラス?いやビューティフル!なジーニーによるワンダフルパフォーーマンス!」
「それで、ピンチそうなのはどなた?え?いない?むしろ僕ちんがピンチ?」
「間違えちゃった感じ?戻った方がいい?え?遅いだって?」
「ちょっとー、聞いてないんですけど。えー、演目も間違えてるって?何?今回悲恋じゃないの?」
「こんなレディーとボーイ相手に全力出しちゃう感じ?」
「じゃあ、改めまして紳士淑女の、え?もういいってさっさと戦えだって?」
「もー、せっかちな・ん・だ・か・ら。嫌われちゃうぞー。」と1人で勝手にいうと満足したのか目の前の何かがまた煙に包まれ、その後に大型のランプが出てきた。それとともに、二体の大型投影体も出現している。どうやら彼の存在自身が混沌を強めているようである。
そして、グランは弓を構え他の皆はあっけにとられながらもそれぞれ準備した。
「なんだ、出会うなりいきなり勝負を仕掛けてくるやつは。」
「リリちゃんさん、胸に手を当てて自分の行動を思い返してください。」
これに関してはブレトランドanotherのブレトランド開拓記第4話の冒頭を読んで頂ければ分かるだろう。
Combat 3
赤いバケモノと戦闘になると、グランは自身の弓矢に力を込めて、リリスは力を使うために羽を生やしたりしていた。
そして、ランプのバケモノは全員相手に魅了をしようとしていた。アーティストの中でも変わった存在のミラージュのようである。全員は対抗しようとしたが、敵も本気のようである。抵抗はむなしくも誘惑状態になってしまった。
しかし、さすがにアスリィの速さにはついてけないようで、彼女がいつもの拳をかまそうとすると、敵はひらりと避けさらに誘惑状態を強めた。
次に、光り輝く弓を射ようとグランが狙いを定めると、「今はまだ全力は出しちゃダメなのじゃ!」とアネッサは敵が何かをしようとしているのに気付き、全力を尽くすことを制止した。
いつもより弱い力で射ると、ジーニーがニヤリと笑い避けようともしない。そして、矢が当たったと思ったはずだったがそこにいたのはアスリィだった。ミラージュの中には敵自身を自害させたり、盾にさせるという行動で身を守ることができるようで、その策略にハマるところだったのだ。いつもの強さで矢を射っていたら、アスリィといえど無事ではなかったかもしれない。しかし、これでヴィルマ村のメイン火力ともいえる2人の攻撃が当たらないというなかなか厳しい状態になってしまった。
そして、ランプ型の化け物がその口先からちらりと鉛の塊を見せたかと思ったら、3方向へ2発の銃弾を撃った。しかし、どうやら精度は良くないのかペリュトンにしか当たらなかったようだ。また、威力も大したことがないのかたやすく耐えることができた。
バケモノの攻撃をかわしたところで、お返しとでもいうようにリリスは魔弾を放とうとしたが、アスリィの攻撃を避けられているため、ひとまず湧いたパラルダとワイルドハントに対象を変えて攻撃した。突然湧いた大型の投影体だったため当てることができ、投影体2体に銃弾を撃ちこんだ。
それに対して、パラルダはまだ動いていないサラを狙いウィンドアロウで攻撃してくるがリリスがギリギリで翼を硬化させてダメージのほとんどを弾く。
さらに続いてワイルドハントも矢を射ってグランを狙撃するがまたもリリスによって攻撃が撃ち落とされる。
その間にサラは次の攻撃のために詠唱をはじめていた。最後に、ペリュトンによりパラルダに攻撃をしようとするが避けられてしまう。
次に、またもアスリィが動きパラルダに拳を決めきるが、敵もギリギリのところで耐えた。しかし、グランが全力の一矢を敵全体に飛ばすと、耐えられなかったようでパラルダとワイルドハントは混沌核となった。
それとほぼ同時に戦う前の赤いバケモノの姿に戻った。
Combat 4
「あらま、どうやら今回のパフォーマンスは以上で終了!な感じ?ではでは、次にお会いするときにはーそこのアーチャーさんがー、敵と味方の区別がつくようになってからー。というわけでー、またお会いできる日までアデューー。」というと周囲一帯を包むようなほどの大きさの煙に包まれ、目の前にいた最大の脅威はどこかに消え去った。
「はっ、グランさんの矢が刺さっている!」とアスリィは我に返った。
「なんだったのだ、今のは。」
「グランさん撃ち間違っちゃったんですか。」
「撃った矢の位置にアスリィが来たんだ。」
「マジですか!全然記憶がないですね。」
Ending 1
何だったんだろうと話していると、慌ててディランがこちらに向かって走ってきた。
辿りつくと「すみません!どうやら魔法のランプを手違いで渡し間違えてしまったようでして…」
「手違い?」
「先ほどランプを渡したじゃないですか、どうやら間違えたようでというよりももう一つあったというか…」
「とりあえず、一から十まで全て話してもらおうか。」
「本当に申し訳ないんですけど、こっちのランプが本物みたいで。」というと最初にもらったランプよりも明らかに小ぶりなランプを差しだした。
「商人から買ったときに何かあったんですかね。」
「このランプは何なんだ。」
「頑張れば、何かを作り出せる効果があるらしいんですけど。」
すると、それを見ていたアネッサが「そ、それは妾のランプなのじゃ!ちょっと見せるのじゃ!」というとランプに飛びつき奪いとります。
そして、ランプをみると落胆した様子で、「これじゃないのじゃ。」
「それじゃないの。」
「それじゃないのか。」
「妾の住処はもっと綺麗なのじゃ。それに、すでに住人がいるようなのじゃ!」
「住人?」
「これもですか。」
「こやつは恥ずかしがり屋さんなだけだから、確かに安全な魔法のランプじゃな。」と言いディランへと渡した。
「このランプを手に入れた経緯を話してもらおうか。」
「えっと、骨董品屋で買いました。」としどろもどろになっている。
「どこの骨董品屋だ?」
「あれはどこでしたかね。通ってきた道にあったので、あれは砂漠だったかな…」
「全く要領を得ませんね。」
「いや、魔法のランプと聞いたもので。」
「なんでそんなアーティファクトじみたものが普通に売っているんですか。」
「それに、なんで俺らにくれようとしたんだ。もらう義理がないが。」
「悪友の分を清算しようかと」
「ありがた迷惑ということが、よーくわかりました。」
「アレックスと同類ということはよくわかった。」
「つまりは、悪気はなかったが致命的に頭が足りなかったといことだな。アイツの友人はそんなのばっつかりか。」
「おうそうだな。」とグランは思い当たる節があるそうだ。アスリィもリリスから目をそらしている。
「なんだ、その微妙な反応は!」
「いえ、何も。」
その視線の先にリリスがいるのはもちろんのことだった。
Ending 2
サラは落ち着いた様子で「骨董品屋で買ったにしても、そこでそのような物が売っているとなると、他にまた被害がでるかもしれませんし。」
「でも、一点物でしたよ。」
「とりあえず、このランプぶっ壊してもいいか。その方が世のためな気がする。」
「調査したいのは山々なんですけど、これ壊して…」
「サラが調査したいならいいが。」
「サラさんが持ち帰ってヴェルナさんに聞いてみるとか。」
「ヴェルナさんに聞いてみるか。」
「一応私の方で引き取ってその骨董品屋かそれ以外にそのような物を取引しているかどうか知りたいので、詳しくドラグボロゥの方でお話を伺いたいのですが。」
「は、はい。逆になんかごめんなさい。」
「真に誤ってほしいのはアレックスさんですよ!いや、アレックスさん関係ないんでしたっけ。」
そう、彼はただ有給休暇で寿司を食べに行き、村に変なメモを残しただけなのである。
「アスリィさん、落ち着いてください。」
どうやら誘惑状態が完全に解けきってないようでおかしくなったいるようである。
「一応こちらの方でこの件のことを調べさせてもらうという形でもいいでしょうか。」
「サラがそういうなら任せよう。ただ、そのまま持っていくのはいいのか。」
「そうですね、少し怖いですね。ひとまずヴェルナさんに連絡したほうがいいですね。」とタクトを取り出し慣れた手つきでヴェルナに連絡する。
「はいもしもし、サラさん。日程的にはそろそろヴィルマ村に着いた頃でしょうか。ドラグボロゥにそろそろ帰られます?」
「そろそろ戻るのですが」といったのちに今回の事のあらましを話していった。
「なるほど、この村ではまたそのような事件が。話題につきませんね。」
「このランプを取り扱っていた骨董品屋というのを調べた方がいいかと思うのですけど。」
「まぁ、間違いなくアーティファクトではなく投影装備とかの類になるんだと思いますが。どこかでそういうものを拾って売り歩いている、という商人がいても不思議ではありませんが、さすがに内容が目に余りますね。」
「それで、他の村や町で同様な事があると本当に困りますし。」
「出所をはっきりさせなきゃいけない、というとそのランプ自体の安全性も確保されていないでしょう。不用意に持ってきてその魔人が現れた、となっても困りますし。しばらくは、ある程度勢力のある所に置いておくしかないと思います。」
「じゃあ、ヴィルマ村に置いておいた方がいいんでしょうか。」と横で聞いていたアスリィは聞いてみる。
「安全な輸送手段が確立されるまではそうですね。どうしても問題があるというようだったら、私が一度ヴィルマ村に出向けばルートディシーブでつなぐことが出来ますが。」
「ヴェルナさんもご多忙でしょうし。街道は通りましたけどわざわざ来ていただくのは。」
「出所自体はおいておくにしても、あとはそれをどうやって管理するかですが、エーラムに要請すれば回収用のエージェントを派遣してもらうことは可能だと思いますよ。エーラムとしてもそれほどの力を持った物が無造作に置いてあるというのは看過しがたいでしょうし。私が提示できる選択肢は三つです。エーラムに回収してもらうか、私がルートディシーブで回収してドラグボロゥで保管するか、そのままヴィルマ村で保管してもらうか。」
「個人的にはドラグボロゥで管理してもらえる方がありがたいですかね。」とグランの考えをサラが伝えると、「わかりました。では、一度私が出向く必要がありますね。どちらにせよグランさんとは別件でお話もしたいところでしたし。」
「そういえば、こういう類のものもあったんですけど。」
そして、アレックスの持っていた異界魔書の騒動についても話した。
「それもまとめてヴェルナさんに回収してもらえばいいんじゃないですか。」
「どうせヴィルマ村まで行くのでそこでその異界魔書の効果が一回きりで安全なのか、これ以降も魔境化するのかを判断する。それ次第でしょう。もう安全なようでしたら持ち主に返してもいいですし。」
「そうですね。では、ヴェルナさんにはお手数かけますがよろしくお願いします。」といって報告を終えた。
Ending 3
すると、ヴィルマ村の面々が聞きなれている声が聞こえてきた。どうやらアレックスが帰ってきたようだ。
「なんだ、アレックス。」
「あれ、みんなただいま。なんかあったの、人増えてるけど。」
「アレックスさんお帰りなさい。」
「アレックス寿司はうまかったか。」
「いや、寿司の材料を買いに行ってたんだけど。」
「アレックスさん、それ以外のことで少しお話があったりするのですけど。グランさんは御用がるみたいですよ。」
「ひとまず、領主の館にこようか。」もはや怒りにもならない声で言った。
「なんかありました。」
「ゆっくりと話をしよう。」
さすがの彼でも悪寒が走った。
「おかしいな、そんなことしたかな。」とアスリィとグランと共に領主の館に向かうのであった。
「それでご用件は。」
「さて、期限を過ぎて帰ってきたわけだが…」
「それは、ちゃんと書状をもらったんで」と紙を渡してきた。そこには、「魔境討伐に助力してもらった。」と書かれており領主の認印がしてあった。
「だからといって減給を免れるわけではないんですけどね。」とアスリィもご立腹のようすである。
「何してたんだ。」
「どうしても買いたい食材が買えなくて。」
「詳細はいいです。とりあえず、減給の期間を」
「え、えぇーー。そんな、魔境討伐しないと寿司作れないし。」
「そういう問題じゃないんですよ!」
「しかも連絡の取りようあったよね、領主の協力があったなら。」
「大陸の東の方だったので」
「遠巻きに何か送ったりとか」
「手紙とか送れましたよね。」
「僕も二週間で帰ってくる予定だったんですよ。」
「だとしてもそれは連絡を怠ったということになるんじゃないですかね。」
「あとですね!あのパズルやめてください。」
「あれは何のためにやったんだ。」
「ほら、みんな村の事意外とみてないから…」
「見てますよ!」
「レクリエーションしたいなぁとでもそんな時間のかかるやつじゃないはずだけどな。じゃんけんするだけの仕組みにしておいたんだけど。」
「アレックス、お前が見ていないだけで俺らはいろいろ仕事があるんだ。」
「というかですね。私たちのことを見てないのはアレックスさんでは?毎日毎日仕事があるんですよ!」
「だから、七か所でじゃんけんするだけの…」
「じゃんけん?」
「うん?」
「ん?」全員の頭の上にはてなマークがついた。
「じゃんけんに勝つまでっていう風にいろんなところに書いたはず。」
「なんですかそれ。初めて聞いたんですけど。」
「なんだそれ。」といい紙を見せると、「その紙をもらうためにじゃんけんするんだけど。」
「誰と?」
「そこにいろんなものを設置したはず。」
「特にじゃんけんもせずこの紙だけが置いてありましたけど。」
「あれ、おかしいな。じゃんけんに負けたら残念!っていうようにセットしてたはず。」
「でも、アレックスさん厨房に入ったんですか。」
「入りましたけど、壺だけですよ。」
彼は今までの様々な悪行から、この村の厨房への出入り禁止を言い渡されていた。
「出禁って言ってるじゃないですか。」
「私の知る限り出禁では」
「アレックス…」
「いや、壺だけですよ。他は何もしてませんからね。」
「そういう問題じゃないです。出禁と言われているのに入ったのが問題なんです。」
「いや、壺しか」
「はぁ、もぉ。じゃあここは無期限の大幅減給ということで」
「えーそんなぁ。」
「許してあげましょう。しょうがないですねほんとに。」
「とりあえず、おみや…」
「いらないです。」即答だった。
「食べれないものもちゃんとあるよ。」
「そうですか。」
「食べ物だったら全部リリちゃんさんに全部贈るところでした。」
「みんな寿司食べたくないんですか、寿司ですよ寿司。」
「寿司というのは聞いたところによると、ご飯の上に魚が乗ってるんですか。」
「そうだよ。あと山葵つけて醤油にペチャっとして。」
「でもその山葵って」
「桐箱のすごい山葵だよ。」
高々と箱を見せたが、これがまともな人の発言じゃないせいで誰1人として喜ばない。
「アレックス、寿司というのはご飯の上に魚をのせた料理であって山葵の上に魚をのせた料理ではないぞ。」
「わかってるよ。米はもう僕の家に置いてあるんだ。重いからロキに運んでもらってて。」
「とりあえず今は寿司を食べる気分ではありません。」
「えーー。せっかく買ってきたのに。魚…」
「私の怒りが収まったら食べます。」
見かねたサラが「もう一度冷蔵庫をだしてあげるので」とフォートレスプロジェクションを応用して冷蔵庫を出していた。
「じゃあ、来週あたりは… 他のものも買ってきたんですけどね。」
「というかアレックス、じゃんけんは誰に頼んだんだ?」
「異界魔書に書いてあるようにやってみたんですけど。」
「つまりは、それの使い方を盛大に間違えたのではないか?」
「そんなはずが。」
「その可能性が高そうだ。」
「高そうですね。アレックスさんですし。」
「アレックス、さてはお前頭が悪いな。」
「いや何言っ…リリちゃんには言われたくないよ。」
部屋が静寂に包まれたのち、「な、なぜだ。そこは同意してくれるところだろう!違うか領主。」とリリスが的外れな指摘をした。
「五十歩百歩だな。」
「団栗の背比べですね。」どちらも地球界で使われている言葉だがようはどっちもどっちである。
「もちろん私の方が五十歩であろう。アレックスは百歩も逃げたんだ。」
「そうだな、あぁそうだな。」どうみてもなだめているようにしか見えない。
「ならば私の勝ちということだな。」
「じゃあそういうことで」
不毛な争いが終わった。
Ending 4
「せっかく、寿司を使ったゲームを聞いたからやりたかったのに。」
「寿司を使ったゲーム?」
「寿司を使ったゲームがあるんですよ。」
「なんだそれは。」
「食べ物をゲームに使うものではないと思うのですが。」
「パーティーゲームで、ロシアンルーレットっていうんですけど。」
「普通に食べたいですね。」ごもっともである。
「それは当たったら激辛ですよね。」
「そもそも、アレックスが作ったら全部激辛の可能性があるんだが」
「そこはゲームですからね、楽しまないとダメじゃないですか。辛くするのは一個だけですよ。」
「一個だけですか。」
「そもそも、グランさんが全部回避しちゃうからですよ。」
「食べんぞ。食うとでも思ったか、お前が作った料理を。」
「五分の四でおいしいですからね。」
「つまり、五分の一でアウトじゃないか。」
「五分の一なんてたかが知れてますよ。」
「そもそも、食べ物で遊ぶもんじゃない。」
「これをやるために買いに行ったんですから。やらずに、っていうのはちょっと。」
もはや駄々っ子である。
「じゃあ、リリスとやってこい。」
「二分の一ですよ、楽しいですね。」
「そこはみんなでやるから楽しいんですよ。」
「アレックスさんは人の苦しむ顔を見て楽しむ人だったんですか。ちょっと見損ないました。」
「こういうのって盛り上がるんじゃ…」
「お通夜みたいになりますけど。」
「というか、お前の残したゲームのせいでこちとら仕事が溜まっているんだ。」
「そうですよ、このままじゃアスリィさん、兄さんとの夜の時間が取れないじゃないですか。」
「時間もかからないように作ったからそういわれても。」
「知らないとはいっても、それ以上にかかってるんで。」
「でもこれで最後ですからね。食べ物に激辛なものを混ぜるとか。」
「嘘つけ!」
「嘘つきの常套句ですね。」
「僕だって引き際はわきまえてますよ。」
「勝負じゃないんですよ。」
「遊びに付き合ってる暇はない。すでに付き合ったんだ散々。」
「じゃあ、一回だけやってくださいよー。」
「やだ、このひとー」
「断る。」
「せっかく終わったら、抹茶ケーキを作ろうと思ったのに」
「それなら菓子職人さんが来てくださったのでアレックスさんが作らなくても結構です。」
「えっ!」
「そんなものでグランさんを釣れると思ったら大間違いですよアレックスさん!」
「でも僕その人より料理うまいと思うよ。」としばらく押し問答が続いていた。
するとアスリィが逃げ道を思いついたようで「わかりました、冒険者の店の皆さんででやればいいじゃないですか。」
「酒のつまみにはなるだろう。」
「なるほど。」
駄々っ子は納得したようである。
「じゃあ、そういうわけで私たちは仕事に戻りましょう。ねぇ、グランさん。」
「あぁ、戻るぞ。サラも行こうか。」
「リリちゃんさんも…仕事ありますよね!」
「…そうだな!」
「リリちゃん、仕事あったっけ。」
「これでも、この村の冒険者だぞ!魔境に潜って見つけてきたものを売り払うのが私の仕事だ。」
「リリちゃんさん、今日はまだあのバナナ周辺しか行ってないですから、もっと奥の方にも行きたいですよね。」
どうやら全員避難することが出来そうである。
「じゃあ、食べないお土産だけでもいります?」
「見るだけ見ますけど。」
「見るだけは見よう。」
「何を買ってきたんだ。」
「えっとですね。」というと彼は少し歪な形をした花型のガラス細工を出した。
「その街でお世話になった領主さんに作らしてもらったんです。だから、何の危険もありませんよ。」
「綺麗ですね。」
もはや呆れた目で見ている。
「それはリリスにプレゼントすればいいだろ。」
「いや、結構量あるんですよ。」と数個のガラス細工を更に出した。
「暇だな!」
「ガラス職人にでもなるつもりか。」
「意外と面白くて、もしかしてこれも貰ってくれない?」
「危険がないなら貰いますよ。」
「貰うだけはしておこう。」
「貰っておいてやる。」
「せっかく作って下さったので」とそれぞれガラス細工を貰っていった。
Ending 5
「あの、アレックスさんこちらはアレックスさんの私物でしょうか」
今回の事件の原因ともいえる異界魔書を見せてきた。
「それ、宿屋に置いといたやつだ。そうだね。」
「私物なんですか?」
「私物だけど。」というと、今回の事についてをあれやこれやと話した。
「おかしいな、そこでじゃんけんをするはずなんだけど。」
「全くそういうものはなかったですね。」
「没収ですね。」とアスリィが横やりをいれグランも同意していた。
「状況が状況ですので、こちらで一時的にお預かりしたいんですが。」
「まぁ、いいですよ。」
「あの、アレックスさん拾ってくるのはいいですけど、危ないものはやめてくださいね。」
「変な使い方はやめようか。」
「サルでもわかるって書いてあったんで。」
どうやらサルの方が賢かったようである。
「危険だったら持ってってもらってもいいんですけど。」
「危険がなければお返しするので」
「じゃあ、持ってってください…」
「すみません、一時的にお預かりしますね。」こうして異界魔書はサラに引き取られることになった。
そうこうしているうちにヴェルナもヴィルマ村に辿りつき、ルートディシーブを用いてヴィルマとドラグボロゥをつなぎランプを回収することになった。
Ending 6
「今回もお疲れさまでした。」
「わざわざこっちに来ていただきありがとうございます。」
「忙しいところすみません。」
「いえいえ、ヴァレフールの中ではまだ近い方ですから。」
「街道も通りましたし。」
「そうですね。新しい街道があったおかげで随分来るのも楽になりましたし。あれも皆さんの成果ですよね。」
「はい、主にアスリィさんがやりました。アスリィさんが!」
単純に褒められたいようである。
「伝染病の脅威が去った以上、そこの道があるのは便利ですからね。では、問題のランプですが、そちらは要請のあった通りこちらで預かることにしましょう。」
「それとこちらの本」というと異界魔書をサラが渡した。
「一応アレックスさんの私物のようです。」
「こちらも一緒に預かりますか。」と受け取りながら言った。
「余程危険はないかと判断していますが、ドラグボロゥの方で保管しておいて、問題があったらこちらで対応する、ということで。あとは、ヴィルマ村の方から要請があれば返却することも可能ですので」
「はい、わかりました。」
「必要だったらその時は言ってください。」と無事に回収されたのであった。
「そういえば、ノエル君はどうでしたか。」
「一度ドラグボロゥにも来てもらおうかとも思ったのですが、メガエラの方で用事がありましてね。まぁ、メガエラはグリース領なので、正確に言うならばその少し南のクーンやイエッタの方ですが。そちらに、テイタニアの方から冒険者の方を派遣することになりまして。折角ならそちらの隊長として向かってもらうのがいいだろうと。そのようなわけで、残念ながら私自身はまだお会いできていないのですが、彼についての事情は、グランさんとユーフィさんの書状を受け取っていますし、こちらとしても彼の話していた内容は真実であろうと判断して動いています。そういえば、サラさんは知りませんでしたよね。折角ですし、サラさんにこの場で伝えておきましょう。」と現状ブレトランドが抱えている“とある問題”についてを一通り話した。
「そちらに関しては、今はノエル君と、彼の話では他にいる、という七人の仲間に任せるしかないですね。あなた方には星が見えるんでしたっけ。」
「星自体とは意思疎通はできないんですけど、いくつ星が出てきたか、ぐらいはわかりますね。」
「この中だとグランさんぐらいしかわからないんですけどね。」
「もったいぶらずにお聞きしましょう。今おいくつほど?」
「だいたい三十くらいですかね。」
「なるほど108の星そろうのは、そう遠くはないということですか。」
「そうですね。想像よりも速いペースで進んでますからね。」
「他の7星も頑張っているんですね。」
「役に立つかはわかりませんが、血清の方も急がなければなりませんね。」
「何せ、ここからすぐ近くですからね。」
「では、私の方からはそれくらいで。こちらを回収して帰りますね。」
一瞬、ヴィルマに来ていたメイジと妖精の二人のことを思い浮かべたが、「また、何かありましたら私の方から報告します。」と大事な事でもないだろうと彼女らの報告はやめておくことにした。
「サラさんも帰られますか。」
「もう少しヴィルマ村の様子を見てから帰りたいと思います。報告書も書かなければいけないので、もう少し滞在させてください。」
「部屋自体はあるからな。」
「歓迎ですよサラさん。」
「では、私は一足先にドラグボロゥに戻りますね。あまり長く、主席魔法師と次席魔法師がそろって空けるのはよくないですし。ルートディシーブは残しておくので帰ってくるときは使ってください。」
「すみません、ありがとうございます。」
こうしてヴェルナは危険物を回収して帰っていった。
Ending 7
そして、その日の夕方リリスはアスリィと共にとあるものを作ろうとしていた。そう、チーズも作れるようになったし、チーズケーキを作ろうとしているのである。しかし、言いだしっぺのリリスが先に焼こうとすると危うく焦げそうなところで、アスリィが取り出した。次に彼女が焼き、どうやら先ほどで要領を得たのか、いい焼き目をつけて取り出した。
「なかなか難しいのだな。話で聞いていた時は簡単そうにみえたのに。」
「やってみると違うことってありますよ。じゃあ、私はこれをグランさんに献上するので。」
「うん、行ってくるがいい。」
「リリちゃんさんはアレックスさんと食べるんですか、香辛料ドバドバかけそうですけど。」
「そんなことはさせぬぞ!」
どうやらリリスは何か策でもあるようだ。
そして夜になると、リリスの部屋に彼がお土産を渡しに来た。
コンコンとノックの音がした後に「リリちゃんいる?」と聞きなれたアレックスの声がした。
「誰だ、アレックスか。どうしたんだ、こっちから行こうと思ってたところなのに。」
「え、え?まだ渡してないお土産があったの忘れてたんだ。」
「お土産?あのガラス細工じゃないのか。」
「あれは、みんな用だよ。」
「つまり、私にだけのお土産ということだな。」急に声色が明るくなった。
「ほら、前回約束したし。用意しないのもあれじゃん。」
「ちゃんと覚えてたのだな、さすがだぞアレックス!それで何を持ってきたんだ。」と明らかに上機嫌である。
「えっと、ちょっと目つぶってて。」
「まぁ、いいが。」とリリスが目を瞑ると、首回りが少し重くなる。
「おい、アレックス目を開けていいか。」
「もう目をあけていいよ。」と言われ目を開けると、首にハート型のネックレスを身につけており、そのネックレスがほのかに光っていた
「これは?」
「やっぱりこれ光るのか。やっぱりこれにして正解だったかな。」
「なんなんだこれは。」
「魔境の中にあったんだ!」
どうやら彼は人の話を全く聞いていないようである。あれほど、異界魔書でやらかしているにもかかわらず全く悪びれる様子がない。
「待つのだアレックス!この光っているのは何なのだ。」
彼女が慌てているのも無理ない。彼が何かをしでかすときは、ろくな目にあったことがないのである。
「えっと、取扱説明書には何かすると光りますって書いてあるよ。」とリリスは彼が持ってた説明書を奪い取り、読もうとするがそのほとんどはかすれていて読むことが出来なかった。
「なんなのだこれ。」
「よくわかんないけど、光るらしい。」
リリスはおもむろにそのネックレスをアレックスの首にかけると、先ほどよりも弱いがぼんやりとネックレスが光った。
「なんだこれは、わからんぞ。まぁ、お前のくれたものだ貰っておく。」とリリスが自分でかけ直すと先ほどまでぼんやりと光っていたネックレスが光らなくなった。
「仮にこれが魔境で拾ってきた危ないものだったとしても、私ならどうにでもなるからな。なにせ私は天才だからな。」
いつもの自分を取り戻したのか意気揚々としている。
「天才…まぁ、気に入ってくれたら嬉しいな。じゃあね、おやすみリリちゃん。」
「待てアレックス!」
「え、なんか用あった。」
「こっちから行こうとした、と言っただろう。」
「そういえば、そんなことも言ってたね。」
「お前が寿司を探している間私だって遊んでいたわけじゃないのだ。その成果をみるがいい。」と箱を彼の目の前にとん、と置いた。
「これは?」
「ヴィルマ村の新たな名産品チーズを使って私手ずから焼きあげたチーズケーキだ!」
「辛いものばかりではお前の舌にもいい加減飽きが来よう。」
「あのー、体質的に食べれないの知ってて言ってるよね、それ。」
「なんだ、やっぱり辛いものでないと食えないのか。」
「食べたら、多分吐くと思う。おいしい、おいしくない以前にうってなるというか。」
彼は地雷を踏み抜く天才なのかと思うくらい不適切な言葉を選んだ。それは、少なくとも女の子相手には間違っても言ってはいけない言葉であった。
「私が作ったものでもか…」
「いや、うーん。その、元気な日に食べるよ。とりあえず貰っておくよ。あれでもリリちゃんこのへ…いやなんでもないよ。」
「知らぬ、もう知らぬ!甘いものを受け付けつけぬアレックスなど知らぬ!よかろう、今度はお前も食える物を用意してくればいいんだろう。」
誰だって作ったものに対してああ言われればこのくらい拗ねるはずである。
「リリちゃんが作ったならさすがに捨てられないから食べるけど。」
「無理して食ってもらわんでも構わぬわ!今度こそお前の意に沿うものを用意するだけだからな。待っとれ!」というと部屋を出た。
しかし、ここはリリスの部屋である。
どうやらそのことに気付いた彼女は戻ってきた。
「乙女の部屋にいつまでもいるでない!帰れ!」
「あぁ、うん。ごめん。」と追い出されてしまった。
すると彼が出ていくのと同じタイミングでアネッサが窓から部屋に入ってきた。
「なんだまだいたのか。」
「いるも何も、まだ探索も何もしてないのじゃ。」
「探索?ということは何だ、お前は冒険者なのか。」
「妾はそのようなものじゃないのじゃ。うーんと、探し物があるだけなのじゃ。」
「家だろ。」
「そうなのじゃ。それはそれとして、お主そのような宝石誰からもらったのじゃ?」
「これか、アレックスに貰ったものだぞ。」
「ふーむ、これはなかなか面白いものを貰ったものじゃな。」
「説明書はよく読めなかったがお前にはわかるのか。」
「妾もうわさ程度でしか聞いたことがないんじゃが、アレなのじゃ。宝物みたいなやつなのじゃ。確か狼の宝物なのじゃよ。」
「狼?なんだそれは。」
「妾も噂でしか聞いたことがないといったのじゃ。ただ聞いたところによると、着けてもらうと着けた側に好意があれば光るとか何とかいう、恋占い的なあれじゃな。」
「ほぎゃ!つけた側に?」
「好意があったら」
「つけた側に対して?」
「そういうことじゃ。」
先ほどのアレックスとのやり取りを思い出した彼女は「そ、そうか。教えてくれてありがとうな。感謝するぞ!」と取り乱した様子でまた部屋を出た。
「ここはお主の部屋じゃろ。」
「そ、そうだった。」とまた部屋に戻る。
「私、今すごい顔をしていないか… み、見るな!」。
今にも逃げ出すようにしてベッドにもぐりこんでしまった。
「お主にもいろいろあるのじゃな。では、妾はもう寝るのじゃ。お主もしっかり寝るのじゃよー。」というとまた窓からアネッサはスッと消えた。
そして眠れない夜が更けていくのであった。
Ending 8
一方、次の日の朝にアスリィはグランの部屋を訪れていた。
「アスリィか?」
「ノックだけでよくわかりましたね。」
「何回も聞いてると、なんかわかってくるんだよ。」
「グランさん、ほら最近チーズ作ったじゃないですか。リリちゃんさんがチーズケーキ作りたいとかで一緒に作ったんですよ。どうですか。」
「マジか!」
「休憩にどうぞ。」
「ひさしぶりだなぁ。食べていいのか。」
「グランさんのために作ったので。」
「美味い!」
「めっちゃ感激された!予想以上の反応です。じゃあ、それ食べてお仕事頑張ってください。」
「よし、これであと一日くらい働けるぞ。」と彼にしては珍しく、普通の菓子類以上に喜んでいた。
「じゃあそう言うわけで、仕事に戻りまーす。」
「あぁ、よろしく頼むよ。ほんとにありがとな。」とアスリィが出てくるのと入れ替わるようにリリスが部屋に入ってきた。
「おい、領主!」
「おう、どうした。」
「前に大陸の錬金術師が杏仁豆腐のレシピと一緒に置いてった麻婆豆腐のレシピがあっただろう!あれをよこせ。」
「あぁ、ちょっと待ってくれ。えっと、こいつだな。」
「借りていくぞ、恩に着る。」
リリスができる最良の路線変更である。しかし、アレックスからしてみればなんで毎回料理なんだ…と思うのだろう。
Ending 9
また、アスリィが仕事部屋に戻ろうとすると舌の根の乾かぬ内にアレックスがやってきた。
すごく嫌そうな顔で「なんですか。」と話を聞くと、「あの、いや、ほんとうにごめんなさい。」
「はい、謝ったならいいんですけど。で、何ですか。」
「企画書ってこれでいいのかな。」とレストラン設営計画と書かれた紙を渡された。
「今回、寿司のロシアンルーレットも無茶苦茶になっちゃったから。まぁ、それはいいとして。」
「冒険者の皆さんでやったら無茶苦茶になりますよね。」
「あれはあれで盛り上がってたんだけどね。」
「それで、レストランですか。」
「それでどうかな、このままだと料理させてもらえなさそうな気がするし。」
「させませんよ。でも、試みとしてはいいと思います。アレックスさんに料理はさせませんけど。」
大事なことなので2回言った。
「えー。」
「えー、じゃないですよ。場所を増やせば作れると思いましたか。」
「じゃあ、せめてレシピだけでも。激辛料理とかスイーツとかいろいろあるし。」
「チャレンジ用ならいいですけど。」
「こういうのはやると思うんですよ。」
「流行りますかねぇ。」
「企画に関してはアレックスさん以外にも担当させるつもりですので。アレックスさんが主任ではないですから。というか、私が主任しますから。」
「とりあえず、出しとくだけ出しとくね。」
Ending 10
滞在中のサラがアスリィと開拓に関して現状報告をしているようだ。
「アスリィさん、アスリィさん。」
「はい。」
「私、今この村の特産品を買ってるんですけど、何かお勧めってありますか。」
「最近新しくできたものならチーズですかね。リリちゃんさんが企画してくれたんですよ。」
「それって長持ちしますよね。」
「チーズですからそうじゃないですか。保存食として有名ですし。」
「じゃあ、それにしましょうかね。」
「誰かへのプレゼントですか。」
「そうですね…そのような感じですね。」
この相手に実は爆弾が仕込まれているのだが、アスリィは気づくはずもなかった。
「この村も発展しましたね。」
「そうですね。あ、橋作ったの私ですからね。」
「知ってますよ。最初ここに来たときは」
「焼け野原でしたもんね。」
「こんなに発展するとも思わなかったですし、皆さんがこうやって村で楽しく過ごしているのは考えつかなかったですから、そういうと感慨深いですね。」と買ったお土産を整理しながら話している。
「そういえばアスリィさん、別れ際に渡したあの日記はあれから書いていますか。」
「……」
「書いてないことを責めてるわけではないんですど。」
「あれ書かなきゃいけないわけではないですよね。ですよね!餞別にくれただけですよね。あぁ、よかった。」
それは、アスリィらしい返答だった。この村に来た時から考えると今は事務仕事も大分板についてきたがまだまだ駆け出しである。
「ちゃんと持っててくれてるならいいですよ。」
「はい、大丈夫です。持ってはいます。ちょっと、実家にいたころの家庭教師を思い出しました。」
「いえ、大切に置いといてください。」
「それはもちろん。はぁ、びっくりした。」
「アスリィさんも忙しいですからそんなお時間は。」
「報告書は書いてるんで。」
「そうですね。別で記録が残っているようですし。」
「そうだ、サラさん。そういう贈り物って敵国にもできるんですか。敵国なんですよね、一応。」
「あまり推奨されるものではないですよ。送っても途中で届かない可能性の方が…」
「そうですか。」
彼女にはアントリアの南西のパトラという場所に兄がおり、兄妹の仲は周りが引くほどにいいのだがヴァレフールにいる間はできてタクトを通じた連絡くらいなのである。それで彼女はせめて贈り物でも出来ないか、と思ったようだ。
「彼の場合、贈り物をしなくてもあなたとおしゃべり出来れば十分嬉しいのではないでしょうか。」
「そうなんですか。」
「あの人はそういう人ですから。」
「そうなんですか?」
「研究室に、あなたの…」
「サラさん?」
「いえ、もうあれは終わったことですし。」
答えを言ってしまうと、メイジであるサラと彼女の兄のアテリオは同じロート家なのである。つまり、サラは学生時代にアテリオが想像だけで作った妹の抱き枕を見てしまっているのであった。
「じゃあ、実家には送れますかね。」
「たまにそうやって送ってあげるとお父さんも喜びますよ。」
「いえ、父さんにはあげませんよ。」
「お母さまも喜ばれるんじゃないですか。」
「はい、母さんと使用人の方々とティニオにだけあげます。父さんにはあげません。」
「私としては、生まれた時の家族とはもう会っていませんから、家族を大事にするのって大事だと思いますよ。」
「梱包も終わりましたし。私は、これを送り届けたら報告書も書き終わっているので、帰ろうと思います。」
「ルートディシーブって便利ですね。」
「そうですね。」
「すぐですよ、すぐ。」
サラが帰ってしまうことに寂しさを感じているのであった。
Ending 11
こうしてヴィルマ村もいつもの日常に戻ろうとしていた。
そして、アイディのもとにグランが訪ねてきた。
コンコンと扉の音がすると、「あの、どちら様ですか。」
「グランです。」
「グランさんでしたか。」
「あぁ、今いいか?」
「大丈夫です。」
「仕事の話とかはどうだ、考えてくれたか?」
「年齢としては他の所でも働けないこともないですが、その場合どうしても外見がネックになりますしね。事情を分かっていただいているここで働かせていただけるというならありがたいかと。」
「それじゃあ、こちらからもお願いしよう。なんだかんだで、サラが抜けてから事務に関する仕事は人手が足らなくてね。」
「そのあたりは、魔法師でなくてもお手伝いできることがあると思いますので、そういうところで
サポートできればいいかと」
「それじゃあ、よろしく頼むよ。」
「こう見えても、長い間神格に憑依されていただけあって、いろいろ変な知識だけは溜まっているんですよね。能動的に動くことはできなかったですが。」
「とりあえず、後日いろいろ契約とかの話は持ってくるとして、何か具体的な希望とかはあったりするかい、働き方とかに関して。特にないようだったら、具体的な話をするときにしようか。」
「はい、ありがとうございます。領主様。」
「それじゃあ、おやすみ。」
村の戦力が一人増えた。
Ending 12
「また機会があればぜひ来てください。」
「今度は休暇を取って遊びに来れればいいかな、と思います。」
「その時は丁重にもてなしをするよ。」
「次席魔法師さんですからねー。」
「いや、ほんとにそんな。肩書抜きにして」
「普通にこの村の開拓をした仲間としてもね、色々もてなさせてもらうよ。」
「アスリィさんの態度変わってないでしょ。」
「まぁ、そうですね。では、またお邪魔させてもらいますね。」
「じゃあな、ペリュトン。」
こうしてサラも帰っていくのであった。
Ending 13
最後にグランによってアレックスが呼び出された。
「アレックス、よく来てくれたな。」
「あぁ、はい。怒られるやつですよね。」
「有り体に言えばそういうことだ。」
「もう慣れたんで…」
「慣れてほしくはないんだがな。とはいえいろいろやってくれたお前に対して、甘くするのも他の住民にはよろしくないからな。やることはしっかりやらせてもらう。とりあえず、無断欠勤についてだが、向こうでの活躍もあったし、連絡を怠ったということはあるので、注意というとこにしておこう。」
「意外と、いやまぁ。いや、そうなんですか、てっきりもっと怒られるかと。」
「うん?怒ってほしいか。」
「いや、いいです。」
「ただ、魔書に関する話とかは別だ。」
「あー、あれちゃんとじゃんけん仕込んだんですけどね。」
「少なくとも、取り扱いを間違えて簡易的な魔境を村の中に呼び込んだっていうのは故意じゃなかったにしろ、それに関しては問題あるからな。というわけで処分としては二か月間、給料一割カットだな。」
「まぁ、はい。」
「それ以降の扱いに関しては君の二か月間の行動次第だ。」
「頑張って、レシピ書きますね。皆、食べてくれないんでせめてレシピだけでも形に残しておこうと。」
「あまり人に迷惑はかけないようにしてくれ。」
「何言ってるんですか、これからは割と堅実に生きますよ。」
「二か月後の査定まで楽しみにしているがいい。」
「そうですね、頑張ります。」
「それまでしっかり励んでくれ。とりあえず話としては以上だ。」
「あぁ、はい。」
「特に用がないならもう帰ってくれてもいいぞ。」
「じゃあ、さっき書いていたポンデリングのレシピ置いときますね。」
「ポンデリング、なんだそれは?」
「なんか、ツブツブ感のあるドーナッツなんですけどね。そうだ。」と彼の持っている携帯端末に地球界ではこのドーナッツを模したライオンのキャラクターがいるのだが、なぜか本物ではなくそれを見せた。
「これはなんだ。」
「これは、それを模したキャラクターでですね。」
「その実物の方を見せてくれ。」
「実物ですね。」
ようやく写真を食べ物に変えると、「はぁ、それでこれがレシピだと。まあ、とりあえず預からせてもらって料理人とかに作ってもらうか。」
「ほら、料理人に作ってもらうにしろ、知らない料理は作れないじゃないですか。」
「これに関しては預かっておくよ。」
「じゃあ、失礼します。」
「また、明日から頼むぞ。」
「が、頑張ります。」
こうしてヴィルマ村の忙しい日常の一幕が終わるのであった。
Epilogue 1
「いやー、あれが俺の故郷の隣にある村か。トピアサークルとは全然違うな。いたずらし放題で楽しかったよ。あの青年をだましたかいがあったなぁー。」
消えたはずのランプの魔人は愉快そうに笑った。
「それはそれとして、久しぶりに故郷まで帰ってきたわけだし。弟に顔くらいは出したいものだが、それをするとあの呪いがな。もしかしたらもう手遅れかもしれないか。あの赤いのとちっこいのが故郷に辿り着かないことを祈るとするか。」
そう言い残すと魔人は闇に紛れどこかへ消えていった。
最終更新:2019年04月05日 15:59