これで日記もとうとう十冊目だ。
買う日記帳のグレードを落とした。最近、うちの状況はあまり良くないらしい。
父さんの帰りが最近遅い。会社が大変らしい。
会社が倒産した、って父さんに言われた。
わたしも学校を辞めることになるかもしれないって。
最近母さんの様子がおかしい。
なにか動物拾ってきた?と母さんに聞かれた。匂いがするらしい。拾った覚えはない。
ネズミか何かじゃない?
動物の匂いが強くなった。飼ったはずもない、拾ったこともない動物の匂いが――――
また夢の中に黒い影。動物っぽい。なんだかすごく恨めしげな感じがする。
冗談半分に、母さんに「最近動物が夢によく出てくる」って話したら、
「そっか、時間切れかしら。まさか・・・・・・うちの家なら、まぁあり得るわねぇ」と言われた。
うちの家って、何が?
伊加井家の記述
白羽市の旧家のひとつ。
伊加井家は元々、「狗飼」―イヌカイという苗字であった。
当時は山奥に居を構える貧しい家であったのが、明治の中頃から急に富み栄え始めた。
↑不審点。なにがあったのだろう。急すぎる。
山間の村落にある、母の実家の方を見に行ってみた。
それなりの大きさの古い家。でも鍵を持ってないから入れなかった。周りでうろうろしていたら、近所の人らしきおじいさまに止められた。
「おまいさん、そこに手を出すのはやめなされ。そこは犬神を飼う家だから」
噂を聞いた―――狗飼家は犬神を飼って富を得た、ともっぱらの噂らしい。
犬神・・・・・・犬。動物・・・・・・馬鹿らしいと言えば馬鹿らしいが、調べてみる価値はあるかも。
探す→家に関係ある由縁、出自を示す古文書。
最近動物の匂いがますます濃くなってきた。
アロマとかでちゃんと誤魔化せてるのかな、これ。
倉庫を漁ったら、古文書の中から先祖の書いた契約文書のようなものが出てきた。
意訳・・・・・・(試行錯誤の跡がある)
『汝との契約をここに結ぶ。七代の加護を我が血統にもたらせ』
今時呪術とか信じがたいけど、明らかにおかしすぎる。
犬神・・・・・・
最近校内でこっくりさんが流行っているらしい。気になるけどちょっと手を出しづらい。でもやっぱ気になる・・・・・・
やるんじゃなかった
やるんじゃなかった
あれがでていった 他の人のところに あんなものだったなんて
知らなかった 知ってたら、しなかった
(しばらくこっくりさんについて調べた痕跡がある)
こっくりさんはその場の動物霊を呼び寄せる、降霊術の一種
・・・・・・だから、あれが喚ばれた?
私の責任だ
私から出て行ったんだから
私が回収しなきゃ
母さんがいなくなった。なんで、どうして、特にそんな様子はなかったのに
探す→犬神、降霊術、封印
「白羽の民間信仰~厄落としの文化史~」 那須 斎/著
返却日 12月●●日
私に戻すのはもう無理だ
違うものに何か入れて、それごと消してしまえば、もしかすれば
自分で調べただけの付け焼き刃 何もしないよりはましだよね?
最後に、神社にお参りしてきた。
絶対、なんとかしてみせる。
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