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![]() 性別: 男 年齢: 28(見た目年齢)/930(実年齢) 階梯: 第四階梯"哲人" 領域: 歌 経歴: 書警 機関: 猟鬼 表の顔: 古本屋 魂の特技: 伝承 真の姿: 白紙の本から溢れる絵と言葉 キャラクターシート
生まれは現スウェーデン、彼は裕福な商家に生を受けた。父の商売は当時生産が増えていた紙と本。彼は当時の人としてはめずらしく、たくさんの物語に囲まれて生きてきた。
その物語の中に真実があると気づいたのは12歳の時。魔法に目覚めた彼は、大法典の新参者として修行していた。優秀で野心に溢れた同期たちの中、彼は特に大きな出世欲を持たなかった。その代わり、彼は勇敢で聡明な彼らを物語にした。彼らの活躍は今まで読んだどの物語よりも面白く、エキサイティングだった。 彼が違和感に気づいたのは、15歳の時だった。厳しい任務から命からがら生還し、興奮そのままに物語をつづった後、自分で書いた物語を読み返しているとどうにも不自然な部分があった。最初は「書きなれてなかったけど気にならなかったのかな?」と思っていた。しかし、危険な任務に行くたびに違和感は大きくなっていく。気になった彼は上司の実践者にこの違和感を調査を頼んだ。小さな違和感から始まったこの騒動はのちに魔法界に大きな衝撃を与えることになった。 彼は一冊の本を完成させると、それを片手に世界各地の魔法使いの物語を蒐集し、一人一人を一冊の本にまとめる旅にでた。 気づいたときには最初に持っていた本は白紙になっていた。名も思い出せない彼らの物語は失われてしまった。しかし、彼らがいたという事実だけはこの白紙の本に残っている。そのことを伝えるために、彼自身が物語の登場人物になるべく戦いを始めることにした。
彼の片目は旅をしているときにオリジナルの賢者の泉に捧げている。彼が大法典の書警としての活動を本格的に再開した時には猟鬼という監査機関ができていた。偶然にも同じ魔法での儀式をすでに行っていた彼は、たくさんの反対意見があったものの、義眼の魔法が発動したため、なんとか認められた。しかし、彼の義眼にかけられている魔法は度々ゆがめられていという疑いがある。
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歌え、唄え、唱え、謡え。
迷い惑いて、想いを詠え。 想いは風と為り、嵐は魔を導く。 風よ吹け、嵐よ鳴れ。 其れは彼を迷わす牢獄か。 其れは彼女を癒す箱庭か。
私立北山大学附属北山高等学校2年、男女混合合唱部所属。
中性的な顔立ちの少年。
合唱部に「深川 茜音」という彼女がいるが、少しすれ違いを感じていた。 ――否、自分自身に対して、すれ違いを感じていた。
ある台風の日。
彼は嵐の中に、『彼女』を見た。 『彼女』は嵐の中に迷い、閉じ込められていた。 『彼女』は風の中に癒され、護られていた。 そして彼は気が付いた――『彼女』は彼自身だと。
彼は歌う――恋人への愛の歌を。
『彼女』は詠う――魔を誘う愛の歌を。
台風が過ぎ去ったあと、彼は〈円卓〉に保護された。
彼は今も、すれ違いを感じている。 ――彼と『彼女』の合間に。 ――彼と彼女の合間に。 ――〈愚者〉と〈訪問者〉の合間に。 ――風と嵐の合間に。 |
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性別: 女
年齢: 21(見た目年齢)/328(実年齢) 階梯: 第四階梯"哲人" 領域: 獣 経歴: 書工 機関: 学院 表の顔: 自由業 魂の特技: 教え 真の姿: トーテムポール キャラクターシート |
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![]() 性別: 女 年齢: 21(見た目年齢)/701(実年齢) 階梯: 第五階梯"達人" 領域: 夢 経歴: 異端者 機関: 天涯 表の顔: 舞台女優 魂の特技: 真の姿: ピエロのお面 キャラクターシート
表
舞台が好きな人なら知っているような舞台女優。舞台にいない間は無表情でいるが、舞台の上ではまるで別人のような演技をすることから、「舞台の上の花」と呼ばれる。私生活は闇に包まれている。
裏
700歳を超えた妖魔。その変わらぬ容姿は、人間の興味を引き続ける。しかし、人間への興味はやがて人間との関わり合いを持ちたいというものに変わり、昔よりも社交的になった。(当社比) |
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2021/10/28 禁書「『麗しの紅き銀幕』」編纂記録(訓練)
場所: 千石支部内 記入者: 成田征生 この度も新入支部員の皆さんに対し、編纂訓練を行いました。なにやら色々とトラブル続きだったようですが、なんとか無事に編纂を終えることができたようです。今回は試験的に「翼の騎士」に皆さんを偵察してもらっておりましたので、その報告を元に今回の事件の概要を記載してみることにします。 皆さんにいつもの招待状をお送りし、ガイダンスと称してお呼び出しした当日。どうやら九十九さんは30分前に千石図書館前についていらっしゃったようです。浅倉さんは駅で迷ってしまい、通りかかった夢鳴さんと共に時間通りに到着。最後の一人、オズさんが来ないので先に課題の本を探していたようですが、なかなか見つからず。結局1時間遅れて到着したオズさんが見つけたようです。あの招待状も、色々とアップデートしたものです……。最初は最低限時間と場所、それから「『みえないくにのあるきかた』という本を探して開け」という指示のみだったのですが。「奥にあります」と注意書きを添え、メンバーリストを同封し……などなど。まあ、それは余談ですね。 本を開いて支部に到着。このときは報告を受けていなかったので、何かあったのか、訓練前に本当の事件が起きてしまったかとヒヤヒヤしたものですが、ただの遅刻と聞いて肩を落としたものです……。気をつけて欲しい。本番はタダじゃ済みませんよ、いや本当に。こちらもいつもどおり、案内を開始しようとしたところで「支部内に禁書が発生した」という電話を受けて皆さんに委託する、という流れで訓練を開始。今回はわりとみなさん素直に聞いてくれて助かりました。……本探しで気疲れしてしまったのか、夢鳴さん以外のみなさんはなんだか存在が希薄でしたね。その後もなかなか調子が出ず、結局外付けの魔法武装でごまかしていたようです。時間の都合で今回は探索箇所を絞って提示したのですが、あの様子を見るとそれで正解でしたね……。 さて。そうして発足した さて、1つ目の〈断章〉を見つけて回収したあたりから調子が出てきたようです。〈断章〉からは魔力を剥ぎ取って調律がうまく行かない分をカバー。残った〈断章〉はオズさんが書警らしい高火力の魔法で手も足も出させずに圧倒。連続して魔法災厄が発生するなどのトラブルもありましたが、力を合わせてなんとか切り抜け。魔素もたくさん発生し、万全の状態で〈禁書〉の編纂へと向かいます。魔力を吸われすぎていたため、すぐにやられてしまっては実力も測れない……と、イプシロンも頑張ったようですが、最初のオズさんの攻撃でごっそりと魔力を持っていかれ、結局全員の行動を見ることなく無事編纂が完了。種明かしをして終了と相成りました。イプシロンの最後の言葉もあり、種明かしの時点までには気づいている方もいらっしゃった様子。まあ、みなさん通常運転でしたし……そろそろ支部の皆さんも慣れきってしまって緊張感がないんですよね……。第一級魔法災厄発生の際の避難訓練なども兼ねるべきでしょうか。次回新入支部員が異動してくるときにまた考えてみます……。 本日の業務報告は以上です。我ながら、かなりの分量を書いてしまいましたね……。支部がにぎやかになるのが、自分が思っているよりも嬉しいのやもしれませんね。 |
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2021/11/11 禁書「愚者の黄金と賢者の石」編纂記録
場所: 浪越市千石区内 記入者: 佐藤樹 成田さんが胃痛で倒れちゃったので、今日はボクが書きますね! 今回、宝石が石に、石や金属が宝石に変わってしまうという魔法災厄が検知され、禁書の編纂のために ボクや他の天涯の人の予知によって、上記の魔法災厄が予知されまして、観測室での観測結果から、既に発生しつつある、と出たので、 調査中の様子は報告書待ちですが、断章のありかはわりとすぐ見つけたのに魔法災厄の調査にやけにてこずったり、オズさんの調子が乱高下していたり、浅倉さんはいく先々で魔法災厄に逢って成田さんにとばっちりが行ったり、断章が憑いている人を呼び出す方法がやたら怪しくてやっぱり成田さんの胃が死んだりしていたようです。この辺りで倒れたんだっけ? 断章からは魔法を3種剥ぎ取り、実質もう1種死んでる状態で編纂に挑み、九十九さん、浅倉さんの万全のサポートのもと、オズさんが果敢に攻撃をしますが……ここで呪文をミスってしまったようです。後日激しく落ち込んでいました。さらに禁書も抵抗しましたが、結局夢鳴さんに止めを刺されたようです。お疲れ様でした! トキさんについてですが、今回の禁書の断章が憑いていたことが判明したものの、なぜか休眠状態だったり、無意識なのか魔法の力が揮えるなど、まだまだ謎が多いですね。ひとまずは訪問者(仮)として支部で保護兼訓練、身元は戸口が探る……ということになったようです。なんだか緊張しているようですが、馴染めるといいですね!
追記: そうそう。今日は猟鬼本部からの監査の日でした。テリーさん、シルヴィアさんとか成田さんとか支部長とかには辛辣ですけど、魔素くれるのでボクは好きです。
追記2: 正式な分科会名が決まったそうですよ! 最強の
業務日誌の記入、ありがとうございました。ところで、遅刻をしたのは貴方もですよね? - 成田
てへ(´>∀<`)ゝ でも、あれはちゃんと仕事してましたから! - いつき |
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2021/12/09 禁書「海の底からのメーデー」編纂記録
場所: 浪越港水族館内 記入者: 猫宮みけ 今日、最強の 断章三片を無事に回収しにけり。編纂そのものも成功せり。 トキ、やや打ち解けるも未だ謎多し。オズ、続いて調査すと申しにけり。
全く。支部長の報告書はやっぱり堅苦しいね。どれ、僕が補足説明を入れておこうじゃないか。 - ε
まず、事の起こりから。九十九が学院でシグリッド寮監に、「浪越市付近で低階梯の魔法使いが消える魔法災厄が起きている」と聞かされ、調査を頼まれる。同時刻ごろ、夢鳴はトキと、浅倉は成田と、オズはシルヴィアとそれぞれ話をしていた。トキは少しずつ支部に慣れてきている様子。成田は訪問者である浅倉を気にかけていたみたいだね。シルヴィアは、トキについてどう思うか聞いていたらしい。成田とシルヴィアはテリーに呼ばれて別の任務へ。なんでも
順路に沿って水族館を見て回る中で、4人ほど怪しい人物を見つける一行。後で調査するためにマークしつつも、水族館を楽しむ。トキも興味津々だったみたいだね。そして順路の途中、深海ギャラリーに差し掛かったところ。なにやら歌のようなものが聞こえ、夢鳴がそれを聞いてふらふらとなにもない壁の方向へ吸い寄せられていく。幸い声をかけたらすぐに戻ってきたけれど、恐らくはこれが魔法災厄だろう……ということで、調査開始。 調査中はなんだか運命変転が連続したり、魔素がたくさん転がっていたり、いつものごとく調査対象に唐突に話しかけて怪しまれたり……。マークしていた4人のうち、2人には〈 トキとの親睦もちょっとは深まったみたいだけれど、まだ夢鳴に少し話をした程度で彼女自身の謎は多い。オズが
ありがとうございます。 - 猫宮
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2021/12/23 禁書「幻影の炎は幸福な夢を魅せるか?」編纂記録
場所: 浪越市千石区内 記入者: Silvia Mercuriali 概要: 死人の影を見せる禁書。消滅した魔法使いさえも演じてみせた。今回回収に向かったオズ、九十九の縁者も禁書によって再現されていたようだ。苦戦はしたものの無事回収に成功。その機構については現在研究中。
経緯: 今回の魔法災厄に関わっていると事前に判明していた人物はエリオット・エストルンド、早乙女仄、一あかりの3名。うちエリオットと早乙女は禁書によって再現された魔法使い(消滅済み)、一は焚書官の書籍卿であった。それぞれが一片ずつ断章を所持している、ないし断章に憑依されていた。それに加え、事前調査に参加していた樹が逆探知されて操られていた。エリオットと早乙女は撃破後消滅、一は猟鬼へ引き渡し済み。樹は戦闘中自力で正気に戻った。
備考: 今回の禁書は先ごろ支部にやってきた魔法使い・トキに関連した禁書だと考えられる。夢鳴の予知と猟鬼の追跡の双方に浮上してきた魔法使い、ヘルメス・トリスメギストス(自称)。もし本当に本人だとすれば一大事だし、こちらの禁書編纂術式に介入してあんなメッセージを残した手腕を見れば本人でなくとも相当な手練であることはわかるけれど。まあ、どっちみち倒すべき敵であることは間違いない。追って調査を進めることとする。
また、今回の禁書への対策にあたり、性質の似ている禁書を縛った外典、エレン・アンデルセンを支部に呼び寄せた。彼女いわく、死人を見せること自体は自分にもできるが、消滅した魔法使いを見せるのは自分にも不可能で、彼女の作者、阿房宮所属の第五階梯である霊献黄霧の研究テーマでもあるとか。どちらにしても現在の大法典を凌駕する技術を詰め込んだ傑作。そう易々と回収させていいのかしらね。まあ、彼にとっては「その程度」なのかもしれないけれど。ますます対策が必要だと考えられる。
彼女の視点からは欠けているけれど、トキに関する理解も少し深まったみたいだね。といっても、まだただ一人しか知らないけれど。……そうだな、少し、背中を押してあげようか。 - ε
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2021/01/13 禁書「旅をする嵐」編纂記録
場所: 浪越市千石区内 記入者: 成田征生、ε 僕が日誌を書くのもずいぶんと久々になってしまいました。この一連の事件でいくと、「愚者の黄金と賢者の石」のときはお恥ずかしながら胃痛で倒れ(運命変転だったようです。こんなピンポイントなことあるんですね……)、「海の底からのメーデー」のときは書籍卿の拠点調査で不在、「幻影の炎は幸福な夢を見せるか?」のときは先の拠点調査で受けた負傷の療養でした。支部長にもシルヴィアさんにもずいぶん負担をかけてしまいましたので、早いところ溜まっている業務を消化しないとですね。 さて、本題の〈禁書〉の編纂についてですが、今回は元々〈禁書〉編纂の予定はありませんでした。前回姿を表した〈書籍卿〉、ヘルメス・トリスメギストス。彼は「我輩の計画について知りたければ駆けずり回って探し出すといい」と述べており、その言葉の後、千石支部内に発信源不明の魔力反応が3つ出現しました。罠の可能性も高かったのですが、かといって放置するわけにもいかず。今回も最強の 結論から言うと、先の3つの魔力反応の正体は魔力の込められた小瓶でした。小瓶の内容物はそれぞれ異なっており、水銀、硫黄、それから塩。錬金術の三原質ですね。それから、予想通り彼の計画へのヒントと、さらには彼の持つ能力に対する対抗策が魔法的に織り込まれていました。さらに、地図上でのそれらの配置が正三角形になっており、中心点である浪越大学の学生会館に〈断章〉の反応がありました。どうやらそこが彼の拠点へのゲートのようだ、ということで、〈断章〉を回収していただきました。ヒッパソスさんの援護もあり、無事に回収したところ、その場に夢鳴さん、浅倉さん、イプシロンが出現、合流が叶いました。あちら側……ヘルメス・トリスメギストスの拠点に飛ばされていた側でもちょうど〈断章〉を回収したところだったようです。そして、おそらくはヘルメス・トリスメギストスが用意したのであろうその場にあった編纂魔法陣を用いて編纂を執り行うと、彼の拠点へと続く魔法門が出現。しばらくは安定していそうでしたし、彼の拠点の閉ざされた扉の鍵の作成のために時間が必要でしたので一度帰投していただきました。
あちら側の様子についてなのですが、僕よりも貴女の方が詳しいと思いますし書いていただけますか? - 成田
別に構わないよ。 - ε
というわけでここからは僕が書こう。一方その頃、嵐の形をした転移魔法に巻き込まれた僕たちは、奇妙な空間の中で目を覚ます。周囲は円筒状の壁に囲まれ、上を見上げれば天井からは奇妙なかたちに光が漏れている。何より足元を埋め尽くす丸めた紙や空の小瓶などが、異様に大きい。いや、これはこれらが大きいのではなく、僕らが小さいのだ──そう、僕らが目を覚ましたのはゴミ箱の中だった。全く酷いよね。いったいどんな魔法を使ったんだか知らないけれど、小人みたいなサイズにされて捨てられたみたいだった。幸い(?)不潔なものはほぼなかったけど、気分的にはよくないよね。そこにいたのは僕と翠里、陽菜の3人で、トキはいなかった。まあ、彼女を取り戻すのが目的だった訳だから、当然だ。で、脱出を図ろうと辺りを漁っていると、《翼》の刻印の痕跡が残る布を発見。これを魔法の絨毯のようにして脱出することに成功したよ。ちなみに残り二人の方では【魔力】を回復できる調合薬のあまりが見つかったりしていたようだ。
それでゴミ箱を脱出したところ、そこはどうやら倉庫の片隅だったらしい。そして、トキ・レプリカ──前回のシルヴィアの報告からは別件としてバッサリカットされてしまっているけれど、成田さん、シルヴィア、テリーの3人がヘルメス・トリスメギストスの拠点に偵察に行った(そしてこっぴどく負けて帰ってきた)ときに観測されていた、トキのクローン──が何人か雑用をしていてね。気づかれたらひとたまりもないから、小さい体を生かしてこそこそと探って回ることにした、というわけだ。倉庫の他には書庫、水回り、寝室が存在して、それぞれの部屋に1つずつビー玉のようなものがあった。これにはそれぞれ、土産物屋で見るようなガラスに3Dの彫刻が刻まれているアレみたいに、金貨、杯、剣、杖の意匠が浮き出ていた。こちらは四大元素だね。そして、あっち側と同じく情報と報酬も魔法的に刻まれていて、さらに外へと繋がる扉の鍵にもなっているという徹底っぷり。いやあ、流石に詰め込みすぎじゃないかい? まあ、仕方がないところもあるけれどね。他に気になるところとしては件の外に繋がる扉と、もう1つ開かない扉があった。後者の扉が先に成田さんが書いていたやつだ。こちらは大工房に通じる扉っぽいけど、そのときは開ける手段がなく。あとから分かったことだけど、あちらで見つけた三原質の小瓶をいじくり回せば鍵になりそうだ、ということもあって保留になった。 そんなこんなで外への扉を開けると、僕らの大きさも戻りつつ〈断章〉も出現。これを回収したところ、外へと弾き出された。後は成田さんが書いた通りだね。
こっぴどく負けて帰ってきたって酷くないですか? - 成田
だって事実じゃないか。週単位で寝たきりだったのはどこの誰かな? - ε ぐう。 - 成田
ああ、そうそう、肝心の情報の話をしていない。彼が親切にも寄越してきた情報によると、彼の目的はトキが産生する膨大な魔力を用いてすべての死者・消滅した魔法使いを再生し、全人類の不死化・神化を達成することらしい。ふふ、なんとも〈理想郷〉らしい馬鹿げた目的じゃないか。これだけ大口を叩いたのだから、さぞ大層な大仕掛けをしてくれるのだろうね?
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2021/01/20
場所: 浪越大学学生会館・異空間内 記入者: 成田征生、
長かったヘルメス・トリスメギストスとの因縁にも、ついに終止符が打たれました。いや、打たれてはいないのですが……。ええ、結論から言ってしまえば、彼は独自の魔法、【再誕】によって〈禁書〉に転生した上で、〈大法典〉に回収されここ千石支部で外典として働いていただくことになりました。トキさんの方も無事正式に千石支部に所属することが決まり、これで新たな仲間が2人増えたことになりますね。個人的には、このお二人が同じ支部に配属……というのは少し心配になったのですが、思ったよりはトラブルも少なそうで一安心です。
さて、今回の記録を書く前に、一度ことのあらましをおさらいしておきましょう。別件として処理され、この業務日誌から抜けているものもありますので……。 まず、今回の一連の事件の黒幕は、ヘルメス・トリスメギストス。神代から生きる伝説的な魔法使いであり、〈大法典〉設立の際にアリストテレスの誘いを断って行方をくらませたそうです。偽物疑惑も出ていたのですが、その後の調べや実力からしても本人で間違いなさそうだ、ということでした。まあ、よしんば本人でなくとも強力な魔法使いであることは確かですね。彼が「世界が産み落とした精霊にして、霊脈を通して無限の魔素を引き出すことができる存在」を手に入れたところから話は始まります。彼はその存在に「トキ」と名付け、彼女の圧倒的な性能を使ってすべての人類を不死化・神化することを目論みました。そのためにトキさんや自分の体などを使っていろいろと実験をしていたようです。しかしトキさんが脱走し、我々〈大法典〉に保護されたため、取り返すためにアタックをかけていた……というのが事件の背景となります。「愚者の黄金と賢者の石」はトキさんの居場所を特定するため、「海の底からのメーデー」は実験用の人間の捕獲のため、「幻影の炎は幸福な夢を魅せるか?」と「旅をする嵐」はトキさんの奪取のために、それぞれ誂えた〈禁書〉とのことです。狙った性能の〈禁書〉を自作できる、という点も彼の強さを裏付けていますね。〈大法典〉ですら〈禁書〉の完全自作は至難の技なんですけど、一体どうやったらそんなことができるのやら……。まあそのあたりは円卓だか猟鬼だか阿房宮だかがしっかり追求することでしょう。 強さ、といえば、この日誌で明確に抜けているあの案件についてももう少し補足しておきましょう。少しは先の日誌にも記載がありますが、ちょうど最強の さて、いよいよ本題となる戦いの記録です。前回の案件から拠点を移しはしていなかったので、彼の工房へと続く扉の魔法錠を解析して鍵を制作し、突入するという段取りになりました。彼の拠点には一定以上の力量を持つ魔法使いが出入りできないような結界が張られていたので、事件との関連性の高い〈分科会〉である最強の 彼の拠点、閉ざされた扉の奥には、彼の工房が存在していました。正面には、前に僕たちが突入したときにもあった研究机。しかしその左には謎の透明な筒型の機械が並び、右には魔法陣や鍋など、魔術に使う大型道具類が。古今東西の研究を寄せ集めたようなアンバランスな空間。その中央には、シンプルな祭壇のような台があり、そこにトキさんが寝かされていました。トキさんに近寄ろうとしても、祭壇の周囲には結界が張られていて近寄れず。ヘルメス・トリスメギストスはその横で皆さんを待ち構えており、軽く言葉を交わしたのちにお互い呪圏を展開し、戦闘に入ったようです。 最初は順調に渡り合っていたようなのですが、一度止めを刺せた、と思いきや、謎の大魔法、【再誕】によって彼は即座に復活し、しかもより強力になって最強の その後、ヘルメス・トリスメギストスの拠点はオズさんと九十九さんが略奪……もとい、押収を行い、トキさんとヘルメス・トリスメギストスは冒頭にも書いたように千石支部への所属が決定。それから、トキさんは最終決戦において全力以上の出力を出した影響で、「ホシの落とし子」としての機能が破壊されてしまったようです。自然に治癒するまでには数百年ほどかかるとか。ただ、通常の魔法使いとしての能力は失われていないようなので、今後は九十九さんに、浅倉さんと共に魔法を習うことになりました。トキさんは後の検査で、〈大法典〉の区分からすると第四階梯の異端者である、と結論付けられたため、学院への所属条件を満たせなかったのですよね。実際、魔法と共に生きる存在である異端者が魔法の扱いに慣れていない、というのは稀有な例なので、仕方のないことではあるのですが。ともあれ、いずれも丸く収まってほっとしているところです。後始末と報告が終わったら、僕も休暇を取りますかね。
なに? 我輩ここにネタばらし書けばいいの? - Hermes
洗いざらい吐きなさい。 - Silvia お願いします。 - 猫宮 しょうがないにゃ~。 - Hermes そういうのいいですから。 - 成田
というわけで筆を取った我輩である。といっても、あんまり言い訳がましいことを書いてもカッコ悪いので、補足程度に留めるものとする。
何を補足するのか。それはもちろん我輩の計画についてである。今回の人類総不死化計画の概要については、概ね渡した情報の通りだ。トキの持つ、「ホシの落とし子」としての力……霊脈と接続し、無尽蔵に魔素を引き出す性質を利用して、生者・死者を問わず全人類の不死化・神化を成す。禁書「海の底からのメーデー」に確保させていた〈愚者〉や魔法使いはこの術式の試験のための実験台であったのだが、阻まれたがためにぶっつけ本番になるところであった。 しかしまあ、気づいているであろう? ちょっと「分かりやすすぎる」ことに。我輩としても、ちょっとヒントが露骨かなーとは思ったのだが、まあ謎解きを本筋として据えていたわけではないからな、許されよ。要するに、「わざと分かりやすく真実にたどり着けるようにしていた」のであるな。なぜそのようなことをしたのかと言えば、ひとえに〈大法典〉の実力を測りたかったからである。 かつて、我輩はアリストテレスと道を別った。我輩は魔法なくして人類の発展なしと考えたが、あれはそんなことはない、必ずや我々以上の栄華を誇ることになると断じた。それから二千年余りが経ち、今や人類は科学によって空を飛び、作物を実らせ、遠く離れた人を繋いでいる。であるから、我輩もそろそろ敗けを認めてあれの軍門に下ってもよいだろうと考えたのだ。しかし、ただで降参してやる我輩でもない。愚者どもの知恵は認めたが、〈大法典〉の実力はまだ測っておらんかったからな。ということで、最終チェックと洒落こんだというわけだ。もちろん最強の ちなみに我輩が使った魔法、【再誕】であるが、これは我輩の特殊性とトキの力を存分に利用したものであるため他の者には使用できぬことを注意されたし。具体的には、[黒く塗りつぶされており、読めなくなっている]
すみません、この記述は第四階梯以下の魔法使いには開示されていない内容を含むため削除させていただきました。 - 成田
マジ? この内容常識ではないのか……。 - Hermes ボクへのマウントですか?(。-`へ´-。) - いつき 違います……。 - 成田 ところで最強の 世の中には言って良いことと悪いことがあるんですよ、ヘルメスさん。 - 成田 |
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ある日の午後のことであった。
ありがとうございました、と少女の声が響く。その声の主は、程無くしてドアを開けて廊下に躍り出た。金色の長い髪を二つに結わえ、本とノートを大事そうに抱えたその少女は、廊下の突き当たりにある階段の方へと歩いていく。 「やあ」 そんな少女を呼び止めるように、また別の少女の声がした。金髪の少女が振り返ると、セーラー服を着た黒髪の少女が、廊下の壁にもたれ掛かるように立っていた。 「あ……イプシロンさん。こんにちは」 「ああ。こんにちは、トキ」 イプシロン、と呼ばれたセーラー服の少女は、壁を離れてトキに近づく。 「支部での生活には慣れたかい?」 「は、はい。ちょっとずつ。さっきは、学校に行くためにお勉強を教えてもらっていました」 「そうか、そうか。それは何よりだ」 イプシロンは、特徴的な赤と黄色の双眸を細めて微笑む。 「えと……それで、なにか、ご用でしょうか」 「いや、なに。そろそろ頃合いかな、と思ってね」 頃合い、という言葉になんとなく悪い想像をして、トキは体を強張らせた。出ていけ、とか言われたらどうしよう、などと、ネガティブなことを考えて怯えている彼女を愉快そうに眺めながら、イプシロンは続きを切り出す。 「ヘルメスとは、最近どうなんだい。話したりしているかい」 「ヘルメスさんと……ですか? その……あんまり……」 「そうかい。いやなに、彼がかたくなに隠している……隠せていると思っていることについて、こっそり教えてあげようと思ってね」 「えっと……?」 「やっぱり、きみは気づいてないか。まあ、だろうね」 イプシロンは肩をすくめ、続ける。 「きみはやくざ者に捕えられて慰み物にされていたところをヘルメスに助けられ、以来彼と暮らしていた。そうだろう?」 彼女の言葉に、トキはびくりと身を震わせ、後ずさる。 「ど、どうして、それを……?」 しかしそれに構わず、イプシロンは続ける。 「彼は監禁生活で深く傷付いていたきみの心身を慰め、生きるために必要な知識を与えた。些細ではあるが、娯楽も提供した。しかし……真に道具として扱うのであれば、従順なままの方が御しやすいはずだ。治療も知識も娯楽も必要ない。現に、きみは彼から逃げおおせてここにいるわけだしね」 彼女の語りを、トキは不安そうに、また、不思議そうに、黙って聞いている。 「た、確かに……?」 「じゃあ、どうして彼はそれをしたのだろう?」 「え……」 にこりと笑って問いかけるイプシロンに、トキは虚を衝かれたように言葉を詰まらせた。 「わからない?」 「……はい」 「なに、簡単なことだよ。前提がおかしいだけだ」 「どういう……ことですか?」 「彼の目的はなんだったと思う?」 「えっと……私の力で、なにか、良くないことをしようとしていた……んですよね?」 「そこだよ」 えっ、とトキから驚きの声があがる。 「彼の言う、『人類総不死化計画』……これには多くの欠陥がある」 理解できない、という風のトキをよそに、さらに彼女は続ける。 「まず、土地が足りない。有史以来、一体何れ程の人が骸を土に埋めたことだろうね。そうでなくとも人類はずっと土地不足に悩まされているというのに、彼らすべてが生き返ったら、一体どうなってしまうのだろうね?」 「それは、確かに……?」 「他にも年齢問題とか色々とあるのだけれど、まあ、つまり。現実的に考えると馬鹿げた計画なのさ、あれは。そして、これには彼も気がついていた。にもかかわらず、強行しようとしたのは不可解なことだ」 「つまり、それには、別の理由がある……ってことですか?」 「その通り。もっと言えば、その遂行方法にも問題がある。彼ほどの力量があれば、もっとスマートにきみを取り戻し、水面下で計画を完遂することもできただろう。実際、今まで彼は〈大法典〉の追跡を躱し続けてきたわけだからね。それを、わざわざ姿まで表して、『我輩の計画について知りたければ駆けずり回るがよい』なんて言ってアーティファクトを配置したりしている。……まるで、これ見よがしなヒントのように」 「えっと……えっと……?」 話を聞きながらぐるぐると考え込み、煙でも噴き出しそうになっているトキを見て、イプシロンはくすくすと笑う。 「ああ、おかしい。本当に何も心当たりがないのかい、きみ」 トキは目に涙を溜めながら、こくりとうなずいた。 「つまりさ──彼はきみに、『普通』の生活を送ってほしかったんだよ」 「……ほえ?」 すっとんきょうな声が上がる。 「ヒントを与えたのは暴いてほしかったからだ。じゃあ、暴いてもらって何がしたかったか? 自らの計画を阻止してもらいたかったからだ。では、その先。計画を阻止してもらいたかったのはなぜか? やりたくないならやらなければいい。誰かに強制されていたわけでもないんだから。じゃあ、なにか『阻止してもらわないといけない』理由があるはずだ。では逆に、今回の事件が解決したことで得たものはなにか? それこそが、きみの今の生活だろう?」 「た、確かに、そう……ですけど……でも……」 「それなら、普通に外に出ていればって? 残念ながらそれはできない。だって、そのままのきみが外を歩いているというのは、願いを叶える聖杯が道端に転がっているようなものだ。それに気づかれれば、様々な勢力がよってたかってきみを求めて大戦争を起こすだろう。魔道書大戦に加えて聖杯大戦まで起これば、いよいよもって世界滅亡の危機だ。なんといっても、〈大法典〉すらもなりふり構わずきみを捕獲しにかかる可能性があるんだから」 それを聞いて、現在の仲間たちが敵に回ってしまったら、などと良からぬ想像がトキの頭をよぎった。顔を青ざめた彼女に対して相変わらず微笑を向けながら、イプシロンは続ける。 「だから、きみの機能を破壊する必要があった。きみが安全に過ごすために。でも、ただ外部から破壊するわけにはいかない。きみ、怪我をしたことはある?」 「えっと……」 少し、躊躇いを感じさせる間の後。 「本のページで指を切ったことなら」 そのように返した。 「その怪我は、どれぐらいで治った?」 「見ている間に塞がりました」 「……心配になったから補足をしておくけれど、そのスピードは異常だよ。きみ、殴る蹴るの暴行を受けても1日で治ったりしていたんだろう。普通の人間はそんなことないからね」 「あ、そうなんですね……」 「うん。つまり、生半可な外傷はすぐに治ってしまう。かといって魔法戦で存在を削ったら、普通に死亡・消滅してしまう恐れがあったんだろう。そうなれば新しい『ホシの落とし子』が生まれて問題も解決しないわどこに出現したかわからないわで本末転倒だ。だから、内側から自壊してもらう必要があった。そのための今回の計画だ」 「もしかして、私が皆さんを支援して全力を出すことを見越して……?」 「うん。そのために、きみが支援すれば勝てるぐらいの調整をしていたみたいだ。まあ、つまり、全ては彼の思いどおり、掌の上……ということで。なんとも腹立たしいじゃないか」 ふふ、とイプシロンが笑ったそのとき。廊下の隅の階段からドタドタと足音が聞こえてくる。 「だからといってそれバラすのはナシであろーう!!」 滑るような勢いで割り込んできたのは、噂の張本人、ヘルメス・トリスメギストスその人であった。 「いやはや。全部きみの思い通りというのも癪に触るからね。1つぐらい裏腹なことが起こるぐらいが調子に乗らなくていいだろう?」 「いやまあそれはそうかもしれんがな? でもな? それは禁止カードだと思うのよ?」 「えっと……その……?」 突然の本人出演に再びおろおろと戸惑うトキに、イプシロンは微笑んで続ける。 「ああ。何が裏腹なのかも説明しておこうか。彼はね、きみからの好感度を下げておきたかったんだよ。新しい仲間を見つけてそっちと仲良くしてもらえるようにさ」 「こら!! 赤裸々に言うんじゃないよ!!」 「……なる、ほど」 ようやく事態を呑み込んできたトキが、神妙な顔つきで言う。 「大丈夫です。私、ヘルメスさんに助けてもらったご恩も、夢鳴さんや浅倉さん、オズさんや九十九さん、その他千石支部の皆さんに助けてもらったご恩も、どっちも忘れてません!」 しばしの沈黙。のち、イプシロンが噴き出した。 「ふ、ふふふ、あっははははは! だってさヘルメス! 良かったねえ、あんまり恨まれていないみたいだよ?」 「あーもー、トキは人を疑わなさすぎなのだ! だから悪い人もいるんだぞってアピールしたかったのに!」 「でも実際には愛の鞭だったわけだからトキは正しかったということだね?」 「ぐぬぬ」 「はあ、お腹痛い。ともかく、諦めた方がいいよ。きみが彼女に嫌われるのは無理だ。それこそ根っからの外道でもないと……それでもどうだろうね」 「そんなにか……まあ、納得ではあるな」 はあ、と頭を押さえたヘルメスを愉快そうに見上げて、イプシロンはトキの背中を押す。 「ということで。君は何も彼に遠慮する必要はないんだ。かつてそうであったように存分に彼に甘えるといいさ」 「は、はい!」 そう力強く返事をして、トキはとと、とヘルメスの前に歩み出る。 「あの……ヘルメスさん」 「なんだ」 「お時間があるときでいいんですけど……その、お勉強、見てもらえませんか」 「九十九に訊けばよいではないか……」 「九十九さん、学院のお仕事もありますから、結構支部にいないことがあって」 「はあ……仕方ないな、全く」 「! ありがとうございます!」 そのような微笑ましいやりとりを眺め、イプシロンはくすくすと笑う。 「さて、これで元鞘かな。僕のお役目もこれで終了、大団円。ということで、退散退散」 そんなことを言いながら、イプシロンは歩み去っていく。後には、早速と言わんばかりに質問責めの刑に遭っているヘルメスと、楽しそうなトキだけが残されたのだった。 |