☆第1話「知られざる天地使いの野望」
(第1回)
ユーシズ魔導公国がほこる魔導学園「七色のマナ」、その内部にある冒険者ギルド支部<マギスイーパー>から物語が始まる。ナイトメアのフォルテ・クルーガーは、入学してすぐにこの支部に所属していたのだが、パーティ編成的に丁度合う相手がおらず、夕暮れの支部で暇を持て余していた。そんなフォルテにお茶菓子を出しつつ、世間話に興じるのはこの支部の支部長、エメリー・ガーントであった。
「そういえば、今日は3年生の子が、冒険者に興味があるっていう子を連れてくるって言ってたわね」
とエメリーがつぶやいた丁度そのタイミングで、件の上級生が3人の白リボン(1学年)生徒を連れてきた。メリアのリタ・アルストロ、人間のジャン、レプラカーンのレイである。三人は結構強引にこの支部に連れてこられたのだが、冒険者稼業に興味があること自体は事実のようで、支部長に尋ねられた氏名や得意分野を答えていき、この支部の冒険者として登録することになった。
エメリーは、駆け出しの冒険者でも出来そうな依頼があったので、今登録した三人とフォルテで、パーティを組んで解決に向かってみるのはどうだろうか?と提案する。1000ガメルと報酬が高額だったこともあり、特にお金に困っていたジャンとレイは快諾し、残りの二人も同意して、依頼を受けることになった。
応接室に案内された先で待っていたのは、ユーシズ相域学会の会長、ニコロ・ノエスラであった。彼は、「ククロア・ロコアという人物が、学会が保管していた貴重な品を盗み出し、危険な魔法装置を動作させようとしている」と早口に専門用語も混じった学者口調でまくしたて、4人に首謀者の捕縛と魔法装置の起動阻止を依頼した。
さて、いよいよ出かけるかとなったタイミングで、外から
「暴れオオカミだ!誰か助けてくれ!」
という声が響いた。4人は誰からともなく外に出て、3体のウルフおよび1体のパックリーダーと対峙した。冒険者としての仕事は初めてだったのだが、メアリーから軽くレクチャーを受けたこともあり、連携を取りながら戦うことができた。リタのフィールドプロテクションとレイのスパークから始まり、フォルテの銃撃、ジャンと馬の攻撃と続き、ものの40秒ほどで暴れオオカミたちを倒すことに成功した。
戦闘が終わったとき、日はもう傾いてしまっていた。4時間かかる遺跡に今から向かうのは危険だということもあり、メアリーの提案もあって向かうのは翌日にすることにした。
翌朝、誰も遅刻することなくギルド前に集合し、歩き出した。街の南門を抜け、しばらく街道ぞいを歩いて、さらに森に分け入ること、三時間。目的の遺跡「マーテルの坩堝」が姿を現した。
松明を用意しくらい廊下を歩いていくと、笑い声が聞こえた。どうやら奥の部屋では酒盛りか何かをしているようだ、と察した一行は、警戒しつつも先に進んだ。実際、15m四方ほどの(遺跡内にしては)明るい部屋では、6人のチンピラが酒盛りをしていた。彼らは安酒でだいぶ酔っており、一行にも酒を薦めてきた。ジャンとフォルテがその安酒で一杯やると、飲みっぷりにテンションの上がったチンピラたちがククロアのことについて話をしてくれた。この場面では耐えていたのだが、その場から離れたタイミングでジャンは気持ちの悪さを覚えていた。どうやら安酒にあてられて、悪酔いをしてしまったようだった。
彼らによる足止め(という名の酒宴)もほどほどに、先に向かうと、そこは十字路になっていた。前方へ続く足跡と、向かって右側に向かう足跡があることがわかった。また、奇妙な稲光のような何かが前方で時折光っていた。
(第2回)
パーティを分割して左右に進むこととした。まず、ジャンとリタは右側を調査しに行った。まず入ったのは書斎で、そこには小さな箱があった。箱に二重底があるという事に気づいた二人は、その底を開けたが、トラップが仕掛けられていて、毒を吸い込んでしまった。しかし、とっさに距離を取ることができたので、実害はほとんどなかった。さらに北側に進んでいくと、木製の長櫃が6つあるエリアにたどついた。しかし、足跡を追っていくとこの長櫃のところで止まっているということが分かり、二人だけでの探索は危険だという結論に至った。また、途中で紙片を見つけていたのだが、二人には魔法文明語が分からなかったため、魔法文明語を理解できるレイと合流しようという話になった。
一方、左側に向かったフォルテとレイだったが、すぐに石の足場に至った。そこから北側には濁った水のたまったプールがあった。泳ぐことも検討したが、水が汚いこともあり、かなり無理があるという結論に至った。そのため、すぐに引き返して、十字路へと戻った。
合流した一行は先ほどの長櫃のところまで行き、そのうち一つのふたを勢いよく開けた。そこには話に合った三人のごろつきが隠れていた。どうやら不意打ちを狙っていたようだったが、十分に警戒していた一行には通用しなかった。彼らを苦戦の末倒し詰問すると、彼らはククロアの情報を話し足早に遺跡から去っていった。
その奥では、空の水路があった。はしごで水路へ降りていくとダイヤルと暗号の示された金属板があった。どうやら、紙片が解読のヒントになっているということが分かったため、それでダイヤルを回していった。最後の8があったタイミングで、水門が開く音がした。水流が流れ込んだ。リタとレイはいそぎではしごを登ることができたが、ジャンは手を滑らせてしまい、水を飲みこんでしまい、ダメージを受けた。
その後に、反対側まで一気に移動し、水のなくなった左側の水路へと向かった。左側にある扉を開くと、そこはジオグラフが配置されている場所だった。上からは雷が降り注いでおり、ジオグラフを守っていた。手前に棒を刺す穴があったので、ジャンはロングソードを刺しこんだ。すると雷はそのロングソードに引き寄せられ、ジオグラフには触れられるようになった。しかし、それを守っていた鉤爪は外れておらず、持ちだすことは不可能のようだった。ここで、ロングソードに雷が降り注いでいるせいで、ロングソードを取り出せないということに気づいた。レイは、さきほどの軽戦士からはぎとった短剣を壁に向かって投げることで、そちらに雷を誘導し、そのすきにロングソードを抜き去った。
水路へ戻り、奥へ進み右へ進むと、プールの入り口と同様の石の足場があった。その上には、金属製の箱があったのだが、それに触れようと一行がかけよると、トラップを踏んでしまったようで、壁がすさまじい勢いで移動し、4人と箱一つを吹き飛ばした。フォルテ以外は受け身を取ってダメージをなくすことができた。再び上り、今度こそ罠を踏まないように北側の扉を開けると、石像があった。
石像は、剣を携えていた像に見えたが、近づいてよく見て見ると石像に擬態したガーゴイルであることが分かった。このガーゴイルを討伐し、鉄の棒剣を手に入れた。
(第3回)
鉄の棒剣を、ジオグラフの配置されていたエリアの穴に刺しに行くと、雷はそちらに誘導された。また同時にガチャリという音が鳴り、ジオグラフを取り出すことができた。どうやらこれは試作品のようで、人をたぶらかす効果は無いようだった。
続けて、もとの十字路に戻り、北方向へと向かった。すると、回廊が見えたのだが、その手前には宝珠をはめるところがあった。そこにマーテルのジオグラフ(試作品)をはめると、回廊を覆いつくしていた雷鳴は消え去った。それと同時に、正面の扉が開いていた。そこは、魔晶石が落ちていることと、地下へと進む階段がある以外にはなんの変哲もない小部屋だった。
一行はそれを下っていく。そこには、明らかに正気を失ったククロア・ロコアが魔法文明語でまくしたてていた。魔法文明語が分からない三人はもちろんのこと、魔法文明語がわかるレイからしても、取っ散らかって訳の分からないことをまくしたてているようだった。その後に交易共通語で言い換えていたが、敵対の意思しかないことは明確だった。
ククロア自体の対処には、そうかからず、フォルテの鋭い一撃もあって成功したが、取り巻きのマグマのチープストーンが厄介だった。レイが気絶状態まで持ち込まれ、一時は絶体絶命の危機とも思われたが、最終的には時間をかけてそれを倒すことができた。
チンピラの手伝いも受けて気絶したククロアをユーシズの学園内ギルド、マギスイーパーに運ぶと、そこには相域学会の会長であるニコロ・ノエスラとマギ・スイーパーの支部長エメリー・ガーランドが待っていた。ことの顛末を彼らに話した一行は、約束通りの1000Gの報酬を受け取った。
こうして、初の冒険を終えて彼らはひとまず学園生活へと戻ることになるのだった。
☆第2話「暴走魔動機は花園へ」
(第4回)
一行は、平和な授業を謳歌していた。あるものは真面目に授業を受け、またある者は惰眠をむさぼっていた。そんななか廊下でケンカの声が聞こえてきた。その声の主は、妖精魔法学科の黄リボン(3年生相当)のミュカと、魔動機術学科の緑リボン(4年生相当)のルカであった。彼女たちの言う事によると、ユーシズの近くの森、コロロポッカで魔動機術学科の関連した魔動機が暴走しているらしい。そのエリアというのが、妖精魔法学科の管理する地域であり、特に重要な聖域である湖畔に向かって魔動機が周囲のものをなぎ倒しつつ進んでいるとのことだった。そこに仲裁兼情報収集に入った報道部のレイを中心に彼女らも連れて、学園内冒険者ギルド支部〈マギスイーパー〉へ向かった。
支部長であるエメリー・ガーントが話をまとめた結果、この前のメンバー4人で依頼として受注することになった。
出発しようとしたころ、一人の男子生徒が支部に入ってきた。操霊魔法学科のエーガスである。彼の言うところによると、ルカに頼まれて魔動機にかけた操霊魔法による付与効果が、何らかの形で暴走の原因になってしまったかもしれない、とのことだった。事件解決を引き受けてくれた冒険者に対して、謝礼を用意したいという理由で、彼は近年ユーシズで流行している、魔法の人口生命体である〈ボトルドール〉を差し出した。この〈ボトルドール〉は、瓶の中に入った小さな生命体で、その感情の上下が周りの人間に影響を与えるのだという。魔法文明語で会話ができるため、レイが中心となっていろいろ話してみたところ、どうやら容姿は女性的で、大人しい性格をしている〈ボトルドール〉なのだとわかった。BBと名付けられたその〈ボトルドール〉とともに、一行は森林へと向かった。
森林へ向かってみると、魔動機の活動の痕跡が読み取れた。しかし、魔動機は静音モード搭載で実際に動いている姿は見つけづらく、また移動中はどこに向かっているかもわからないため、魔動機がとうりそうなルートを予想しながら進む必要があった。まずは東へしばらく平原沿いに進んでいたのだが、突然植物型の魔物であるダンシングソーンが襲い掛かってきた。フォルテの銃弾が致命的な一撃を繰り出したこともあり、ダンシングソーンは比較的すぐに片付いたのだった。この間、魔動機は北上しているようだった。
一行はさらに東へと進んだ。その途中、川を渡る必要があり、若干疲弊してしまったのだが、どうやら読み自体はあたっていたようだ。その川を越えてしばらくしたタイミングで、目的の魔動機と遭遇したのである。今までの敵とことなり、後衛に攻撃を飛ばしてきたり、巻き込み攻撃をしてきたりとかなりの難敵ではあったのだが、それに合わせて前のめりに攻撃を重ねていった結果、魔動機を破壊せず、それでいて機能停止の命令を聞く程度には大人しくすることに成功した。(なお、一瞬は破壊しかけたのだが、ジャンの機転により致命傷となる点からわずかにずれた点を攻撃することができ、程よいダメージを与え、機能停止にまで持ち込んだ。)
そうして、魔動機術学科の要求である「魔動機を破壊しないこと」と妖精魔法学科の要求である「森を破壊させないこと」をどちらも果たした冒険者たちは、ギルドに戻り、報告を済ませた。依頼主三人からの感謝の言葉と報酬を受け取り、そしてささやかな休息を満喫するのであった。
☆第3話「自由の名の下に」
(第5回)
普段通りの生活を過ごしていた五人に、急にギルド支部員からの連絡が入った。至急<マギスイーパー>まで来てほしいとのこと。
<マギスイーパー>へ到着すると、閑散としたギルド内を見渡しつつ、あなたたち以外に頼れるパーティがいなかったの、と前置きをしてメアリー・ガーントが依頼内容を話し始めた。
曰く、操霊魔法学科の管理していた学園の地下霊廟が荒らされ、(誰の者かはわからないが)遺体が運び出されてしまっているとのことだった。その墓あらしの正体を見つけ、必要に応じて捕縛してほしいという依頼だった。
依頼を受け、<調査許可証>を受け取った一行は、まず生徒会室に向かった。今は多忙なようで、誰もいなかったのだが、しばらくすると、生徒会長であるフィン・ハンドストンが白馬の蹄をとどろかせながらやってきた。彼から詳細な事情を聞いた冒険者たちは、まず、情報の集まっているだろう購買部へと向かった。購買部には、6年生のレプラカーン、情報屋のイェルダ・ヤーヤが居を構えていて、新作アイテムのレビューをしてくれたら情報をあげよう、と持ち掛けてきた。彼からは、問題のある無頼集団とそのリーダー、そして彼の居場所についての情報を得ることができた。
ひとまず購買部での情報収集を終え、次に犯行に関与しているかもしれない操霊魔法学科等へと向かった一行。様々な情報を聞き出したのだが、一番めぼしい情報としては、大無頼"バンジョウ"の悪口を言うとキレる操霊魔法学科の生徒がいて、校舎裏の方へと向かった、という話であった。
急いで校舎裏に向かった彼らは、一人のナイトメアの生徒を、5人ほどのフリー・クロビオスのメンバーが取り囲んでいる状況に遭遇した。彼らは、挑発の言葉を重ね、取り囲まれている生徒が手を出すのを待っている様子だった。フォルテを中心に止めに入ったところ、その五人はそそくさとその場を去っていった。
取り囲まれていた彼の名は、ジャック・ガーソンであった。
彼は、真の意味での"バンジョウ"の信奉者であったのだが、彼が"ねじ曲がったバンジョウ崇拝"を掲げるフリー・クロビオスに対する反発を表明したところ、ねちねちとフリー・クロビオスに付け狙われるようになったのだという。曰く、その正当性を巡って魔技戦を行う予定なのだが、嫌がらせによってジャック側のメンバーがいなくなってしまったのだという。そこで一行は協力を申し出た。
その魔技戦では、ジャックが一撃、フォルテが一撃打ち込むと、あっけなくリックは沈んだ。リックはボスであるジンの居所を証言した。また、頭痛があるとも言っていたため少々調べると、ラーリスの聖印が隠されていた。
リックの案内でジンのアジトに向かうと、そこにはジンが笑みを浮かべて待ち構えていた。ジンが従えたドライコープスやデスソードとの戦闘になった。戦闘の末、ジンを倒すことには成功したのだが、彼が倒れる間際、「ラーリス」の名をつぶやくと、檻の中の大量のゾンビが目覚め、檻を揺さぶり始めたのだった。
一行は、眠らされていたバンジョウを目覚めさせることにした。というのも、彼はアンデッドとして目覚めさせられようとしていたのではなく、ティエンスとして眠っていたのである。魔力を注ぎ、彼が目覚めると、それこそ鎧袖一触の勢いで、丁度あふれ出したアンデッドたちをなぎ倒していった。
地上に戻り、事情を生徒会長に話し、依頼は達成となった。バンジョウは再び眠りにつき、学園の脅威に備えることになった。
☆第4話「ミラーイメージ」
(第回)
生徒会長のフィンから依頼されたのは、学内の行方不明事件の解決だった。というのも、どうやら6人ほどの生徒が消息がつかめなくなっているようだ。S11という教室で最後に見られた生徒がいるようだった。実際にS11に向かったところ、そこは大きめの講義室だった。入り口は一つだけであるため、そこを通らなければ出入りはできないことが分かった。入り口近くに不思議な姿見があったので近づいてみたところ、その鏡によって吸い込まれてしまった。
まず最初に見えたのは学校の景色だった。部屋番号の表示はなく、延々と特徴のない廊下が続いていた。
かろうじて今いる部屋はS11に似ていると思うような部屋だったが、先に進まなければわからないということで、より奥の部屋へと進むことになった。
次に気になって入った部屋では、会長の話していた6人の行方不明者がいた。魔神に追われてけがをしていたためリタの神聖魔法を中心に回復を行った。どうやら、このエリアには魔神が入ってこないようだった。その行方不明者のなかには、一行に以前依頼をだしたエーガスが含まれていた。彼にこの行方不明者を任せ、事態の解決を急ぐことにした。
その後訪れた部屋では、謎のメッセージが再生された。
「一度動かしたら止まらない。止めるには、二つの鏡を壊し、最後の部屋で赤い線を切断すればいい。鏡の場所と、機械の場所は紙片に残してある。」
そのメッセージの示す通り、その場には3枚の紙切れが置かれていた。そこには3文字の文字列が書かれていたのだが、一部が汚れてしまって読み取ることができなかった。
さらに進むと、倉庫のような場所に出た。高額なものとしてはダイノジョーが見つかったが、このカテゴリの武器を使う人はいないため、売却することにした。
その後には、3体の魔神と驚くべき一人の存在があった。その一人とは、他ならぬ生徒会長、フィン・ハンドストンその人だった。一行は警戒しながらフィンと会話を重ねる。決定的な食い違いが生じたのは、今回の以来の報酬についての会話だった。カサ増しされた報酬をかたるフィンの言動をフォルテが録音しつつ、その正体がフィンその人ではなく、ダブラブルグであることを見抜いた。
しかしながら、ナズラックやエルビレアの脅威を退けるのを見届けると、そのダブラブルグは足早に去ってしまうのだった。無事に剣型の結晶を破壊しポータルが出現した。エーガスたち行方不明者を引き連れて脱出に成功した。
しかし、それだけで解決というわけではなかった。魔域の外にもまだいくつか装置が残されているとダブラブルグから知らされていたからである。一行は残されていた紙片をヒントに502教室と918教室に向かった。どうやら、鏡映しにして見るのが正しかったようだ。そこには鏡があったので、破壊し、3つ目の紙片を元にHN3室へ向かった。最後待ち構えていたのはこれまでよりも巨大な装置だった。赤い線を指示通り切ると、機械音を発し始めたが、それが何らかの動作をする前に、破壊しきることに成功した。
☆第5話「操霊術師の受難」
話を持ちかけてきたのは、操霊魔法学科のエーガスである。いわく、操霊魔法学科の管理下にある森の奥の研究室で、問題が発生しているようなので、現状の確認と解決に協力して欲しいというものだった。ゴーレムの自動操縦の練習として使用していた小屋だったのだが、最近信号が途絶えてしまっったという。
道中では、大量発生したブラッディーペタルに襲われ、かなりの被害を受けてしまったが、エーガスの支援とパーティの一斉攻撃によって、かろうじて難を逃れることができた。
到着した小屋からは、瘴気がこぼれていた。突入すると、中にはボーンハウンドとスケルトンソルジャーが待ち構えていた。暴走ゴーレムが待ち構えていることを想定していたため、若干の意外性こそあったものの、彼らの実力の前では、そうそう難のある相手というわけでもなく、無事に倒すことができたのだった。エーガスによると、保管されていたアイテムと何らかの反応が発生した結果、アンデッドが生じてしまったのではないかとのことだった。彼からそこに落ちていたマイナーカースレベリオンの類似品を受け取ったあと、マギ・スイーパーへと帰還した。
しかし、そんな彼らにエメリーからもたらされたのは凶報だった。
☆第6話「決戦」
エメリーが話すことによれば、ユーシズに向かって魔神の大集団が押し寄せているとのことだ。以前このパーティの前に姿を現したダブラブルグが関与しているかもしれないとのことで、彼らに大元の奈落の魔域対策を依頼したのだ。それにともない急ぎ出撃した一行が街を出てすぐに目視したのは、低級の魔神と思しき大集団が街に向かって進撃している光景だった。人族側も多くの冒険者を派遣し正規兵も出ているので、数の面では大きくは劣っていないが、一個一個の戦場が長引いているようだ。この状態ではそう長くは持たず、ユーシズの街に被害が出てしまうかもしれないと感じた。
パーティーはまず、目前に待ち構える魔神の大群に突撃していった。リタが順々に陣率を練り上げていく。その効果は、普段パーティーメンバーにしか及ぼされないため失念しがちだが、軍師、すなわちウォーリーダーの力は、大規模戦闘にて絶大な威力を発揮する。このパーティーの付近、わずか10 mにしかみたない影響範囲から、人類側の劣勢を覆していく。
その瞬間、レイは高い馬のひずめの音と、何かが地面に落ちる音が聞こえた。——その音の原因はすぐに正体を現した。つまるところ、生徒会長フィン・ハンドストンと大無頼バンジョウ・クロビオスであった。この事態が発生してすぐ、フィンによってバンジョウは起こされたようだった。大人数戦闘なら俺の方が得意だと豪語するバンジョウがさっそく多くの魔神を地面に叩きつけていく中、フィンが忠告する。どうやら牢から何人かが脱獄してしまったから気をつけて欲しい、奈落の魔域を頼む、ということだった。この二人がいれば問題なく前線維持および進撃はできるだろうとふみ、奈落の魔域へと突撃していった。
魔域の中は暗闇に閉ざされていた。松明だけでは十分に明るくならなかったことからして、魔法の暗闇だったのだろう。魔導機術のフラッシュライトまで重ねがけして、ようやく普段通りの視界を確保できた。
しばらく進んでいくと、人影が見えた。以前戦ったジン・グレイソンとククロア・ロコアがスケルトンヘビーアーチャーやナズラックと待ち構えていた。どうやら主犯のダブラブルグによって、インスタントスクロールを応用したクエストをかけられ、ユーシズと敵対することを強制されてしまっているようだった。彼らとの戦いは、成長した一行にとっては、そう難しいものではなかった。ジンの複数体に対するアウェイクンは戦場を長引かせたが、それも延命措置にしかならなかった。本意ではないユーシズとの対立から解放するために、そうそうに二人を薙ぎ倒したのだった。
さらに進んだ先では扉があった。開こうとするとどうやらバリケードか何かが置かれていたようだ。時間こそかかったが、扉自体は開いた、そしてその奥で待ち構えていたのは、警戒体勢のエーガスとリュカとミュカだった。どうやらエメリーの依頼で後方支援に当たっていたのだが、不運にも巻き込まれた結果ここに迷い込んだのだという。
彼らは後衛からのサポートであれば充分に戦えるとのことだったので、共に奥へと進んだ。
最後に待ち受けていたのは、ヴァンデルケン・マグヌスだった。いや、ヴァンデルケン・マグヌスの姿をしたダブラブルグであるとその場にいたものはすぐに見抜くことができた。彼はこう語った。
「私はそこまで強くはないからね。精々斥候がいいところだろうさ。だったら、私より強いものに好き勝手暴れてもらえればいい。おとなしく“奈落の魔域”内で迷い込んだ人のエネルギーを回収するのでもいいけど、それじゃあ効率が悪い。周辺領域で人族を大量に滅ぼせれば十分なエネルギーを貯められるんじゃないかな」
そうして、数体のアンデッドや魔神とともに顕現していたダブラブルグだったが、リタやフォルテは違和感を覚えた。思うに、この前会った時からまともに変化が見受けられない。違和感は的中した。ジャンの振るった大剣によって、一度確かにダブラブルグの生命は途絶えた、はずだった。しかし、その魔物は、後方に控える禍々しいエネルギーの集合体を自らに取り込み始める。
「ふむ、仕方がありません。あなたがたは計画の大きな障害だ。あなた方を倒すか、あるいはもうすこし時間を稼がねばならないようです。ああ、我が神ラーリスよ。私に力を」
結果、体力が全快し、禍々しい神の薫陶をその身に受けた。大規模な反撃や、打撃に重ねられる重みなど、かなりの脅威となった2回目のダブラブルグ戦ではあったが、フォルテの二連銃撃によって、正しくその命に終わりを迎えた。
後ろに控えていた装置を破壊すると、禍々しいエネルギーも散逸していき、奈落の魔域の出口が生じた。
彼らが外に出ると、先程の二人の活躍もあったのか、地上側は人族側の圧倒的有利に傾いていた。
その晩は、生徒会も絡むような大規模な酒宴となった。英雄たるこの四人は、祝福をうけつつも楽しい酒宴を過ごしていくのだった。
彼らについての物語は、ここで記述を閉じることになる。しかし、彼らの学生としての、冒険者としての、そしてこの星に生きるラクシアの住人としての生は続いていく。彼らの行先は定かではない。しかし、冒険と驚きに満ちた生が、待ち受けていることだろう。
彼ら四人にの行先に、多くの幸があらんことを。
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