ダブルクロス the 3rd edition 〜僕たちのオリンピック〜 とあるFH職員の記録


はあ、どうしてこんなことしてるんだろ。まあ、でもシナリオを書いた作者に言われてしまったらしょうがないか。私がこのページを書かせてもらうね。今は名前は明かせないけど、どうぞよろしく。

PC紹介


さて、このオリンピックでは、私はN市支部への対応班として、つまり、あのS・ルーマーの直属の部下として働いているわけなんだけど、はあ、UGNのN市支部の面々がまた、これ強すぎなんだよ。とりあえず、見ていて分かったことをここに記すね。

+ PC一覧
  • "������"�����
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有名な大企業「夢園グループ」の御令嬢。私達の実験の唯一の成功例で、つい最近力に目覚めたはずの彼女は、純真な子で、友達思いで、芯が強い子。きっともっと強くなる。そして、もっともっと私たちを邪魔してくるだろう。できれば              。今後もよく観察しなければならない。

  • "権天使(プリンシパリティ)"天羽 命
@wiki ゆとしーとキャラシ天羽命
なんか不思議な子。何か、異質というか、浮いているというか。ちょっと不気味な子。彼女がこうなってしまった原因は、多分私達にあるんだろう。        ない。警戒しなければならない。私達は、彼女に憎まれていても仕方ないのだから。その仮面の下に、何があるのか、注意深く探って行かなければならない。

  • "惜別の戦略家(Red spider Lily)"黒瀬 カイ
@wiki ゆとしーとキャラシ黒瀬カイ
個性的かつ強力なこのN市支部をまとめ上げている支部長。頭を抱えながら、それでもまとめ上げて春日を倒す手腕はやっぱりN市支部の一員だと痛感させられる。彼に眠っている過去についても知っている。だとすると、彼ももしかしたらあの事実を知ったら取り乱すかもしれない。その時に何が起こるのか、予測がつかないね。

  • "血の聖餐(ブラッディパーティ)"綾瀬透也
@wiki ゆとしーとキャラシ綾瀬透也
ここ最近N市にやってきたUGNエージェント。その力は本物で、間違いなく強力なもので、正直N市支部が戦力過剰なほどになっているなという感じ。まあ、こっちのことを考えると妥当なのかな。でも、どうしてこの人がN市支部にきたのかあまりわからない。まさか、本気で五輪のため、てことはない、よね?

  • "Unlock(アンロック)"鏡遊助
@wiki ゆとしーとキャラシ鏡遊助
UGNのイリーガルで、折り紙付きの実力を持つ子。優秀なハッカーでもあるけど、どこか危うい。    前に、      いいけど。どこか、同じような感じがするんだよね。彼は。できればハッキングはしないで済むようにしてほしい。けど、分かってる。これは私の、悪人のわがままなんだから。


全く持って全員規格外で、勘弁してほしいよ。
彼らの力は強大で、この後もきっと私達の企みを暴いていくんだろう。そんな予感がするんだ。                      いや、まあ、勿論そんな簡単にはやらせないけど、ね。今後が楽しみだよ。

NPC紹介


そうだ、N市支部の面々のみに注目するのも良いけれど、このN市にはまだまだ紹介しなきゃいけない人がいるんだった。順番に紹介していくね。

+ NPC一覧
  • S・ルーマー
FHセル「策の棲家」のリーダーで私の直属の上司。たくさんの人を自身の作戦に嵌めて、その様子をケタケタ嗤う悪趣味な人。過去にはプリンシパリティの弟も陥れてジャーム化させているし、どうやらRed spider Lilyの兄についても何かを知っている。いや、関わっているみたい。多分、他にもたくさん裏で糸を引いているのだろう。私も多分、全てを知らされていないと思う。

  • 春日恭二
FHエージェントの中でも屈指の戦闘力を持つとされる一人。確かにあのガード能力や決して沈まぬ不死性は彼の代名詞であるだろう。ただ、どこか口を滑らせそうな気配があるから、こちらの情報共有は最低限に、と言われた。  せて      のに。

  • フロッピーレイス
変幻自在の肉体を持っているFHエージェント。その擬態能力は本物で、お陰でこの東京五輪の時までUGNに一切の情報は渡っていなかった。今も、きっと、私の知らないどこかで暗躍しているのだろう。どうやらUGN、N市支部長(黒瀬カイ)と面識もあるみたいだけれど...ちょっと調べてみようかな。

  • 黒鶴瑞稀
オリンピック開催に合わせ、東京近郊のN市にもスタジアムが建てられた。その名も「Nティアスタジアム」。当初作る予定のなかったこのスタジアムを建てるように尽力したのが彼女と彼女の率いる「Nティアスタジアムを建設しようの会」だった。彼女たちの提案は政府に認められて、「Nティアスタジアム」を作ることができた。そして黒鶴瑞稀はその後も「Nティアスタジアム応援団」の応援団長として、Nティアスタジアムのアイドル的な活動をして五輪を盛り上げている。ただ、どこか、無理している印象もあるんだよね。気のせいかな?

  • 霧谷優吾、ローザ・バスカヴィル
言わずとしれたUGNの日本支部長、日本副支部長。支部長の仕事は多く霧谷優吾は常に過労死一歩手前の生活をオーヴァードの力に支えられて送っている。あんまりそういうことは、健康によくないと思うなあ。ローザ・バスカヴィルは副支部長として、また日本支部の監査役として働いている、らしい。たまに霧谷優吾の代わりに依頼をすることもあるらしい。

  • 倉坂次郎
一番最初の事件である「strong Japan大量ジャーム化事件」の実行犯の主犯格。彼は冴えない中年男性であったが、黒鶴瑞稀に対する「推し」活動に熱中していた。S・ルーマーの手によってジャーム化したことで、その「推し」への行為が衝動として高まり、今回のような事件を起こした。ある意味被害者なのかもしれない。

  • 天羽補
天羽命の弟。5年前の事件でS・ルーマーによってジャーム化され、姉自身の手で屠られた。     ない。ご     。

  • 折原舞
黒鶴瑞稀の親友。難病と呼ばれる病気にかかっていてN市の病院にずっと入院しているらしい。黒鶴瑞稀がNティアスタジアムを作らせた理由にもなった子。芯が強くて、儚げながらも決して折れない。そんな雰囲気があるなあ。

  • フォティア(=補?)
聖火という形を持つレネゲイドビーイング。彼自身はオリンピックってもっと厳粛で神聖なものだと思っていたみたい。それと、どうやらその外見は天羽補に似ているという...

  • 日本代表選手団
在籍メンバーに金船芹奈、社台粒子などがいる。彼女達は日本代表選手だったけれど、一連の騒動でオーヴァードとなってしまった。彼女達はこの力をどんどん使ってより良い記録を打ち立てることを考えていて、UGNとは平行線だ...。

  • 首相
日本の首相。「最強の日本」に執念を持っていたみたい。彼自身もジャーム化していて、N市支部とも直接戦った。

  • 勝木 藍
日本の外務大臣。とにかく頭が切れるおじいちゃん。



うーん、もうちょい余白がいるかもしれない。また、目に止まった人がいたら、ここに書き足して行こうかな。

N市支部観察記録


ここからは私が見た、彼等の活動の記録を書いていく。あまり上手く書ける自信はないけれど、頑張って行くね。

part1「Nティアスタジアム完成前イベント騒動」


+ ...
 今回、私達は中規模の事件を起こした。それは、黒鶴瑞稀が出現するというイベントの最中に特殊な方法で民衆をジャーム化させて、事態を混乱させる、それと同時に倉坂次郎が黒鶴瑞稀に恩を売ること。まあ、中年のおじさんなんて、恩を売ったところでどこまで効果があるかわからないし、私達は、彼自身が上手く行くとは全く思っていない。でも、N市支部の人たちの実力を見るためには丁度いい、とS・ルーマーが承認していた。計画から実行まで上手くいき、大量のジャームと、たった一人のオーヴァードを目覚めさせることに成功した。         。その子の名前は夢園鈴香、彼女とN市支部の面々は、この事件を解決するために動き出した。

彼等はやはりN市支部のメンバーだった。観察能力、推察能力、情報収集能力、全てが一級品で、やっぱり侮れない。

彼等は顔合わせから個性的で、純心な夢園ちゃん、どこか俯瞰した天羽ちゃん、頭を抱えながら仕事を綾瀬さんに押し付ける黒瀬さん、押し付けられた仕事を疑いもせず情熱のままに片付ける綾瀬さん、そんな様子を見ながら情報を淡々と集める鏡くん。全員が思い思いのことをして、でも順調に情報は集まった。優秀すぎて嫌になる。こっちの倉坂次郎は対照的に欲望に忠実というかなんというか。

倉坂次郎の目的はこの大量ジャーム化事件において、ジャームの攻撃から黒鶴瑞稀を庇い、恩をうるというもの。その、恩があれば関係を深められると思ったようだけど、そんな甘くないと思うよ、と思っていた。案の定、黒鶴瑞稀はUGNによって記憶処理を受け、倉坂次郎のことを覚えていなかった。しかも、その説明を綾瀬さんにされたときに、あいつは駄々を捏ねたらしい。おかげで不審に思われたし、いいことなんてひとつもなかった。はあ。

それでも倉坂次郎がうるさいので、UGNが黒鶴瑞稀に行った記憶処理をS・ルーマーが解除して、黒鶴瑞稀にあの事件のことを思い出させた。彼女は倉坂次郎...もうおっさんで良いか、おっさんと夢園ちゃんと天羽ちゃんにお礼を言いたい、と行動した。でも、おっさんの思ったような効果は上がらなかったらしい。S・ルーマーに対して瑞稀ちゃんにさらなる恩を売れる計画を要求したので、瑞稀ちゃんの誘拐と救出の自演計画を渡したそう。それで、結局はその計画は途中でN市支部の人達に邪魔された。

戦いも圧倒的だった。貸し与えていたジャームも範囲攻撃の餌食となって何もできずに塵となった。おっさん自身も白虎となった夢園ちゃんに喉を噛み切られて、天に昇ったらしい。来世はもっと真っ当に生きるんだ、おっさん。とんでもない破壊力だ。やっぱり厄介だと思う。それがわかったことが、多分おっさんの最大の戦果だろう。

まだ、五輪は始まってもいない、S・ルーマーも何を考えてるのかは想像はつかないけど、私も精一杯やろう。私たちの五輪は、すでに始まってしまったのだから。


part2「Nティアスタジアム爆破事件」


+ ...
さて、私たちの目的の一つである、Nティアスタジアムについての話を書き留めておこう。Nティアスタジアム、それは東京五輪開催に向けて、東京近郊N市に建てられた総合体育施設であり、主にサッカーや陸上を行うことを想定して建てられた。Nティアスタジアムには『エアカーテン』と呼ばれる空調管理システムが付随していて、これはスタジアム内の空気を外の空気と完全に遮断して、保温効果を狙ったもの____と表向きにはなっているけど、本当の狙いは勿論、そんな良いものではなかった。この『エアカーテン』に載せたレネゲイドウイルスによって発生した大量のジャーム確保、これが私達の真の目的だ。

この計画はかなり前から準備がされていて、まず2年前、Nティアスタジアムを作りたい黒鶴瑞稀ちゃんに接触して、「Nティアスタジアムを建設しようの会」(今の「Nティアスタジアム応援団」)を発足。Nティアスタジアムの完成に協力しながらも、自身の思い通りの設計になるように、色々と手を回した。UGNが動き出すもっともっと前から、こちらは動いていたんだ。実は。

それで、本当なら、このままNティアスタジアムの完成を見届けて終了、だったんだけど、S・ルーマーがUGNの人達にpart1で見つかっちゃったでしょ。あれで、S・ルーマーはUGNの脅威度を2段階ぐらい引き上げて、計画を変更した。まあ、最も、UGNの人達はもっと優秀だったみたいだけど。

だから、わざわざNティアスタジアムを守るように仕向けるために、爆弾を運び込んで、フロッピーレイスっていう擬態のうまいあいつに引っ掻き回させたあげく、天羽命ちゃんを挑発するために嘲笑いにいった、概ねS・ルーマーの狙い通りに進んでいた。ただ、まさか、黒鶴瑞稀ちゃんが抜け出して夢園鈴香ちゃんのところに「お泊まり会」なんてするとは思いもしなかったけれど。黒鶴瑞稀ちゃんは「親友と一緒に観戦したいから、そうしたら、何か病気に対しても良い方向に向くかもしれない」てことでNティアスタジアムを作ろうと思っていたなんて初耳だったなあ。多分S・ルーマーの奴なら知っていたかもしれないけれど。もしかしたら、ここも計算通り、だったのかな?まあでも、やっぱりというべきかなあ、UGNの方が一枚上手だった。N市支部の皆はどこからかS・ルーマーの真の狙いを知って、Nティアスタジアムを壊す決断をした。親友のために、とNティアスタジアム完成を心待ちにしていた黒鶴瑞稀ちゃんを、そのことを知っていて、彼女の親友の折原舞ちゃんの思いを知っていた夢園鈴香ちゃんと、過去にあった出来事を繰り返したくないと切に願った天羽命ちゃんが説得して、S・ルーマーとフロッピーレイスを倒して...最後はNティアスタジアムを爆破した。S・ルーマーは、崩れゆくスタジアムに取り残されて、フロッピーレイスは戦闘中に爆散。けど、まだ、終わりじゃない。私は、そのことを一番よく知っているから。

この事件を通して、鈴香ちゃん、命ちゃんには本当に辛い思いをさせた。鈴香ちゃんは親友の築き上げてきたものを踏み躙らせたし、命ちゃんには過去の古傷を抉らせてしまった。いけないことをしてしまっているというのは分かってる。それでも、素直に謝れない自分が、憎い。


part3 聖火確保計画の行方


+ ...
はあ、やっと続きを書ける。ごめんね。ちょっと遅れちゃった。色々あってね。じゃあ、時系列順に大きく前編と後編に分けていくよ。
FHは、このオリンピックについて、一つの情報を掴んでいた。それは「どうやら聖火がレネゲイドビーイングになっているらしい」というものだ。このことを知ったS・ルーマーは私に「その聖火型レネゲイドビーイングを確保するよう」命令してきたの。それで、探し回って、それらしいレネゲイドビーイングを見つけた。でも、驚いた。その子は、すでにUGNの命ちゃんと行動を共にしていたのだ。
いつもとは全く違う、まるで姉のような甲斐甲斐しさで世話を焼く命ちゃん。少しぎこちないながらも、仲睦まじい様子を見て、私の胸には罪悪感が広がるばかり。それでも、命令は命令。命ちゃんと戦って(あれを戦いと言っても良いのかな?)聖火-フォティア-の分身体を攫ってきた。あの、攫った時に見た命ちゃんの全てを諦めたかのような表情は、私をさらに蝕んだ。

そうそう、この時、FHが選手村を丸ごと覚醒させたので、選手達がオリンピック競技に出られない!ってことが起きていたから、UGN達のオーヴァードを使って選手の代用をしていたんだよね。なんかもう、バンバン人外の動きをしていて、バレないかどうか敵だったけど冷や冷やしていたよ。N市支部も日本代表の代わりとして出てきていたよ。
結果は黒瀬さんがアーチェリーで金メダル、鈴香ちゃんが新体操で金メダル、綾瀬さんは卓球で銅メダル、鏡くんは惜しくも負けてしまったけれど、それぞれ、やっぱり輝いていて、とても、綺麗だった。特に、綾瀬さんが、本当に、楽しそうにアメリカ代表役のライバルと競い合ってる姿には、オリンピックのあるべき何かを感じた。裏でこそこそと動いて、ただただ奪うだけの私と違って、何も守れなかった私と違って。

もう限界だった。人の幸せを奪い、笑顔に嫉妬して、それでもとFHに従っていたのに、一番守りたかった妹も、覚醒してしまった。妹は日本代表選手として選手村にいたから。
私は、FHを裏切る決意をしたの。その一歩として、鏡君に依頼を持ちかけた。
拉致してFHに連れていくはずだった黒鶴瑞稀とフォティアを匿い、選手村にあったレネゲイドウイルス拡散装置を壊して回る。鏡君には、拠点の場所がUGNにもFHにもバレないようにしてもらう手筈を整えてもらう。そんな依頼だ。本当に、鏡君には、危ない橋を渡らせてしまうし、UGNのイリーガルとしての信用を失わせてしまうから、こんなこと頼みたくはなかったし、どうなるか内心怖い気持ちで一杯だった。けど、彼は、一も二もなく頷いてくれた。感謝の気持ちと申し訳なさが混ざった感情に満たされて、その後のことはあまり、覚えてない。

結局、フォティアの完全回収を試みた、春日による陽動作戦は失敗し、S・ルーマーが放った刺客は見事N市支部の皆が倒した。


part4 選手村事変


+ ...
全てが動き出したのは鈴香ちゃんが金メダルを取った表彰式だった。金メダルを鈴香ちゃんに与えるのは瑞稀ちゃんだった。彼女はS・ルーマーにこう唆されていた。「夢園鈴香を表彰式の場でこのナイフで刺せば、親友の折原舞の病気、アレをどうにかしてやっても良いぞ」と。
でも、彼女は刺せなかった。刺さなかった。本当に彼女の自制心は凄い。結果的に瑞稀ちゃんは何もせずに逃亡、そして、鈴香ちゃんと綾瀬さんに追い詰められた先で、私は鏡君と謀って瑞稀ちゃんを私のアジトに連れ去った。同時期にUGNの方に選手村の事態が届いたらしい。N市支部の皆は、綾瀬さんと鈴香ちゃんの瑞稀ちゃんを探す方と、黒瀬さんと命ちゃんの選手村の騒動を鎮める方に別れて行動を開始した。

予想外だったのは鈴香ちゃん達のキレようだったね。部下に足止めをするように頼んだんだけど、まさかごうも...あそこまで強い尋問をする子だとは思わなかった。普段温厚な子を怒らせちゃいけない。先人の言ってることがよく分かったよ。部下の子には後で凄い愚痴られた。

また、黒瀬さん達は一方で、陸上女子100 mの日本代表の朝露蒼や一連の騒動でオーヴァード化してしまった日本代表達と会ったみたいだ。でも、やっぱり首謀者側であったFHの方が彼女ら日本代表との接触が早かった。彼女達は頭も切れるはずだったけど、正確な判断をするにはあまりにも情報が少なくて、彼女達は春日恭二の言葉を信じることにしてしまったみたい。黒瀬さんとの話し合いは平行線となってしまって、結局彼女達日本代表選手団はその力を使って競技に臨めると言う春日恭二についていくことになってしまったよう。なんとかしたかったけれど、私も瑞稀ちゃん達のことで手一杯でそこまで手が回らなかったんだ。申し訳なさで一杯だったし、悔しかった。

その私だけど、鏡君と共に選手村に仕掛けられていたレネゲイドウイルス散布装置を壊して回っていた。そして、ある程度を壊して回った私は鏡君に依頼をする。「鏡君はUGNの皆と合流して、私を倒して。私に従っていたことに関しては『父を人質に取られた』ということにして」と。彼は、覚悟を決めた目で、まっすぐ私を見て頷いてくれた。そうして、私は恐らくUGNと最後の戦闘をする。私は私を監視していたFHのエージェントがいることも、S・ルーマーが私を切ろうとすることも気づいていたから、私はきっとUGNとの戦闘で、もしくは弱ったところをFHの誰かに殺されると思っていた。できれば、鏡君に倒されたい。そういう我儘を、実は密かに思っていた。

けれど、私は、遊助君の情の厚さを見誤っていた。まさか、私への攻撃を庇うとは思わなかった。どうして、どうしてという私に遊助君は優しく助けたいからと言ってくれた。その言葉は「生きてはいけない」と思っていた私にとって生きて良いんだって思える言葉だった。私は、UGNイリーガルとして生きる決意をした。後もう一つ、こっちはここですら恥ずかしくて書けないけど、もう一つの決意も。

瑞稀ちゃん達の場所は鈴香ちゃん達に教えた。また、FHにいたときにどのような研究をしていたのかも話した。鈴香ちゃんがどうしてジャームではなくオーヴァードとして覚醒できたのかも話した。私が行っていた研究は主に覚醒について。どうすればジャームではなくオーヴァードとして覚醒できるかをずっと考えていた。その成功例のうちの一人が鈴香ちゃんだった。

そのことを聞いた鈴香ちゃん達は舞ちゃんをオーヴァード化することにした。これは後で聞いたんだけど、舞ちゃんは危篤状態で、瑞稀ちゃんを連れて帰る余裕すらないほど死の間際だったみたい。だから鈴香ちゃん達は彼女を生き残らせるために私の研究成果を使うみたいだ。ジャーム化せずに覚醒させるために必要なのは、私の作る特殊な薬品、レネゲイドウイルスを最小濃度で散布する装置、そして、折原舞を大切に思う人々の心。これだけ条件を揃えても、オーヴァードとなるかは五分五分だった。でも、舞ちゃんは賭けに勝って、新しいオーヴァードとしての人生を歩めることができた。本当によかった。私の成果で人が救えたことが、こんな私も無駄じゃなかったんだって思えた。

後は瑞稀ちゃんと、その場所にいるフォティアの一部を私のアジトから回収するだけとなった。しかし、最後の最後、アジトまで着く直前に立ちはだかったのは、日本選手団だった。選手団のメンバーは、その覚醒仕立てでまだまだ未熟なレネゲイドウイルスの力を用いてUGNと戦う。日本選手団の彼女達はまだ力になれておらず、彼女達を傷つけ過ぎれば二度と戻らない重大な障害が残る。そんな事情すらも彼等は加味して、誰一人傷つかせる事なく、制圧した。そして、瑞稀ちゃんとフォティアは無事、UGNの皆に保護された。

まさかN市支部の皆がここまで強力とは思わなかった。一つや二つ取りこぼしてしまうと思っていたけれど、彼等彼女等は、たった五人で全てを解決して退けた。私もS・ルーマーも、最初から、N市支部の力を見誤っていたんだ。

結果として、オリンピックは皆思い思いのことを行えた。選手団の選手達は選手として大会に参加することができ、皆は観戦したい人と一緒に観戦することができた。瑞稀ちゃんは鈴香ちゃんと舞ちゃんとスリーショットを撮ったりしながら楽しく観戦していた。命ちゃんはフォティアと共にまるで本当の姉弟のように仲睦まじく観戦していた。黒瀬さんはそんな皆を見守っていた、途中で帰っていったけど。綾瀬さんは何やら有名人になってしまった春日恭二にちょっかいをかけていた。そして、私は、遊助君と一緒に観戦することができた。まさか、こんな日が来るなんてね。あーーー。よかった。


part5 閉会式


+ ...
全てが大団円となったわけだけど、S・ルーマーはまだ止まっていなかった。彼は、UGNの霧谷優吾を共謀罪の罪で逮捕したんだ。まさか、彼に政治のパイプがあるとは思わなかった。でも、考えてみると確かに、FHがあまりにも暗躍できすぎていた。Nティアスタジアムの設計も、選手村にFHが入れたのも、あまりにも容易にFHの思うがままになっていた。

でも、嘆いていても仕方がない。N市支部は霧谷優吾を取り返すために霧谷優吾を捕まえた集団の跡を追う。滞った業務はどうしようかとなった時に、N市支部を助けてくれたのは、綾瀬さんとオリンピック競技で戦ったアメリカの支部の人たちだ。おかげでN市支部は霧谷優吾救出に全力を注げた。

霧谷優吾が運ばれたのは警察庁ではなく首相官邸だったらしい。遊助君が探し出した事実に対し、どう官邸に潜入するかと頭を悩ませた時、助けてくれたのは瑞稀ちゃんだった。彼女は、自身の持っていた官邸への入館証を鈴香ちゃんを信頼して渡してくれた。おかげで容易に潜入することができた。

その後、外務大臣に話を聞くことができた。どうやら首相が何を狂ったのか、戦争の準備に見えるようなことをしていることを聞いた。首相に直談判すると、首相は何故か「日本を最強にする」と言う妄執に取り憑かれていた。彼自身もジャームだった。彼を倒してけれど、これでS・ルーマーが終わると思わない。

でも、調べてみても、S・ルーマーは新国立競技場にNティアスタジアムと同じような細工を施していたことしか分からなかった。奴はそんな単純な奴じゃない。よく分からないまま、N市支部の皆は閉会式直前の最後の戦いに挑んだ。

驚いた。まさか、新国立競技場を一つの巨大なジャームにするなんて。
N市支部の皆を待ち受けていたのは、動く新国立競技場と、大量のジャーム達。流石に皆だけでは、抑えられない。私の体は勝手に動き出していた。同じことをしたのは私以外にも、選手村の選手団達も来ていた。周辺のジャームは私達が受け持って、彼等は新国立競技場を相手にした。
支部長の的確な指示の元、光が弾け、血が舞い踊り、造られた武器が宙を飛び、白虎が装甲に喰らいつく。新国立競技場も武装を展開して応戦するけど、攻撃は何故かひとりに吸い寄せられ、思ったように攻撃できない。あれだけ強力に見えた新国立競技場は、N市支部の皆によって消し飛ばされた。全くとんでもない奴らだよ。彼等は。

こうして、オリンピックは表向きには少しの不具合で、裏ではN市支部の大奮闘によって、大勢の日常を守って、幾つかの日常を変えて、閉会した。無事、とは言えないけれど、私は、このオリンピックはそんな悪いものじゃなかったなと思う。選手の皆はどうか「まあ、私はこれもアリだと思ってるぜ。おかげで火星旅行とかいけそうだしな」「新しい力...興味があるからね。これがあれば、もっと早くなれそうだ。」...まあ、選手の皆もそれなりによかったと思ってるみたいだ。

とある少女は初めて触れた裏側の出来事を通して、二人の友人を経た。
とある少女は五輪のもたらした奇跡によって、弟と再会した。
とある男は五輪に張られた陰謀によって、兄の今を知った。
とある男は五輪の作り出す雰囲気を楽しみ、最後まで堪能した。
とある少年は五輪の裏側を走り抜いて、とある少女の人生を変えた。

ある少女達はそれぞれを失うことなく、一人のかけがえのない友人を得た。
あるレネゲイドビーイングは、五輪の在り様を知り、家族の温もりを知った。
ある集団は、強大な力と、その力を正しく使うことの大切さをある男から教えられた。
あるオーヴァードは、全力を出して楽しむ相手を見つけ、国を超えた友情を結んだ。
そして、私は、とある少年にどん底から救い出された。

もう二度とやりたくはないけれど、決してなくなって欲しくない、そんな思い出になった。
他の皆も、そう思っているといいなあ。



天からの補足情報



ダブルクロスってどんな世界観?


+ 現代日本で超能力を使って日常を守るって世界観です
現代世界を舞台に、あるきっかけで超能力に目覚めてしまった人々が、日常を守るために、決して日の当たらないところで戦うって感じの世界観です。
超能力の原因はレネゲイドウイルスという未知のウイルス。このウイルスはみんな感染していますが、きっかけがない限り超能力を発症しません。しかし、一度発症してしまうと、その衝撃に耐えきれず大概の人が理性を手放しジャームという怪物になってしまいます。ジャームは知性があったりなかったりしますが理性はないため、また、彼等を戻す方法は存在しないため、基本的には処理、駆除をすることになります。発症した時の衝撃(衝動)に耐え切って理性を保つことに成功したわずか一握りのモノをオーヴァードと呼びます。彼等はジャームと同じように超能力を使いますが、人間のような理性を持ち合わせているため、「ダブルクロス」-裏切り者-と呼ばれることもあります。
オーヴァードには常にジャーム化の危険がつきまといます。超能力を使うたびにウイルスによる侵蝕が進み、ジャーム化が進んでいきます。オーヴァードのジャーム化を止めるのはその人を押し留めることができる絆や思い入れです。それらはロイスと呼ばれています。

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最終更新:2022年08月13日 00:33