このページは『幕末霊異伝〜MI・BU・RO〜』を遊ぶ上での簡単な基礎知識をまとめたものです。著作権違反にならない程度に、このゲームの基本コンセプト・世界設定・アーキタイプの概要について書き記しておきます。
一応、セッションが始まる前に改めて説明はしますが、事前に読んでおいた方が、よりスムーズに頭に入ると思います。
基本コンセプト
このゲームは「幕末の日本によく似た世界(扶桑国)」を舞台に、新撰組の一員となって、京にはびこる妖怪や魑魅魍魎や長州藩士と戦うゲームです。
必要なダイスは3D6で、ルールブックは復刊ドットコムで購入出来ます(5250円)。
世界設定
この物語の舞台となる扶桑国は、表面上は現実の日本史と同じような経緯で幕末まで推移してきましたが、その裏では、人間と妖怪の激しい権力闘争が繰り広げられてきました。
平安時代の中頃から、朝廷内で妖怪達が勢力を広げ、やがて有力な公家達の大半を、妖怪の下僕、もしくは妖怪そのものが占めるようになり、事実上、扶桑国の政治は妖怪達に乗っ取られることになりました。ただし、そのことを知っているのはあくまで中央の権力者達のみであり、一般大衆は誰が自分達を支配しているのかなど、全く何も知りません(ちなみに、なぜか天皇家だけは純粋な人間の血統を維持しています)。
これに対して、鎌倉時代以降、妖怪(公家)の手から権力を取り戻そうとする人間達(武家)が、朝廷から実権を奪って「幕府」という政治機関を設立します。歴代の幕府は、六波羅探題や京都守護代などを通じて妖怪達が京の都の外に出ないように監視を続けながら、人間主導の政治体制を維持してきました。
一方、扶桑国の外側はどうなっているのかというと、扶桑(日本)とシャム(タイ)以外は全て、西洋列強の植民地となっており、そしてその西洋列強は、いずれも西洋妖怪達によって支配されている状態です。扶桑国は、そんな西洋妖怪の支配から逃れるために鎖国を続けていましたが、1853年に扶桑を訪れたペルリ(正体はクラーケン)率いるアメリカの使節団の圧力に屈する形で、開国を余儀なくされます。
この状況に対して最も憤慨したのは、京の日本妖怪達でした。自分達の国を西洋妖怪に乗っ取られることだけは避けたいと考えていた彼等は、同じように幕府の弱腰姿勢に憤慨していた水戸・長州・土佐などの下級武士達を煽動して、攘夷(外国人排斥)および倒幕運動を促します。その結果、京には、幕府と外国人(西洋妖怪)を打倒して、天皇中心の政治を復活させようとする浪士達が集まり、治安が悪化の一途を辿っていきます(ちなみに、彼等の大半は、公家の正体が妖怪だということは知りません)。
このような状況に対して、幕府は新たに京の警備を強めるため「京都守護職」を設置し、会津藩主・松平容保をその任に就け、その下に様々な警備機構を設立します。その一つが、身分の別を問わず腕に自信のある者達を集めた剣豪集団・新撰組です。新撰組の任務は、京の治安を乱す長州藩士を初めとする反幕府系の浪士達と、それを背後で操る日本妖怪達を倒して、京の治安を守ることです。
勢力関係
ルールブックには明確な年代が記されていませんが、このゲームの新撰組は既に西本願寺に屯所を移した後で、松原忠司(四番隊組長)がまだ存命、かつ山南敬助(総長)が載っていない(切腹後?)ことから察するに、おそらく慶応元年(1865年)の夏頃だと思われます(ただし、田中新兵衛や岡田以蔵が現役だったりもするので、微妙に史実とは異なる展開となっているようです)。
この時代は、日本史全体の流れで位置付けるなら、第二次長州征伐の直前期に相当します。つまり、14代将軍・徳川家茂がまだ存命で、彼と和宮(天皇の妹)との婚儀による「公武合体」という形で、幕府と朝廷が手を結んで協力体制を築こうとしている段階です(ただし、それに反発して、密かに倒幕を企てている公家もいます)。
一方、倒幕勢力の急先鋒だった長州藩では、 前年の長州征伐により、倒幕派が追放され、幕府恭順派が実権を握っています。しかし、高杉晋作・桂小五郎を中心とする倒幕派は、全国指名手配の状態ながらも、着々と権力奪回に向けての準備を進めている状態であり、京都にも頻繁に出没します。
これに対し、薩摩藩や土佐藩は今のところ、幕府と共に公武合体を推進する立場で、京都には西郷吉之助(後の隆盛)率いる薩摩藩兵が(新撰組と同様に)治安維持のために駐屯しています。しかし、その背後では土佐脱藩浪士の坂本龍馬が暗躍して、倒幕のための「薩長同盟」を結成させようと模索しており、今後の展開次第では、幕府に敵対する勢力となる可能性もあります(既に脱藩して、倒幕活動に参加している薩摩藩士もいます)。
従って、この時点での新撰組から見た京都内の各勢力との関係は、以下のような形になります。
- 長州藩士:敵
- 薩摩藩士:味方(ただし、脱藩浪士は除く)
- 土佐藩士:味方(ただし、脱藩浪士は除く)
- 公家:立場による
- 外国人:潜在的には敵だが、殺すと色々面倒なことになる
ただし、これはあくまで「原則」です。基本的に新撰組は「警察」ですので、どんな立場の人であろうと、京の人々&幕府に害を与える存在であれば、捕縛or殺害する権利はあります。無論、その結果として、幕府や京都守護職の立場が悪くなったり、最悪、戦争に発展する可能性もありますので、そのことを考慮した上で慎重に行動するか、そんなことを気にせず目の前の正義を優先するかは、皆さんそれぞれの判断にお任せします。
アーキタイプ
このゲームでは「アーキタイプから選択」と「セミスクラッチによる作成」という二種類のキャラクター作成法がありますが、基本的に私がGMの時は前者のパターンで作成してもらいます(後者の場合、能力値や取れる技能がランダムで決まるので、大抵の場合、前者よりも弱くなります)。
選べるアーキタイプは以下の10種類です。中には、どう考えても新撰組に似つかわしくない職業の人々もいますが、一応、全員、最低限の戦闘術は心得ています。また、アーキタイプ名の後に「素」「玄」という表示がありますが、前者は「まだ未熟だが、今後の成長率が高いキャラ」、後者は「既に成熟しており、今後の成長率が低いキャラ」ということになります。故に、単発セッションでは後者の方が圧倒的に強いのですが、あえて弱いキャラを選ぶのもまた、このゲームの一つの楽しみ方でもあります。
1、試衛館道場期待の若手(素)
近藤・土方・沖田など、新撰組幹部達と同じ試衛館道場の出身の若者です。彼等が用いる天然理心流は、打撃力には欠けますが、「戦場で生き残ること」に向いている剣術です。他に格闘術として、関口流柔術も使えます。
2、肥後の二刀流剣士(素)
宮本武蔵を祖とする二天一流の継承者です。肥後藩に仕える師匠の命に従い、新撰組に入隊しました。相手の攻撃を受け流しつつカウンターで攻撃するのが得意技です。奇襲時の対処法として、関口流抜刀術も使えます。
3、理想に燃える薩摩の青二才(素)
京に巣食う扶桑妖怪を駆逐するために、薩摩藩を脱藩し、新撰組に入隊した変わり者です。彼の使う示顕流は一撃必殺の攻撃に特化した剣術なので、打撃力は高いですが、速度や防御の面ではやや劣ります。
4、隻眼の抜刀剣士(玄)
かつて自分の片目を奪った京の魍魎を倒すために新撰組に加わった、流浪の武芸者です(出身地は不明)。抜刀と納刀を繰り返しながら戦う田宮流居合術の使い手です。他に、宝蔵院流槍術も使えます。
5、尾張の槍武者(玄)
尾張貫流の槍術の使い手で、馴染みの遊女を勤王派に殺されたことを契機に、復讐のため新撰組に入隊しました。槍術主体なので、相手との距離を保った戦闘が得意です。一応、柳生新陰流の剣術も使えます。
6、南国の修験者(素)
琉球空手の使い手です。祖国・琉球を魍魎の手から解放するために、江戸で(退魔の剣術である)鏡新明智流剣術を学び、その後、祖国を救うための交換条件として、新撰組に入隊しました。
7、鉄拳僧侶(玄)
戦うお坊さんです。魍魎と戦う新撰組を手助けするために、入隊しました。法力を使って、相手を攻撃したり、戦闘中に失った腕や足を繋ぎ直したりすることが出来ます。格闘術にも長けてます。ぶっちゃけ、超強いです。
8、大社の武装神職(玄)
出雲大社で代々魔を祓う職務を担い続けてきた一族の出身です。京妖怪達と戦うために新撰組に派遣されました。巫術を用いて戦ったり、瀕死状態の仲間を蘇らせたりすることが出来ます。宝蔵院流槍術も使えます。
9、伊勢の退魔巫女(素)
男装して新撰組に入隊した、伊勢神宮の巫女です。伊勢流巫術は、出雲流に比べて、攻撃力では劣りますが、回復能力が高いです。小笠原流弓術も使えます。なお、このルールブックに登場する唯一の女性キャラです。
10、伊賀忍者(素)
柳生一族の命令で新撰組に加わった新撰組に加わった諜報員です。伊賀流草術を用いて、屋敷内に忍び込んだり、姿を隠したり、空を飛んだりすることが出来ます。戦闘時には、柳生新陰流剣術で戦います。
最終更新:2013年09月24日 22:55