ウタカゼとは……?
 人類が滅亡した後の世界で産まれた、身長15cm〜20cm程度の「コビット族」が、ネズミ、リス、モグラ、イタチ、カエルなどと力を合わせながら、「悪意の精霊」に取り憑かれてしまったヘビやザリガニやアライグマと戦いながら、世界を希望で満たすために冒険する物語です。
 システム的には超簡単です。戦術とか、コンボとか、難しいことを考える必要は殆どありません。キャラメイクは10分程度で終わります。TRPGは好きだけど、データとか効率性とか考えるのが苦手、という方にオススメのゲームなので、ぜひお気軽に遊んでみて下さい。

2014年度後期キャンペーン/PC紹介

アシガラ(カエル族 18歳 男 13cm 風属性 リーダー)
 相撲が大好きなカエル族の若者。好奇心旺盛で、どんな事件にも積極的に関わろうとする。多分、彼がいないと、このパーティーは依頼を受けない。カエル故にヘビが苦手だが、それでもアオヘビさんに真っ向から立ち向かう勇気の持ち主。相撲ではコウゲイに敗れたが、再戦に向けての鍛錬を続けている。

ヒッコリー(コビット族 20歳 男 17cm 歌属性 ストーリーテラー)
 心優しきコビット族の歌い手。世界の全ての揉め事を「愛の歌」で解決しようとする、というか、それが可能な反則能力の持ち主。多分、彼がいないと、このパーティーは依頼を解決出来ない。歌うこと以外は何も出来ない筈なのだが、なぜか「ここ一番」の時には、苦手分野でも謎の潜在能力を発揮する。

リナン(ネズミ族 17歳 女 21cm 影属性 マッパー)
 聡明なネズミ族の少女。旅先で未知なるモノと遭遇した時は、彼女の頭脳が頼り。多分、彼女がいないと、このパーティーは依頼内容を理解できない。万能という名の器用貧乏タイプ。体育会系の“影の長”とは折り合いが悪いようだが、なんだかんだで、彼の特訓でセパタクロー選手としての才能に開花した。

2014年度後期キャンペーン/これまでのおはなし
+ 第1話「スネーク狩り」
 「コルンの村」から「ウタカゼの龍樹」に、ツタエバチが届いた。その足に結ばれた手紙に書かれていたのは、村を襲う“悪しきもの”から村人達を救ってほしいという救援依頼である。偶然にも、その手紙を受け取った心優しきコビット族の少年ヒッコリーは、勇敢で相撲好きなカエル族の少年アシガラ、弓矢が得意で博識なネズミ族の少女リナンと共に、フィノ師の指示の下、コルンの村へと向かう。
 コルンの村に着いた三人は、村長のコッサから、この村を襲う“悪しきもの”の正体が、「大蛇」であると聞かされた。天敵の存在を聞かされ、アシガラは恐怖に震えるが、村人を救うため、その大蛇を倒すことを決意する。ただ、その大蛇の正体が、本来は性根が優しい筈の「アオヘビさん」であるらしいという話を聞き、それが悪意の精霊に取り憑かれてしまったのではないか、ということをウタカゼ達は薄々察知する。
 そして、大蛇が現れるという「ススキ高原」へと向かった彼らは、途中で見つけた謎の巣穴で、リナンの故郷でもあるネズミ族の「しっぽの王国」のグリン王子と出会う。彼は祖国を救うためにウタカゼの龍樹へと向かう途中で、突然、悪意の精霊に取り憑かれてしまった護衛の兵士達に襲われ、傷ついていたところを「アオヘビさん」に助けられたらしい。
 王子達と共闘して、なんとか「アオヘビさん」に取り憑いていた悪意の精霊を取り払ったウタカゼ達は、アオヘビさんから「大蛇の草笛」を受け取り、ウタカゼの龍樹に任務を完了したという旨の手紙を送った上で、王子と共にネズミ王国へと向かうことを決意するのであった。
+ 第2話「囚われの歌姫」
 ネズミ王国に着いたウタカゼ達は、憔悴した国王エムルン13世から、行方不明となったグリン王子の妹のエポナ姫の救出を託される。どうやら彼女の「歌」が聞けなくなったことで、王国の人々の中に「悪意の精霊」に取り憑かれる者が増えつつあるらしい。
 王国から借りた乗りウサギを狩り、グリン王子と共に、エポナ姫の歌が聞こえるという「かざあな山」に到着した彼らは、そこでイタチの「長しっぽ族」の先代族長の息子、スクナと出会う。彼の父親はマシロという「赤目の白イタチ」によって殺され、彼自身も逃亡を余儀なくされたという。そんな彼が偶然、エポナが囚われているのを発見して救い出し、彼女から「悪意の精霊に取り憑かれてしまった者達の心を取り戻すための歌」を習っていたのだという(しかし、歌が苦手な彼には、その習得は極めて困難であった)。
 その後、マシロの追っ手のイタチ達を振り払いつつ、姫を連れて王都へと向かったウタカゼ達であったが、あと一歩で王都にたどり着くという直前で、先回りしていたマシロの部下に遭遇してしまう。それでも彼等は力を合わせてマシロの部下を撃退し、無事に王都へと帰還するのであった。
+ 第3話「しっぽの戦い」
 マシロに操られているイタチ達を元に戻すには、エポナの「しっぽの歌」の他に、長しっぽ族に伝わる「しっぽの笛」が必要らしい。だが、スクナ曰く、そのしっぽの笛は既にマシロによって「さみだれ川」に捨てられてしまっているという。
 笛を手に入れるため、さみだれ川へと向かったウタカゼ達とスクナは、その川で出会ったカエルの子供達から、この川の先にある「ひょうたん湖」に、コウゲイという「探し物の達人」のカエルがいるということを聞かされる。だが、彼は「相撲の達人」でもあり、相撲で勝った者の言うことしか聞かないらしい。
 なんとかひょうたん湖にたどり着いた彼らは、さっそくコウゲイに相撲を挑むが、彼は力自慢のアシガラを力で薙ぎ倒したのを皮切りに、あっさりと「4人抜き」を達成してしまったため、いくら頼んでも探し物に協力してくれそうにない。やむなく4人は自力で探そうとするが、いくら探しても見つかる気配がなく、途方にくれてしまう。
 そんな中、グリン王子がカモに乗って彼らの前に現れる。どうやら、マシロ達の軍勢が、しっぽの王国に攻め込んできたらしい。カモに乗って急いで王国へと戻った彼らは、「しっぽの笛」が無い状態ながらも、なんとかマシロとその配下のイタチ達を撃退し、しっぽの王国には平和が戻ったのであった。
+ 第4話「真っ赤な手足」
 スクナに「長しっぽ族の内部に、まだマシロの仲間がいるかもしれない」と言われ、彼と共に長しっぽ族の集落へと向かうことになったウタカゼ達。しかし、その途上、さみだれ川で先日出会ったカエルの子供達と再会し、コウゲイがいなくなってしまったと聞かされる。足跡を辿って探してみると、草原で倒れているコウゲイを見つけた。どうやら彼は、手足が赤く染まる病気にかかってしまったらしい。
 コウゲイを救うため、まよい森の王ホーラスの紹介で、リス族の名医レピオスを訪ねたところ、その病気(レッドレッグ)を治す薬は、森の北にある「かつて、おおきな人々が住んでいた小屋(病院)」の中にあるという。しかし、その周囲には(飼い主を亡くしたことで希望を失って)「悪意の精霊」と化した凶獣「イヌ」が何頭も住み着いているため、容易には近づけないらしい。それ故にレピオスは、かつてモグラ族の友人に頼んで掘ってもらったという地下通路を通って行くことを勧め、助手のフローラを案内役として彼等に同行させる。
 途中、トンビにフローラをさらわれそうになるのをなんとか阻止した上で友情を結びつつ、地下通路ではオオムカデに遭遇するなどの危険に直面したウタカゼ達であったが、なんとかそれらを乗り越えて、無事に小屋に辿り着き、薬を手に入れる。その後、小屋から出て地下通路に入ろうとしたところを、二頭のイヌに襲われてしまうが、そのうちの一頭はなんとか撃退し、そして残りの一頭を(上述の)トンビが引きつけている間に、なんとか地下通路に飛び込み、無事に帰還する。
 薬をコウゲイに届けたウタカゼ達は、彼のために木造の風呂桶を作り、その中にコウゲイを浸すことで、彼の回復を祈りつつ、スクナと共に長しっぽ族の集落への旅に戻るのであった。
+ 第5話「空飛ぶカボチャ」
 スクナの集落に近づいてきた頃、みつこぶ山の麓で、ウタカゼ達は不気味な気配を感じる。特に強い恐怖を感じたヒッコリーとリナンの意思を尊重し、彼等は別ルートへと迂回して集落へと向かうことになった。
 しかし、彼等が到着した時、集落は「仮装してイタズラをすると、お菓子が空が降ってくる」という謎の噂を信じた子供達によって、大混乱に陥っていた。アシガラとヒッコリーは、その噂を信じてその「祭」に加わろうとするが、リナンが冷静に子供達から話を聞いてみたところ、どうやらその噂を流していたのは、「オオカミの仮装をしたイタチ」らしい、ということが分かる。ひとまず騒動を収めるため、ウタカゼ達は大人達と協力して「お菓子」を作り、子供達に「行き過ぎたイタズラを控えるなら、このお菓子をあげる」という形で騒動を収める。
 その上で、オオカミの仮装をしたイタチを発見したウタカゼ達は、彼が悪意の精霊に取り憑かれた状態であることを知り、彼を倒して希望を与えることで、その状態から解放する。正気に戻ったそのイタチ曰く、どうやら彼は別の集落のイタチで、長しっぽ族に手紙を届けに来たらしいのだが、その途上、みつこぶ山の麓で「空飛ぶカボチャ」に襲われ、その後の記憶がない、という。
 意を決してみつこぶ山に向かった彼等は、そこで(マシロの仲間と思しき)悪意の精霊であるジャック・オー・ランタンと遭遇し、その邪念に取り憑かれそうになるものの、なんとかその浄化に成功する。
+ 第6話「友情のボール」
 長しっぽ族の内部の混乱は無事に解決されたが、彼等にはまだ族長がいなかった。前族長の息子のスクナがいるが、彼は「ウタカゼに助けてもらってばかりの今の自分」では族長の資格はないと言い、自分の強さを証明するため、得意のセパタクローでウタカゼ達に「3対1」の勝負を挑む。この戦いに勝てばスクナは族長となり、負ければウタカゼ達の望みを何でも叶えた上で、彼は修行の旅に出るという。
 ちょうどこの時、スクナの父と交流があったというウタカゼの「影の長」ルードが集落を訪れていたこともあり、試合前に彼の特訓を受け、セパタクローの基礎を叩き込んでもらったウタカゼ達であったが、その間にスクナもまた一人で猛特訓を続けていたことを知らされる。
 そして試合の当日、序盤はスクナの連続サーブでウタカゼ達はリードを許すが、運動が苦手なヒッコリーが必死でレシーブを続け、アシガラの正確なトスを経た上で繰り出されるリナンの強烈なアタックによって初ポイントを得ると、そこから連続サービスポイントを得て逆転する。しかし、それに対して本気になったスクナが、それまではめていたリストバンドを外し、本気でウタカゼ達に立ち向かってくる。両者の戦いは互いに好プレーを連発する一進一退の大接戦となるが、最後はコートの隅に叩き込まれたリナンのアタックが紙一重のところで決まり、ウタカゼチームの勝利となる。
 スクナは約束通り、修行の旅に出ると宣言するが、アシガラが「スクナが族長となるのが自分達の願い」と告げ、周囲の者達もそれに同意した結果、スクナは自分が族長となる決意を固めるのであった。
+ 第7話「霧の中の瞳」
 セパタクロー戦を観戦した結果、アシガラ達のウタカゼとしての力を見込んだ「影の長」ルードは、彼が現在担っている任務に彼等を同行させることを決意する。それは、長しっぽ族の集落から東に広がる草原の近辺で、「かつて、おおきな人々を使役していたと言われる伝説の獣」が復活したという噂の真相の確認である。アシガラとヒッコリーは喜んでその依頼を引き受け、気乗りしなかったリナンも、自分の直属の上司であるルードの頼みということで、やむなく同行に同意する。
 草原に入った彼等は、濃霧の発生によって視界を遮られそうになるものの、なんとか、はぐれずに先へと進む、その途中、イノシシの襲撃を撃退し、更に奥地へと向かった彼等であったが、その先に、今まで見たことがない独特の形をした「瞳」を発見する。その瞬間、ルードはアシガラ達に対し、今、彼等の目の前にいるのがその伝説の獣であることを教えた上で、「その獣とは自分が戦うから、手を出すな」「自分が左手を上げたら、すぐに逃げろ」ということを伝える。
 そして、彼等の前にその「伝説の姿」を現した瞬間、リナンはそれが自分達の天敵である「ネコ」であることを理解し、一目散に逃げ出す。そしてルードがすぐに左手を上げたことを確認すると、アシガラとヒッコリーもその場から逃げ出すが、その途上、今度は別の方向から現れた「子ネコ」に道を阻まれてしまう。仲間の危機を察したリナンと再合流した上で、どうにかその子ネコを倒した彼等は、ルードと合流出来ないまま、ひとまずウタカゼの龍樹へと帰還するのであった。
+ 第8話「地中に響く歌」
 ウタカゼの龍樹に帰還したアシガラ、リナン、ヒッコリーの三人は、フィノ師に一通りの事情を説明する。“歌の長”ロシェの見解によれば、ネコ族を封印するためには、ウタカゼとは異なる特別な力を持った6人の「言葉ある種族の歌い手」が必要らしい(しっぽの王国のエポナ姫は、その一人である可能性が高いらしい)。そして、ひびわれ山脈の中腹から、美しい歌声が聞こえるという情報に基付き、彼等は“風の長”フルールと共に、その地へと向かうことを決意する。
 悪意の精霊に取り憑かれていたフクロウ達を元に戻し、空路を東へと向かった彼等であったが、その途上、イヌワシの群と遭遇し、ひびわれ山脈へと落下してしまう。それでも地上からなんとか応戦しようとした彼等であったが、偶然、その地にモグラ族のダッガスが作っていた落とし穴にハマった結果、空中で孤軍奮闘するフルールとは、完全に分断されてしまった。しかし、ダッガスが、この地中に響く「美しい歌声」に心当たりがあるという話を聞き、ひとまず彼と共に地中を探索して、その歌声の主を探すことにする。
 ダッガスと共に、彼が発見した「何者かによって作られた地下通路」を進んで行った彼等は、その登場で「ブリキの犬のおもちゃ」や「スズメ蜂」の襲撃をどうにか撃退しつつ、辿り着いた先の部屋で、モグラ族の豪商の娘、マーニャと出会う。「自分の歌声を世界に広めて信者(フォロワー)を増やす」という野心に燃える彼女は、「正しい歌のあり方」を説くヒッコリーに歌勝負を申し込むが、わずかな差で自らの敗北を認め、より広い世界を知るために、彼等と共に「自分よりも優れた歌い手」が集うウタカゼの龍樹へと向かうことに同意したのであった。
+ 第9話「MJ12の陰謀」
 ウタカゼ達に同行することに同意したマーニャであったが、その前に一度、里に帰って御両親に挨拶した方がいい、というダッガスの提案に従い、ウタカゼ達は彼女を連れて、みつこぶ山の麓へと向かうことになった。と言っても、地上でその地へと向かうには、悪しきもの達が跳梁跋扈する「寂しが原」という危険な領域を通らなければならないため、ダッガスが掘った地下道を通って行くことになる。
 だが、その道は途中から、何者かによって異なる方向に掘り進められていた上に、所々に地上からの「落とし穴」が掘られていて、次々と危険な悪しきものと遭遇してしまう。最終的にはクマにまで襲われてしまったウタカゼ達であったが、途中で仲間に加わったセインとクツキという男女のカエルとも力を合わせつつ、これまでの戦いで培った経験を生かしてどうにか撃退し、クマを正気に戻すことにも成功する。
 こうして、なんとか、みつこぶ山の麓に到着した彼等であったが、その地で彼等を待っていたのは「MJ12(Mogura Junkies twelve)」と呼ばれる若モグラ達の愚連隊であった。彼等は何者かによって与えられたクスリによって身体を強化すると同時に、心を「悪しきもの」に変えられてしまっていたのである。12人がかりの地中からの変則攻撃に手を焼くウタカゼ達であったが、苦戦しながらもどうにか彼等を退け、そして彼等を操っていた巨大モグラ(アングラー)の悪しき精霊をも倒すことに成功する。
 その後、マーニャは自らの歌声によってMJ12の者達は正気を取り戻すことに成功すると、この里を守るためには自分の力が必要と悟り、ウタカゼ達には「必要になった時には、手助けに行く」と約束した上で、この地に残ることを決意するのであった。
+ 第10話「神事を継ぐ者達」
 モグラ族の里の騒動を解決した後、ウタカゼ達は、洞窟で仲間になったカエル族のセインとクツキから、緑沼の王国で起きている事件について聞かされる。彼等は、王国内の名門相撲部屋を率いるハルカゼ親方の弟子であり、数日前から行方不明となってしまった親方の一人娘のツバキを探しているらしい。彼女は王国一の美声の持ち主で、間もなく開催される予定の秋場所では、彼女が国歌独唱を担当する予定であった。その歌声は全ての参加者の心を清め、敗者の怨恨を引き起こすのを防ぐ役割を果たしてきたため、彼女がいなければ、神事としての相撲を執り行うことも出来ないという。
 ひとまず彼等の要請を受けて王国に向かった彼等は、不気味な風貌のザリガニが大声で奇声を上げて住民たちを苦しめている場に遭遇するも、アシガラの張り手一つで、あっさりとそのザリガニは退散する。そして、エンヨウ女王とハルカゼ親方から、以前にひょうたん湖で出会ったコウゲイがハルカゼ親方の元弟子であったこと、そして、その兄弟のトウゲイは「人探しの名人」であったことを聞かされる(しかし、二人共、八百長疑惑をかけられて、この王国を去ったという)。
 その後、アシガラ達を追いかけていたフルールが、フクロウ達を連れてようやく合流し、彼女から「トウゲイは今、異種格闘団体を率いて、長しっぽ族の集落に興行に来ている」という情報を得ると、彼女と共に、長しっぽ族の集落へと向かう。だが、そこで彼等を待っていたのは、謎の魔法使いによって悪しきものに変えられてしまったトウゲイとその弟子達が、スクナや(久しぶりにトウゲイに会うためにこの地を訪れていた)コウゲイを襲っている光景であった。
 激戦の末、魔法使いには逃げられたものの、どうにかトウゲイ達を元に戻したウタカゼ達は、トウゲイを説得して王国に帰還させ、そして彼の力でツバキを発見する。それは、アシガラの張り手で退散した、あの奇声を発するザリガニであった。どうやら、あの魔法使いの力によって、彼女はザリガニの姿に変えられてしまっていたらしい。フクロウに彼女を乗せてウタカゼの龍樹に連れ帰ったアシガラ達は、“雲の長”であるダヤンの助言に基づき、古代の解呪の法に基づいた処方を施した上で、最後は「勇者(アシガラ)の口付け」によって、ツバキを本来の姿に戻すことに成功したのであった。
+ 第11話「汚れなき純白」
 目を覚ましたツバキが「三人目の歌姫」であることを確認したアシガラ達に対して、“月の長”のマノンは、「イタチ族の歌姫」と思しき者とその家族が、今、長しっぽ族の集落を訪れようとしているという旨を告げる。マノン曰く、その者達は長しっぽ族とは異なる「絶滅寸前の希少なイタチの一族」であり、イタチ族でありながらも「歌が上手い」という特性の持ち主でもあるという。ひとまず、秋場所開催のためにツバキをフクロウに乗せて緑沼の王国へと届けたアシガラ達は、その足で再び長しっぽ族の集落へと向かう。
 すると、アシガラ達を出迎えた長しっぽ族の者達は、「マシロの仲間と思しき、赤い目をした白イタチの少女」が現れ、スクナはその者を追って南方に向かったと告げる。だが、「悪しきもの」の赤い目はウタカゼにしか判別出来ないことから、おそらくそれは「アルビノ」と呼ばれる「天然の赤目の白イタチ」である可能性が高いことをリナンが指摘する。そして、おそらくはその少女こそが歌姫なのではないかという推測の下で、彼等はスクナの足跡を追って南方へと向かう。
 やがて、モグラ族が掘ったと思われる地下洞窟へと辿り着いた彼等は、その中で探索を続けるうちにスクナと合流し、更にその先で、赤い目を持つ白イタチと出会う。だが、それはこの洞窟に住むドール・メイカーの少女(ヌイグルミに悪意の精霊が取り付いた存在)が作り出した偽物であった。そのドール・メイカーと偽物の白イタチを倒した彼等は、その奥で倒れていた「本物の白イタチ」の少女を発見する。彼女の名はフレイヤ。そして彼女こそが、紛れもなく「絶滅寸前の『歌唱力に秀でたイタチ族』」の末裔であり、その歌声を聞いたアシガラ達は、彼女こそが「四人目の歌姫」であることを確信するのであった。
+ 第12話「まよい森の危機」
 フレイヤ曰く、彼女の一族の生き残りは、彼女以外に、兄のフレイと父のニョルドがいるらしいが、彼等はいずれも「悪しきもの」にされ、今は「まよい森」を彷徨っているという。彼等を救うために、フレイヤと共に久しぶりにまよい森へと再び足を踏み入れたウタカゼ達は、まずリス族の王ホーラスを訪ねて、話を聞こうと試みる。王曰く、ここ最近、森の中で悪しきものの出現率が増えており、その原因が、それまでこの森の平穏を守ってきた「森一番の歌い手」である王女のリーフが「森の者達のために歌うこと」をやめてしまったから、という話を聞かされる。
 王から聞いた情報を元に、アシガラ達が森の中を散策していると、まず、悪しきものと化してしまったフレイを発見する。フレイヤの助力もあって、どうにか彼を元に戻すことに成功すると、今度はその直後、リーフと思しき少女が、木の上で一人、「陽気な声」で歌っている姿を発見する。しかし、その姿を見られたことに気付いた彼女は、その瞬間、歌うのをやめてその場から逃げ去ろうとする。森の木々を利用した彼女の逃走術の前に、あっさりとその姿を見失ってしまったウタカゼ達であったが、その後、看護婦のフローラと再会した彼等は、彼女と協力してリーフを追い込み、どうにか捕縛に成功する。
 その上で、リーフから話を聞いたところ、どうやら彼女は、以前にネズミ族の歌姫であるエポナの優雅な歌声を聴いて、森の中で粗野に育った自分の「田舎臭い歌声」にコンプレックスを感じるようになり、歌い手としての自信を無くしてしまったのだという。だが、その後、悪しきものと化してしまったニョルドと、彼を操る(イタチ族の里で見た)魔法使いと遭遇した彼等は、フレイヤとリーフの歌声のサポートを得た上でニョルドを元に戻し、魔法使いを倒すことにも成功したことで、リーフは再び「自分の歌声が持つ力」に自信を取り戻し、森の住人達のために今後も歌い続けると誓う。それはまさに「五人目の歌姫」が蘇った瞬間でもあった。
+ 第13話「降り積もる雪」
 ひとまずフレイヤ達は長しっぽ族に「マシロの残党の出現を防ぐため」という理由で迎え入れられることになり、リーフもまた親元に帰還したことで、再び三人旅となったウタカゼ達であったが、彼等がまよい森を出ようとする直前、森のリス達の間で、行方不明事件が多発しているという話を聞かされる。彼等が周囲を調べてみると、森の一角に、明らかに周囲の木とは異なる「もみの木」が植えられ、そこにリス達が気絶した状態で吊るされていることに気付く。ウタカゼ達が彼等を助けようとすると、そのもみの木が襲ってきた。どうやらこれは、「サイレントナイト・ツリー」と呼ばれる魔樹(悪意の精霊)らしい。
 どうにかその魔樹を倒した彼等は、吊るされていたリス達を解放する。彼等曰く、彼等は突然現れた「赤服の老人」によって誘拐されると同時に意識を失い、そのままこの木に吊るされていたらしい。そして森の動物達の証言から、この地にもみの木を植えたのは「褐色の肌のコビット族の少女」であるという話を聞く。その少女が向かったと言われるかざあな山へと足を踏み入れたウタカゼ達は、そこで再び、今度は気絶したネズミ族の者達を吊るした魔樹と遭遇する。その魔樹との戦いの最中、“雨の長”ラビーアとグリン王子に率いられたネズミ族の者達と合流した結果、どうにか魔樹を倒して、吊るされていたネズミ族を解放することにも成功する。
 ラビーア曰く、この魔樹は、成長と共に周囲の気温を下げていく呪いがかけられているらしく、その呪いの力を増加させるために、悪意の精霊である「赤服の老人」が、生け贄のような形で「言葉ある種族」を気絶させて吊るしているのだという。ひとまず、その元凶と思しき「褐色の肌のコビット族の少女」を止めるために、ラビーアと共に西へと向かって行ったところ、今度は青霧峡谷に差し掛かったところで、またしても魔樹を発見するが、その先にその少女と思しき影も発見する。魔樹の浄化をラビーアに任せた上で、アシガラ達三人は少女を追おうとするが、その前にトナカイを従えた赤服の老人が立ちはだかる。なんとか彼の撃退には成功するものの、その間に少女の姿を見失ってしまった。
 だが、残された足跡から、どうやら彼女がコビット族のユーナの村へと向かったことが分かったアシガラ達がその村へと向かおうとすると、その途上で“歌の長”ロシェと再会する。どうやら彼は、ラビーアが放ったツタエバチから「魔樹」の話を聴いて、彼女の手助けに向かおうとしていたらしい。そして、合流した彼等がユーナの村の中央広場に向かうと、そこではまさに褐色の肌の少女が、一本の魔樹を植えようとしていた。その少女が、コビット族を元に作られたドールであることを見抜いたウタカゼ達は、その少女の力によって降り注ぐ雪の寒さに耐えながら、どうにか彼女の浄化に成功する。そして、ロシェは彼女の「元」になったコビット族が、ロシェと南方コビット族の女性との間に生まれた少女「マリア」である可能性が高い、という旨をアシガラ達に伝えるのであった。
+ 第14話「くらやみ神殿」
 偽マリアによって各地に植えられた魔樹の浄化はロシェとラビーアに任せた上で、アシガラ達は「本物のマリアらしき人物を『くらやみ神殿』の近くで見た者がいるらしい」という月の長マノンの情報に基づき、フクロウに乗って現地へと向かう。その途上、雪をかぶった休火山の付近で起きた不規則な風の動きや、突然飛来したタカの集団に苦しみながらも、どうにかくらやみ神殿にたどり着いた彼等であったが、神殿の入口は、なぜかナスのツタが有刺鉄線のような形で塞いでいた。それでもなんとか、そのツタをかいくぐって、彼等は神殿内への突入に成功する。
 しかし、この神殿の中は、通常のダンジョン以上に強力な悪意のオーラに満ち溢れており、その中に出現する動物達も、そのオーラの力で強化された状態で、アシガラ達に襲い掛かってくる。中でも、その神殿の中心部に設置されていた古代人が残したと思しき謎の機械は手強く、相当な苦戦を強いられたが、最終的にはどうにか撃破して、彼等は神殿の奥へと続く地下通路を発見する。
 そして、その地下で彼等を待っていたのは、「子供を失った夫婦」の魂が宿った人形と、その彼等を生み出したドールメイカーの人形であった。その夫婦は、自分達の子供を失った悲しみを紛らすために、多くの子供達をさらって、この神殿の地下に監禁していたのである。強力な三体の「悪しき人形」を前にして苦戦するアシガラ達であったが、途中で救援に駆けつけた風の長ルードの助けもあり、どうにか彼等を浄化し、囚われていた子供達を解放する。そして、その中にはマリアの姿があった。どうやら、彼女のドールを作っていたのは、あのドールメイカーであったらしい。マリアをウタカゼの龍樹へと連れていったアシガラ達に対して、ロシェは謝辞を述べる。どうやら、マリアの母親が亡くなる際に「いつか家族で一緒に見た北国の雪がまた見たい」と言っていたのが彼女の心の中に強く残り、その意識からあのドールを生み出されていたらしい。ともあれ、こうして、遂に6人の歌姫達の所在を完全に突き止めたアシガラ達であった。
+ 第15話「忍び寄る足音」
 月の長マノンの情報によると、以前、アシガラ達がネコと遭遇した東方の濃霧地帯の奥地で、伝説のネコ族の「覇王」が甦ろうとしているらしい。それを阻止するためには「6人の歌姫」を現地に連れて行く必要がある、ということで、アシガラはツバキ、ヒッコリーはリーフ、リナンはエポナ、影の長ルードはフレイ、風の長フルールはマーニャをそれぞれ迎えに行き、そして歌の長ロシェは娘マリアを連れて行く形で、それぞれがフクロウに飛び乗って行った(なお、ウタカゼの師フィノと雨の長ダヤンは、別件のため不在であった)。
 だが、彼等のうち5組は無事に現地に到着したものの、なぜかフルールとマーニャだけが、なかなかその場に現れない。すると、そこに「覇王四天王」の一人である火呼猫(ひこにゃん)が現れ、ウタカゼと歌姫達に向かって、次々と火炎攻撃を浴びせかけてきたのである。
 ひとまずルードとロシェが敵を足止めしている間に、アシガラ達は彼女達を安全な場所に連れて行こうとするが、そんな彼等が霧の中で見つけた古小屋の中に入ると、そこにはもう一人の「覇王四天王」である地縛猫(じばにゃん)が待ち構えていた。彼はその奇妙な歌とダンスでその場にいる者達の調子を狂わせ、ウタカゼ達もその本来の力を発揮出来ないまま、苦戦を強いられる。
 しかし、そこにようやく(再暴走したMJ12の妨害によって合流が遅れていた)フルールとマーニャが到着し、6人の歌姫によって歌われる「ネコよけの歌」の力で悪意の呪術を封じ込めた結果、どうにか地縛猫を倒すことに成功する。その後、事情を聞いたフルールはルードとロシェを助けるために彼等の戦場へと向かうことになったのだが、その直後、アシガラ達は古小屋の中から、縛られていたマノンの姿を見つける。彼女曰く、どうやらウタカゼの龍樹で彼等に「情報」を提供したマノンは偽物で、本当は覇王は龍樹の西側の地で甦ろうとしているらしい。龍樹の、そして世界の危機を救うため、アシガラ達は歌姫達とマノンを連れて、急遽ウタカゼの龍樹へと帰還するため、再びフクロウを飛ばして西へと向かうのであった。
+ 第16話「蘇る覇王」
 ウタカゼの龍樹へと空路を急ぐアシガラ達であったが、その彼等に対して、空中に浮かんだ謎の「ネコの顔のような何か」が次々と現れ、それらが「不気味な笑い声」を浴びせかけてくる。マノン曰く、これは「覇王四天王」の一人、血餌(チェシャ)によって発せられる音波攻撃であるという。その笑い声に、フクロウ達も乗り手達も大半が耐えることが出来ず、次々と落下し、歌姫達も地上でバラバラになってしまう。それでも、どうにか彼女達を再結集させて歌の力を放った結果、どうにか血餌の本体の位置を把握することが可能となり、そこにアシガラ達が攻撃を集中させることで、どうにか血餌を消し去ることに成功した。
 こうして、どうにかウタカゼの龍樹に辿り着いたアシガラ達であったが、その彼等の前に立ちはだかったのは、ネコ族の盟友(?)「大熊猫」の大群であった。それでも、目の前に立ちはだかる巨大な大熊猫達を撃退し、どうにか龍樹の中に入ることに成功した彼等であったが、雨の長ラビーアが孤軍奮闘して龍樹を守ろうとしているものの、多勢に無勢の中、次々と龍樹の内部は破壊されようとしていた。その混乱の最中、「マノン」を見つけたウタカゼ達は、6人の歌姫の力を用いて、その正体が「コピーロボット」と呼ばれる古代文明の遺産であることが判明する。
 そして、そのコピーロボットを「古代の盟友」から拝借して送り込んだ者の正体は、「覇王四天王」の最後の一人、怒羅衛門(ドラえもん)であった。ネズミ族に対してなぜか異様な敵愾心を持つ彼は、リナンの姿を見るなり、古代兵器「空気砲」を乱発し、更には最終兵器「世界破壊爆弾」を取り出そうとするが、その直前にリナンが放った一矢によって、どうにかその発動は食い止められ、彼はその場に倒れこむ。
 だが、その直後、アシガラ達の前に現れたのは、既に復活していた伝説の雌ネコ「覇王鬼帝(ハオーキティ)」であった。彼女はアシガラ達に対して「大きな人々の代わりに、自分の玩具になるのなら、生かしておいてあげる」と告げるが、アシガラ達は断固それを拒否し、全力で迎え撃つ。だが、そのあまりの強烈な覇気の前に、歌姫達は恐れ慄き、まともに「ネコよけの歌」を歌うことが出来ない。
 そんな中、ウタカゼ達と歌姫達の耳に、聞き慣れない「楽器の音」が聞こえてきた。それは、「しっぽの笛(オカリナ)」を吹くスクナを先頭に、グリン、ダッガス、ホーラス、エンヨウ、コッサという、各種族の長達によって奏でられる、それぞれの種族に伝わる「伝説の楽器」を用いた合奏曲であった。そして、彼等をこの地に連れてきたのは、フィノとダヤンであった。二人は、この「伝説の楽器」を集めるために、独自に行動していたのである。
 こうして、それぞれの種族の長達の合奏によって勇気を取り戻した歌姫達が再び歌い始めた結果、鬼帝はその力を急激に弱体化させ、そこにアシガラ、ヒッコリー、リナンによる波状攻撃が加えられた結果、遂に鬼帝はその場に崩れ落ち、それと同時に龍樹を襲っていた大熊猫達も正気を取り戻し、無事に龍樹は平穏を取り戻すことになったのであった。
 その後、自力で火呼猫を倒していたロシェ、ルード、フルールも無事に帰還するが、ロシェは「これから先は娘との時間を大切にしたい」と言ってウタカゼの長を引退し、歌の龍は次の長としてヒッコリーを指名する。自分自身はまだ未熟と思いながらも、彼はその宣告を受諾し、ここに新世代の「歌の長」が誕生することになった。
 一方、リナンにはグリン、レピオス、ダッガス、スクナの四人から手紙が届く。彼等はそれぞれ、彼女を「新体制の宰相」「医療の助手」「MJ12の教育係」「セパタクロー選手」としてスカウトしたいと言う。熟考の末、彼女は祖国であるしっぽの王国に帰り、グリンを国王とする新体制の下での宰相となる道を選ぶのであった。
 そして、迫り来る冬の足音を前に冬眠の準備を進めるアシガラの前に、コウゲイが姿を現し、「決着をつけるケロ」と告げる。ひょうたん湖で敗れて以来、この機会を待ち望んでいたアシガラは、ツバキの行事の下で、土俵で彼と向かい合う。そしてこの一戦こそが、後にカエル相撲史に残る二人の歴史的な一番となるのであるが、その決着はまたいずれ、別の物語を通じて語られることになるであろう。
(完)

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最終更新:2015年01月28日 21:24