+ | 第1話「黒羊の恐怖」 |
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ウィロー大陸北中部のミリシーズ大公国は、暗黒魔王アリエス(上図)によって滅ぼされた。アリエスはこの国の全ての土地を、羊毛生産のための「黒羊牧場」として接収し、住民達はろくに満足な食料も与えられぬまま、死ぬまで羊飼いとしての強制労働を課せられることになった。
そんな中、ミリシーズ領内で唯一、アリエスに対して抵抗を続けていたミリシーズ大学には、アリエスの圧政を逃れた人々が難民として押し寄せていたが、やがてこの地にも黒羊兵達の魔の手が伸びる。だが、それに対して完全と立ち向かう五人の少年少女達が現れた。 ミリシーズ大学に通う学生のホレス、ドラゴン王国随一の剣の使い手であるトリシュ、セントラル教皇領を中心に芸能活動を続けるヨリノ、フレイム枢機卿領で巫女を務めるハクム、そして、シャイン侯国を支配する(12魔王の一人ジェミニの妹の)ジェメリ。アリエスから派遣された黒羊兵達は彼等の手で一網打尽となり、それまで恐怖に怯えていた人々は、待望の救世主の登場に湧き上がる。 その後、トリシュの活躍によって次々と領内の牧場を守る黒羊兵達が駆逐される一方で、ジェメリはアリエスとの直接会談の末に事実上の宣戦布告を言い渡し、ヨリノはその隙に奪った黒羊毛を用いて新たなマスコットキャラクターを作って対アリエス戦線の旗印とする。そして、ホレスはアリエスに洗脳されていたミリシーズ大公を救い出し、ハクムはアリエスの恐怖に怯える住民達に自身の掲げる新興宗教の教義を教え込むことで、着実に敵の地盤を切り崩していく。 こうして、遂に暗黒魔王アリエスとの直接対決へと臨むことになった彼等は、ヨリノが地方営業の仕事とバッティングして参戦出来なかったという不運もあり、連戦続きのトリシュが一時は死の淵のギリギリまで追い詰められるほどに苦戦を強いられたものの、最終的にはどうにかアリエスを倒し、ミリシーズ大公国を復活させるに成功する。そして九死に一生を得たアリエスは魔王としての自分を捨て、一人の羊飼いとしてこの地で生きていくことを決意するのであった。 |
+ | 第2話「猛牛と飛龍」 |
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トリシュの住むドラゴン王国に、隣国ガーディアン騎士団領から、ワイバーンに乗った飛龍騎士団が攻め込んできた。彼等は自国を襲った戦士魔王タウラス(上図)に屈し、その手先となってしまっていたのである。
かつては友誼を結んだ隣国の将との戦いに戸惑うトリシュであったが、自国を守るために全力のブレスで対抗すると、彼等の大半は散り散りになって逃げて行く。それでも残って戦う者達もいたが、救援にかけつけたジェメリとホレスの連続攻撃によって、最後まで抵抗しようとした騎士団長もその場に倒れて気絶する。 その後、トリシュやジェメリの調査により、騎士団長の娘(下図)がタウラスの部下によって人質に取られていることを知った彼等は、その居場所を突き止め、門番のミノタウロスを倒して、彼女を救出する。幸いなことに、彼女は「自分が人質になっている」という自覚すら感じさせないほどにミノタウロスによって厚遇されていたようであり、精神的にも肉体的にも至って良好な状態のまま、父親と再会を果たすことになった。 ![]()
こうして、飛龍騎士団は再びタウラスに対して立ち上がる決意を固め、更にハクムによる謎の宗教施設建設によって魔王軍に対してプレッシャーを与えつつ、ようやく地方巡業の仕事を終えて合流したヨリノとも連携した上で、ホレス・ハクム・ヨリノの連携作戦によってタウラスを自縛(自爆)の罠へと追い込み、完全に暴走状態へと陥ったタウラスは、周囲に甚大な被害をまき散らしつつも、最後は壮絶に爆死した。こうして、ガーディアン騎士団領もまた、本来の姿を取り戻すことになったのである。
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+ | 第3話「幻惑の双生児」 |
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ジェメリの双子の兄である謎魔王ジェミニ(上図)から、彼女に手紙が届いた。リース公国を(公爵を傀儡として残した上で)実質的に統治下に置きながらも、自ら表舞台に立つことは少なく、図書館での研究に没頭していた彼は、突然彼女(とその「お友達」)に「ゲームをしよう」と提案する。ジェメリ達が、この国の守護神である四人の「鯱妖精」を集めた上でジェミニの居城へと乗り込み、彼に一太刀浴びせることが出来たら、彼女達の願いを何か一つ叶える、と彼は言い出したのである。
兄の真意が分からぬまま、ひとまずジェメリはトリシュ・ホレスと共に、兄の指定した「桜の生い茂る山」へ向かい、その地を偶然通りかかったヨリノと共に「双子の老婆」が率いるジェミニの部下を倒すと、そこに鯱妖精の一人である「父鯱」が現れる。その父鯱の導きに従きつつ、ハクムとも合流したジェメリ達は、今度は「奇妙な音が流れる通り」ヘと向かい、そこで今度は「母鯱」を発見する。 ここで、どうしても兄の真意を知りたいと考えたジェメリは、単身彼の城へと乗り込み、兄からその本心を聞き出すことに成功する。曰く、彼は生来病弱な体質だったが、その体質を治すための「呪法」を、この国の図書館で発見したという。ただ、その呪法を実行するためには、ひとまず魔界に帰って一年ほど療養する必要があるため、その動きを他の魔王達に悟られぬよう、「ジェメリや勇者達に倒されたフリ」をした上で、密かに帰郷しようと考えているらしい。 その意図を理解したジェメリは再びトリシュ達と合流した上で、居城の近くの「新たに作られた橋」において、ジェミニの部下の「双子の小人」が呼び出した巨大蛾を倒し、その橋に封印されていた「兄鯱」と、その下の「堀」に眠っていた「妹鯱」を発見する。 こうして「四人の鯱精霊」を発見し、彼等の加護によって「リース国内でのみ機能する特殊な能力」を手に入れた彼等は、様々なプロパガンダ(ハクムの宗教勧誘、ヨリノのアイドル営業、ジェメリのシャインへの誘致活動)を通じてジェメリの部下達に動揺を与えつつ、ジェミニの居城へと乗り込み、彼に勝負を挑む。激戦の末、ジェミニは自身の身体に一定の「傷」をつけられたことで満足し、最後にヨリノが願った「星型模様の顔をした巨大ハムスターのぬいぐるみ」を彼女に与えた上で、密かに魔界へと帰還して行くのであった。 |
+ | 第4話「四十八杯の蟹」 |
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セントラル教皇領の北端に位置するウィロー城が、巨大なズワイガニ集団の包囲網により、落城の危機に晒されていた。彼等は、この城で密かに匿われている旧タートル連邦の長老、亀老師(別名:無天仙人)とウミガメ達を抹殺するために、同連邦を占領したザコ魔王キャンサー(上図)によって派遣された戦闘集団「ZKBS(ザコボス)48」の「チームZ」のメンバー達である。蟹料理家であるキャンサーは、蟹こそが世界最強の食材であることを証明するため、ライバルである同連邦のウミガメやスッポンの絶滅を目論んでいたのである。
しかし、グルメ企画のためにこの地を訪れていたヨリノと仲間達によって、チームZはあっさりと撃退される。その後、彼等は旧タートル連邦へと乗り込み、「チームK(ケガニ)」「チームB(ベンケイガニ)」を次々と撃破しつつ、ジェメリがキャンサーに毒入りスッポン鍋を送りつけた上で、キャンサーの居城である蟹料理店「本家 蟹魔王」の悪評を広げることで経済的に困窮状態に陥れるなど、巧みな嫌がらせ工作で徐々にキャンサーを追い詰めて行く。 だが、キャンサーの野望を阻止すべく乗り込んだ「本家 蟹魔王」には、4チームの中でも最凶と謳われる「チームS(スベスベマンジュウガニ)」と、4チームの中の上位2名(蟹エイト)によって構成された「CD(キャンサー・デスマスク)選抜」が待ち構えていた。彼等の物量攻撃に加えて、彼等を盾とした状態から繰り出すキャンサーの卑劣な攻撃に苦戦を強いられたヨリノ達であったが、それでも最終的にはどうにか全ての蟹達を倒した上で、キャンサーの捕縛に成功する。自身を守る部下達を失ったキャンサーはおとなしく彼等の軍門に降り、タートル連邦の支配権を放棄した上で、ウィロー大陸の人々のために無償で蟹料理を作り続けることを誓約させられることになるのであった。 |
+ | 第5話「哀しき獅子王」 |
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グリフォン連邦を支配するモンスター魔王レオ(上図)は、かつてはこの地に住む一人の少年であった。しかし、ライオンと人間のハーフとして生まれた彼は人々から忌み嫌われ、やがて大陸から追放され、魔界(ゾディアック界)に堕ちることになる。それから数年後、魔界での生存競争に生き残った彼は「魔王」の称号を得た上で、復讐のためにグリフォン帝国を侵略し、かつて自分を貶めた者達を次々と惨殺した。
そんな彼は、自分と同じ「魔物の血を引く者」でありながら、人類を守るために戦い続ける道を選んだ幼馴染のトリシュを憎み、決闘を挑んできた。結果は互いに譲らず引き分けとなったが、あくまでもレオはこの大陸の「純血の人類」全てを倒すまで戦いをやめないと言う。レオを止めるため、仲間達と共にトリシュはグリフォン帝国(跡地)へと乗り込む。 彼の部下の「四天王」との激戦の結果、マルス(勇者モンスター)は暴走の末に絶命し、チャンプ(マスコットモンスター)は囚われてヨリノの下僕(ぬいぐるみ)となり、ポントゥス(純モンスター)は全ての鬣を剥ぎ取られて逃亡する。一方、そんな中でジェメリはレオに同盟を持ちかけるも「信用出来ない」という理由から拒絶されてしまった。 そして、帝国難民達をハクムやヨリノの力で勇気付けて士気を高めた上で、レオと、四天王最後の一人のモンターギュとの決戦に挑むが、モンターギュはトリシュのブレスによって生み出された地割れの間に転落して行方不明となり、残ったレオは孤軍奮闘するものの、最後はヨリノ、ホレス、ハクムの連携技によって身動きを封じられ、あえなく囚われてしまう。 当初、彼は「とっとと殺せ!」と主張していたが、自国の騎士団に加えようとするトリシュ、自身のバックダンサーにしたいヨリノ、自分の教団に招き入れようと企てるハクムの三人の言い争いを目の当たりにして、まだ自分を必要とする者が残っていることを実感し、以後は彼等を守るための「牙」となることを誓うのであった。 |
+ | 第6話「乙女大乱」 |
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フレイム枢機卿領にて着々と勢力を伸ばしつつあるハクムの新興宗教の聖殿に、フェニックス大司教領を支配する乙女魔王バルゴ(上図)が現れる。バルゴはフェニックス大司教領に伝わる伝説の魔曲「カサンドラ・カノン」をライブで披露することで多くの人民を魅了し、自らの傘下に加えていた。彼女はハクムと手を組んで、自分達がハクムの新興宗教の広告塔として芸能活動する代わりに、ハクムの人脈を利用してライブの観客動員数を増やそうと企んでいたのである。
当初、ハクムはこの計画に乗り気であったが、トリシュ、ジェメリ、ヨリノ、ホレスが間に割って入り、両者の結託を阻止する。ヨリノ曰く、ヨリノとバルゴは共に、本来はこの世界とは異なる「アイドル時空」の住人であるらしい。その後、トリシュの地元でゲリラライブを決行しようとしたバルゴのバックダンサーの「ティータ16人衆」の半数を撃破した彼等は、ホレスを中心とした捜索活動の結果、もう一つの魔曲である「オース・カノン」と、伝説の魔楽器「法螺貝」を発見する。 更に、途中まではバルゴに協力するか否かで迷っていたハクムも、途中で彼女のライブチケットの値段を吊り上げて私腹を肥やしていたことが判明したことで、バルゴとは決裂。その上でバルゴは、彼女に対抗するように精力的にライブ活動をおこなうヨリノ達を、自身が経営する「虹の舞台」でのライブの「前座」として招待するが、ここでジェメリは、バルゴがかつて自身の兄ジェミニ(第3話参照)に片思いし、フラれたという過去を観客の目の前で暴露した上で、バルゴを激しく嘲笑・挑発する。 これに激怒したバルゴは、戦略も戦術も無視してジェメリ一人を一心不乱に殴り続け、更にどさくさ紛れに(日頃からジェメリの言動に辟易していた)ホレス、ハクム、ヨリノからも嫌がらせ攻撃を受けたジェメリは手痛い傷を負うことになるが、トリシュがホレス達を止めたこともあり、最終的にバルゴは彼等の虜囚となり、ヨリノの手によってアイドル時空へと送り返されることになった。こうしてトリシュ達は、魔王軍に支配された国々のうち、約半数を解放することに成功し、ホレスは卒業に必要な単位の約半数を手に入れることになったのである。 |
+ | 第7話「傾き始めた天秤」 |
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ウィロー大陸中西部のハムレット伯爵領を実質支配する神聖魔王ライブラ(上図)は、魔王達の中では例外的に、人間達による自治を一定程度まで認める温和な統治方針を掲げていた。それは、この世界における魔王達の支配体制を永続化させるためにこそ、人間と魔王との勢力の「均衡」が必要、という彼の思想に基づいた施政方針であった。
だが、トリシュ達によって大陸内の魔王支配体制が崩れ始めたことで、彼の統治体制は「調和型」から「圧政型」へと切り替わっていく。そして、人間側に傾きつつある大陸全体の現状を打破するために、彼はセントラル教皇領との国境線上に眠る伝説の「白き巨人」を蘇らせることを決意するが、トリシュ達の妨害によって、その発掘作業は中断に追い込まれる。 その後、発掘現場の奥に眠っていた巨人の声を聞いたトリシュ達は、巨人の復活のためには、巨人の力を封印している「黄金の時計」「白銀の時計」「百合の噴水」という三つの施設を破壊する必要があることを知る。この事実を知ったジェメリは、巨人の力を用いて他の魔王達を倒そうと企むが、他の者達はその考えに反対する。 そんな中、ジェメリはレオをけしかけて封印を破壊させようとしたが、その動きを事前に察知したヨリノとホレスによって、レオはウィロー大学の学園祭に出演するヨリノのバックダンサーとしての出演契約を結ばされたことで、ジェメリからの依頼を断らざるを得なくなった。一方、ハクムは「黄金の時計」を自身の教団の宗教施設として位置付けつつ、「白き巨人」に対抗する「紅の巨人」の存在(というデマ)を噂として流すことで、ライブラの圧政に苦しむ人々の心を勇気付けていく。 そして、「百合の噴水」と「白銀の時計」を破壊しようとするライブラとその傘下の神官達の猛攻もトリシュ達の必死の防戦によってどうにか食い止められたことで、ライブラは「これ以上の戦いは千日戦争になる」と判断した上で、「今後、この大陸のバランスが更に人間側に傾いた場合は、魔界に眠る『暗黒の巨人』を連れて帰還する」という警告を言い残し、魔界へと一時帰還することになった。 |
+ | 第8話「人と龍と蠍」 |
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ウィロー大陸の北東部のイースター共和国の支配者であるドラゴン魔王スコーピオン(上図)は、伝説の「神龍帝」の末裔の一人であり、トリシュの母方の従兄でもある。彼は龍族内で代々継承されてきた「7つ集めれば、どんな願いも叶う」と言われる「神龍球」の一つの「六星球」の継承者でもあるが、サソリ族との混血故に、龍族の中では格下扱いされてきた。だが、そんな彼が先日、龍族の中でも「最強」の呼び声高い「天海龍王(三つ首の黄金龍)」を倒して「一星球」を奪った、という噂がトリシュの耳に届く。そして彼は残り五つの神龍球を手に入れるため、まずは「東海龍王」が支配するドラゴン王国へと侵攻を開始した。
トリシュは、自身の聖剣の柄に埋め込まれた球体が、「七星球」であることを聞かされた上で、東海龍王(水色のマスコット龍)から「二星球」を託され、仲間達と共にスコーピオンを迎え撃ち、見事撃退に成功する。その後、他の世界からも神龍球の後継者達がこの世界に入って来ていることを知ったトリシュは、まず西海龍王(FC時空の暗黒龍)を闇討ちで倒して「三星球」を奪い、続いてハクムが北海龍王(TCG時空の青眼白龍三兄弟)の家を焼き討ちにして「四星球」を盗み出すことに成功する。そして、そんな彼等に憤りを覚えて勝負を挑んできた南海龍王(香港時空のアクションスター)とも、戦いの末に(なぜか)友情を芽生えさせた上で「五星球」を譲られる。 そして、スコーピオンとの最後の戦いに挑もうとしたトリシュ達であったが、彼等がイースターに到着した時、スコーピオンの居城は(「スコーピオンが四星球を奪った」と勘違いした)北海龍王によって襲撃されていた。三体合体して究極体となった北海龍王と戦うことになったトリシュ達であったが、激戦の末、最終的には(彼等の家を焼き討ちにした張本人である)ハクムが「四星球を奪ったのは自分達でもない」と言って北海龍王を騙した上で、TCG時空へと帰還させる。 この間、スコーピオンの持っていた二つの神龍球は、彼の部下を通じてトリシュに託され、スコーピオン自身は呆然自失とした状態のまま何処へかと姿を消す。そして、この神龍球の存在自体を危険視したトリシュは、「兄様の病気を治したい」「単位が欲しい」「教団を世界中に広めたい」という仲間達の意見を退け、何の願いも叶えないまま、四つの神龍球のうち三つを、ヨリノを通じてアイドル時空にある彼女の自宅に封印させた上で、残りの四つを自分で管理することにしたのであった。 |
+ | 第9話「闇に堕ちた射手」 |
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ウィロー大陸南東部のエメラルド辺境伯領を支配している勇者魔王サジタリアス(上図)は、かつては勇者一族の中でも将来を有望視された逸材であり、トリシュの父方の従兄でもあったが、数年前、突如として失踪した後、魔王となってゾディアック連合の一員としてウィロー大陸に攻め込み、まるで人が変わったかのように次々と住民達を惨殺し、人々を恐怖に陥れていた。
そんな彼が、大陸内の魔王軍が劣勢に追い込まれていく現状を打破するために、彼の領国から最も近い場所に位置するフレイムのハクム神殿に向けて、進軍を開始した。それに対して、ハクムの神殿が壊されることには何の感慨も抱かないもののサジタリアスを放置しておく訳にもいかないと考えたトリシュ達が介入して応戦した結果、ひとまずサジタリアス軍は撤退する。 その後、ジェメリはサジタリアスの元部下の「競走馬T」を捕縛し、彼から「サジタリアスの闇堕ちにはウィロー大学が関わっているらしい」という情報を手に入れる。これは自身の担当教官に真偽を確認する(ついでに単位を要求する)必要がある、と考えたホレスは、トリシュ達と共に大学へと向かおうとするが、その途上、サジタリアスの元部下である「軍馬S」の妨害を受けるも、なんとか撃退に成功する。 こうして大学に辿り着いた彼等は、ヨリノによる取材という名目でホレスの指導教官を問い詰めたところ、突然、彼の身体から一匹の「蛇」が現れた。どうやら、彼はこの蛇に操られていたようで、ホレスに「単位が欲しかったら魔王達を倒せ」と命じたのも、その蛇の意思だったらしい(しかし、ホレスがそれまで単位を落としていたのは公正な採点の結果だったため、結局、その指令は撤回されなかった)。一方、ハクムはサジタリアスの居城に囚われていた彼の元部下の「愛玩馬G」の証言から、サジタリアスを闇堕ちさせた人物が「オピュクス」という名であるという事実を知ることになるが、残念ながら、誰もその名には聞き覚えがなかった。 そして再びサジタリアスと対峙したトリシュ達は、激戦の末、彼を瀕死状態にまで追い込むと、その彼の身体の中から(ホレスの指導教員の中から現れた蛇とよく似た)一匹の蛇が現れる。蛇がトリシュ達の追撃を振り切って何処かへと逃亡する一方で、かろうじて目を覚ましたサジタリアスは、いつの間にか「正気」に戻っていた。どうやら彼は、オピュクスという人物に呼び出されてウィロー大学へと向かった結果、そこで「蛇」に襲われ、そこから先の記憶が残っていないという。こうして、オピュクスの謎は残ったままではあったが、彼等は無事にエメラルドとサジタリアスの解放に成功したのである。 |
+ | 第10話「傾国の山羊」 |
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ウィロー大陸中東部に位置するヴァルハラ選帝侯領を支配するマスコット魔王カプリコーンは、自身の「複製体」を大陸各地に派遣し、各地の要人達を密かに籠絡しつつ、自身の野望を実現させるための「時」を伺っていた。だが、トリシュ達による大陸解放戦争が佳境を迎える中、不十分な準備状態ながらも、「この機を逃したら、もう『時』は来ない」と確信した彼は、遂に長年の「計画」を実現に移すことになる。
ある日の夜、ウィロー大陸の各地で、様々なマスコット達(ハクムの炎印教団の御神体、ウィロー大学の茶色熊、飛龍騎士団長の娘の持っていた牛のぬいぐるみ、リース公国の四匹の鯱)が、カプリコーンの複製体達の鳴らす笛の音に操られて、次々と行方不明になる事件が起きた。時を同じくして、ヨリノのコレクションのぬいぐるみ達もまた誘拐されそうになるが、ヨリノが「法螺貝」で対抗することで、その音波を乱し、かろうじて死守に成功する。そして翌日の昼には、今度はより大軍の複製体達が大楽団を率いて正面から乗り込んでくるものの、助けに来たトリシュ達の助力もあり、なんとか撃退に成功した。 その後、カプリコーンの「本体」の本拠地に直接乗り込んだジェメリは、彼の目的が「自分と自分の複製体以外のマスコットをこの世から消し去ることで、次の『マスコット総選挙』で1位になること」だと知らされる。その企みを阻止すべく、ヴァルハラ霊園に埋葬されようとしていたマスコット達を解放した彼等は、ウィロー大学の茶色熊を全国的に売り込むキャンペーンを展開しつつ、炎印教団の御神体の複製体を各地に配るなどといった草の根運動を通じて、カプリコーンの支持基盤を少しずつ切り崩して行く。 そして、このウィロー大陸が誇る三大マスコット(ハッチ、ダーナ、エビー)が、ヴァルハラ東部の「マスコット教習所」において、カプリコーン軍の私刑に遭っていることを知ったトリシュ達は、ヨリノが(以前ジェメリから貰った)「星型模様の顔をした巨大ハムスターのぬいぐるみ」と一体化して「囮」を演じている隙に、トリシュが三大マスコットを助け出すことに成功する。その上で、自分と兄を愚弄されたジェメリの怒りの一撃によってカプリコーンは倒され、彼女の手によって悪魔改造を施されたカプリコーンは、「マスコット総選挙ホラー部門」において、見事1位を獲得することになるのであった。 |
+ | 第11話「水瓶は乾かない」 |
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ウィロー大陸中西部のストレーム男爵領には「聖アクエリアス学園」と呼ばれる、もう一つの魔法大学が存在する。これは、この地を支配する魔法使い魔王アクエリアス(上図)によって開講された新設校であり、彼が教祖を務める(炎印教団と対立する)水瓶教団を経営母体としつつ、ウィロー大学よりも安価な学費、容易な単位認定、そして高度な(魔界への)就職率を売りにしており、多くの学生達をウィロー大学から引き抜き、ウィロー大学の経営を窮地に追い込んでいた。
そんな中、聖アクエリス学院から編入の誘いを受けたホレスは、あっさりとその申し出を受け入れ、アクエリアスの要請に従い、学院に潜入していたトリシュとハクムに対して、学院の生徒として牙を剥く。そこに、両者の共倒れを狙うジェメリと、両者を無作為に応援する(ブラスバンド部に潜入していた)ヨリノが乱入した結果、戦線は混乱し、トリシュとハクムは撤退を余儀なくされる。これは、トリシュ達にとって初の敗戦であった。 その後、トリシュやジェメリの調査によって、聖アクエリアス学院の生徒達が、アクエリアスの魔法により「飲み物」に変えられて、様々な世界の魔王達の元に(表向きは「就職」という名目で)「出荷」させられているという事実が判明する。そのことを知らないホレスは、トリシュとハクムに対して奇襲を仕掛けるものの、またも第三勢力として戦場に現れたジェメリと、無差別応援演奏を敢行するヨリノの介入もあり、目的を果たせぬまま退却する。 こうして各自の思惑が入り乱れる中、ジェメリがトリシュに対して「闇堕ちさせて自分のモノにしたい」という欲望を抱く一方で、トリシュは唯一自分の味方であり続けるハクムと炎印教団に対して信頼感を抱き、「入信してもいいかもしれない」と考え始めるようになる。 そしてハクムの指揮の下、トリシュ達は聖アクエリアス学院に対して焼き討ち作戦を仕掛けるものの、水属性の外壁に対して火刑は相性が悪く、失敗に終わる。ところが、それと時を同じくして学院内で花火で遊んでいたホレスの火の不始末によって内側から学院の外壁が崩れてしまい、ホレスはスパイ容疑で捕えられ、液状化の刑に処せられそうになる。そこに、崩れた外壁の隙間から突入したトリシュ・ハクム・ジェメリ・ヨリノと、助っ人として参戦してきたアリエス、キャンサー、レオ、サジタリアス、そして(ジェメリのストラップになっていた)カプリコーンの援護により、ホレスは無事に助け出され、アクエリアスは何処かへと逃げ去って行くのであった。 |
+ | 第12話「Fish Fight!」 |
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ウィロー大陸を支配してきた魔王達は次々と駆逐され、もはや残されたのは、南西部に位置するハーゲン自由都市連合(とジェメリが支配するシャイン侯国)のみとなった。ハーゲンを支配する純正魔王ピスケスは、人類と魚類の垣根を取り払い、この地の住民達を魚人化することで、水陸両用の新人類による新世界の創造を目指している。
そんな中、ピスケスは大陸全体に対して、まもなくこの大陸が水没する、と告知した。もしその発言が真実なら、彼の改造手術を受けていない人々は生きていくことが出来ない。彼の野望を止めるべく、ハーゲンに向かおうとしたトリシュであったが、そんな彼の前に、水没前にトリシュとの決着をつけようとする(母方の従兄の)スコーピオンが立ちはだかる。だが、そこに(父方の従兄の)サジタリアスが割って入ったことで、かろうじてトリシュはハーゲンへの進路を確保する。 同様に、番組会議中のヨリノの元には(何者かの手でアイドル時空から舞い戻った)バルゴ、復学したホレスの所にはアクエリアス、布教中のハクムの前には(何者かの手でゾンビ化した)タウラス、そして、部下から報告を聞いていたジェメリの本拠地には『暗黒の巨人』を連れたライブラが現れるものの、バルゴには(ヨリノのバックダンサーとして会議に参加していた)レオ、アクエリアスには(同じザコとしてホレスをリスペクトしていた)キャンサー、タウラスには(かつてハクムを利用したことへの贖罪の機会を待っていた)アリエス、ライブラには(ジェメリによって「理性を無くした暴走ストラップ」と化していた)カプリコーン、そして『暗黒の巨人』には(小美人からジェメリの危機を聞かされて急遽駆け付けた)ジェミニが対峙して食い止めたことで、彼等もまたハーゲンへと向かうことになる。 そして、ピスケスの海上要塞に辿り着いたトリシュ達は、ピスケスとその配下の五魚将軍との間で死闘を繰り広げた結果、五魚将軍のうち、スケトゥーダ(純正モンスター)とハンギョッド(純正マスコット)は逃走し、ポヨン(純正お姫様)は崖の上から転落し、雷撃で倒れたタンゴ(純正ザコ)は最後の誤射でジンベール(純正戦士)を射抜いてしまい、そのジンベールもまた怒りの暴走の末に生き絶える。 その後、要塞の内部において、謎の闇医者「オピュクス」(下図)とその配下の蛇達が暗躍していることに気付いたトリシュ達であったが、そんなことには大して興味を抱くこともなく、彼等は要塞を内側から焼き討ちにしつつ、ピスケスが保護していた魚達を焼き魚&刺身にして宴会を開くことで英気を養い、最終決戦へと挑む。 ![]()
だが、そこで待っていたのは(かつてのサジタリアスのように)身体を「蛇」に乗っ取られた状態のピスケスと、彼を操る「13人目の魔王・オピュクス」の姿であった。彼は、本来はただの魚マニアにすぎなかったピスケスに、自分と同じ「純正魔王」としての力を与え、彼を介して実質的にハーゲンを支配していたのである。だが、ウィロー大陸が人類の手に取り戻されようとしている現状に悲観して、一度、この大陸を(部下の)ピスケスと(弟子の)アクエリアスの力で水没させて、世界を作り直そうと企んでいた。
だが、そんな裏事情を説明する暇もないままトリシュ達との最終決戦に突入した彼は、激戦の末に下僕の二匹の蛇とピスケスを失ったことで形勢不利を悟り、救援に来たアクエリアスと共に、この大陸を去ることを決意する。そして、ピスケスの死によって大陸の水没化は阻止された結果、ウィロー大陸は崩壊の危機を免れた。 そして、この決戦と並行して繰り広げられていた各地の魔王達の戦いも、それぞれの結末を迎えていた。アリエスはかつての盟友タウラス(の屍体)を倒して、再び手厚く埋葬する。体調的にはまだ不完全状態だったジェミニも、かろうじて『暗黒の巨人』を倒したことで、ライブラは再び魔界へと帰還し、カプリコーンもどうにか生き(?)延びる。「スコーピオンvsサジタリアス」と「バルゴvsレオ」は互いに決着がつかないまま痛み分けとなり、スコーピオンは再び何処かへと立ち去る一方、バルゴとレオは意気投合して二人で芸能界の天下を取ることを目指し、共にアイドル時空へと消えていく。そんな中、キャンサーだけはアクエリアスに敗れて非業の死を遂げたものの、彼の子供達はアクエリアスを倒すべく、臼と蜂と栗と牛糞を探す旅に出ることになる。 こうして、ひとまずウィロー大陸には平和が訪れた。だが、オピュクス・アクエリアス・ライブラの三人はいつ再び来襲するか分からない状態だったため、人々の心には不安が残っていた。そんな民衆の心の隙間に付け入るように、ハクムの炎印教団は着実に信徒を増やし、今やウィロー16ヶ国全てに支部を形成するに至った(アリエスもまたミリシーズの支部長を務めている)。それを可能にした背景には、「彼女達の聖なる炎こそが魔王軍に対抗出来る力である」という、勇者トリシュからのお墨付きがあったという。 そのトリシュは、この一連の戦いでの功績が認められ、ドラゴン王国騎士団の副団長に就任することになった。彼の傍らには、再び人類のために戦う決意を固めたサジタリアスもいる。そんな彼等に対して、この後も度々スコーピオンの襲撃が繰り返されることになるが、もはや彼は神龍球へのこだわりはなく、純粋に「強敵」を求めているだけのように見える。いずれ、この二文字に「とも」のフリガナが振られる時がくれば、彼もまたドラゴン騎士団の門を叩くことになるのかもしれない。 そんな「救国の英雄」として栄華を極める彼等とは対照的に、ホレスは無事に12単位を獲得して卒業を果たすものの、相変わらずの怠惰な姿勢故に就職先での業績はさっぱり伸びず、早くも解雇の危機に晒されている。果たして彼の次の就職先は、どこになるのだろう? ミリシーズ大学の生協のバイトか、蟹料理店の支店長か、それとも、再び何処かの魔王の手先として、人類に牙を剥くことになるのであろうか。 一方、この一連の戦いのドキュメンタリー映像を撮り終えたヨリノは、アイドル時空へと帰還した。彼女の「お家のリフォームのための焼き討ち講座(全6回)」は好評を博し、一躍売れっ子タレントの座を確保する。そんな中、一度は彼女の神龍球を盗んだ罪で投獄されたバルゴは、レオの手によって脱獄を果たし、二人のゲリラライブがアイドル時空を席巻していた。果たして、アイドル時空の平和が訪れるのは、いつの日になるのだろうか。 そして、魔王軍の中で唯一、「シャインの裏支配者」として大陸に残ったジェメリは、リースとヴァルハラを実質的な傘下に加えながらも、今のところは特に人類に危害を加えることなく、静かに兄の帰還を待ち続けていた(療養を中断して臨時出撃した結果、ジェミニの体質が完全に改善されるまでに必要な時間は更に伸びてしまった)。心を奪われて生きる屍と化したカプリコーンを笑顔で虐待しながら、彼女は「兄との幸せな日々」が訪れるのを待ち焦がれる。果たして、彼女の野望を止める者は現れるのだろうか。ウィロー大陸の覇権を巡る戦いは、まだ、終わらない。
(完)
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