『ロストロイヤル』2016年度後期キャンペーン「運命の双子」

※注:別のゲームで登場したキャラと同名・同イラストのNPCが登場したりしますが、他人の空似です。

プロローグ
 十数年前、ログレス島を恐怖に陥れた魔王バールゼーレンは、英雄セヴァンとその仲間達(朔日の賢者 デネトワ、九重の騎士 エリーミナス、天穹の貴婦人 イクスキャリベル)の手で倒された。セヴァンは、古き王家の女性グレイローザを娶り、魔族によって歪められたシン=ヴィクトール地方の主となった。
 やがて二人の間にエレナ(姉)とセシル(弟)という名の双子が生まれると、彼等の誕生を祝福するかのように、それまで荒れ果てていたセヴァンの所領は、緑豊かな大地へと生まれ変わる。セヴァンはこの地を「アヴァロン」と名付けてその王となり、やがて彼を慕う騎士達を集め、「円卓の騎士団」を結成した。
 だが、双子の誕生から11年後、第二の魔王が現れる。それは、かつての円卓の騎士の一人であり、海に没して死んだ筈の男、バールゼルであった。バールゼーレンの息子である彼は、魔族を率いてアヴァロンへと襲いかかり、更に王妃グレイローザを人質に取り、セヴァンに降伏を迫る。それに対して、やむなくセヴァンが剣を降ろす決断を下すと、彼の守護者であった戦乙女イクスキャリベルは(以前に交わしていた「戦うことを放棄した時、お前の魂は私のものとなる」という約束通りに)セヴァンを殺し、その魂を天空へと持ち去った。
 こうして、王を失ったアヴァロンは魔族の手に落ち、王子セシルと王女エレナは、それぞれに円卓の騎士達に守られながら落ち延びた。いつか必ず、この地を取り戻すことを(それぞれの側近の騎士達と共に)心に誓って。

+ 王子(NPC)データ&イラスト
ペットを連れた泣き虫の主君 セシル
  • 種族:人間族
  • 性別:男性
  • 年齢:11歳
  • 形見:ペット(犬)
  • 義勇兵:21
  • 維持費:4
  • 運命点:7
  • 聖杯:163
  • 絆&影響点
 ・ビアンカ(信頼):51
 ・クリシュナ(信頼):49
 ・ダルネル(信頼):56
 ・タングーア(信頼):45
アクション表
1、(落ち込んでいる→)決意する
2、思い出している
3、(道に迷う→)戦いの準備をする
4、ペットを撫でている
5、(さらわれる→)楽器を奏でている
6、(食べている→)チェスをしている
+ 王女(NPC)データ&イラスト
大人びた見栄っ張りの主君 エレナ
  • 種族:人間族
  • 性別:女性
  • 年齢:11歳
  • 形見:武術(レイピア)
  • 義勇兵:2
  • 維持費:4
  • 運命点:7
  • 絆&運命点
 ・クロン(信頼):41
 ・エリザベス(信頼):40
 ・シャーロット(信頼):34
 ・シャルリオス(信頼):48
アクション表(第2話開始前)
1、(怒っている→)瞑想している
2、(とんでもない物を買ってくる→)思いを馳せている
3、演武をしている
4、甘い物を食べている
5、(褒めている→)嫌な咳をする
6、(道に迷う→何かを学んでいる→)覚悟を決めている

+ 王子近衛騎士団(PC)データ
譲り葉の騎士 ビアンカ
  • 種族:人間族
  • 性別:女性
  • 年齢:18歳
  • 理想像:正義の王
  • 愛用の武具:白いレイピア(武力+4、速力1)
  • 信条:主君、主君、庇護
  • 戦力:武力8×、速力7、魔力0
  • 特殊能力:奇妙な力

絶海の騎士 クリシュナ
  • 種族:白鳥族
  • 性別:男性
  • 年齢:13歳
  • 理想像:享楽的な王
  • 愛用の武具:美しい槍(速力+5)
  • 信条:庇護、冒険、恋慕
  • 戦力:武力1、速力9、魔力1
  • 特殊能力:短命種

永遠の騎士 ダルネル
  • 種族:咒林妖精
  • 性別:男性
  • 年齢:32歳
  • 理想像:秩序を守る王
  • 愛用の武具:譲り受けた槍(速力+1、魔力+4)
  • 信条:主君、戦友、戦友
  • 戦力:武力0、速力3、魔力8
  • 特殊能力:宿敵、武術

蛙騎士 タングーア=ムルグア
  • 種族:吟遊妖精
  • 性別:男性
  • 年齢:16歳
  • 理想像:面白い王
  • 愛用の武具:異形の蛙(魔力+5)
  • 信条:冒険、冒険
  • 戦力:武力0×、速力2、魔力11
  • 特殊能力:恐ろしの影、祖国よ

+ 王女近衛騎士団(PC)データ
暁の騎士 クロン
  • 種族:火炎妖精
  • 性別:男
  • 年齢:16歳
  • 理想像:折れない王
  • 愛用の武具:炎の大剣(魔力+6)
  • 心情:戦友、戦友、主君
  • 戦力:武力4 速力0× 魔力6
  • 特殊能力:炎陣、お守り

失翼の騎士 シャルリオス
  • 種族:白鳥人
  • 性別:男性
  • 年齢:20歳
  • 理想像:厳格にして冷徹なる王
  • 愛用の武具:鋼鉄の如き肉体(速力+6)
  • 心情:庇護、庇護
  • 戦力:武力1 速力6 魔力1
  • 特殊能力:光翼、短命種

残り火の騎士 シャーロット
  • 種族:火炎妖精
  • 性別:女性
  • 年齢:18歳
  • 理想像:カリスマ溢れる王
  • 愛用の武具:形見の斧(武力+6)
  • 心情:冒険、主君
  • 戦力:武力6 速力0× 魔力4
  • 特殊能力:戦乙女の愛、宴の達人

鋼の騎士 エリザベス(リズ)
  • 種族:人魚族
  • 性別:女
  • 年齢:14歳
  • 理想像:のどかな王
  • 愛用の武具:形見の槌(武力+6)
  • 心情:恋慕、恋慕
  • 戦力:武力8 速力2 魔力0×
  • 特殊能力:進撃、喝破

+ 第1話(王子編第1話)・予告
第1話予告
窮地の少年に差し伸べられた、俠気溢れる救いの手
だが、反対側の手の先には、恐怖に怯える顔がある
忠義と善意に満ちた手を、素直に掴んで良いものか
少年は、主君としての「最初の決断」を迫られる

ロストロイヤル『運命の双子』第1話
「旅芸人の一座」
すべては主の御心のままに
栄光あれ

第1話ゲスト:神笛の旅芸人 ロザン
 ログレス島随一の笛の名手と言われる旅芸人。「ロザン一座」と呼ばれる旅芸人集団を率いて島中を渡り歩いている。昔、セヴァンに命を助けられて以来、セヴァンに心酔し、毎年セシルとエレナの誕生日には城を訪れて、彼等を楽しませる演目を披露している。
 アヴァロン崩壊以来、セシルとエレナの身を案じていた彼は、偶然、旅先でセシル達と出会う。ロザンはセシルに「魔族の目をごまかすため、一座の一員に変装した上で、一座と共に島を回って協力者を集めること」を提案するが、一座の他の者達は、セシルを抱え込むことで自分達が魔族に狙われることを警戒し、あまり乗り気ではない様子が伺える。

命題A「ロザン一座と行動を共にする」
  • 理由:魔族の追っ手から逃れやすくなりそうだから。
  • 予感:快適な旅路

命題B「ロザン一座とは同行しない」
  • 理由:彼等を危険な旅に巻き込みたくないから。
  • 予感:一座の安全
+ 第1話(王子編第1話)・結末
 ロザンからの申し出を受け入れることに対して、セシルは躊躇した。自分が彼等と同行することによって、彼等を巻き込んでしまうことが怖かった。ダルネルとタングーアも、そんな王子の考えに理解を示す。特にダルネルは、未来の王として、自分を慕う民を危険に晒すようなことは望ましくないと考えていた。
 一方、クリシュナはそんなダルネルに対して、民の犠牲を過度に気にしていては王子の精神が持たなくなると考えた上で、素直にロザン達に同行することを提案する。逆にビアンカは、仮にここでロザン達と別れたとしても、魔族が支配する今のこの島においては旅芸人の身も決して安全とは言えない立場である以上、むしろロザン達と同行して、彼等の事も一緒に守るべきだ、と主張する。
 皆の意見を聞いた上で、セシルは最終的に、ビアンカの意見を受け入れることにした。今の自分がまだ無力であることは承知の上で、それでも、自分を慕ってくれる「大切な人達」を守れる存在になりたいという思いを込めて、ロザン一座との同行を決意する。
 そんな中、そのロザン一座の前に「壮絶の魔人」の異名を持つ男、ヴォルテスが現れる。彼はかつては円卓の騎士であったが、保身のために魔王に魂を売った裏切り者であった。彼は、この近くにセシル達が潜伏しているのではないかと考え、ロザン達を脅迫してその居場所を聞き出そうとする。ロザンは淡々と知らぬ存ぜぬを突き通すが、他の団員達は明らかに動揺した表情を見せていた。
 このまま放っておく訳にはいかないと考えたセシル達は、騎士達と共に自らその姿を現した上で、ヴォルテス率いる魔軍と対峙する。ヴォルテスは騎士達に対して、王子を渡して降伏するように勧告するが、彼等はそれを拒絶して立ち向かい、そして見事に勝利を収め、裏切り者であるヴォルテスを討ち取ることに成功する。
 こうして、一座の危機を救ったセシル達は、ロザン一座の他の団員達からも受け入れられ、旅芸人の一員に扮しながら、島を回って仲間を集めることになった。セシルは楽器の演奏を学び、ビアンカとクリシュナもそんな彼の両脇を固めるように楽器を奏でる中、タングーアは蛙召喚術を用いた大道芸を披露し、ダルネルは(大根役者ながらも)芝居班の一員となることで、どうにか一座の一員として溶け込んでいく。いつかこの地を取り戻すことを信じて、そのために必要な仲間を集めるための彼等の旅が、今、始まったのであった。
+ 第2話(王子編第2話)・予告
第2話予告
多くの人々の心を癒す、優しく繊細なその歌声
だが、その歌声の持ち主は、ある日突然姿を消した
裏切り、逃亡、誘拐、殺害
様々な可能性を頭をよぎる中、彼等は彼女の行方を探す

ロストロイヤル『運命の双子』第2話
「消えた歌姫」
すべては主の御心のままに
栄光あれ

第2話ゲスト:歌姫 アイレナ
 「ロザン一座」の花形的存在の歌い手。その美しい歌声は多くの人々を魅了するが、常にどこか物憂げな表情を浮かべている。その理由は、彼女の過去に関係しているとも言われているが、正確な事情を知る者は少ない。
 セシル達を受け入れる際、彼女は積極的に反対はしなかったものの、あまり気がすすまない様子であった。だが、実際にセシルを受け入れてからは、むしろ積極的に彼に気を配り、騎士達とも打ち解けようとしていた。そんな中、彼女は突然、一座から姿を消す。理由は不明だが、彼女は「セシルが一座にいること」を知っている以上、このまま放っておく訳にもいかない。

命題A「自らアイレナを探しに行く」
  • 理由:彼女の失踪は自分が原因かもしれないから。
  • 予感:自分自身の達成感

命題B「アイレナ捜索は皆に任せる」
  • 理由:自分が目立つとかえって事態を悪化させかねないから。
  • 予感:仲間への信頼
+ 第2話(王子編第2話)・結末
 アイレナが行方不明になった原因が自分にあると考えたセシルは、自ら彼女を探しに行こうとする。ビアンカは自分が一緒に行くことを前提に彼の意思を尊重しようと考え、タングーアもまた、この機にセシルに「自分の力で何かを成し遂げる達成感」を与えるべきという観点から、その方針を支持する。
 これに対して、ダルネルはセシルの身を案じた上で、自分が一人で探しに行くと主張し、クリシュナもまた自分でアイレナを探しに行く意思を示す。ただ、クリシュナはこの時点でアイレナのことを「王子を裏切った」と決めつけており、連れ帰った上でセシルの眼の前で自らの手で処断するつもりであった。
 結局、最終的にセシルは、今回のアイレナの捜索をダルネルに委ねることにする。ただ、その決断に至るまでの過程でクリシュナとタングーアの前に現れた(今まで行方不明であった父の側近の)「朔日の賢者」デネトワが、「アイレナが隣村にいること」と「彼女が現在、危険な状態にあること」を彼等に伝えていたため、念のためタングーアを同行させることにした。
 そして、村に潜入して捜査していたダルネルとタングーアは、路地裏でアイレナが「魔族と思しき男」と会話をしている姿を発見する。その場にダルネルが現れたことで、アイレナは走って逃げ出そうとするが、ダルネルは追走して、どうにか彼女の身柄を確保した。一方、魔族と思しき男の方は、タングーアが(自らの半身的存在である)「蛙」の力を用いて追跡し、彼が多くの魔群を率いていることを確認する。
 その後、ダルネルとタングーアに説得されたアイレナは一座に戻り、ロザンとセシルに全てを話す。彼女は元は辺境の貴族家の出身であり、先刻の魔族はアイレナの兄である「栄光の魔人」ザッカーノという男らしい。彼女は兄を通じて、旅先で得た様々な情報を魔族に提供していたが、それは兄に「従わなければ一座の者達を殺す」と脅されていたからであった。だが、セシルが一座に加わったことで、いずれセシルの存在が兄に知られてしまうのではないか(そうなると、さすがに見逃してはもらえないだろう)と考えた彼女は、彼の身を守るため、あえて一座を離れて、別の形で魔族に情報提供する道を探すという建前で、兄の目をごまかそうと考えていたのである。
 脅されていたとはいえ、魔族に協力していたアイレナに対して、クリシュナは「信用出来ない」と言って、極刑の必要性を強硬に主張するが、ロザンもセシルも、そして他の騎士達も、セシルや仲間達を救うために苦慮していた彼女の心境を慮ってその行動を許し、これから先も彼女を一座の仲間として受け入れる方針を示したため、クリシュナも渋々その方針に従う。
 そんな中、アイレナの様子に微妙な違和感を感じていたザッカーノは、部下の魔族を派遣してロザン一座の様子を偵察させていた。その偵察兵が(ダルネルとタングーアが村に行っていた間に)ビアンカとクリシュナによって発見・殺害された(故に帰還しなかった)ことで、より警戒心を強めたザッカーノは、魔群を率いて一座の前に現れる。もはや隠しても無駄だと開き直ったセシル達は、一座の者達を巻き込まないよう、自ら彼等の前に現れる。目の前に指名手配中の王子を見つけたザッカーノは歓喜して襲いかかってくるが、相手を見くびった不用意な攻撃の隙を突いたダルネルの一撃によってその身を貫かれ、あっさりとその身を散らすことになった。
 その後、デネトワから「魔王を倒すには龍の力が必要」と聞かされた騎士達、彼女の案内に従い、セシル、アイレナと共に小高い丘の上へと向かう。そこで、セシルが杯を掲げ、アイレナが龍を呼び起こすための歌を唄い始めると、周囲に風が立ち込め、騎士達はその風の中に「龍」の姿を幻視する。やがてその風(龍)は杯へと流れ込み、セシルの体内にその力が注がれる。デネトワ曰く、この力を完全な形にするには、「儀式」をあと三回繰り返す必要があるらしい。魔王を倒すための手がかりを手に入れた騎士達は、それまでセシルを支え続けることを、改めてここに誓うのであった。
+ 第3話(王子編第3話)・予告
第3話予告

魔王軍を倒すには 有力諸侯の助力が不可欠
彼等の説得の鍵を握る 辺境地方の名高き老公
代わりに示した条件は 王子と孫娘の縁談
王侯貴族の血統は 果たして誰のものなのか

ロストロイヤル『運命の双子』第3話
「早すぎる縁談」
すべては主の御心のままに
栄光あれ

第3話ゲスト:アルフォート公爵 ヘルマン & 公爵令嬢 エリーゼ
 ログレス島の南東部に位置するアルフォート公国の国主と孫娘。アルフォートは、この島の中で魔族の侵攻を食い止めることが出来ている数少ない国の一つだが、今は自国の防衛で手一杯で、他の国々を救いに行く余裕はない様子。
 ロザン一座を介してセシル達を受け入れたヘルマンは、魔族打倒のために周辺諸侯を巻き込んで本格的に決起する上での条件として、自身の孫娘であるエリーゼとセシルを婚約させることを提示する。それが実現すれば、ヘルマンの親戚筋である周辺諸侯も結束してセシルに忠誠を誓うであろう、と彼は考えているらしい。エリーゼは年齢的にはセシルと同い年であり、彼女自身も、この婚儀には乗り気のようである。

命題A「エリーゼと婚約する」
  • 理由:ヘルマン達の縁戚になれば協力を得られるから。
  • 予感:多くの人々からの支援

命題B「エリーゼとの縁談を断る」
  • 理由:今の時点で結婚を決めるのはまだ早すぎるから。
  • 予感:いつか見つけ出す真実の愛
+ 第3話(王子編第3話)・結末
 突然の縁談に戸惑ったセシルは、騎士達に「結婚・恋愛」のあるべき姿について問うが、彼等はいずれも独り身であり、まともな意見を言える者はいなかった。そんな中、クリシュナとビアンカはそれぞれエリーゼと直接会話を交わした上で、彼女が聡明で分別のある少女であることを知り、クリシュナは縁談に前向きな姿勢を示す一方で、ビアンカはそれでも慎重な決断をセシルに促す。
 一方、ダルネルが(自分が密かに鍛冶屋の娘に想いを寄せていることは胸に秘めつつ)ヘルマン達との協力関係を構築するために縁談を受けることをセシルに勧めると、セシルはひとまずエリーゼと積極的に対話してみることを決意する。そして、タングーアから助言を求められたロザンが、セシルに「彼女との共通の趣味」を通じて互いを理解し合うことを提案すると、クリシュナから「エリーゼはチェスに精通している」ということを聞いたセシルは、実際に彼女との対戦に臨み(結果は引き分け)、少しずつ彼女との距離を縮めていく。
 その上で、最終的にセシルは、クリシュナとの婚約を決意する。もともと前向きな姿勢であったダルネルとクリシュナはこの決定を歓迎し、慎重論を唱えていたビアンカとタングーアも、エリーゼの王妃としての資質自体には異論がなかったので、若くして(自分達よりも先に)伴侶を娶ることになった主君の決意を、彼等は素直に尊重する。
 そんな中、アルフォートの城に、巨大な体躯の魔人に率いられた魔群が迫りつつあった。その魔人の名は、ジャイロ。数ヶ月前、エリーゼの父(ヘルマンの息子)を殺した、アルフォートにとっての仇敵である。セシルと騎士達は彼等の前に自ら姿を現し、激戦の末、彼等を討ち果たすことに成功すると、エリーゼは感涙に瞳を潤ませつつ、城から飛び出してセシルの元へと駆け寄る。そんな彼女に対して「これからも自分の傍にいてほしい」とセシルが告げると、彼女もまたセシルを生涯をかけて支えることを誓い、アルフォートの兵達は歓喜の声を上げる。
 そんな二人の婚約を祝う宴席において、アイレナが二人の愛を賛美する歌を唄い始めると、その会場内に再び「風」が吹き荒れ、そして婚儀の祝杯を通じて、風の中に紛れた龍の姿がセシルの元へと流れ込む。こうして「生涯の伴侶」と「第二の龍」を手に入れたセシルの中では、徐々に「人々を導く王」としての自覚が芽生え始めていたのであった。
+ 第4話(王子編第4話)・予告
第4話予告

父を殺した仇敵は 父を支えた戦乙女
父の意を継ぐ少年の前に 彼女が再び現れた
その力は栄光への扉か あるいは破滅への階段か
心優しき少年は 救国の修羅となれるのか

ロストロイヤル『運命の双子』第4話
「戦乙女は笑わない」
すべては主の御心のままに
栄光あれ

第4話ゲスト:戦乙女 イクスキャリベル
 かつてセヴァン王の前に現れ、彼に魔王を倒すための力を授けた女性。「戦うのをやめた時、その命を奪う」という契約を結んでいたため、セヴァンが二代目魔王との戦いの中で王妃を人質に取られて戦意喪失した時、彼を殺し、その魂を伴って天界へと飛び去った。
※これは「人間族に擬態した仮の姿」です

 ヘルマン達の助力によって、ログレス島南東部の諸侯が続々とセシルの元に集いつつある中、彼の前にイクスキャリベルは姿を現した。セシルの中に、セヴァンと同じ「英雄の資質」を見出した彼女は、セシルに自らの力を委ねるために「契約」を結ぶことを提案する。その条件は、セヴァったンの時と同様に「戦うのをやめた時、その命を奪う」というものであった。

命題A「イクスキャリベルと契約する」
  • 理由:魔王を倒すための力を得られるから。
  • 予感:いつか奪われるかもしれない魂

命題B「イクスキャリベルとの契約を断る」
  • 理由:父と同じ末路を辿りたくないから。
  • 予感:皆に守られるだけのままの自分
+ 第4話(王子編第4話)・結末
 建国の英雄の一人にして父の仇でもあるイクスキャリベルの誘いに対して、セシルは複雑な想いを抱きながらも、その力を受け入れようと考え始める。多くの人々の期待を背負う立場になったからこそ、かつて魔王を倒した時の父と同等以上の力を手に入れなければならない、という気持ちが高まっていた。たとえ、それが父の仇の力を借りることであったとしても。
 そんな彼に対して、ダルネルはその決意を支持する意思を表明する。彼はイクスキャリベルの「王殺し」という「過去の罪」よりも、「今の魔王を倒すための最善手」を選ぶことが必要だと考えていた。だが、クリシュナは「戦い続けるだけの人生なんて楽しくない」という理由から、ビアンカは「物事を戦い以外の方法で解決する道を放棄すべきではない」という理由から、タングーアは「平和になった後の人生の方を優先すべき」という理由から、それぞれに異論を唱える。
 そして、最終的にセシルは、父とは異なる道を選ぶことを決意し、その旨をイクスキャリベルに伝えた。彼女がその決意を尊重してその場を去ろうとした時、一人の咒林妖精の女性が姿を現わす。彼女は数日前、騎士達の前に現れて「イクスキャリベルは危険な存在」と告げていた人物でもあった(もっとも、彼女がそう言って説得しようとした相手は、最初から反対派の面々だったので、あまり意味はなかったのであるが)。
 彼女の正体は「白夜の魔人」ヴェルタ。イクスキャルベルの力を王子から離反させるために暗躍していた魔族であった。イクスキャリベルが王子達に協力しないことを確認した上で、ヴェルタは大軍(悪霊戦団、太鼓鬼、石人)を率いて王子達に襲いかかるが、騎士達はタングーアの巧みな戦術によって常に優位な陣形を維持し続けつつ、ダルネル、クリシュナ、ビアンカが着実に敵の包囲網を突破し、王子を連れてその場からの脱出に成功した。そんな彼等を眺めながら、イクスキャリベルは「もう一人の後継者」の元へと向かうことを決意する。
 その後、アルフォートの城の屋上にて、セシルは皆と杯を交わしつつ、アイレナの歌を聴きながら、三度目の「龍の儀式」を執り行う。魔王を倒すための「切り札」とも言える力をあえて切り捨てた彼であったが、それは父ですら実現出来なかった「長期にわたる平和」を実現するために必要な決意でもある。そんな時代を作り出すことも、この仲間達の力があればきっと出来る、そう確信するセシルであった。
+ 第5話(王子編第5話)・予告
第5話予告
英雄王の形見の忠犬 その身に秘めたる聖なる力
戦乙女を拒んだ王子の 魔を退ける貴重な力
故に王子に迷いが生まれる 貴重な切り札だからこそ
攻めに用いるべきなのか 守りに用いるべきなのか

ロストロイヤル『運命の双子』第5話
「守られるべきもの」
すべては主の御心のままに
栄光あれ

第5話ゲスト:聖犬 メルセデス
 朔日の賢者デネトワ曰く、王子の愛犬メルセデスの正体は、この島を守り続けた聖獣であり、その身体から発する聖なるオーラには、強大な闇の力を持つ者達を遠ざける力があるらしい。今まで王子の周りに強大な魔族が現れなかったのも、このメルセデスの能力故であるという。
 そのことを聞かされたセシルは、魔王との最終決戦に向けて、メルセデスをアルフォートの城に残していくことを提案する。自分達が魔族と戦っている間に、魔族の別動隊によってエリーゼ達が人質に取られることを避けるため、というのがその理由だが、それは王子自身を守る重要な盾を一つ失った状態で最終決戦に挑むことを意味する。果たして、この選択は正しいのだろうか?

命題A「最終決戦にメルセデスを連れて行く」
  • 理由:魔王を倒すには少しでも戦力が欲しいから。
  • 予感:留守中に城を狙われる可能性

命題B「メルセデスをアルフォート城に残す」
  • 理由:誰かを人質に取られることを防ぎたいから。
  • 予感:最終決戦における戦力不足
+ 第5話(王子編第5話)・結末
 王子の提案に対して、ダルネルとタングーアは賛同の意を示す。かつてセヴァン王が王妃を人質に取られて窮地に陥った時のことを考えると(たとえその状況で命を奪うイクスキャリベルがいないとしても)、同様の苦悩を避けるためには、それが適切な策であるように思えた。エリーゼと比較的懇意で、逆にメルセデスとは微妙な関係にあるクリシュナも、あえてここで犬を連れて行く必要はないと考えており、特に反対する理由もなかった。
 だが、ビアンカだけはそれに異を唱える。イクスキャリベルという「切り札」を捨ててしまった以上、王子の身の安全を考えれば、ここで更にメルセデスまで手放すという決断を、彼女としては支持する訳にはいかない。これは、長年セシルの身を最も近くで守り続けてきた彼女だからこそ、どうしても看過出来ない問題であった。
 そして、そんなビアンカの熱意に押されて、最終的にセシルは自らの考えを翻意するに至る。やはり、今の彼にはまだ自信が無かった。メルセデスの守護を失った状態で、本当に魔王に勝てるのか。もし仮に勝てるとしても、そのために騎士達の誰かが命を落としてしまうのではないか。そう考えた時に、いくら自分の未来の妻のためとはいえ「皆を守る力を持つ聖犬」を決戦の地に連れて行かない訳にはいかない、という気持ちの方が上回ることになったのである。
 その上で、万が一、魔族にアルフォートを攻められた時に備えて、防壁の強化や脱出経路の確保などの次善の策を施した上で、「少しでも早く魔族を倒して帰還する」という目標を掲げて、最後の龍の儀式のために、兵達を率いて王子はアヴァロンへと旅立つ。
 だが、その途上、タングーアの旧友で「銀狼の魔人」の異名を持つ詩吟妖精のミランダが、大軍(端女、吐息鬼、百鬼夜行)を率いて王子達の行く手を塞ぐように立ちはだかる。しかし、上記の戦略上、ここで余計な時間をかける訳にはいかないセシルと騎士達は、巧みな戦術で敵の包囲網を突破し、そのまま追撃を逃れて一路北へと走り去って行く。
 こうして追っ手を振り切った王子が杯を掲げると、遂に「最後の龍の欠片」が姿を現し、やがてそれは、今まで王子の体内を「仮の宿」としていた龍の欠片と合流して、一体の完全な龍として顕現する。王子は龍に対し、この地から魔族を一掃することを願うと、龍もそれを了承する。だが、そのためには、大元である魔王の前にこの龍を連れて行かなければならない。最後の決戦に向けて、決意を新たにアヴァロンの首都ローザンベルへと向かうセシル達であった。
+ 第6話(王女編第1話)・予告
第6話(王女編第1話)予告
亡国王女に課せられた 母の窮地を救う使命
目指す海路は二つに一つ 西の大地と東の大地
炎を纏いし二翼の不死鳥 時間と危険の二者択一
忠義に燃える仲間と共に 王女の旅が今始まる

ロストロイヤル『運命の双子』第6話
「決意の船出」
すべては主の御心のままに
栄光あれ

第6話ゲスト:女海賊 アクシア
 セシル達が城を落ち延びてロザン一座に加わっていた頃、双子の姉のエレナは、朔日の賢者デネトワから、大陸へと向かうように示唆を受ける。デネトワ曰く、王妃グレイローザは現在、重病に苦しんでおり(九重の騎士エリミナスが、秘密の場所で彼女を保護しているという)、王妃を救うためには、大陸に伝わる伝説の「不死鳥」の力が必要となるらしい。そして大陸への水先案内人として、かつてセヴァンと親交のあった女海賊アクシアをデネトワは推挙する。
 アクシア曰く、「不死鳥」の伝説は大陸各地に存在しており、その中でも存在が確実視されているのは、大陸西部に生息すると言われる「フェニックス」と、大陸東部で目撃情報がある「スザク」である。ただ、大陸西部は現在、魔族に支配されており、立ち入ること自体が非常に危険である。一方、大陸東部への道は遠く、しかも出現位置が不確定のため、探すのに時間がかかる可能性が高い。

命題A「大陸西部へと向かう」
  • 理由:一刻も早く不死鳥の力が欲しいから。
  • 予感:強大な魔族との死闘

命題B「大陸東部へと向かう」
  • 理由:皆を危険な目に合わせたくないから。
  • 予感:目標達成への長き道
+ 第6話(王女編第1話)・結末
 エレナは当初、一刻も早く西部へと向かうべきだと考えていた。病状の母を救うため、そして弟セシルと合流して王国奪還へと向かうためにも、少しでも早く不死鳥の力を手に入れるべきだと考えていたからである。シャルリオスは指導者としての彼女のその姿勢を強く支持し、シャーロットもまた「あえて危険な戦いに身を投じる方が楽しい」という理由から、彼女に賛成していた。
 一方、そんなシャーロットとは対照的に、クロンは「あえて知らない土地を旅するのも楽しそう」という理由から東方への航路を提案し、リズは王女の身に危険が及ぶ可能性を考慮した上で、東部へと向かうべきだと主張する。
 こうして彼等の意見を一通り聞いた上で、最終的に王女は方針を転換し、東方のスザクを探す道を選択する。騎士達との対話を通じて、彼等の存在をより大切に思うようになった彼女は、西方諸国の魔王との戦いに臨むことで、彼等の中の誰かを失ってしまう危険性を考慮し、あえて慎重な道を選ぶことを決意したのである。
 そんな彼女の方針を聞いて、船長のアクシアが西方へと舵を取ろうとした瞬間、船の前方に鬼火の群れが広がっているのが視界に入る。そして、それを率いているのは、巨大なイカの怪物・クラーケンであった。海賊達は王女と騎士達に船内に戻るように指示するが、王女は聞き入れず、騎士達と共に甲板に立ってクラーケンと対峙する。
 当初、彼等はクラーケンを倒すことで強引に道を切り開こうと試みるが、クラーケンの再生能力が彼等の想像以上だったこともあり、途中で戦略転換し、鬼火の包囲網を突破して、その間に船の速度を上げて全速力で突破するという道を選ぶ。その作戦は的中し、どうにか無事に海の魔物の脅威から逃れた彼等は、そのまま東方へと海路を進む。
 そしてアクシアは、かつて南海の孤島で発見した謎の「炎を内側に宿した宝石」を、船旅の途中で意気投合したシャーロットに預ける。この宝石が、「炎から生まれる不死鳥」と言われるスザクへの道を示してくれるのではないか、という思いを込めた上で、必ず無事にスザクを見つけた上で、その宝石を返しに来る、という約束を、シャーロット間で交わすのであった。
+ 第7話(王女編第2話)・予告
第7話(王女編第2話)予告
世界を救う朱雀の力 その代償は心か体
心を削れば闇に堕ち 体を削れば息絶える
どちらも防ぐ唯一の道は 欲望を制御する心
「救いたい」という欲を 王女は制御出来るのか

ロストロイヤル『運命の双子』第7話
「救済と代償」
すべては主の御心のままに
栄光あれ

第7話ゲスト:巫女 ファティエ
 東方の大陸に辿り着いたエレナ達は、スザクに関する情報を探して各地を転々とした結果、スザクを呼び出して人々の傷を治す力があると言われるファティエという名の一人の巫女と出会う。
 ファティエ曰く、エレナには「巫女」の力を引き継ぐ素質があるらしい。ただし、巫女がスザクを呼び出すには、「心」と「体」のどちらかに「刻印」を刻む必要がある。「心」に刻印を刻んだ場合、その力を使いすぎると、闇に魅入られて「魔族」となってしまう。「体」に刻印を刻んだ場合、その力を使いすぎると、寿命が縮まって命を落としてしまう。
 どちらの場合も、過度にその力を使用しようとしなければ問題ないが、スザクの力を手に入れた者は「その力を用いて、多くの人々を救おうとする使命感」に取り憑かれやすく、どちらかの道を辿ってしまう者が多いらしい。実際、ファティエは自身の「体」に刻印を刻み、多くの人々の命を救い続けた結果、今の彼女の体はこれ以上のスザク召喚に耐えられないほどに弱ってしまっているという。

命題A「体に刻印を刻む」
  • 理由:闇に堕ちるよりは、自分一人で死ぬ方がマシだから。
  • 予感:短命

命題B「心に刻印を刻む」
  • 理由:国を背負う者として、早死にする訳にはいかないから。
  • 予感:闇堕ち
+ 第7話(王女編第2話)・結末
 「心」と「体」、どちらかを犠牲にしなければならないとしたら、果たしてどちらなのか。王女は悩んだ。自分の身を犠牲にすることは厭わぬ覚悟を決めていたが、だからと言って、あっさりと命を投げ出すこともまた、王族としては無責任である。体を削る道を選んだ場合、力を使うごとに着実に寿命が削られていくため、たとえ使いすぎないようにと制御しながらその力を用いたとしても、自分が王族として働ける時間が失われていくことは間違いない。
 これに対して、心を削る道を選んだ場合は、力の過度な使用を自制することさえ出来れば、何も失うことがないまま、天寿をまっとう出来る。だが、もし万が一、心を奪われて魔族に堕ちてしまった場合、「ほぼ無限の再生能力を持つ魔族」という、この世界にとって、あまりも危険すぎる魔族が生まれることになる。それだけは、絶対に避けなければならない。
 シャルリオスはこの危険性を考慮し、エレナには「体」に刻印を刻むことを強く勧める。シャーロットも、エレナが暴走した時に彼女を自分の手で殺さなければならない以上、「心」に刻印を刻むことだけは避けてほしいと考えていた。そしてクロンもまた、もともとあまり長く生きることにこだわる性格ではないこともあり、「心」を奪われるよりは、まだ「体」の方がマシだろうという考えであった。
 一方、リズは友人であるクリシュナが短命種で、もともと長く生きられない人生を送っていることを憂いていたこともあり、寿命を削るという選択肢に対して、どうしても強い抵抗があった。また、「力を使う度に寿命が減る」という状況が、逆に王女の精神に負担を与えるのではないか、という危惧もあり、王女に「心」に刻印を刻む道を提示する。もし万が一、王女が暴走して闇に落ちることになってしまった場合は、自分の手で王女を殺すことを誓った上で。
 こうして、騎士達がそれぞれに苦渋の選択に基づいた考えを提示するのを目の当たりにした上で、エレナは最終的に「体」に刻印を刻む道を選ぶことを宣言する。極力、その力を使いすぎないように制御することを前提とした上で、それでも「最悪の結果」をもたらす展開を想像した場合、やはり、「自分が魔族になって、皆を殺す(あるいは、皆に自分を殺させる)」という状況だけは、どうしても彼女は受け入れられなかったのである。
 こうして、エレナが決意を固めたところで、ファティエは彼女と騎士達に対して(あえてこれまで黙っていた)「刻印の刻み方」の二つの方法の存在を伝える。朱雀の刻印は七つ存在しており、通常はそれらを全て巫女に刻むが、もう一つの選択肢として、その七つの刻印をそれぞれ二つに分け、「巫女が信頼を寄せる七人の仲間」と共有する形で刻む、という道も存在するらしい。この場合、巫女が力を使うことによる心や体の負担は「巫女」と「仲間」の間で分け合うことになり、結果的に巫女の負担を軽減することが出来る。
 ただ、この道を選ぶには、巫女と心を通わせる人物が「7人」必要となる。今、この場にいる騎士達は4人。この異国の地で「王女が心から信頼出来る人物」をあと3人探すことは、かなり難しい。とはいえ、それが実現出来れば、王女の負担を軽減することに繋がるという意味では、非常に望ましい展開である。また、この状況において力を使う場合、仲間達の心が一つにならなければ力を使えなくなるのだが、それは逆に言えば、仲間達の手によって、王女の力の暴走を制御することも可能ということを意味している。
 だが、ファティエがこのことを騎士達に告げた直後、そんな彼等の考えに暗雲をもたらす展開が訪れた。かつてファティエと共に朱雀を呼び出した「7人の仲間」の一人であったリューチュアンという男が、魔族となって彼女の前に現れたのである。彼はファティエの寿命が削られていくことを憂い、彼女を救うための道を模索した結果、魔族となってしまったらしい。リューチュアンはファティエに、魔族となることで新たな命を得るように勧めるが、ファティエはそれを拒絶し、騎士達に彼を殺すように懇願すると、騎士達はその頼みを受け入れ、苦戦を強いられながらもどうにか彼を倒すことに成功する。その上で、騎士達は王女の刻印を刻む上で、どちらの道を選ぶことを進言すべきか、改めてそれぞれに思い悩むのであった。
+ 第8話(王女編第3話)・予告
第8話(王女編第3話)予告
鬼(たまほめ) 星(ほとほり) 柳(ぬりこ) 井(ちちり)
翼(たすき) 軫(みつかけ) 張(ちりこ)
朱雀を呼び出す七つの刻印 力を呼び出す代償の証
刻むべくは巫女一人の身か 仲間と共に分かち合うのか
梟を連れた謎の賢者は 信頼に足る者なのか

ロストロイヤル『運命の双子』第8話
「朱雀七宿」
すべては主の御心のままに
栄光あれ

第8話ゲスト:黄昏の賢者 グァン
 魔人リューチュアンを撃退したエレナ達とファティエの前に、フクロウを連れた片眼鏡の男が現れる。彼の名はグァン。どうやら、彼もまた、かつてファティエと共にスザクを呼び出した七人の仲間の一人であったらしい。
 ファティエ曰く、グァンは「人には見えないもの」を見る能力があり、その力故に「黄昏の賢者」と呼ばれている。そして彼は、エレナと騎士達を一目見ただけで彼等が何者なのかを瞬時に理解した。どうやら彼は、デネトワと旧知の関係にあり、デネトワからエレナ達の存在を聞かされていたようである。その上で、彼は、もしエレナがスザクを呼び出すつもりなら、仲間の一人として協力するつもりはあるという。だが、仮に彼を加えたとしても、まだ共有策を実現するには二人足りない。

命題A「スザクを呼び出すための仲間を探す」
  • 理由:巫女となった後の暴走を防げるから。
  • 予感:帰還の延期

命題B「巫女一人の身体に刻印を刻む」
  • 理由:早く力を手に入れて帰還したいから。
  • 予感:短命
+ 第8話(王女編第3話)・結末
 エレナの身を案じるリズとシャーロットは、グァンの申し出を受け入れるべきと主張する。自分達が身を削ることで、少しでも王女の負担を軽減出来るのであれば、その道を選びたくなるのは当然の話であった。また、自分達が力を共有することによって、王女の過度の力の使用による暴走を止めることも出来るというのも、彼女達にとっては大きな利点であった。
 クロンとシャルリオスも、その点に関しては同じ気持ちである。だが、彼等にはそれ以上に、この方法が内包する弱点への危惧が強かった。自分達と同じように王女と心を共有出来る忠義の士が、果たしてこの異国の地で見つかるのか? 見ず知らずの王妃を救うために寿命を削ってまで協力してくれる人物をあと二人見つけるというのは、ただでさえ時間を多く費やしてしまった現状では難しいのではないか? そして、焦って相手の正体を見極めぬまま仲間にした場合、その者が裏切ったら、スザクの力を使うことも出来なくなってしまう。そう考えた彼等は、王女一人に全てを任せる方が確実であるという結論に至る。
 こうして騎士達が激論を交わす中、最終的にエレナは、自分一人の身体に刻印を刻むことを宣言する。騎士達が大切を痛感している彼女だからこそ、彼等と同じくらい強い心を持つ者をあと二人も探すということは、極めて難しいように思えたのである。リズとシャーロットは必死で再説得を試みたが、それでも王女の心が覆ることはなかった。
 こうして、エレナが覚悟を決めてファティエにスザクの力の譲渡を求めると、彼女とグァンはエレナと騎士達に対して、一つの「頼み事」を伝える。グァン曰く、現在、彼は自らの魔力を用いて強大な魔獣を封印しており、グァンが生きている間は平気だが、彼の死と共にその魔獣の封印は解かれてしまうため(そして彼もまた既にかなりの寿命を費やしているため)、出来ればその魔獣を倒してほしい、とのことである。力を渡すための交換条件のような形で依頼することに、ファティエもグァンも後ろめたさはあったが、王女も騎士達も、魔族の討伐を依頼されて尻込みするような性格である筈もなく、あっさりとその申し出を引き受ける。
 だが、その魔獣の強さは、彼女達の想像を超えていた。村のはずれの森に封印されていたその魔獣の名は、ヌエ(鵺)。猿や狸や虎など、様々な動物の部位を切り貼りしたような、なんとも不気味な風貌であった。ヌエはその身体に備わった多彩な能力を駆使して騎士達に襲い掛かる。序盤は、まだ目覚めたばかりだったせいか、その動きは精彩を欠き、騎士達が優勢であったが、あと一歩で倒せそうな状態にまで追い込んだところから、ヌエの怒涛の反撃が繰り広げられる。それまでシャルリオスの指揮の下で有利な陣形を維持していた彼等であったが、ヌエの不規則な動きで戦いのペースを乱されて陣形が崩れたところから、その圧倒的な力の前に、騎士達は徐々に追い詰められていく。
 そして、遂にそのヌエの鋭い爪が手負いのリズを捉えようとした時、グァンが身を張って彼女を庇い、その場に倒れる。更に、続くヌエの一撃がクロンを狙った瞬間、ファティエは自らの力をその場でエレナに託した上で、その身を挺してクロンの前に立ちはだかり、その身をヌエの魔手で貫かれてしまう。
 この時、力を託されたエレナには、この二人を救うために力を使うという選択肢もあった。だが、以前にファティエから「死者を蘇らせるためにその力を使った場合、その一回だけで寿命の大半を費やす」と聞かされていたエレナは、既に致命傷にまで至っているこの二人のために力を使った場合、王妃を救うために必要な寿命すらも残らなくなってしまう可能性を考慮し、必死で自らの中で湧き上がる「救済欲」を抑え込む。
 こうして王女が力の使用を必死で堪えている間に、騎士達はヌエを相手に必死の攻防を繰り広げるが、どうしても「最後の一太刀」が届かない。そんな中、再びリズに向かって渾身の一撃が振り下ろされ、遂にリズはその場で命を落としてしまう…………、かと思えたその瞬間、遂に自らの自制心が限界に達したエレナが、スザクの力を解放し、リズは一命を取り留める。そして、皆がボロボロの身体で必死の抗戦を続ける中、最後はシャーロットの斧がヌエを切り裂き、彼等はどうにか薄氷の勝利を収めることになる。
 戦いを終えた直後、リズは貴重な力を自分のために使ってしまった王女に平手打ちをしようとするが、シャルリオスがそれを止める。そして、死の淵に瀕していたファティエは、薄れゆく意識の中で、エレナにはもう殆ど寿命が残っていないであろうことを告げた上で、王妃を救うためには、別の誰かにその力を託して使わせることを促しつつ、静かに息を引き取る。だが、スザクの力の継承はこの東国の地でなければおこなえない。この異国の地でそこまで信用出来る人物に出会える可能性はほぼないと考えていたエレナは、二人を丁重に葬った上で、アクシアと合流して祖国への帰路へと向かうため、騎士達と共に港を目指すのであった。
+ 第9話(王女編第4話)・予告
第9話(王女編第4話)・予告

幼き瞳に焼きついた 父を殺した仇の姿
その再会がもたらすものは 修羅と命の二者択一
残り少ない人生を 戦いの日々に捧ぐのか
僅かな天寿を削ってまでも その手で母を救うのか

ロストロイヤル『運命の双子』第9話
「戦乙女は揺るがない」
すべては主の御心のままに
栄光あれ

第9話ゲスト:戦乙女 イクスキャリベル
 港に辿り着いたエレナ達は、無事にアクシアと再会する。だが、やや不機嫌そうな顔の彼女の傍らには、もう一人の見覚えのある女性の姿があった。かつてセヴァン王と共に戦い、そして王の「契約違反」を理由に王を殺して飛び去った、「天穹の貴婦人」こと戦乙女イクスキャリベルである。
※これは「人間族に擬態した仮の姿」です

 彼女はエレナに対し、自分であればそのスザクの力を引き継ぐことが出来る、と主張する。その上で、エレナが自分と契約して、残りの人生を戦いに捧げる覚悟があるなら、自分の力をエレナに与えるのみならず、そのスザクの力を受け取って王妃を助ける、と宣言する。だが、エレナの瞳には、父の仇であるイクスキャリベルに対して、激しい憎悪と殺意の炎が灯っていた。

命題A「イクスキャリベルと契約して力を託す」
  • 理由:彼女の方が寿命が長そうだから。
  • 予感:戦いに明け暮れる日々

命題B「イクスキャリベルとの契約を断る」
  • 理由:彼女が信用できないから。
  • 予感:更に縮まる寿命
+ 第9話(王女編第4話)・結末
 エレナは当初、父を殺したイクスキャリベルに対して強い殺意を燃やすが、周囲の者達に止められて、ひとまず気を静める。その上で、シャルリオスはエレナに、イクスキャリベルと契約した上で、彼女に巫女の力を委ねることを提案する。シャルリオスは、もしエレナが見ず知らずの異国の民に力を渡そうとすれば反対する気でいたが、イクスキャリベルは「絶対に契約を守る存在」である以上、ある意味で最も信用出来る契約相手と言える。故に、たとえそれが王の仇であっても、彼女に力を託すことに、いささかの躊躇もなかった。
 一方、リズとシャーロットは、イクスキャリベルに対して感情的なわだかまりは捨てられずにいたが、それ以上に、王女がこれ以上、自分の命を削ることは耐えられないと考えていたため、王女に対して、イクスキャリベルへの力の譲渡を勧める。王女の辛さが分かるからこそ、これは彼女達にとっても苦渋の進言であった。
 そんな二人とは真逆の考えを抱いていたのは、クロンである。彼はイクスキャリベルの王殺しに対しては、そこまで深い恨みを引きずっていた訳ではなく、彼女にスザクの力を託すこと自体は、それほど問題はないと考えていた。だが、彼女と契約することで、エレナが今後の人生を戦いに捧げ続けなければならなくなるのは、彼としては承服しかねる話であった。残り少ない人生だからこそ、せめて彼女には、自分のためにその人生を使ってほしかったのである。たとえその過程で、母親の治療のために更なる寿命を削ることになったとしても。
 こうして彼等の思いを聞かされたエレナは、熟考の末、最終的にはイクスキャリベルを許し、彼女と契約した上でスザクの力を彼女に譲り渡す決意を固める。これから先の戦いで、もし再び彼女を守る騎士達の誰かが倒れた時、エレナには、自分が力を使うのを制御し続ける自信がなかった。その場合、母の元に辿り着く前に自分が力の使いすぎで倒れてしまう可能性もある。その最悪の展開を避けるためにも、ここは過去のしがらみを捨てて彼女と手を結ぶ道を選んだのである。それは同時に、エレナが「死ぬまで戦い続ける道」を選ぶことを意味していたが、エレナには最初からその覚悟は備わっており、その点に関しては何ら逡巡することはなく、クロンとしても、最終的にそれがエレナ自身の望みだと言われたら、それ以上は何も反論しなかった。
 そしてエレナが決心したところでイクスキャリベルが彼女の前に現れると、二人は他の者達とは離れて、誰もいない港の路地裏へと向かう。かつてのセヴァン王に見てしまった「イクスキャリベルの本当の素顔」を、エレナに見せるためである。それが契約の証として必須なのかどうかは不明であるが、エレナとしては、不退転の覚悟を固めるためにも、それは必要な儀式だと考えていたようである。だが、その「儀式」を終えて路地裏から出てきた時の彼女のエレナは「信じられないものを見たような表情」を浮かべていた。
 エレナは何を見たのかは一切口にせぬまま、動揺を隠せぬ様子ではありながらも、今度は自らのスザクの力をイクスキャリベルへと与える。この時、イクスキャリベルは「自分一人の身体」に、スザクの七つの紋の全てを、「命」を代償として刻み込んだ。なお、戦乙女の寿命が何歳なのかは、彼女自身にもよく分かっていないが、彼女としてはあくまでも「エレナが望んだ時」にのみ、その力を用いることを約束する。
 その上で、彼女達がログレス島へと帰還するために海賊船へと乗り込もうとしたその時、港に、妖魔達を率いた一人の魔族の女性が現れる。彼女の名は「白夜の魔人」ヴェルタ。エレナ達とは初対面だが、イクスキャリベルとは何らかの因縁のある相手であり(?)、以前にはログレスにて彼女とセシル達の離反のために暗躍していた魔族である(王子編第4話参照)。イクスキャリベルへの個人的な復讐心(?)故に、彼女を討つために、この大陸東岸の地まで辿り着いた彼女であったが、エレナや騎士達にとってはこんなところで彼女の私怨に付き合う理由はない。あっさりと彼女の率いる魔群の包囲網を突破した王女達は、そのままアクシアの海賊船へと乗り込み、逆にその間にイクスキャリベルがヴェルタ達の船を破壊したことで、結局、魔族達は大陸に置き去りにされたまま、王女達を乗せた海賊船は懐かしきアヴァロンへと向けて出港するのであった。
+ 第10話(王女編第5話)・予告
第10話(王女編第5話)予告

騎士なら誰もが憧れる 誉れ高き九重の騎士
王妃を守るその彼が 王女の前に立ちはだかる
何を聞いても答えない 瞳に映るは悲壮な決意
愛と忠義と栄光の その先に彼が見たものは

ロストロイヤル『運命の双子』第10話
「王妃と聖騎士」
すべては主の御心のままに
栄光あれ

第10話ゲスト:九重の騎士 エリミナス
 ログレス島への帰還が近付いてきた海賊船上の王女と騎士達の前に、再びデネトワの幻影が現れる。デネトワ曰く、現在、王妃グレイローザと、彼女を守る九重の騎士サー・エリーミナスは、ログレス島の南方に位置する名もなき小さな孤島に身を隠しているという。
 その島の位置は船長のアクシアが把握していたため、彼女の導きに従って王女達は現地へと到着するが、上陸した彼女達に対して、エリーミナスは「王妃に会わせることは出来ない」と告げる。理由を聞いても彼は何も答えない。その上で、「どうしてもというなら、私を倒してから会いに行きなさい」と言い放って、剣を構える。その瞳には、まるで死を覚悟しているような(あるいは、自ら死を望んでいるような)悲壮な覚悟が宿っていた。

命題A「正々堂々と正面突破」
  • 理由:それをエリーミナスが望んでいるから。
  • 予感:聖騎士の死

命題B「搦め手(計略・陽動・虚言など)を使う」
  • 理由:エリーミナスを殺したくないから。
  • 予感:聖騎士の怒り

※Bを選んだ場合、その具体的な方法は「最大値を出したPC」の任意。なお、どのような手段を用いたとしても、それが目的(王妃の治療)達成のためであれば、イクスキャリベルは「戦いの放棄」とは見なさない。
+ 第10話(王女編第5話)・結末
 エリーミナスが自ら「死」を望んでいることは、エレナには分かっていた。それがおそらく、彼の中での騎士としての矜持に基づく決意であろうことも、彼女は薄々察していた。だが、彼女はその決意を受け入れることが出来ない。そして、それは騎士達もまた同じであった。どのような理由があるにせよ、魔王軍との決戦を控えた今、王国最強の騎士をこの場で殺すという選択肢は、彼等の中でもありえない。結果的に、王女を含めた全員が、彼との直接対決を避け、何らかの計略によって彼を出し抜いて王妃の身柄を確保する、という方針で一致することになった。
 問題は、その具体的な作戦である。シャルリオスは、アクシアが持っていた島の地図を確認した上で、島の地形(川の流れなど)を利用した緻密な策を懸案したのに対し、リズは単純明快に「森を焼く」という選択肢を提示する。一方、シャーロットはイクスキャリベルにエリーミナスとの一騎打ちを仕向けさせた上で、その隙に王妃を探すことを提案し、クロンは自らの魔力を用いてエリーミナスを幻影の迷宮に閉じ込めるという作戦を申し出る。
 それぞれの作戦の利点と難点を見比べた上で、最終的にエレナは、クロンの作戦を採用することにした。これはクロン個人の魔力に頼った作戦ではあったが、いかに王国最強の騎士とはいえども、さすがに魔法に関しては、白鳥人のエリーミナスよりも、火炎妖精のクロンの方に分があるだろうと判断したのである。
 そして、この作戦は見事に的中した。クロンはエリーミナスを、自らの魔法で作り出した「幻影の迷宮」に閉じ込めることに成功し、その間に他の者達は森の奥地へと入り込む。すると、生い繁る木々の中に隠蔽された小屋を発見し、彼等がそこに足を踏み入れると、その中には王妃グレイローザの姿があった。しかし、彼女は騎士達を見ても、そしてエレナを見ても、首をかしげながら「どなたですか?」と問いかける。どうやら、彼女は記憶を失ってしまっているらしい。
 グレイローザ曰く、彼女は約1年前に「ログレスの港町でエリーミナスと共にいた時」以前の記憶がなく、自分が何者なのかも分かっていないらしい。エリーミナスは彼女に「ログレスは危険だから」と告げて共にこの島へと移住し、これまでずっと彼と二人でこの島で暮らしてきたのだという。見たところ、特に怪我や病気の兆候もなく、いたって健康そうな様子であり、どうやらデネトワが言っていた「重病」とは、この記憶喪失のことのように思える。
 なぜ、デネトワがそのことを王女や騎士達に伝えなかったのか。なぜ、エリーミナスは王女達を彼女に会わせたくないと考えていたのか。腑に落ちないことは多いが、デネトワが王女達に「王妃の『病気』を治す必要がある」と考えた上で大陸への渡航を提示した以上、ここはその力を用いるべき時であろうと考えた彼等は、戸惑う王妃に対して、やや強引にイクスキャリベルの持つスザクの力を用いて、王妃の記憶を元に戻そうとする。
 この過程で、王妃の記憶を封じているものが、何らかの魔族の「呪い」であることをイクスキャリベルは察しつつ、どうにかその呪いを消し去ることに成功するが、思いのほか強力な呪いだったようで、脳に強烈な衝撃を与えられた王妃は、意識を失ってその場に倒れてしまう。騎士達は王妃の身体には別状がないことを確認した上で、イクスキャリベルに彼女を抱えさせ、王女と共にひとまず(エリーミナスを封じている)クロンの元へと向かい、無事に合流を果たす。
 そしてクロンが「幻影の迷宮」の魔法を解くと、エリーミナスは王妃の身柄が既に騎士達の手に渡っていることを確認すると同時に、がっくりと肩を落とし、全てを諦めたような表情を浮かべながら、彼等に「ここに至るまでの真実」を語り始める。
 エリーミナス曰く、古い王家の血筋を引くグレイローザは、一子相伝の特殊な秘術を習得していた。それは「魔族の復活を阻止する呪法」である。デネトワが彼女を王妃にするようにセヴァンに進言したのはそれが理由であり、先代魔王バールゼーレンが死んだ後、しばらくの間平和が訪れていたのは、彼女の力がログレス全体に行き渡ることによって、魔王の復活が阻止されていたからであるという。この秘術の存在は、円卓の騎士達の中でも極限られた上位の者達しか知らされていなかった。
 だが、数年前、先代魔王の血を引くバールゼルが、彼女の力の管轄外である「外海」に落ちて一度命を落としたことで、結果的に第二の魔王として復活することになってしまった。しかも、彼はグレイローザの力の秘密を知る「極限られた上位騎士」の一人でもあったため、真っ先に王妃を誘拐する必要性に気付いていたのである。
 その後、どうにかエリーミナスが王妃を奪還するものの、その時点で、王妃の心は深く傷ついていた。もともと控え目で、王妃という自分の立場に対して気後れしやすい性格だった彼女は、自分が捕まったせいでセヴァン王が命を落としたという現実に耐えられず、その精神は既に崩壊寸前であったという。
 そんな中、魔王の命を受けた一人の闇魔導師が、逃亡中の二人の元へと送り込まれ、グレイローザに「呪法」を使われるのを阻止するために、彼女の記憶を封印する呪いをかけた。その直後に闇魔導師はエリーミナスによって倒されたものの、グレイローザの記憶は戻らない。やがて、その状況に気付いたデネトワの幻影がエリーミナスの前に現れ、大陸の不死鳥の力でその呪いを解くという策を提案するが、エリーミナスはその提案を拒絶した。彼は、記憶を失う前のグレイローザがあまりにも辛そうな様子であったからこそ、彼女にはこのまま何も思い出さないまま、静かに余生を過ごしてほしいと考えていたのである。たとえその結果として、彼女に伝えられていた一子相伝の秘術が、永遠に途絶えてしまうことになったとしても。
 こうして、「王国を守る騎士」としての務めよりも、「(元)王妃の幸せを願う騎士」としての私情を優先させた彼は、自分が「王国への反逆者」となることを自覚した上で、デネトワと袂を分かち、グレイローザと共に南海の孤島へと身を隠すことになる。当初は戸惑っていたグレイローザも、やがてこの地の生活に慣れ、その表情は(王妃だった頃の重圧に苦しんでいた当時とは対照的に)明るさに満ち溢れていた。そんな中、デネトワから「不死鳥の力を王女が手に入れた」と聞かされたエリーミナスは、激しい葛藤に苛まれながらも、最後は「一人の女性の幸せを願う騎士」として、他の騎士達に討たれる覚悟で、彼等の前に立ちはだかったのである。
 だが、その願いも叶わなかったことを察した彼は、王女に自らの剣を差し出し、自分を好きなように処罰するように進言するが、王女は戸惑いながら「今の私にはその決断が出来ない」と呟き、騎士たちもそんな彼女の気持ちを慮って、ひとまずエリーミナスの処遇については保留することになる。
 そして、やがて王妃が目を覚ますと、彼女は神妙な表情を浮かべながら、今の自分の中に「記憶を失う前の記憶」も「記憶を失っていた間の記憶」も鮮明に残っていることを告げた上で、王女達に協力する意志をはっきりと示す。記憶を失う前の時点では崩壊寸前だった彼女の精神も、結果的に、この島でエリーミナスと二人で療養する期間を得たことで、どうにか平常時と同様の判断が出来る程度にまで回復していたようである(もっとも、それと同時に、エリーミナスに対して「何らかの特別な感情」も芽生えてしまっているようにも見えたが)。
 そんな中、島の海岸で停泊していたアクシア達が、ログレスの方角から現れた謎の軍船に乗った魔族達に襲われているのを、クロンが発見する。その魔族を率いているのは「銀狼の魔人」ミランダ(王子編第5話参照)。どうやら彼女は、シャーロットが一時期アクシアから借りていた(そしてこの島に来る直前に返還された)あの「炎を内側に宿した宝石」を奪おうとしているらしい(ミランダはその宝石のことを「レッドクリスタル」と呼んでいた)。
 そのことを知った騎士達は王女と共に海岸へと駆けつけ、ミランダ達と対峙する。彼女は魔族の中でもかなりの上位に位置付けられる存在であり(それ故に、以前の戦いにおいて王子の近衛騎士達も彼女を正面から倒すことは諦め、逃げる道を選択したのであるが)、相当な苦戦が予想されたが、この戦いは思いのほかあっさりと決着することになる。グレイローザが、呼び戻された記憶の中にあった「呪術」を用いた結果、ミランダは魔族特有の「倒されても復活する能力」を封じられ、リズとクロンの二連撃を受けた彼女は、そのままあっけなく絶命したのである。
 王妃の用いたその呪法の威力に驚愕した騎士達は、この力があれば今後の魔族との戦いを極めて優位に進められることを確信しつつも、その力を本来受け継ぐ筈であったと思しき王女には、今ではもう「残りわずかな寿命」しか残っていないという現実に、改めて危機感を募らせる。
 一方、倒したミランダの懐からは(「レッドクリスタル」とよく似た形状の)「青い宝石」が見つかった。そして、この赤と青の二つの宝石は、近付けることで共鳴するかのように輝きを増していることが分かる。アクシアはこの宝石の由来を知らないようだが、もしかしたら何か特別な力を秘めているのかもしれないと考えた騎士達は、ひとまず自分達で管理すべきであろうと判断し、改めて「赤の宝石」はシャーロットが、「青の宝石」はクロンが預かることになった。
 その後、グレイローザとエリーミナスを加えた海賊船は、再び幻影として現れたデネトワの進言に従い、(間もなく魔族が襲撃するであろうと彼女が予測する)ログレス東南部のアルフォート公国へと向かうことになった。その地に「セシルの婚約相手」がいると聞かされたエレナは複雑な心境を抱きつつ、自分の眼の前で仲睦まじい様子を見せる母とエリーミナスを見ながら、ボソリとこう呟いた。

「お母様って、まだ子供を産める身体なのかしら」

 騎士達は皆、その発言を「聞かなかったこと」にした。そして、クロンとシャルリオスは、エレナがエリーミナスに向けている瞳が、グレイローザがエリーミナスに向けている瞳と同じ色合いを帯びていることにも気付いていたが、そのことについても、彼等は何も言わなかった。
+ 第11話(王女編最終話)・予告
第11話(王女編最終話)予告
二人の姫に襲い来る 闇の叡智の体現者
死せぬその身を断ち切る術は 戦乙女の刃のみ
残り少なきその命 王女は何に賭けるのか
王女の見据える未来には 果たして何が映るのか

ロストロイヤル『運命の双子』第11話
「未来への灯火」
すべては主の御心のままに
栄光あれ

第11話ゲスト:朔日の賢者 デネトワ
 セヴァン王の側近の詩吟妖精の女性。見た目は子供だが、実年齢は不詳。アヴァロンの崩壊以来、行方不明となっているが、様々な形で王子や王女の前に幻影として姿を現し、彼等の行く先を導いている。アルフォートでの決戦を前に、王女の前に以前よりも実体に近い形で現れた。
 デネトワ曰く、アルフォートに迫りつつある魔群を率いているのは、彼女やグァンの師匠でもある「永久(とこしえ)の魔女」グラディス。彼女は「魔族とは異なる力」によって「不老不死の身体」を得ており、彼女を倒すには、その魂を身体から切り離すしかない。イクスキャリベルならばそれも可能であるが、契約者以外の魂を強引に切り離すためには、相手が行動不能になるまでに肉体を追い詰める必要があるという。
 エレナはこの難敵との戦いが相当な死闘となることを想定した上で、自分の「義妹」となるエリーゼを守るための最善の策は何なのか、現地のアルフォート軍とどのような形で連携して行動すべきなのか、思考を巡らせていた。そしてそれは同時に「戦後の自分の立ち位置」を見据えた上での選択でもあった。

初期命題案A「名乗った上で参戦する」
  • 理由1:敵の目を引き付けることで、エリーゼを守れるから。
  • 理由2:アルフォート軍の兵士達の士気が上がるから。
  • 理由3:堂々と名乗って戦う方がカッコいいから。
  • 予感:敵軍による集中攻撃

初期命題案B「名乗らずに参戦する」
  • 理由1:警戒されずに敵の本陣に斬り込めそうだから。
  • 理由2:最悪負けても、人質にされずに殺されるから。
  • 理由3:名乗らずに助ける方がカッコいいから。
  • 予感:敵軍の中での孤立無援

 この点に関して、やや複雑な議論を辿ることになる。まず、「アルフォート軍と合流して、身分を明かした上で参戦すべき」という方針に関しては、彼等の中で一致した。ただ、その後の戦術に関しては、意見が分かれることになったのである。

修正版命題A「アルフォート軍と共に正面から総力戦で戦う」
  • 理由:戦力を分散させない方が無難だから。
  • 予感:勝っても負けても多大なる消耗

修正版命題B「アルフォート軍と連携しつつ遊撃隊として敵本陣に斬り込む」
  • 理由:成功すれば無駄な犠牲が回避出来るから。
  • 予感:失敗した時の高度な危険性
+ 第11話(王女編最終話)・結末
 アルフォートに到着したエレナ達は、公爵であるヘルマンおよび公爵令嬢エリーゼ(セシルの婚約者)と合流した上で、デネトワの予言を彼等に伝えつつ、この国の防衛策について協議する。当初、ヘルマンはエレナに対して、(アルフォートが陥落するという最悪の事態を想定した上で)エリーゼを連れてアクシア達の海賊船に乗って海へと逃れることを提案したが、民を犠牲にして逃げ延びる道をエレナが選ぶ筈もなく、その点については騎士達も同意見であった。
 その上で、クロンとリズはアルフォート軍と共に城での防衛戦を提言したのに対し、シャルリオスとシャーロットは、敵の不意を突いて本陣を攻略する策を主張し、エレナは熟考の末、後者の案を採用する。ヘルマンはエレナ達にのみ危険な任務を任せることに難色を示すが、敵の司令官を倒せるのが(常に王女と行動を共にする)イクスキャリベルのみである以上、それが最も効率的な策であることをシャルリオスに指摘されたことで、渋々ながらもその方針を了承する。
 それから数日後、遂に魔群がアルフォートの領域へと現れ、決戦の火蓋が切って落とされた。シャルリオスの提案により、エリーミナスおよびアクシアの別働隊がそれぞれに独自のタイミングで魔群を攻撃することで敵陣を混乱させていく中、王女と騎士達は魔族達の包囲網を突破し、敵将グラディスの本陣へと到達する。デネトワ曰く、グラディスは数百年の時を生き続け、この世界の大半の知識を吸収し尽くした結果、新たな知的好奇心を満たすための刺激を求めて、白亜の花をこの地に広めた上で、魔王を復活させたという。まさに、常人の常識を超えた価値観に取り憑かれた存在であった。
 グラディスを倒さない限り、同じことがいずれまた繰り返されると考えた王女と騎士達は、これまで培ってきた絆を生かした鮮やかな連携攻撃で彼女を追い詰め、ソノ肉体が本格的な再生を必要とする段階に入ったところで、王女の背後から現れたイクスキャリベルがその魂を強引に刈り取り、そして天界へと連れ去っていく(その時のグラディスの表情は「天界」という未知の世界へと誘われることへの好奇心と幸福感で満ち溢れていた)。そして、彼女の魂の消失と同時に、この島を侵食していた白亜の花は、次々と枯れ落ちていくのであった。
 こうして、無事に弟の婚約者とその一族が支配する土地を守った王女達は、数ヶ月前のセシル達と同様、救国の英雄としてヘルマンやエリーゼから連日の歓待を受けることになる。そんな、彼女達の前に「デネトワの本体」が初めて姿を現わした。どうやら彼女はこれまで、グラディスによる白亜の花の侵食を止めるために、単身この島の中心部の地下深くに潜り込み、花の根の拡大を防いでいたらしい。その功績をエレナに労われつつ、デネトワはシャーロットとクロンが持っている赤と青の水晶に目を向ける。
 デネトワが鑑定した結果、どうやらこれは、世界のどこかに七つ存在すると言われている虹水晶(レインボークリスタル)の中の二つであり、これを全て集めると「幻の銀水晶(シルバークリスタル)」が現れ、どんな願いでも叶えられると言われているという。グラディスが不老不死の身体を手にいれたのも、この水晶の力によるものらしい。
 その話を聞いたエレナは、この水晶を用いて、自分達を庇って命を落としたファティエやグァンを蘇らせたいと考えるが、シャーロットは、この水晶を用いてエレナ自身の身体(寿命)を元に戻すべきと主張する。実際のところ、この水晶でどこまでの願いが叶えられるのか(本当に「何でも」なのか)、複数の願いを同時に叶えることが出来るのか、といったことは、デネトワでも分からない。ただ、彼女が以前グラディスから聞いた話によれば、グラディスが不老不死の身体を手にいれた直後、再び銀水晶は七つに分裂し、世界のどこかに飛び散ってしまったという(彼女はそれをもう一度集めようとして、部下のミランダに捜索を命じていたらしい)。
 そこで、ひとまずエレナとしては「まず、自分の身体を治した上で、もし可能であれば、もう一度集めて、この戦いで犠牲になった人々を蘇らせる」という妥協案を掲げる。この世界のどこにあるのかも分からない(そして、集めた後でどこに飛び散るかも分からない)以上、それがいかに途方もない計画であるかは皆が承知していたが、シャーロットはそれに同意した上でその捜索を手伝うと宣言し、クロンとリズも彼女に同行することに同意する。
 しかし、そんな中でシャルリオスだけは、その水晶の力が魔族によって悪用される可能性を懸念し、現有している赤と青の水晶を王国で厳重に保管すべきではないか、と主張する。仮に七つ全て集めてエレナの身体が元に戻ったとしても、その後で水晶がバラバラになった場合、それを再度集めるのは非常に難しい。それよりは、魔族の手に渡ることを防ぐために、あえて集めずに水晶の一部を自国で保管し続けた方が安全である、という提言である。
 エレナもその主張が正論であることは理解する。だが、エレナはそれでも「自分の身体を元に戻すことで、この国やこの世界のために貢献し続けたい」という、自分の中の欲望を曝け出し、どうしても水晶を探す旅に出たいと主張する。これまでの旅を通じて、彼女はシャルリオスのことを「最も信頼出来る助言者」であると確信していたが、そんな彼の提言を拒否してでも、自分の主張を押し通したいと彼女は考えた。それは、自らの責任で決断を下す「王」としての覚悟の現れでもある。そんなエレナの成長を実感しつつ、シャルリオスも彼女のその決断を尊重する。
 ただ、全ては、この戦いが終わった後の話である。まだこの島には、魔王バールゼルが残っている。セシル達が彼を討ち果たし、そしてセシルがこの島の王となるに相応しい器であることを確認した後でなければ、エレナとしても安心して島を去ることは出来ない。彼女は弟の武運を祈りつつ、万が一の事態に備えて、自分自身がバールゼルと戦うことになった場合を想定して、騎士達と共に剣の鍛錬に励むのであった。
+ 第12話(王子編最終話)・予告
第12話(王子編最終話)予告
最終決戦直前に 王子の心に湧く疑問
魔王の息子がなぜ騎士に そもそも彼は誰なのか
全てを知るは朔日の賢者 彼女は黙して語らない
その沈黙の重き戸を 王子は開くべきなのか

ロストロイヤル『運命の双子』第12話
「伝説を継ぐ者」
すべては主の御心のままに
栄光あれ

第12話ゲスト:魔王 バールゼル
 かつては少年騎士としてセヴァン王に仕え、やがてサー・エリーミナスの後継者候補と呼ばれるほどの武勇と名声を手に入れたが、海難で行方不明となる(当時の名は「クラウス」)。その数年後、変わり果てた姿でログレス島へと帰還し、「初代魔王バールゼーレンの息子バールゼル」と名乗り、アヴァロンを魔族の支配する地へと塗り替えた。
 最終決戦を前にして、セシルは一つの疑問に到達した。なぜ、魔王の息子が円卓の騎士に加わっていたのか? 賢者デネトワですら、その事実に気付けなかったのか? そのことを問われたデネトワ(の幻影)は「全てを知ることが正しいとは限らない」と断った上で、「どうしても聞きたいなら、自分には答える義務がある」と伝える。

命題A「デネトワから話を聞く」
  • 理由:全てを知った上で戦いに臨みたいから。
  • 予感:衝撃的な事実への戸惑い

命題B「デネトワから話を聞かない」
  • 理由:かえって心が乱れてしまうかもしれないから。
  • 予感:モヤモヤした心境

※今回のゲストとの因縁は全て「回想シーン」扱いとなります。
+ 第12話(王子編最終話)・結末
 真実を知りたいと考えるセシルに対して、ビアンカとダルネルはその意思を尊重しようとするが、デネトワの言い回しから、彼女が今の時点で真実を話すべきではないと判断していることを察したタングーアとクリシュナは、ここであえて聞き出す必要はないと主張する。最終的には、セシルは迷いながらも「今は戦いに専念して、戦いが終わった後に話を聞く」という道を選択する。
 そして、魔王との最終決戦に挑んだ彼等を前にして、バールゼルはセシルのことを「弟」と呼んだ。この瞬間、戦場の空気は凍りつくが、セシルはどこか悟ったような顔でその言葉を受け入れる。彼は、バールゼルが「クラウス」と呼ばれていた頃から、彼の中にどこか「自分と似た何か」を感じ取っていたのである。その詳しい事情は分からないものの、アヴァロンを取り戻すため、彼を倒すと既に決意を固めていたセシルは、騎士達や義勇兵達に守られながら、龍の力を解放させようとする。
 それに対して、魔王軍は龍の力が完全に覚醒する前にセシルを倒そうと、全力で襲いかかる。魔王の圧倒的な力の前に、ダルネルも、クリシュナも、ビアンカも、死の一歩手前まで追い詰められることになるが、ギリギリのところで踏みとどまり、王子の身を守りつつ、敵陣の包囲網を突破していく。そして、タングーアの指揮の下、遂に魔群を突破して魔王の目の前まで到達したセシルは、そこで龍の力を完全に解放し、魔王を含めた全ての魔族を浄化させることに成功する。その最後の瞬間、バールゼルはどこか安堵したような表情を浮かべ、かつての「クラウス」だった頃に戻ったかのような面持ちのまま、静かに消滅していった。こうして、全ての戦いを終えたセシルは、アヴァロンの民の熱烈な換気の渦の中、王国の復活を宣言する。
 それから数日後、アルフォート公国から、セシル婚約者であるエリーゼを連れて、姉のエレナとその騎士達が到着する。その中にはデネトワ(本体)の姿もあった。エレナ達との再会を喜びつつ、王子と王女と騎士達は、デネトワから「全ての真実」を聞くことになる。

 ******

 かつて、まだ平民であった頃のセヴァンには、将来を誓い合った恋人がいた。その恋人こそが、後の初代魔王バールゼーレンである。しかし、当時の彼女は、ごく普通の一人の村娘でしかなかった。
 だが、ある時、セヴァンが偶然にも(あるいは、誰かの陰謀によって?)天使イクスキャリベルの「素顔」を見てしまったことで、運命は一変する。天使としての宿命により、セヴァンに対して、「死」と「死ぬまで戦い続ける道」の二択を迫ったイクスキャリベルに対して、セヴァンはやむなく後者を受け入れる。そして、修羅の道を歩み続けることでバールゼーレンを危険に巻き込む可能性を危惧した彼は、彼女に対して別れを告げて、大陸へと去ろうとする。
 実はこの時、バールゼーレンの腹の中には既にセヴァンの子がいたのだが、そのことをセヴァンに伝えぬまま、彼女は黙ってその「別れ」を受け入れる。だが、やがてその悲しみに耐えきれなくなった彼女の心に「闇」が忍び込んできた。その闇の力に侵された彼女は、魔王として覚醒し、魔群を率いて、ログレス島を恐怖に陥れる。それは「自分が魔王としてこの島に君臨し続ける限り、自分を倒すためにセヴァンは島に残り続ける」という、彼女の哀しき欲望が引き起こした悲劇であった。
 最終的に、バールゼーレンを倒したセヴァンは、彼女の傍らにいた幼い「息子」を引き取り、騎士として育てることになった。クラウスと名付けられたその少年は、円卓の騎士団の次世代を担う存在へと成長していくが、その過程において、何者か(デネトワの推測によれば、それはおそらく魔女グラディス)によって自身の出生の秘密を知り、徐々に心に闇を抱き始める。
 それでも、一人の騎士としての生き方をまっとうしようとしていた彼であったが、ある時、使節の護衛として大陸へと向かおうとしていた時、その船がクラーケンの襲撃によって沈没し、命を落としてしまう。だが、これは魔女グラディスの陰謀であった。密かに船に乗り込んでいた彼女の手によって魔王としての血を覚醒させられたクラウスは、己の中に眠っていた闇の感情を肥大化させられる形で「魔王バールゼル」として復活し、その暴走した心のまま、母を殺したセヴァンやイクスキャリベルへの復讐のために、アヴァロンを征服するに至ったのである。

 ******

 真実を聞かされたセシルとエレナは複雑な表情を浮かべながらも、過ぎてしまった過去を取り戻すことは出来ない、と振り切った上で、セシルはアヴァロンの再生に、そしてエレナは自分の身体を元に戻すための虹水晶捜索に、全力を注ぐことを決意する。
 それから更に数日後、天界にグラディスの魂を届けたイクスキャリベルが帰還した。しかし、彼女からはかつてのような「圧倒的なオーラ」は感じられなかった。彼女が「異教の力」を得ていたことが主神に発覚したことで、彼女は天使の地位を剥奪され、「人間」の身に堕とされてしまっていたのである(それでもスザクの力はまだ彼女に宿っていた)。この結果、エレナとの契約も実質無効化されたが、それでもエレナに対してその身を捧げ続けると宣言したイクスキャリベルを(シャーロットは難色を示していたが)エレナは「自分の直属の騎士」として受け入れることを決意する。
 なお、この時、イクスキャリベルは「仮の姿」の状態で、もはや「本来の姿」には戻れなくなっていたのだが、エレナはそのことに内心安堵していた。というのも、イクスキャリベルの「本来の姿」は、エレナの母グレイローザに瓜二つであり、エレナそのことに対して、理由を聞かないまま「なんとなく心地が悪い」と感じていたのである。
 実はここにはイクスキャリベルとグレイローザの間の知られざる関係が隠されていた。グレイローザの一族は「島を守る守護天使の半身」としての力を引き継ぐ一族だったのである。ログレスの守護天使は「人性の守護天使」と「神性の守護天使」が一対となった存在であり、両者は同時に「同じ姿」でこの世界に現れる(より正確に言えば「転生」する)。つまり、前者としてのグレイローザの誕生に伴って生まれたのが後者としてのイクスキャリベルであり、両者のうちの片方が死ねば、もう片方も命を落とす(後者が素顔を見せることが禁忌なのは、力を持たない前者が襲われることを防ぐため)。これは騎士団の中でも極一部の者達のみが知る事実であり、デネトワがセヴァンの妻にグレイローザを推挙したのも、バールゼルがグレイローザを人質に取ったのも、背景にはこのような事情があったのだが、そのことは次世代の騎士達には最後まで知らされぬままであった。
 ちなみに、グレイローザはセシルとエレナの承諾を得た上で、エリーミナスと再婚し、やがて二人の間には娘が生まれることになる。その出産に至るまでの妊娠期間が、「本来の計算」に照らし合わせると、やや短かったように感じられたのだが、そのことについて言及する者は誰もいなかった。そして、この娘の誕生と共に「新たな守護天使」がこの島のどこかで生まれているのであるが、その存在が明らかになるのは、もう少し先の話である。
 こうして、旧世代の者達がそれぞれの人生を再始動させていく中、アヴァロンの二代目国王としてセシルが即位すると同時に、エリーゼを正式に王妃に迎え、やがてアルフォートを初めとするログレスの諸侯達の推挙によって、ログレス島全体の盟主としての地位を確立することになる。一方、エレナはアクシアやイクスキャリベルと共に世界の海を股にかける大航海の旅の末に、最終的には「炎の女王」と呼ばれる英傑へと成長することになるのであるが、まだこの時点ではそこまでの未来は、デネトワにすら予見出来ていなかった。
 そして、そんな二人の覇道を支えた「次世代の騎士達」もまた、それぞれに異なる未来を歩むことになる。
 セシルの側近達のうち、ダルネルとビアンカは以後も「アヴァロンの双璧」としてセシルを支え続けることになる。魔族との戦いが終わった後の時代においても、人間同士の武力衝突が無くなる訳ではない以上、絶対的な忠誠心に基づいて新王の両脇に並び立つ武人としてのこの二人の存在は、紛れもなくアヴァロンの屋台骨であった。
 そんな二人とは対照的に、タングーアは置手紙を残してセシルの元を去って行く。彼のその後の行方を知る者は誰もいないが、彼のそれまでの諸々の不気味な言動から、実はこの世界に起きた様々な騒乱の黒幕は彼だったのではないか、と主張する者もいた。
 一方、クロンとシャーロットは、後世に伝わるエレナの冒険譚の中で、最後まで彼女を支え続けた仲間として名を残すことになる。エレナが「炎の女王」と呼ばれているのは、スザクの力を持つイクスキャリベルに加えて、この二人の火炎妖精の存在が主な理由として挙げられる。様々な宿業を一人で背負いこみすぎる性格のエレナにとって、この二人は貴重な精神的な依り所であったと言われている。
 クリシュナとエリザベスについては、以後の消息は不明である。一説によれば、この二人の間には過去に何らかの因縁があったとも言われているが、それが以後の彼等の人生にどう影響したのかは分からない。ただ、タングーアとは異なり、置手紙すら残さずに姿を消したことから、当時は様々な憶測が広がっていたという。
 そして、エレナの側近達の中で唯一アヴァロンに残ったシャルリオスは、その智謀で国政を支え続け、やがてデネトワの後継者としての役割を期待されるようになるが、彼の目論見通りに国としての安定と発展が実現していったにもかかわらず、いつしかその表情には、どこか「翳り」が見え始める。それは彼が、出奔直前のタングーアから「ある特別な力」を預かっていたことが理由なのだが、その事実を知る者は誰もいない。
 こうして、王子と王女と騎士達による「王国奪還の物語」は、ひとまずの終焉を迎えた。だが、それもまた英雄王セヴァンに始まる「アヴァロンの円卓の騎士伝説」の中のほんの一節にすぎない。それでも、この時代の彼等の物語は、これから先のこの島の人々の間で、永く語り継がれていくことになるであろう。たとえ今後、第三・第四の魔王が現れようとも、幾度王国が滅びることになろうとも、決して諦めず戦い続ける人々にとっての、希望の灯火として。

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最終更新:2017年01月29日 14:33