第061話:森へ 作:◆gzzG2LsYlw
少年一人と着ぐるみ一体が北に向けて歩いていた。
少年の名はヴィルヘルム・シュルツ。皆からはヴィルと呼ばれていた。
薄い栗色の髪に、茶色の瞳。着ているのは彼が通っている上級学校の制服。
彼と行動を共にしている謎の気ぐるみの名は、本人いわく「ふぃも」らしい。
出会ってから必死になにかを説明しているが、着ぐるみに内蔵されているらしい機械によって声がほとんど正しく伝わってこず、何を言っているかさっぱりだ。
少年の名はヴィルヘルム・シュルツ。皆からはヴィルと呼ばれていた。
薄い栗色の髪に、茶色の瞳。着ているのは彼が通っている上級学校の制服。
彼と行動を共にしている謎の気ぐるみの名は、本人いわく「ふぃも」らしい。
出会ってから必死になにかを説明しているが、着ぐるみに内蔵されているらしい機械によって声がほとんど正しく伝わってこず、何を言っているかさっぱりだ。
一時間ほど前―― 着ぐるみを脱がせる努力をしてみたり、意思の疎通を図ろうと試行錯誤をしているうちに、かなりの時間の経過と共に、見通しの良い場所に自分たちがいることの危険性に気づいた。
あたり一面は、足首まで届かない短い草原になっており、身動きが不自由な着ぐるみでも比較的歩きやすい。
北には鬱蒼とした森が遠くに見える。ヴィルはとりあえずそこに身を隠そうと考え、
手先が不自由な「ふぃも」に代わって、彼(彼女?)の支給品を手早く拾い集め、着ぐるみが腰にかけている鞄に詰め込んだ。
そして北に向かうことを提案し、「ふぃも」の身振りから了承を得たと思い込むことにし、歩き始めた――
あたり一面は、足首まで届かない短い草原になっており、身動きが不自由な着ぐるみでも比較的歩きやすい。
北には鬱蒼とした森が遠くに見える。ヴィルはとりあえずそこに身を隠そうと考え、
手先が不自由な「ふぃも」に代わって、彼(彼女?)の支給品を手早く拾い集め、着ぐるみが腰にかけている鞄に詰め込んだ。
そして北に向かうことを提案し、「ふぃも」の身振りから了承を得たと思い込むことにし、歩き始めた――
それは歩き始めてからそれほど経たない内に起こった。
突然着ぐるみから妙な電子音が発せられたのだ。ヴィルと着ぐるみは驚き、一瞬身を震わせた。
何事かとヴィルが着ぐるみを調べていると、「ふぃも」が進行方向右前方を指で示して、
「ふもっ、ふもふも、ふもー!」となにやらわめき始めた。
右前方、方角で言うと北東の方角にヴィルが顔を向けると、紅い何かがこちらに向けものすごい勢いで疾走してくるのが視えた。
「!?」
ヴィルは背中の鞄に入っている、散弾銃のグリップに手をかけた、と同時にその少女は高く飛び上がり、着ぐるみの頭部に上段からの一閃を食らわせた。
二人がその紅いものは少女だと気づいたのは、その後だった。
少女は真紅の燃えるような髪と煌く眼をもっていた。
まだ十を過ぎた位の少女に見えるが、その顔立ちは凛々しい。
突然着ぐるみから妙な電子音が発せられたのだ。ヴィルと着ぐるみは驚き、一瞬身を震わせた。
何事かとヴィルが着ぐるみを調べていると、「ふぃも」が進行方向右前方を指で示して、
「ふもっ、ふもふも、ふもー!」となにやらわめき始めた。
右前方、方角で言うと北東の方角にヴィルが顔を向けると、紅い何かがこちらに向けものすごい勢いで疾走してくるのが視えた。
「!?」
ヴィルは背中の鞄に入っている、散弾銃のグリップに手をかけた、と同時にその少女は高く飛び上がり、着ぐるみの頭部に上段からの一閃を食らわせた。
二人がその紅いものは少女だと気づいたのは、その後だった。
少女は真紅の燃えるような髪と煌く眼をもっていた。
まだ十を過ぎた位の少女に見えるが、その顔立ちは凛々しい。
「え?」
たった今、死なない程度に力を抑えたとはいえ、それなりに、いや、かなりの勢いで刀を振り下ろしたはずなのだが、直撃を受けた場違いな奇妙な着ぐるみは平然とそこに立っていた。
「なんなのよ!」
少女は左下段から今度は先ほどより強く、着ぐるみの右わき腹に鈍ら刀を打ち付けた。
「ガゴッ」
と鈍い金属音が聞こえたが、刀は着ぐるみの皮一枚すら破けず弾かれた。
彼女はフレイムヘイズ。いかなる場合でも沈着冷静に対処しなければならない。
そう育てられた。そして考える。
たった今、死なない程度に力を抑えたとはいえ、それなりに、いや、かなりの勢いで刀を振り下ろしたはずなのだが、直撃を受けた場違いな奇妙な着ぐるみは平然とそこに立っていた。
「なんなのよ!」
少女は左下段から今度は先ほどより強く、着ぐるみの右わき腹に鈍ら刀を打ち付けた。
「ガゴッ」
と鈍い金属音が聞こえたが、刀は着ぐるみの皮一枚すら破けず弾かれた。
彼女はフレイムヘイズ。いかなる場合でも沈着冷静に対処しなければならない。
そう育てられた。そして考える。
(どうやらここに来てからかなり、存在の力の行使に制限がかかっている様ね。
アラストールとも音信不通だし、体の動きもいつもより鈍い感じがする。
そしてなにより、このヘンテコな着ぐるみ一つ破壊できないなんて、ありえない・・
もしかして紅世の徒? でも、そんな気配はないし・・。無視して悠二の元へ急ごうか・・。
いや、こいつらの武器を奪取もしくは破壊、そして行動不可、気絶くらいさせておかないと、私はともかく悠二に危害を加える可能性が十分あるわ。そしてこいつがだめなら・・・)
アラストールとも音信不通だし、体の動きもいつもより鈍い感じがする。
そしてなにより、このヘンテコな着ぐるみ一つ破壊できないなんて、ありえない・・
もしかして紅世の徒? でも、そんな気配はないし・・。無視して悠二の元へ急ごうか・・。
いや、こいつらの武器を奪取もしくは破壊、そして行動不可、気絶くらいさせておかないと、私はともかく悠二に危害を加える可能性が十分あるわ。そしてこいつがだめなら・・・)
突然、少女は後ろを振り向き、ヴィルのほうへ、刀を下段に構え、
「おまえが先だ!」
近づいてきた。
ヴィルは鞄から散弾銃を完全に抜き取り構えた。一弾目を装填する。
相手の眼は本気だ。殺される。
「・・・・・・・・・。守るためなら、か」
(どっちが正解なんだろう、僕はまだわからない、わからないけど・・・。アリソン・・!)
少女が振りかぶる。
ヴィルは引き金に指をかけ、
「撃てっ!」
どこからか、男の子のような、若い感じのする、声が聞こえた、と
同時に引き金を絞った。
「ズドンっ!!」
轟音と共に、散弾する前の、至近距離からの一発が少女の腹に命中した。
「ぐっ」
紅い髪をした少女は、受けた衝撃に顔を歪めながら、面白いように後ろに吹っ飛んだ。
「おまえが先だ!」
近づいてきた。
ヴィルは鞄から散弾銃を完全に抜き取り構えた。一弾目を装填する。
相手の眼は本気だ。殺される。
「・・・・・・・・・。守るためなら、か」
(どっちが正解なんだろう、僕はまだわからない、わからないけど・・・。アリソン・・!)
少女が振りかぶる。
ヴィルは引き金に指をかけ、
「撃てっ!」
どこからか、男の子のような、若い感じのする、声が聞こえた、と
同時に引き金を絞った。
「ズドンっ!!」
轟音と共に、散弾する前の、至近距離からの一発が少女の腹に命中した。
「ぐっ」
紅い髪をした少女は、受けた衝撃に顔を歪めながら、面白いように後ろに吹っ飛んだ。
「今だ、走りましょう!」
先ほどの少年の様な声がヴィルの背中に呼びかける。
振り向いたヴィルが見たのは、黒いジャケットを着て、腰をベルトで締めた少年(に見えた)だった。
年は十代の中頃。短い黒髪に、大きな目と精悍な顔を持つ。
ヴィルは瞬時に彼が着ぐるみの中の人だと理解した。
「はい、ふぃもさん!」
身軽になった「ふぃも」とヴィルは北にある森に向けて走り去った。
先ほどの少年の様な声がヴィルの背中に呼びかける。
振り向いたヴィルが見たのは、黒いジャケットを着て、腰をベルトで締めた少年(に見えた)だった。
年は十代の中頃。短い黒髪に、大きな目と精悍な顔を持つ。
ヴィルは瞬時に彼が着ぐるみの中の人だと理解した。
「はい、ふぃもさん!」
身軽になった「ふぃも」とヴィルは北にある森に向けて走り去った。
後ろに少女の姿が見えなくなったのを確認して、
「危なかったですね」とヴィル。
「ホントに」
「ふぃも」は手に持っていたものを腰に付けながら言った。
そして、
「これ、ボクのだったんです。さっきの人が吹き飛んだときに落としたみたいです」と妙に嬉しそうに言った。
それはリヴォルバータイプの大口径のハンドガン。
「ああ、それとボクは「ふぃも」じゃなくて「キノ」です」
つぶやいた。
「危なかったですね」とヴィル。
「ホントに」
「ふぃも」は手に持っていたものを腰に付けながら言った。
そして、
「これ、ボクのだったんです。さっきの人が吹き飛んだときに落としたみたいです」と妙に嬉しそうに言った。
それはリヴォルバータイプの大口径のハンドガン。
「ああ、それとボクは「ふぃも」じゃなくて「キノ」です」
つぶやいた。
【E-6/草原/一日目・2:00】
『チーム時雨沢』
【ヴィルヘルム・シュルツ】
[状態]:正常
[装備]:ベネリM3
[道具]:デイパック(支給品入り)
[思考]:森へ
『チーム時雨沢』
【ヴィルヘルム・シュルツ】
[状態]:正常
[装備]:ベネリM3
[道具]:デイパック(支給品入り)
[思考]:森へ
【キノ】
[状態]:正常、ボン太脱衣成功
[装備]:カノン
[道具]:デイパック(支給品入り)
[思考]:森へ、ヴィルと共に行動
[状態]:正常、ボン太脱衣成功
[装備]:カノン
[道具]:デイパック(支給品入り)
[思考]:森へ、ヴィルと共に行動
【残り104名】
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