第491話:紫煙―smoke― 作:◆5KqBC89beU
 島を覆い始めた霧の中、甲斐氷太はA-2にある喫茶店の前に立っていた。
(さて、今度こそ誰か隠れててくれねえもんかね)
適当に周囲を探索して回り、しかし誰とも会わないまま、甲斐は今ここにいる。
途中、争うような喧騒を耳にしてはいたが、甲斐は無視した。いかにもカプセルを
のませにくそうな参加者にわざわざ会いにいく気は、とりあえずない。逃げるために
遠ざかるつもりも、とりあえずないが。
今のところ、甲斐の目的は、悪魔戦を楽しめそうな相手を見つけることだった。
風見とその連れを殺したいとも思ってはいるが、再戦できるかどうかは運次第だ。
故に、甲斐はただ黙々と探索を続けていたのだった。
(……ウィザードの代わりなんざ、いるわきゃねえけどな)
カプセルは、のめば誰でも悪魔を召喚できるというようなクスリではない。
悪魔を召喚する素質のない参加者にカプセルを与えても、悪魔戦は楽しめない。
何が素質を決定している因子なのか、甲斐は明確には知らない。しかし、精神的に
不安定な者は悪魔を召喚できるようになりやすい、という傾向なら知っていた。
戦えない者なら、この状況下で精神的に安定しているとは考えにくく、悪魔を召喚
できるようになる可能性が高い。また、そういう相手にならカプセルをのませやすい。
(弱え奴が隠れるとしたら、こんな感じの、中途半端な場所の方が好都合だろ)
立地条件のいい場所には人が集まりやすい。誰にも会いたがっていない者ならば、
他の参加者が滞在したがりそうな場所を避けてもおかしくない。
この辺りの市街地は、便利すぎず、かといって不便すぎることもない。
大都会というほどではないものの、それなりに建物があって隠れ場所には困らず、
物資を調達しやすそうだ。しかし、島の端なので逃走経路が限られており、遮蔽物の
乏しい西には逃げにくい。強さか逃げ足に自信がある者なら、ここより南東の市街地に
向かいたがるだろう。この場所ならば、弱者が隠れていても不思議ではない。
『ゲーム』の終盤から殺し合いに参加しようとする者や、休憩しにきた殺人者も、
ひょっとしたら隠れているかもしれないわけだが。
カプセルを口に放り込み、甲斐は喫茶店の扉を開けた。
(さて、今度こそ誰か隠れててくれねえもんかね)
適当に周囲を探索して回り、しかし誰とも会わないまま、甲斐は今ここにいる。
途中、争うような喧騒を耳にしてはいたが、甲斐は無視した。いかにもカプセルを
のませにくそうな参加者にわざわざ会いにいく気は、とりあえずない。逃げるために
遠ざかるつもりも、とりあえずないが。
今のところ、甲斐の目的は、悪魔戦を楽しめそうな相手を見つけることだった。
風見とその連れを殺したいとも思ってはいるが、再戦できるかどうかは運次第だ。
故に、甲斐はただ黙々と探索を続けていたのだった。
(……ウィザードの代わりなんざ、いるわきゃねえけどな)
カプセルは、のめば誰でも悪魔を召喚できるというようなクスリではない。
悪魔を召喚する素質のない参加者にカプセルを与えても、悪魔戦は楽しめない。
何が素質を決定している因子なのか、甲斐は明確には知らない。しかし、精神的に
不安定な者は悪魔を召喚できるようになりやすい、という傾向なら知っていた。
戦えない者なら、この状況下で精神的に安定しているとは考えにくく、悪魔を召喚
できるようになる可能性が高い。また、そういう相手にならカプセルをのませやすい。
(弱え奴が隠れるとしたら、こんな感じの、中途半端な場所の方が好都合だろ)
立地条件のいい場所には人が集まりやすい。誰にも会いたがっていない者ならば、
他の参加者が滞在したがりそうな場所を避けてもおかしくない。
この辺りの市街地は、便利すぎず、かといって不便すぎることもない。
大都会というほどではないものの、それなりに建物があって隠れ場所には困らず、
物資を調達しやすそうだ。しかし、島の端なので逃走経路が限られており、遮蔽物の
乏しい西には逃げにくい。強さか逃げ足に自信がある者なら、ここより南東の市街地に
向かいたがるだろう。この場所ならば、弱者が隠れていても不思議ではない。
『ゲーム』の終盤から殺し合いに参加しようとする者や、休憩しにきた殺人者も、
ひょっとしたら隠れているかもしれないわけだが。
カプセルを口に放り込み、甲斐は喫茶店の扉を開けた。
 結局、喫茶店には誰も隠れていなかった。
(面白くねえ)
どうやら、現在A-2の市街地には他の参加者がいないらしい。
甲斐は苛立たしげに舌打ちし、いったんここで小休止することにした。
(もう、いっそのこと……いや、それとも……)
思案しながら甲斐は煙草を取り出し、口にくわえて、店のガスコンロで点火する。
煙が吸い込まれ、吐き出される。
(あー、くそ、体のあちこちが痛え)
喫煙の合間にカプセルを咀嚼する姿は、どうしようもなくジャンキーらしい。
しばらくすると、東の方から盛大な破壊音が聞こえてきた。
破壊音が近づいてこないと確認し、甲斐はそのまま煙草を吸い続けた。
(面白くねえ)
どうやら、現在A-2の市街地には他の参加者がいないらしい。
甲斐は苛立たしげに舌打ちし、いったんここで小休止することにした。
(もう、いっそのこと……いや、それとも……)
思案しながら甲斐は煙草を取り出し、口にくわえて、店のガスコンロで点火する。
煙が吸い込まれ、吐き出される。
(あー、くそ、体のあちこちが痛え)
喫煙の合間にカプセルを咀嚼する姿は、どうしようもなくジャンキーらしい。
しばらくすると、東の方から盛大な破壊音が聞こえてきた。
破壊音が近づいてこないと確認し、甲斐はそのまま煙草を吸い続けた。
【A-2/喫茶店/1日目・17:55頃】
【甲斐氷太】
[状態]:左肩から出血(銃弾がかすった傷あり)/腹に鈍痛/あちこちに打撲
/肉体的に疲労/カプセルの効果でややハイ/自暴自棄/濡れ鼠
[装備]:カプセル(ポケットに十数錠)/煙草(1/2本・消費中)
[道具]:煙草(残り11本)/カプセル(大量)/支給品一式
[思考]:次に会ったら必ず風見とBBを殺す/とりあえずカプセルが尽きるか
堕落(クラッシュ)するまで、目についた参加者と戦い続ける
[備考]:『物語』を聞いています。悪魔の制限に気づいています。
現在の判断はトリップにより思考力が鈍磨した状態でのものです。
[状態]:左肩から出血(銃弾がかすった傷あり)/腹に鈍痛/あちこちに打撲
/肉体的に疲労/カプセルの効果でややハイ/自暴自棄/濡れ鼠
[装備]:カプセル(ポケットに十数錠)/煙草(1/2本・消費中)
[道具]:煙草(残り11本)/カプセル(大量)/支給品一式
[思考]:次に会ったら必ず風見とBBを殺す/とりあえずカプセルが尽きるか
堕落(クラッシュ)するまで、目についた参加者と戦い続ける
[備考]:『物語』を聞いています。悪魔の制限に気づいています。
現在の判断はトリップにより思考力が鈍磨した状態でのものです。
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