幸福 or 不幸 ?




映画館から出る為に行動する今。
森繁は横で少し不安を隠しきれない橙を見る。
ちょこんとのっている帽子から生える猫耳。
後ろには猫の尻尾に背の小ささ。
この歳からこんな趣味に走るのは少し痛い子ではあるけど、
どこか心を支えてあげたくなる衝動がある。
やはり持田の妹が脳裏に出て来る、でもそれもあの時は一人だったし
おまけには逃げられて――あのまま何処へ行ってしまったのか?
挙句、気がつけば自分は殺し合いをしろと煽られて頭が痛くなる。
あの学校内で見てきた今までの事はなんだったのか?
繋がりも何もなく、実は自分の記憶に障害が起こったかとでも思いそうだ。
でもそれも関係無いなら思い出すまではない筈だ。

(……繭の傍に、いてやらないとならないのはわかる……。直ぐにでも
 会いたいと願ってる……でも今は、この子を助けてあげるのも大事だよね)

自分の事を優先するのなら、生き残りに精を尽くす。
勿論だが繭を必死の思いで探しつつ、だ。
でも見つけて、色々やってあげてしまった今じゃ一緒にいてあげるしかない。
持田の妹を想起させる様な小さな子、幼少期の繭もこんなのだったか?
これ以上、過去を思うのはやめた方がいいと感じて、そろそろやめて今を見る。
気がつけば映画館から出ていた。

「どうしますか?」

橙が目的を聞いてくる。
実は出るだけで目的という目的は無かった。
外に出たは出たが何処に行くか決めてないなら決めてから行動しないと、
より自分を危機に晒してしまう可能性がある。
森繁は取り敢えず橙の手を取ってもう一度館内へと入る。
明るさで言えばこっちのがまだ明るい、ただそれだけだ。
何か理解ならないままの橙の横で、森繁は地図を取り出す。
行く場所を決めていないなら、今決めればいい話だ。

「今、僕達がいるのはここだね」

分かりやすく説明する為に先ず現在地に手を指す。
意図通りに橙は成程といった顔で頷いた。
それから次に森繁はその周辺を見て少し考える。
先ず第一に学校へは正直、今は行きたくない。
気持ちの悪い体験をしたばかりに思い出す可能性があるからだ。
廊下の粉砕死体、様々な所に転がっている制服を着た骨。
あのような光景を学校という事だけで思い出してしまう。
これは深くトラウマになってしまうかもしれない。

「っ!!ち、ちょっといいですか?」

橙が突然、地図をしっかり直視したくなったようだ。
断る理由も無いので森繁は橙に地図を渡す。
そして橙が見た後に、森繁の方へと地図を返して言って来た。

「ここに、いってもいいですか?」

橙が指をさして示した場所の名前は、白玉楼だった。
そんな建物、聞いた事も無いし少し気になってはいたが
何か橙に思い当たるフシのある場所だとしたならば―――
いや、それはもう態度で証明してあるから後はその場所による。
白玉楼――一体、ここには何があるというのだろう?
興味と橙の意思によって、白玉楼へ行く事に反対は無い。

「じゃあ、いこうか」
「はい!」

森繁はあまり表情も変えずに、橙にそう言う。
対して、気合の入った声で橙は返事をする。
やはり二人は仲の良い兄妹を感じさせる組み合わせだった。
美少年に、美少女。歳の差があっても似合いではあった。
対して今の白玉楼が危険なのをまだ知らない二人である。
――と、二人が移動しようとしたその時に外に誰かいるのを確認した。
二人、共に身を小さくして反対側へと移動を試みる。
この扉から出ては白玉楼とは逆方面に行ってしまうから反対側に周る。
ただそれだけの目的で二人は館内を歩きだす。

外へ通じる扉が開く音はせず、どうやら気付かれなかったと安心する。
もしかすれば繭だったかも、もしかすれば藍だったかも。
そんな期待もあっただろうけど、今の殺し合いを気にするのなら
ここは逃げざるを得ない状況にあった。だから仕方ない。
扉から外は窺えただろうけど、見る訳にはならない。
もしもその時に扉を開かれていれば最悪、瞬殺の可能性。
森繁は繭も、そしてあの時の繭との別れを祝ってくれた皆も、
大事な存在であった。失いたくない、大切な皆。
勿論、偶然にもやって来た持田の妹だって大切だ。
そんな皆がこの殺し合いにいたら、自分は何をすべきだろうか?
皆の為に殺害をするべきなのか?と、その論が間違いなのは確かだと思う。
……だから、妙な奴を殺害するのは自分の為の事。
ならこの橙も奇妙といえば奇妙、でもってまったく認識の無い殺し合いの参加者。
これを殺さない理由など簡単といえば簡単。その理由がまったく無いから。
橙を見ていれば、繭や持田の妹が想起されて心が落ち着くのも理由だろう。
知らず知らずの内に橙は自分に必要な存在へとなっている。
出会いというのは実に人生を左右するイベントだよ。

反対側にも同じ、扉があって外を窺える窓がある。
やはり真っ暗なその先――ここから誰かの出会いがまたあるんだろう。
自分か橙の知り合いなら白、それ以外は黒か灰色とするならこの先は灰色の塊だ。
出会ってないのを灰色、出会って危険としたものを黒と考えてこの状況。
さていかにして白と判断して、出会うかが大切であるところだ。
冷静に森繁は、その様に決断の早さを意識して出会うか避けるかの判断をしてやると意気込み、
出来れば知人に出会いたいと思いつつ、再び橙を見てみる。

(……やっぱり、心配だ。繭………皆も無事だといいんだけど)

これ以上は、想起したくないと思う森繁だった。
その繭は現在、時間軸次第で生きてるか死んでるかではあるのだが―――。
対する森繁もこの殺し合いがなければ、時間軸次第で天神小学校内で行方不明となるのだが―――。
この森繁に、幸福はあるのだろうか?いや、既に幸福はあるだろう。
まだ安心の出来る橙を第一に発見したのはデカイ。
森繁の先の未来は、幸福―――?不幸―――?


【C-3 - 映画館】
森繁朔太郎@コープスパーティーBCRF】
【状態】健康
【服装】如月学園高等部制服
【装備】朝倉さんのナイフ@涼宮ハルヒの憂鬱
【道具】基本支給品 ムサシノ牛乳×2@とある科学の超電磁砲
【思考】基本思考:繭達を探しつつ、脱出経路を探る。信頼出来ない奴は殺害する。
1、橙と共に協力しつつ安心もさせてあげる。
2、本当に、殺し合いしてるんだよね………。
3、白玉楼に行ってみようか。
4、これ以上は過去の事を想起したくないな……。
※ムサシノ牛乳を1つ橙にあげました。
※制服ポケットにナイフを隠し持っています。


【C-3 - 映画館】
【橙@東方project】
【状態】健康 軽い恐怖
【服装】橙の服
【装備】なし
【道具】基本支給品 不明支給品1~3
【思考】基本思考:藍しゃまを探す。
1、森繁に着いていく。
2、白玉楼に行ってみる。
※空のムサシノ牛乳のパックを一つ映画館内に捨てました。


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最終更新:2011年03月14日 19:41