銃声がなく頃に ~ Report of a gun
ルシフェルは紅魔館の廊下を歩く。
殺し合いが開催されて早くも二名の参加者に出会った。
これが幸運か不幸か?……まあ、いい。
そんなルシフェルの脳裏に残るアイツ、72通りの名前を持つアイツ。
もしアイツもいるならば――この殺し合いは、面白くなるだろう。
決して自分は何もせずただの傍観者の一員、何もする気などない。
だがこの世界は問題がある様だ。自分は今や死の可能性がある一員。
ルシフェルは死ぬ気なんてない、だから傍観者とはいえども襲われれば返り撃ち。
あくまで自分からは仕掛けないだけの事なのだ。
一室にいた男も、扉の近くで盗み聞きをした女も向こうからは襲ってこなかった。
だからルシフェルも襲撃とかせずにただ、舞台である場から離れただけだ。
自分は舞台上ではなく、裏でやり取りをしつつ傍観する、それだけが目的。
主催者達が望む殺し合いは積極的にはしない、おそらくは誰かがやってくれるからだ。
自分が出会った人間が死のうが、今回はダメだっただけ、悲しいなんて思うことなどない。
ただルシフェルは見るだけの存在となって、紅魔館の廊下を歩くのだ。
(しかし、大きな所だ。だが、少々趣味を疑うところだ。何処を見ても赤いな。
まったく、奇妙な所だよ。他にもこの様な奇妙な所があるなら行っておきたいところだ)
一人の旅行客かと思えそうだが、参加者です。
やる気の無い殺し合い参加者は主催者にとって不必要。
かといって排除する事もままならない、うっとおしい存在。
尤も、ルシフェルは主催者の事なんざどうでもいいと思ってるが……。
しかし、ただ歩いていては赤き紅魔館もつまらない。
暇潰しになる物でも求めてルシフェルはデイパックを見てみた。
やはりデイパックへと感想も、奇妙の一言だ。
その中身もやはり奇妙なもので、様々な物がそこにはあった。
地図や食料、紙という一般的な生活の為の支給品の他、ランダムに支給されるもの。
実に面白いそのランダム支給品は、奇妙。
黒く、露出だらけの服が一つ――これは、TDNアーマーだ。
ダーク♂クールを放つ凄まじい一品、特殊効果なんて無い。
ただ、RPGで出た場合なら闇属性攻撃の威力を半減してくれそうでもある。
全くの不用品ではあるが、奇妙で面白い。
もう一つ、凄まじい輝きを放つ一つの金塊がそこにあった。
売ればかなりの値に匹敵するであろうその金塊は、六軒島に存在し魔女の黄金。
黄金の魔女ベアトリーチェの隠し黄金が一つ、中に入っていたのだった。
同様、殺し合いにはなんの利点も無く、むしろ重いだけの迷惑品ではある。
ただ一つ言える利点―――それは、奇妙である。
(イーノックの奴には、何が入ってたんだろうな)
他人のデイパックを気にする余裕を持つルシフェル。
その元へと一つ響いたのは、殺し合いの音だった。
音は銃声――人の命の消滅を感じさせる衝撃な一撃。
その音から先、静寂のみが支配する。
廊下の先から聞こえた音、これまたやっぱり奇妙。
でも面白そう。一般人なら辿り着く筈の無い考え。
普通なら逃げる筈の場所でルシフェルは前へと進むのだった。
死を恐れない勇敢な行動、その動機はあまりにも意味不明だ。
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さて、銃声がなく頃に――ルシフェルが出会ったその二人も動き始める。
部屋へいたヤムチャだったが、金目の物は結局無かった。
紅魔館の中でも使われてもいなかったこの部屋に物は無かったのだ。
あるのは立派な壁、床―――使っていないにも関わらず綺麗な場所。
普段、掃除している咲夜の時間操作によってここまで綺麗なのであろう。
尤もこの紅魔館の住人である者は殺し合いには二名しか存在しないが………。
主である
レミリア・スカーレットに許しをもらってない彼等。
もしも主に紅魔館に勝手に入っていたとバレたなら――ただでは済まない。
その妹である
フランドール・スカーレットは歓迎するかもしれないが………。
その以前に、彼女は既に紅魔館敷地内だ。
主のレミリアも紅魔館に向かって着実に近付いて来ている。
「今の……誰が!?」
ヤムチャは銃声に反応して後ろを向く。
扉には変化無し、ルシフェルが出てから何も無い。
この部屋の近くにいる可能性――考えれば怖い。
力に差があり過ぎる敵を相手に勝つ自信など皆無だから怖いのだ。
ヤムチャは確かに強いかもしれないが、所詮は人間だ。
力があるだけの人間に殺し合いが有利という事は全く無い。
盗賊だったヤムチャ、その程度の事は把握済だ。
(………出て行って、みるか。)
動かなくては始まらない。
いや、既に始まっている事に対して動き始める。
置いていかれる前に追いついておかないと。
意を決して扉を開いてみる。
扉を開いて――その廊下には何も見えない。
袋小路まで続く長い道、途中にある横の道。
紅だらけ、でも豪華で貴族っぽい中国っぽい内部。
やはり金持ちの家なのは変わり無い様子だ。
銃声が鳴った方向なんて知らない、ただこの先の廊下は危険である。
この先で何が起こったのか?銃声からして良くない事なのは確か。
自分の身が一度果ててるのは分かっている。
ドラゴンボールで一度蘇った者を再びドラゴンボールで蘇らせる事は出来ない。
だから、次の死は即ち永遠の死なのだ。
まだ死ぬ訳にはいかない、だからこんなに怯えているのだろうか?
(とにかく、あまり廊下に長居しない方がいいよなぁ……)
銃声が聞こえたなら、当たり前の考え。
隠れる場所のない廊下にいるのは非常に危険なのだ。
自殺行為に等しい、だからヤムチャは別の部屋でも探索する感じで、
先程の部屋とは違う別の場所へと入る。
「あ―――」
入って直ぐ、人がいた。
怯えている様子の少女がいたのだ。
見て思わず声を小さく発してしまったものの、怯えてる様子から銃声の発生源ではないだろう。
それでも今、この少女に関わるのは非常に危険な気がして――静かに扉を閉めようとする。
だがその行動が意味するのは、少女を信じず逃げるという事。
扉を開いて入らず閉めるだけで、彼女を動かすのは容易だった。
「あああああああ、ううあああああああああああ」
「っ!!」
奇声のような悲鳴が後ろから聞こえたかと思えば、閉めた扉は勢いよく開かれる。
何事かと思う暇も無かった。少女は恐ろしい形相でこちらを見て―――。
その瞬時、ヤムチャは闘う事より逃げる事を選んだ。
完全に狂った様子の彼女と関われば何が起こるか?
考えただけでも恐ろしい、ヤムチャは逃げる事としか出来なかった。
救いは体力があったことか、簡単に少女と距離を置く事は出来た。
だが安心は出来ない。何が少女にあったか知らないがこの館の原因の可能性はあった。
紅の時点で趣味が悪いが、おそらくは少女の気がおかしくなる何かがあの部屋にあったのかもしれない。
(やっぱり、ここは恐ろしいぜ……早く出ないと)
紅魔館から脱出、その意識が高まる。
ヤムチャが走る廊下の先に扉が見える。
他の部屋よりも大きいその扉の先が外か?
辿りついて、その扉を開いて―――――。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
―――二度目の銃声が、紅魔館に響いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「っ!!」
ヤムチャは直ぐに扉を閉める。
幸いにも銃弾は扉に当たっただけでヤムチャには当たっていない。
今、命が消えるかと思った。
扉を閉めて安心するヤムチャだったが、次の一撃が近付いていた。
追いかけて来る少女の姿が、瞳に映る。
(やば過ぎるぞ……!どうすればいい!!)
ヤムチャは直ぐに思考を回す。
答えは3つ、直ぐ横の部屋でやり過ごせるなら少女をやり過ごす道が一つ。
彼女は錯乱状態、周りが見えていないならこの部屋に来ない可能性がある。
だから、やり過ごす道が一つある。
次に二つ、少女をどうにかして越して向こうに逃げる道だ。
少女は武装をしていない、それに特殊能力も無さそうだ。
幾らヤムチャでも負ける事は無いだろう。
最後に三つ、一気に銃弾が襲うこの場を走り抜けて脱出する道だ。
これは危険な判断だが、外に一早く出たいなら有効である。
まさに一か八かの大勝負な訳である。
(……やってられるか!)
ヤムチャは、そこで横の部屋に入る道を選んだ。
だがそれだけじゃない、扉が開いた場合の対処方法もある。
扉が開いたその瞬間を狙って少女を襲って倒す。
そういった奇襲方法、それに勝負をかけた。
ヤムチャは直ぐに行動へ移して、扉を開く。
(来るなら……来いよ!!)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
紅魔館ロビーにて、構える小学生。
天才エリートの出来杉の銃、狙撃銃でも無い。
なのに狙いはかなり良かった、何故こんなにも?
出来杉が幾らエリートでも銃を扱えるのか?
あまりにも不審な彼のエリアに、また侵入者はやって来る。
それを嘲笑うかの様に、出来杉は銃を構えて狙いを定めて――撃つ。
一度は外した、だが今度こそは外れない。
出来杉の持つコルトディテクティヴスペシャル、その銃が鳴く。
―――銃声がなく頃に、生き残れる者は??
扉から出て来たのは、一人の女。
気が混乱していて、状況が読めなかったのだろう。
銃弾は彼女の身体を貫いて、命を奪った。
薄れる意識の中で彼女が何を思っていたか知らない。
恋した男を思ったか、近くにいた男を思ったか、クラスを思ったか。
彼女が体験した残酷なゲームは、あまりにも短い実際の体験版だった。
死体となった彼女を見て、また一つ、笑みを浮かべる出来杉。
あまりにもあっさり減る参加者、面白くて仕方が無い。
次に殺してあげるのは誰にしようか?
考える事は無い、次に現れたらそいつにすればいいのだから。
―――一方、ヤムチャは次に聞こえた銃声で判断した。
扉を開いてみれば、大広間の方の扉が開かれたままだ。
その先を見て――声に出す事は無かったが驚く。
狂気の状態となった彼女は、既に命を散らして事切れていた。
顔はこちらを向いて
――その目は生者を恨む様な感じ。
恐ろしい、ヤムチャは彼女を殺した人物に見つかる前にその扉から逃げて行った。
【篠崎あゆみ@コープスパーティーBCRF 死亡確認】
【H-4 紅魔館ロビー】
【出来杉英才@ドラえもん】
【状態】健康
【服装】私服
【装備】コルトディテクティヴスペシャル(弾数 15/18)
【道具】基本支給品 不明支給品1~3
【思考】基本思考:優勝狙い
1、天才の僕にかかれば優勝なんて簡単……。
2、前に出てきた人から殺してあげるよ……。
【I-5 紅魔館 2階の廊下】
【ヤムチャ@ドラゴンボールZ】
【状態】健康
【服装】拳法着
【装備】なし
【道具】基本支給品 犠牲者の手記@コープスパーティーBCRF
【思考】基本思考:殺し合いはしない。
1、結局ルシフェルは一体?
2、少女を殺した奴を警戒。
3、この館から早く脱出する。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ほぇ?!!」
突然、起き出す。
正直良かった、永遠に眠ってるかと思った。
だが良くない、さっきの銃声でまたしても………。
それに今度は同年代の人だろう、なんて残酷なんだ……。
あの小学生を止めるのは無理に近い筈だ。
今はそんな場合ではないが………。
「こ、ここ何処ですか!?貴方だ――」
いきなりの展開に前の子は慌て始める。
取り敢えず今、騒ぐのは不味い。
その子の口を右手で抑えて、左手は合図をする。
一刺し指を立ててシーと言う、静かにという合図だ。
男の俺がやるのはさぞ気持ち悪いだろうけど、これ以外の合図なんて知らない。
この判断は正しかった様で、察してくれたようだ。
「取り敢えず此処が何処かなんて俺も知らないけど……非常に良くないことが起きてるんだよ」
「は……はい」
静かに話を聞いてくれてる。
……だが、非常に言いづらいよなぁ。
小学生の様な子に殺し合いなんて単語は………。
あえて黙ってたら逆に危ないし言うしかないのだけどな。
「俺は絶対やらない、でも他の人は知らない。だから気をつけてくれ。
今……殺し合いっていうゲームやってるらしいんだ」
「はい……えっと、さっき変な場所で聞いた気がします」
どうやら、記憶にはある模様だ。
なら話は早い、この子もそれ相応の警戒はする筈だ。
自己紹介がまだだったので、しておく。
「俺は佐々木いちろです。まあ、殺し合いはしない」
「あ、
春原芽衣です。少しだけ!ですが、情けない兄がいます」
兄がいるのは予想外だった。
「兄に、会えたらいいな。でも……いない方がいいよな……。」
そう、いれば殺害の可能性が有る。
最悪なパターン、既に殺されたりして?
何はともあれこの子の無事は確保したいのだ。
自分の命はどうでもいいとは言わない、でも他の人にまで呪いを擦り付けたくない。
自分は呪われてしまった、だから七不思議が見えてしまう。
この子も同じ様に呪われるのは御免、責任は自分でとりたい。
芽衣ちゃんの兄とやらもいるなら、さっさと兄を見つけて渡してあげないといけない。
兄が参加していたら―――の話ではあるが。
「佐々木さんは、誰か知ってる人はいますか?」
逆に、芽衣ちゃんが聞いてくる。
知人といえばいる、でも殺し合いにはどうか?
それに話せば芽衣ちゃんの目的を邪魔してしまう可能性がある。
だから―――嘘を吐く。芽衣を思っての事で。
「いない。だから余計な心配はせずに兄を探そう」
「………わかりました」
誰もいない、その言葉で芽衣は思う。
知人がいない様な人―――寂しい人生なんだろう。
こんな人がいる、なら兄である春原陽平、兄は幸せな生活だなって思う。
岡崎さんという友人がいるなら、飽きない学園生活を送っているんでしょう。
つまりはそういうこと、だから芽衣はいちろの暗い人生をどうにか明るくしたいと思う。
(やってやるです!!)
と、何処かの新軽音部員の言葉を心で叫ぶ。
そんなこんなで、二人のやり取りは出来杉には聞こえなかったらしい。
これからどうするか?二人は小声で話し合う。
兄を探すとして、何処へ行くか等の話し合いだ。
ただ、いちろは既に芽衣に伝えた。
あの場所にいる少年に近付くのは危ない為、遭遇しない様にしようと。
言う事はひたすら信じ続ける芽衣、いちろは心配が余計に募る。
少々、騙されやすいのかもしれない。他人の言う事には気をつけるしかない。
「……まずは、館内を探してみるか」
「はい!」
二人は、芽衣の兄を探す為に別の出口を探す。
―――が、問題が生じる。
今、二人共その事に気がついた様であった。
―――そう、出口は一つ。出る事が出来なかった。
【I-4 紅魔館 2階一室】
【佐々木いちろ@いちろ少年忌憚】
【状態】健康
【服装】制服
【装備】なし
【道具】基本支給品 不明支給品1~3
【思考】基本思考:芽衣を守ると同時に、芽衣の兄も探す。
1、あの子(出来杉)を何とかしたい。
2、芽衣が決める事なら別になんだっていい。
3、芽衣が騙されない様に警戒しておかないと。
4、出れない?!
【I-4 紅魔館 2階】
【春原芽衣@CLANNAD AFTER STORY】
【状態】健康 眠っている
【服装】私服
【装備】なし
【道具】基本支給品 不明支給品1~3
【思考】基本思考:兄を探します!!
1、兄を探す。
2、いちろさんが元気になれる様にしたいな……。
3、出られない?!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一方、ルシフェルも出来杉のいるロビーの扉にいた。
あの場所に見える少年がしっかり少女を殺したのは確認済だ。
そんなルシフェルは死にに行く様な事は決してする気は無かった。
対処はめんどくさそう、だから奇妙な事を仕掛けて逃走してみるか。
少年を音でおびき出して、その隙に外へ出る――あるいは別の出口を探す。
どちらが早いかと言えば前者、だから行動を移す。
(さて、勝負だな。まあ、いい勝負になる事を願うよ)
―――扉の音が、鳴り響いた。
【I-5 紅魔館 1階の廊下】
【ルシフェル@El Shaddai - エルシャダイ -】
【状態】健康
【服装】普段着
【装備】なし
【道具】基本支給品 TDNアーマー@ガチムチパンツレスリング 魔女の隠し黄金一個@うみねこのなく頃に
【思考】基本思考:???
1、あの方達には今度、付き合ってもらうよ。
2、勝負しようじゃないか。
※篠崎の遺体の近くにデイパックもあります。
【TDNアーマー@ガチムチパンツレスリング】
歪みだらけの、ダーク♂アーマー。かなりセンスの良いVAN様。
【魔女の隠し黄金一個@うみねこのなく頃に】
黄金の魔女ベアトリーチェの碑文を解いた者に与えられる。
黄金一個の価値は高いかもしれないが、バトロワでは役立たない。
ただ重いだけ。きひひひひひひひひひひひ。
【コルトディテクティヴスペシャル@現実】
1927年に発売されたコルト社製の小型リボルバー拳銃。
「ディテクティヴ」とは「探偵、刑事」を意味し、私服の警官や探偵の護身用として設計された。
最終更新:2011年03月14日 21:27