なんというものを支給してくれたんでしょう
草原。暗闇に覆われた光の少ない場所。
遠くからの微かな光が草原を不気味に照らす。
陽は昇っていたならば一目につきやすい場所なのだろう。
隠れ場所、木すらも周辺にない。
あるのはただ一面に広がるあまり長くない草。
つまりそれが草原。こんなところで寝たらさぞ気持ちよさそうだ。
ということで寝ている人物が一人、いる訳である。
時刻00:00。バトルロワイアルの開始時刻。
驚く程ピッタリ、その人物は起床した。
主催者がどんなマジックを使ったとでもいうのか知らないが……。
本人はそんな事を知る筈も無く、起きたばかりの頭を回転させる。
第一にさっきの内容を思い出す。
一番印象に残ったのは視覚的に見せられてしまった命が途絶える瞬間。
夢にしても最悪なあのシーンが第一に頭に出てくる。
あんな光景、後々何度かフラッシュバックしてきそうである。
次に何かのゲームの説明のようなものをされた気がした。
内容は実に悪趣味なもの。人の命を奪いあうというもの。
細かなルールを言われて頭が追いつけなかったがそんな事があったのは思い出した。
………勿論、先に説明した後に実際に死を見せられた。
そんな正しい順番から思い出す訳じゃない。それ程に第一の印象が強いということ。
そして目が覚めた。そこには星々が広がり月が映りと綺麗な光景が広がっていた。
空が見えている事から此処が外であることを認識する。
まだ完全には起きてない頭と身体を無理矢理動かし、立ち上がろうとする。
特に体調が崩れるといった類は無く難なく立ちあがった。
それから頬を抓る。痛みを感じた。つまり夢じゃない。
さっきまでの事は本当。これから殺し合いをするのも本当。
………いや、まだそうとは決めたくはなかった。
本当に人と人が武器を持って争う姿を見るまでは認めたくなかった。
当然だ。そして、いつの間にか置いてあった鞄のようなものの中身を見て更に認めたくなくなった。
中には名簿+筆記具に地図、食料と水、明りを照らせるもの、そして誰かの携帯電話。
携帯電話で連絡でも取ろうかと頭に浮かぶが、こんな場所じゃ圏外だろう。
だからそれよりも先ず取り出したのは名簿。嫌な予感がしたから。
それは的中した。そこには誤字一つも無く、参加者達の名が書かれてあった。
勿論参加者の中に知人だっていた。変なゲームの参加者にされていた。
「歳納………京子………!?いや、ごらく部の部員全員と私が………!?
うう、嘘でしょ?そ、そうよ!そんな事起きてる訳無い無い!!」
絶対に信じたくない。殺し合いなんてしてると信じたくない。
ただの一般人なのに、こんな悪趣味なゲームに呼ばれる筈が無い。
でも痛みを感じた。夢じゃないのは自分で確認してしまった。
まだ殺し合いしてるときまった訳じゃない。ただの悪戯かもしれない。
あの
歳納京子の面白半分の悪戯で殺し合いに参加させられてる感覚にされてるだけ。
そんなゆるゆるとした理由で今、自分はこんな自然の中にいるのだと信じたい。
………でもそれは暴論過ぎる。歳納京子は紛れも無い一般人。
いや、ごらく部の部員も……もっと言えば七森中の生徒全員が一般人だ。
たった一人といえども夢の中身を操れる能力を持っている筈が無い。
それならこれは自分自身がただ見てるだけの夢である可能性もある。
でもそれもまた否定したい。こんな悪趣味な内容の夢を自分が見る何て嫌。
自分は普通に生徒会長として役目を果たしたり、テストの順位で歳納京子と対決したり、
たまには仕方なくごらく部につきあってあげたり、そんな普通過ぎる思考の人間。
突然殺し合いをする夢なんて見るきっかけなんて何処にも見当たらない。
じゃあ、こんな事が起きるのは何故なんだろう?
説明出来る筈が無かった。夢じゃないにしても呼ばれる理由は不明。
夢でもこんな内容の夢を見る理由、きっかけが不明。
何もかもが不明な中、生徒会長は殺し合いを認めない。
先程心で言った通り、人と人が殺し合いをしてる姿を見るまでは―――。
ここで少し深呼吸。
七森中生徒会長さんはここで落ち着いて考える内容を変更させた。
(取り敢えず歩き回って調べてみたほうが良さそうね………。
そ、それに……歳納京子っ…ごらく部の皆も心配だから探したいし……。
私が傍にいないと、特に歳納京子は何をするかわからないし……。
べ、別に傍にいたいって訳じゃぁ……ないけど………仕方ないから探すだけ!)
生徒会長さんが思った通り、取り敢えず探索することにしたらしい。
べ、別にそうじゃないらしいけどごらく部の皆――特に歳納京子が心配。
だから探すという目的と一緒にこの現象について調べるという。
流石は生徒会長というか、その辺りはしっかりしていた。
ただ一人でそんなこと心で言ったから顔は少し赤面状態だった。
まったく、可愛らしい生徒会長さんだぜ!
と、一歩踏み出してからそういえばと思い出す。
圏外だからと放置していた誰かの携帯。
持ち主が特定出来ないかと勝手ながら見させてもらった。
「っ!!??な、ななな、なにこれぇぇぇ!??」
開いて出てきた"ソレ"に生徒会長さんはうっかり携帯を地面に落としそうになった。
"ソレ"が生徒会長さんにとってはあまりにも予想外過ぎたものだったからだ。
"ソレ"とは、生徒会長さんと歳納京子の二人がメインに映った画像。
ごらく部の面々も揃って―――………一人少ないような気がした。
でもよく撮れてる一枚だった。もし自分の携帯にこれがあったなら………。
無駄な思考を働かす前に、何でこんな画像の携帯が鞄の中にという疑問が抱かれる。
歳納京子の携帯はこんなんだった記憶は無い。携帯変えたのだろうか?
しかしこれで確定した………?歳納京子がこの画像を待ち受けに?
「そそ、それって……あ、あっちも私の事が……が…がが………」
生徒会長さんは赤くなる。とにかく赤くなる。
嬉しいが、嬉しいのだが恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。
相手がそんなに自分の事を思ってただなんてと………。
生徒会長さんは暴走の後にハッとなって携帯をゆっくりと見た。
「………メール一件?……み、見てみようかしら……?
き、気になっちゃうものは……し、仕方ないわよね?!うん、見る!」
そしてメールを閲覧して―――生徒会長さんに更なる混乱を招かせた。
「私宛……?えっ、これ私の携帯だったの?………ま、まあいいわ。えっと何々……。」
先ず気付いたのは、これが自分の携帯電話であったということ。
まあそうだったんだ程度で、これは混乱を招かない。
ただそのメールの内容が混乱を呼んだ。
『
杉浦綾乃様。貴方は参加者50名の中、未来日記所有者の1名に決定致しました。
貴方の未来日記は、『生徒会長日記』。生徒の代表的存在の貴方はこの会場内にいる
学生の数を知る事が出来ます。学生が殺害された場合はその数も減ります。
貴方の未来日記に記される内容は出会う生徒との対応によって起こる現象。
その対応に背いた行動を取れば未来は変わります。また、貴方の行為が他の未来日記所有者の
未来も変える場合があります。当然、貴方の未来も他の所有者の行動次第で変わります。
そしてこの未来日記は貴方の心臓と同じようなもの。この携帯が壊された場合、
貴方はこのゲームに敗北したと見做され、貴方の存在は消滅してしまうでしょう。
例外もいますが、大体の所有者も同じく未来日記が壊されてしまえば消滅してしまいます。
以上を踏まえて未来日記を有効活用しつつこの勝負の覇者を目指しください。』
それを読んで、綾乃は黙ってしまった。
未来が書かれた日記?嘘臭い話ではある。
でも冗談とは思えない内容。そして、この携帯は命同然ということ。
今さっき落としそうになった携帯をもし落として壊してしまっていたら……?
考えただけでゾッとした。内容が本当なら、これはとんでもないもの。
未来が分かると共に守るべきものが二つに増えてしまった。
有力な武器ではあるが………あまり頻繁に出さない方がいいだろう。
綾乃はそう思って、先の未来を記す未来日記を少し見て鞄にへと閉まった。
以外と丈夫そうな鞄なのでちょっとやそっとでは壊れない筈。
(……じゃ、行こうかな。)
綾乃は今度こそ歩き始めた。
………そして、後ろからガサガサと音がしてくる。
「何っ……!?」
慌てて振り返って見たものは………一言でいえば化物。
この世の動物とは思えない何かがそこにはあった。
その動物はこちらを見たまま、頷くのみだった。
襲ってくる様子は無かった。でも綾乃に近付く勇気は湧かなかった。
関わらない方が身の為だと思ったから、だから急ぎ足で逃げようとした。
………でも、タイミングよく鞄から何かの紙が落ちた。
たかが紙など放っておいても良かったが、まだ読んでないものだ。
情報となるかもしれないから捨てる訳にはいかず、直ぐに拾ってそれを読む。
そして全てを理解した。
『このモンスターはクリーパー。別名、リフォームの匠と呼ばれています。
彼の今までは独創的で、破壊のスペシャリスト。開放的な空間を作るのを得意としております。
今回、彼は貴方の支配下となってやって参りました。貴方の命令には従順です。
可愛らしい匠を、飼ってみませんか?貴方の近くでは自爆しませんよ?』
そう、リフォームの匠。破壊のスペシャリスト。
自爆するらしいが、綾乃の言う事を素直に聞いてくれる。
つまりこれは支給品。予想外過ぎる第二の支給品。
勝手に後ろについてくるのは、これが理由だった訳だ。
綾乃は思った。思わざるをえなかった。
未来日記という第二の命、そして自爆する従順なペット。
(なんてものを支給してくれたのよ………!)
やれやれ、と思いつつも綾乃は匠を引き連れて歩き出した。
匠はその後をちょこちょこと無言のまま綾乃の後ろについていった。
一人と一匹の冒険は今、始まったばかりである。
【C-4 草原・一日目/深夜】
【杉浦綾乃@ゆるゆり】
【状態】健康
【服装】七森中学校制服
【装備】なし
【道具】基本支給品 生徒会長日記@オリジナル未来日記 ペット用クリーパー@Mine craft
【思考】基本思考:今起きてる事を調べると共に、ごらく部の皆を探す。
1、なんてものを支給してくれたのよ……!
2、歳納京子を特に心配………してる訳じゃ、ないん……だから!
3、人と人が殺し合いをしてる光景を見るまでは殺し合いを信じない。
※未来日記所有者に選ばれました。
※【生徒会長日記@オリジナル未来日記】
生徒の代表的存在な為、会場内にて生存している学生の数を知る事が出来る。
学生が殺害された場合はその数も減る。それが放送後か死亡直後かは不明。
未来日記に記される内容は先々にて出会う生徒との対応によって起こる未来。
出会う生徒名が分かるかは不明。外見だけかもしれないし、名前も含まれてるかもしれない。
※【ペット用クリーパー@Mine craft】
皆が大好なあのリフォームの匠ことクリーパーがペットとして扱える!
飼い主の元じゃ自爆せず、言いなりになってくれる。
何も言わなければ取り敢えず主の後をついてきてくれる。
破壊のスペシャリストなので、破壊に関しては一流。
最終更新:2012年05月13日 19:01