第8話 強者 前編
私達は順調に勝ち進み、とうとう決勝にまで進むんだ。
決勝で戦うのは、今試合があっている教官チームの勝者の様だった。
べ「私達が戦っても、勝てないかもしれませんね。」
ゼ「今あっている試合が、事実上の決勝戦だと思うよ。」
沙「例え勝てないとしても、逃げる訳には、いかないんです!」
張文遠さん率いる【兵共の集いチーム】と、やふやふさん率いる【チーム・
アマテラス】
教官達の試合には、毎回違ったルールが用意されている様だった。
この試合では、チームから代表者1名を出し合い、1対1の試合で勝敗を決めるらしい。
そして……その代表同士の戦いが、始まろうとしていた。
張「張文遠、推して参るッ!」
兵共の集いチームの代表は、張文遠さん。
対するチーム・アマテラスの代表は……。
ス「楽しませてくれよ、張ッ!」
両チームとも示し合わせたかの様なウォリアー対決である。
べ「沙羅さん、張文遠さんとスモーキーさん、どちらが勝つと思いますか?」
沙「…分からない、二人とも凄く強いからね。」
ゼ「そろそろ、始まるみたいだよ。」
代表同士がクリスタルに近づいた。
そして、二人とも倒れた。
どうやら、二人の意識がクリスタルの中に飛ばされたようだ。
少しすると、クリスタルに二人の姿が映し出された。
どうやら、試合の勝敗を決める審判は居ないようだった。
や「気になりますか?」
やふやふさんが私達の所まで来た。
沙「はい、決勝の相手ですからね。」
そこでやふやふさんはクスッと笑った。
沙「やふやふさんは、張文遠さんとスモーキーさん、どちらが勝つと思いますか?」
私は気になり、質問してみた。
すると、やふやふさんが真剣な顔になった。
や「分からないわ。私はスモーキーさんを信じてるし、多分この試合は勝つと思うわ。
でもね、3ヶ月間戦場に立っていないから、そのブランクが気になってるの。」
3ヶ月……普通に謹慎していたなら、相等腕が落ちているはず。
だけど、スモーキーさんは1日たりとも訓練をサボった事は無かった。
沙「勝ちますよ、きっと。3ヶ月間一緒に訓練したんですから。」
ヌ「どうなんだろね、今日のスモさんからは何時もの殺気がまったく感じられないし…。
まあでも、張さんなら良いリハビリになるんじゃないかな?」
何時の間にか、私達の後ろにヌアージュさんが居た。
そして、
ゼノ君に抱きついていた。
ゼ「な、何するんですか、放してください!」
ヌ「何で?! 久しぶりのゼノ君なんだよ、もうちょっと良いでしょ?」
ヌアージュさんがゼノ君に抱きついて居るのを見て、やふやふさんから冷たい殺気が出てきた。
や「…ヌアージュさん、そうゆうのは決勝戦でしてくれないかしら?」
やふやふさんがそう言うと、ヌアージュさんは慌ててゼノ君を解放した。
ヌアージュさんも恐れる殺気…。
近くに居た私は、身も氷るようなものを感じた。
張「張文遠、いざ参るッ!」
不意に、辺りが騒がしくなった。
どうやら二人の戦いが始まったようだ。
先に仕掛けたのは張文遠さんの様で、スモーキーさんに対し容赦無い猛攻をしかけていた。
張文遠さんの怪力は、生徒の間でも噂になっていた。
その怪力から繰り出される猛攻に対し、スモーキーさんはじりじりと後退していった。
そして、ついに張文遠さんのバルディッシュが、スモーキーさんの頬を掠めた。
それを確認したのか、張文遠さんはスモーキーさんとの距離をとった。
沙「せっかくの優勢を、どうして張文遠さんは退いたんですか?」
せっかくの優勢なのである。
普通はそのまま攻め続けると思っていた為、少し疑問に思った。
すると、横に居たやふやふさんが笑い始めた。
沙「な、何が可笑しいんですか?!」
私が聞くと、やふやふさんが不敵な笑みを浮かべた。
や「さすがは張さん、眠れる獅子をこうも容易く起こしてくれるなんてね。」
眠れる獅子?
そうこうしている内に、スモーキーさんの様子が変わっていた。
目が何時もの黒目ではなく、まるで野獣の様な目になっていた。
そして、不意にスモーキーさんが笑った。
ス「…生温いな。どうした、何時ものお前ならそのまま攻め続けるだろう?」
張「本気でないお主を倒したとて、面白くは無いからな。」
お互いに手に持っている武器を構えた。
そして次の瞬間、二人の姿が消えた。
何処に居るんだろうか?
武器同士がぶつかる音は聞こえるのに、二人の姿が見えない。
クリスタルに映し出されている映像を見渡したが、何処にも居なかった。
や「見えますか?」
不意にやふやふさんがそう言った。
沙「やふやふさんには見えるんですか?!」
驚いてやふやふさんを見ると、しきりに視線が行き来しているのに気付いた。
……まさかッ?!
私はクリスタルに映し出される映像に目を凝らした。
集中して見ていると、薄っすらとではあるが、二つの人影が見えた。
沙「……目を凝らさないと見えない位の速さで戦ってるなんて。」
や「薄っすらとでも見えたのなら、合格です。」
張文遠さんの戦いは見たことはあるけども、此処まで素早く戦闘できるとは思わなかった。
10分位経った頃、不意にスモーキーさんの動きが止まった。
動きの止まっているスモーキーさんに対し、張文遠さんがバルディッシュを振り下ろした。
バルディッシュがスモーキーさんを両断したかと思うと、張文遠さんが弾かれた。
沙「…え? 何で張文遠さんが弾かれたんですか?!」
訳が分からなかったが、クリスタルの映像を見て気付いた。
両断されたはずのスモーキーさんが…立っていたのだ。
や「気付きましたか?今のはスモーキーさんの得意な技の一つです。」
ス「…スモーキー化術が一つ、空蝉。」
弾き飛ばされていた張文遠さんが立ち上がった。
張「さすがスモーだな、少しの間に本調子にまで戻してくるとは。」
ス「次で…決めるッ!」
二人がゆっくりを武器を構える。
や「沙羅さん、次の一撃をよく見ていてください。」
沙「はい!」
張「行くぞ、スモーッ!」
ス「スモーキー槍術奥義・破槍ッ!」
一瞬にして二人が交差し、一人が倒れた。
今の一撃で、二人の長い戦いに終止符が打たれたのだ。
そして、その場に立っていたのは……スモーキーさんだった。
や「勝ちましたね。という事は決勝で沙羅さん達を相手にするのは、私達という事ですね。
…楽しみにしてますよ。」
やふやふさん達は笑いながら去っていった。
これが…教官達の実力なのね。
私は言い表せない様な不安と、胸の高鳴りを感じた。
最終更新:2008年05月10日 13:46