スモーキーさんと兵士が戦い始めてもう何十分経っただろうか。
両者の力量は互角の様だった。
それもそうだ。
3年前のスモーキーさんと現在のスモーキーさんなのだから。
しかし時間が経つに連れて、段々スモーキーさんが押されてきた。
不意に兵士が後ろに退いたと思ったら、その場所からスモーキーさん目掛けて突進してきた。
スモーキーさんはそれを待っていたかのようにフェンリルを構えた。
「何人たりとも隊長に触れさせはせん!」
兵士の突進はスモーキーさんに命中しなかった。
正確には、スモーキーさんが空蝉で避けたのだ。
ス「…なるほど。隊長が言ったあの時ってのは、あの時か。」
スモーキーさんがポツリと言葉を漏らした。
ス「お前らもうちょっとさがれ。ここから半径10mは戦闘区域だ。」
言われたとおりに後ろにさがり始めた。
しかしその時、スモーキーさんは兵士の渾身の力が籠められた拳で殴り飛ばされた。
沙「スモーキーさん!」
私が叫ぶと、兵士が私達の方を向いた。
「次はお前達だ。」
兵士がこちらに向かって走ってくる。
ゼ「やばいよ、逃げなきゃ!」
あのスピードから逃げるのは不可能だね。
それなら!
沙「皆は逃げて、私が時間を稼ぐからッ!」
私は盾を構えて兵士の体当たりを防ごうとした。
「その程度の盾でこの俺の攻撃を防げると思っているのか?!」
どんどん兵士の足音が近づいてくる。
しかしその足音は私の手前で止まった。
ス「お前の相手はこの俺だ。関係ない奴に手を出してんじゃねえッ!」
兵士の拳が私に当たる寸前でスモーキーさんが止めた。
そして今度はスモーキーさんが兵士を殴り飛ばした。
「この程度で俺は死なねえぞ!」
ス「うるせえ!」
スモーキーさんが兵士に向かって走った。
そして兵士の近くまで行くと、兵士の攻撃をかわして顔に殴りかかった。
パンチは見事に命中した。
しかし兵士は平然とした顔のままだった。
「軽い、守るべきものを持たぬ者の拳など軽すぎる。」
すると今度は兵士がスモーキーさんに殴りかかった。
「覚えておけ、これが守るものが居る者の拳だ!」
先ほど同様に渾身の力を籠めた拳でスモーキーさんに襲いかかった。
しかしスモーキーさんは微動だにしなかった。
また殴り飛ばされる。
そう思っていたが、スモーキーさんは飛ばなかった。
「何ッ?!」
ス「うるせえぞさっきから守りたいもの守りたいものって。
俺にだってな、守りたいものがあるんだッ!」
そして、スモーキーさんが兵士を殴り飛ばした。
…どうゆう事?
べ「おそらく、あれが教官の本気なのでしょう。」
レ「じゃあ今まで本気じゃなかったって言うの?」
ゼ「僕達全員の合否が係ってるって言うのに?!」
沙「…違うと思う。」
私が言うと、皆が私の方を向いた。
私はさっき助けられた時のスモーキーさんの目を思い出した。
沙「あの目は……本気の目だったよ!皆もスモーキーさんを信じようよ!!」
キ「そうね。ここは教官を信じて応援しましょう!」
皆でスモーキーさんに向かって叫んだ。
沙「スモーキーさん、頑張って!」
べ「教官、頑張ってください!」
ゼ「そんな兵士さっさと倒しちゃってください!」
キ「教官の本気を見せてください!」
レ「負けたら承知しませんからね!」
私達の声援が届いたのか、先ほどから兵士と殴り合っていたスモーキーさんが振り向いた。
「戦闘中に余所見をするとは、俺をなめてるのか?!」
兵士の拳がスモーキーさんの顔目掛けて振られた。
しかしその拳をスモーキーさんは片手で止めた。
ス「もういいだろ、そろそろ終わりにしようぜ。」
スモーキーさんはフェンリルを構えた。
「来い、次の攻撃がお前の最後だッ!」
怒声と共に二人が交差した。
そして、兵士だけが倒れた。
ス「お前が背負ってるものの重さは知っている。
だが今の俺が背負ってるものは…それよりも重いんだ。」
そう言うと、スモーキーさんは倒れた。
沙「スモーキーさんッ!」
私は倒れたスモーキーさんの所に駆け寄った。
沙「大丈夫ですかスモーキーさん?!」
すると、スモーキーさんがゆっくりと右手を上げた。
ス「勝ったぞ、これでお前達全員合格だな。」
や「まったくもう、スモーキーさんの省でせっかくの計画が台無しです。
でも賭けは賭けですから、約束通り貴方達全員合格です。」
ゼ「やった!僕達全員最終試験に合格だ!!」
べ「ありがとうございます、教官!」
皆が喜ぶ中でスモーキーさんとやふやふさんは何処かに行こうとしていた。
沙「何処に行くんですか?」
私は不思議に思ったので聞いた見た。
ス「何処ってお前な、試験受けてるのはお前達だけじゃないだろ。」
や「そうですよ。まだまだ生徒さんが残ってるので私達はまだ戻れません。
それにしても…スモーキーさん、やはり貴方は恐るべき人ですよ。」
ス「あれが隊長が創造した俺だから勝てたんだよ。
本物だったら、俺は死んでるぜ。」
や「まったくもう、これで私の護衛が居なくなったじゃないですか。
責任をとって護衛してもらいますからね!」
ス「はいはい、分かってますって。
…っとその前に」
スモーキーさんが私達に近づいてきた。
ス「お前らは先に戻ってろ。」
スモーキーさんがゼノ君の頭に触れたかと思うと、ゼノ君が光となって消えた。
レ「ちょ、ちょっと待ってよ!どうして消されるのよ?!」
ス「元の世界に戻るにはこれしかないからな。」
そう言うとレインさんの頭に触れた。
レインさんもゼノ君同様に光となって消えた。
べ「出口が無いから仕方ないですよ。」
キ「そうね。」
今度は二人同時に光となって消えた。
そして最後に、スモーキーさんは私に近づいてきた。
ゆっくりと私の頭に手が置かれた。
私は、自分の体が光に包まれていくのを感じた。
スモーキーさんが私に向かって何か言っていたが、よく聞こえなかった。
ただ、スモーキーさんが笑っているのだけは分かった。
最終更新:2008年08月14日 14:12