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闇に差した光





大地に一人の兵士が立っている。
その兵士はしきりに辺りを見ている。

「…くそ、何処に居る、出て来い!」

どうやら私を探しているようだ。
そんなに死にたいのかしら?
私は音をたてずに兵士の後ろに回った。
そして

ヌ「お望み通り殺してあげるわッ!」

「何ッ?!」

兵士の体に短剣を突き刺した。
しかし、まだかすかに息をしているようだった。

「ハァ…ハァ、マリア……。」

ヌ「あらあら、恋人の名前かしら?大の男が情けない。」

「……ッ!」

何の躊躇いも無く、兵士の心臓を突き刺した。

ヌ「これで13人目ね。この調子で行けば、20人行けそうね。」

この戦争で私は、17人の命を奪った。
しかし私の頭の中には、次は如何にして殺すかしかなかった。



首都に帰り、宿舎で昼食をとろうと思った。
私が食堂に入ると、賑やかな声が一変した。

「…ちッ、死神が来たぜ。」

「せっかくの飯が不味くなっちまったぜ。」

「あんなの野外で飯食ってれば良いんだ。」

面と向かって言ってはないが、全て私に向けての言葉だと分かった。
しかし、そんな事には慣れてしまった。
幼い頃に兵士として出され、その時始めて人を殺した。
犯らなければ犯られる。
私は生きる為に敵を殺してきた。
私の心は、深い闇で覆われていった。
いつしか私は、死神と言われるようになった。
私に関わろうとした人がどんどん死んでいったからだ。
しかしそんな事は私には関係ない。
ただ彼らが弱く、私と関わってすぐに戦死しただけだ。
私が食事を終えて、食堂から去ろうとした時だった。
周りの視線とは違う視線を感じた。
私は振り返り、その視線の主を探した。
すると、私の事をじっと見ている女性を見つけた。
しかしその目は、私を責めてはいなかった。
私と目が合ったのを確認したのか、ゆっくりと立ち上がった。
女性が立ち上がった瞬間、私は食堂から逃げ出してしまった。
恐怖を感じた訳でもないのに、体が勝手に逃げたのだ。




それから数日…。
相変わらず私は戦場に立っていた。
しかし頭の中は、あの女性の事でいっぱいだった。
一度しか会っていないが、不思議とまた会いたくなった。
しかしその思いを、心の声が止める。
シンジテハイケナイ、ドウセマタウラギラレル。
違う、彼女は裏切ったりしない。
ナゼソウオモウノ?
…分からない。
でも、何故かそう思えるの。
アナタハシニガミ、ダレニモウケイレラレハシナイワ。
違う、彼女は違うわッ!
ソウオモッテイレバイイワ、ウラギラレテツライノハアナタ。
終戦と同時に私は首都に戻り、一目散に食堂へ向かった。
しかし、彼女の姿は無かった。
そして、相変わらず私への陰口が聞こえる。
ホラネ。
うるさい!
私はそのまま食事をとった。
もしかしたら彼女はもう戦死しているのでは?
そう思い始めた頃だった。

?「あの、この椅子を使っても良いでしょうか?」

誰かが椅子を借りに来たようだ。
私は下を向いたまま、素っ気無い返事をした。

ヌ「どうせ私のじゃないし、勝手にすれば。」

?「そうですか。」

すると、椅子を持っていくでもなくそのまま椅子に座った。
私が驚いて顔をあげると、あの女性が座っていた。
私が慌てて立ち去ろうとするのを止めた。

?「待ってください。…少し、お話しませんか?」

お話?
いったい私とどんな話をするというんだろう?
私が黙って聞いていると、世間話や最近の流行等を話してきた。
くだらないとは思ったが、何故か席を立とうとは思わなかった。
1.2時間ほど話したところで、不意に周りが騒がしくなった。

「ラインレイ渓谷にネツァワル軍が接近中。
 兵士は直ちにラインレイ渓谷に集結せよッ!」

ネツァワル軍がラインレイ渓谷に?

?「行きましょう!」

言われるまでもないっと思った。
私達は急いでラインレイ渓谷に向かった。
既に中央の谷で両軍は対峙していた。

?「何してたんだよ隊長、既に戦闘は開始してるぜ!」

?「のんびりしてると殺されますよ?!」

?「ごめんなさい。」

私が僻地に向かおうとするのを、彼女がとめた。

?「今僻地に行くのは危険です。
  私達と一緒に行動しましょう。」

少しむっとした。
他人に命令されるなど始めてだったからだ。

ヌ「名前も知らないのに、命令しないで!」

?「お前、隊長が優しくしてるからって調子に乗りやがって!」

?「そうよ隊長。死神と行動を共にした人は、皆その戦場で戦死してるのよ?」

?「やふやふさん、本気ですか?!」

や「黙りなさい、この人は死神なんかじゃありませんし、誰も死なせはしませんッ!」

私は驚いた。
誰もが私を見れば、死神と言っていたからだ。
……信じても良いのだろうか?
私は賭けて見る事にした。

ヌ「私が死神じゃないですって?だったら証明してみせてよ。
  この戦争でこの中の誰一人として死ななかったら、私は一生貴方にだけ従うわ。」

や「…分かりました。私の名前はやふやふです。」

二「不本意だが、隊長命令なら仕方ない。俺の名はニッシンだ。」

恋「私は桜塚恋。恋でいいわ。」

理「理奈です、よろしくお願いします。」

や「行きましょう、一日でも早く平和を訪れさせる為にッ!」

二・恋・理「「「了解」」」



結局その戦争は、誰一人死ぬことなく終戦した。
私は賭けに負けたのだ。

ヌ「私の負け……か。」

しかし、彼女は顔を横に振った。

や「いえ、私の負けですよ。貴方が居なかったら、私は死んでいたでしょうし。」

確かにそうだけども、結果的には彼女の勝利だ。
しかしそれを自慢するでもなく、私が居たから勝ったと言う。
…この人に一生ついて行こう。

ヌ「どちらにしても、私の負けね。約束どおり、死ぬまで貴方だけに従うわ。」

や「従うだなんて、皆で一緒に戦いましょう。」

その時始めて、私の心に光が差した気がした。

や「せっかくですから、部隊に入りませんか?」

ヌ「どんな部隊名なの?」

や「天をも照らす光。アマテラスです。」

……天をも照らす光か。
どおりで深い闇で覆われた私の心に光が差すはずだ。



これ以降、ヌアージュはやふやふを影で支えた。
ヌアージュが沙羅達と出会うのは、それから数年後のことである。


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最終更新:2008年11月03日 22:14