アットウィキロゴ



第11話 沙羅の決断 後編





タマライア水源に着くと、ネツァワル軍との戦闘が始まっていた。

沙「着いた。」

どうやらスモーキーさんは前線に行ったようだった。

の「あら、沙羅ちゃんじゃない。」

キープ近くのクリスタルに、のーくんでぃさんが居た。

沙「のーくんでぃさんだけですか?」

の「私以外にも、張さんが居るよ。」

戦争中だというのに、何故かのーくんでぃさんは嬉しそうだった。

沙「何か嬉しい事でもあったんですか?」

私が不思議そうに見ていると、のーくんでぃさんが笑った。

の「実はね、この戦争を最後に……兵士を引退するの。」

沙「え?!」

私が驚くと、またのーくんでぃさんが笑った。

の「この戦争が始まる前に、張さんにプロポーズされたの。」

そう言って左手を見せてきた。
よく見ると、薬指に指輪の様な物が見えた。

沙「それなら、何でこの戦争に参加してるんですか?」

私は疑問に思ったことを率直に聞いてみた。
プロポーズまでされて、何故危険な戦場に立つんだろう?
のーくんでぃさんは少し悩んだが、また笑った。

の「これが私の最後の戦場だと思うと…参加せずには居られなかったわ。」

沙「そうですか。」

その時、不意に後ろから気配がした。
味方の気配では無い。

の「危ない、沙羅ちゃんッ!」

私が振り向くと同時に、のーくんでぃさんが私を横に弾いた。
そしてそのまま、敵スカウトのパニッシングストライクを受けた。
敵スカウトの短剣が、のーくんでぃさんの胸に突き刺さった。

沙「のーくんでぃさん?!」

「最初の狙いとは違うが、まあ良いだろう。」

敵スカウトが短剣を引き抜くと、のーくんでぃさんが糸の切れた人形の様に倒れた。

沙「許さないッ!」

私が剣で斬りかかろうとすると、敵スカウトが砂をかけて来た。
砂が目に入り、敵スカウトの位置が分からなくなった。

「悪いな、俺はまだ死にたくは無いんでね。」

そう言って、足音が遠ざかっていく。
しかし、すぐにその足音は止まった。
敵スカウトの悲鳴と共に。

?「俺の弟子が世話になったな。」

誰かが敵スカウトを倒したようだ。
そしてそのまま、こちらに近づいてきた。
目に入った砂もとれ、何とか見えるようになると、スモーキーさんが立っていた。

ス「大丈夫か?」

沙「スモーキーさん、のーくんでぃさんが!」

のーくんでぃさんを見ると、出血多量によるショック状態になっていた。

ス「大丈夫だから落ち着け。」

沙「これの何処が大丈夫なんですか?!」

私の言葉を無視し、スモーキーさんはのーくんでぃさんに近づいていった。
近くまで行くと、徐にナイフを取り出した。
そして自分の掌を少し斬り、そこから流れた血をのーくんでぃさんの口の中へ流した。

沙「な、何をやってるんですか、こんな時に!」

しかし、返事は帰ってこなかった。
何かを確認したのか、スモーキーさんが血を飲ませるのを辞めた。
すると

の「…ッ!」

微かにのーくんでぃさんの手が動いた。

ス「これで大丈夫だろう。」

そう言って、スモーキーさんは立ち去ろうとした。

沙「待ってください、…これはいったい?!」

スモーキーさんは嫌そうな顔をしたが、説明し始めた。

ス「知っているとおり、俺はまともな人間じゃない。
  力は常人の何倍も上だし、動きの速さも常人より数倍上だ。
  しかし、速さでは俺はアトラクナクアには勝てない。
  力でも同じ事が言えるな。
  しかし、俺にも他の奴らより優れた物がある。
  のーくんでぃの傷口を見てみろ。」

言われるまま、のーくんでぃさんの傷口を見た。
すると、胸の傷口が完全に塞がっていた。

沙「そんな…まさか?!」

ス「そう、俺の血には、瀕死の人間すら生き返らせることができる治癒作用がある。
  もっとも、瀕死になった時間にもよるがな。
  化け物の様な怪力も速さもあるが、俺の本当の力はこれだ。」

だからシェルン緑地で腹部を斬った時に、瞬時に回復したわけだね。
私が納得したのを確認すると、スモーキーさんは前線に向かっていった。
しかし、少し走ると振り返った。

ス「お前はのーくんでぃをつれて逃げろ。
  もうじき獣人王が現れるからな。」

沙「獣人王って、ネツァワル王国の獣人王ヒュンケルですか?!」

スモーキーさんはにやりと笑ったかと思うと、また前線に向かっていった。
獣人王が来るなんて、本格的にカセドリアを侵略しようとしてるのかな?
私が悩んでいると、不意に肩を叩かれた。
驚いて振り返ると、のーくんでぃさんが立っていた。

沙「のーくんでぃさん、大丈夫ですか?!」

の「また、スモさんに助けられたみたいですね。」

スモーキーさんに助けられたのを分かっているのか、スモーキーさんを見ている。

沙「のーくんでぃさんは、スモーキーさんの本当の力を知っていたんですね。」

のーくんでぃさんは頷いた。

の「最初に助けてもらったのは、5年前のウェンズデイ故戦場跡だったかしらね。
  あの時は張さんが私を庇って重傷を負ってね、その時にスモさんに助けられたの。
  最初は化け物って思ったけど、その後のスモさんを見てたら、人間なんだって思えたわ。」

沙「スモーキーさんが言ってました。
  もうすぐ獣人王が来るから、此処から撤退しろって。」

の「…そう。またあの姫様が遊びに来た見たいね。
  まったく、困った姫様ね。」

沙「どうゆう事ですか?」

の「獣人王ヒュンケルは、娘のエリスを迎えに来たのよ。
  それをカセドリアが侵略と見て戦争になったのね。」

沙「ネツァワルの姫って、獣人王の娘のエリスですか?」

の「何度も遊びに来ては、戦争の火種を起こして行ってくれるわ。」

のーくんでぃさんはやれやれと言った感じで溜息をついた。
何度も遊びに?
それなら何故、カセドリアはネツァワル国と会談しないんだろう?

沙「それだけ何度も来ているのに、何故話し合おうとしないのでしょう?」

の「そうね。カセドリアが連合王国じゃなくて、一つの王国だったらね…。」

…連合王国の中に、ネツァワル国を憎んでいる人も少なからず居るだろうね。
それにしても、何でエリス姫はわざわざカセドリアまで遊びに来るんだろう?
私は前線に向かった。
前線に向かっていると、近くの草むらが動いた気がした。
最初は風か何かだと思ったが、風など吹いてはいなかった。
敵兵?
私は警戒しつつ草むらに近づいた。
すると、小さな女の子が怯えていた。
その子には猫の様な耳と尻尾があった。
この子は……獣人王の娘のエリス?!

沙「貴方は、獣人王の娘のエリスね。」

エリ「お願い、殺さないで!」

この子を獣人王の所へ連れて行けば、戦争は終わるかもしれない。

沙「殺したりしないから、お願いだからついて来て。
  この戦争を終わらせたいの。」

エリ「本当?」

エリスは怯えた顔で私を見たが、そのまま頷いた。



前線に着くと、スモーキーさんと獣人王ヒュンケルが対峙していた。

ヒ「其処を通してもらおうか。」

ス「悪いがカセドリア国民以外、此処は通さねえッ!」

言い終わるのと同時に、二人が戦い始めた。
戦いを止めようとしたが、二人の周りには両国の兵士が居て近づく事が出来なかった。
少しすると、カセドリア側の兵士の中から張文遠さんが出てきた。

張「沙羅ではないか。御主がなぜ前線に居る?」

張文遠さんは新米の私が何故前線に居るのか確認しにきたようだ。

沙「この戦争を終わらせる為です。」

私の後ろに隠れているエリスを見せると、張文遠さんが叫んだ。

張「獣人王の娘のエリスが居るぞッ!」

すると、両国の兵士達が一斉にこちらを向いた。

「エリス様ッ!」

「エリスだと?!」

ヒュ「エリスッ!」

獣人王ヒュンケルがこちらに向かって走ってくる。
エリスを迎えに来たのかと思ったら、私に向かって斧を構えた。
そして

ヒュ「貴様がエリスを誘拐したのかッ!」

そのまま斧で斬りかかってきた。
私は盾も剣も構えていなかった為、防ぐ術がなかった。
間一髪の所でスモーキーさんが私と獣人王の間に入った。
しかしスモーキーさんがフェンリルを構えるよりも早く、獣人王の斧が振り下ろされた。
当然の如く、スモーキーさんの体は斧で斬られた。
そして、スモーキーさんはその場に肩膝をついた。

沙「スモーキーさん?!」

獣人王は無情にもスモーキーさんに止めを刺そうとした。

エリ「お父さん辞めて!私は誘拐なんかされてないよ!!」

二撃目が入るのを、エリスが止めた。

ス「こんな決着をするのは、これで2度目だな。」

スモーキーさんの言葉を無視し、獣人王はエリスを連れて前線を去って行った。




タマライア水源での戦いは、ネツァワル軍の撤退によって終戦となった。
スモーキーさんは、斬られた場所に倒れていた。
いつもならすぐ治る傷が、なかなか治らないようだった。

ス「今日は血を与えすぎた。こりゃ、いつもより時間がかかりそうだ。」

沙「戦争は終わったんですから、ゆっくり治しましょう。
  それにしても、これで2度目と言ってましたが、以前にもあったんですか?」

すると、スモーキーさんが苦笑いした。

ス「あれは、アマテラスに入ってすぐの事だった。
  カセドリアがネツァワル本土に侵攻した時だった。
  アシロマ山麓に侵攻した俺達は、敵陣地の奥地にまで侵攻した。
  その時だ、陣地の中でエリスを見つけたのは。
  そして、あいつを迎えに来た獣人王と戦った。
  あの頃、まだ俺は若造だった。
  俺の全力を出しても、獣人王の攻撃を避けるのが精一杯だった。
  俺と獣人王は周りが見えてなくてな、エリスがすぐ近くに居る事に気付かなかった。
  それに俺が気づいた時は、エリスは俺のすぐ後ろに居た。
  獣人王の攻撃を避けるわけにもいかず、俺はそのまま斬られた。
  しかし獣人王は止めを刺すことなく、戦場から撤退していった。
  俺達もそのままカセドリア本土に戻って行った。
  決着つかずと言ったが、2度とも俺の負けだな。」

沙「そんなことありませんよ!
  …私が居なかったら、どうなっていたか。」

ス「もしそうだったら、俺が死んでいただろう。
  …どうする?」

沙「どうするとは?」

スモーキーさんが笑い出した。
私が何故と言った顔で見ていると、スモーキーさんの笑いがとまった。
そして、呟いた。

ス「……俺を殺すなら今しか無いぞ。
  今の俺なら、その剣で心臓を一刺しするだけで死ぬ。」

沙「そんな…。」

ス「今しか無いんだ!今が、決断の時なんだ!!」

決断の時…。
お父さんを殺した事を恨み、スモーキーさんを殺すのか。
それとも自分を救ったスモーキーさんを助けるのか。
私は……。
剣を置き、バッグを取り出した。
中を探ると、リジェネレートを見つけた。
私はそれをスモーキーさんに飲ませた。
すると、先ほどよりも早く傷が治りだした。

ス「…沙羅。」

沙「良いんです。お父さんを殺された事は確かに悲しかったです。
  でもスモーキーさんは私を助け、ここまで鍛えてくれました。
  これが、私の決断ですッ!
  ……だから、もうこの事は忘れてください。」

言い終わると同時に、スモーキーさんが笑った。

ス「……そうか。」



スモーキーさんの傷が治ると、二人で首都に戻っていった。


気付いたらいつもより長文にw byスモーキー

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年12月13日 10:23