首都に帰る途中で、やふやふさんの姿が見えなくなった。
沙「あれ、やふやふさんは何処に?」
シ「沙羅ちゃん、今は…探さないであげて。」
張「うむ。やふやふ殿も、一人で考え事をしたい時もあるだろうしな。
それにしても、魔物を統べる者がスモーだとはな…。」
シャーウッドさんと張文遠さんは、やふやふさんが居なくなったのを知っていたようだ。
魔物を統べる者は、スモーキーさんかもしれない。
しかし、とてもそうは思えなかった。
暗くて顔はよく見えなかったが、口調や雰囲気が違う気がした。
沙「魔物を統べる者は、本当にスモーキーさんなんでしょうか?」
青「隊長から話は聞きました。私もスモーキーさんではないと思います。
隊長に対して容赦の無い攻撃といい、とてもスモーキーさんとは思えないですね。」
シ「…絶対という保障はできないけど。」
シャーウッドさんが呟いた言葉に、私達は立ち止まった。
張「絶対という保障はできないとは?」
シ「……隊長が見たのは、本当にスモーキーさんだったの?」
張「俺とスモーは長年戦場を共に戦ってきた戦友だぞ?
その戦友を見間違えるとでも思っているのか?」
シ「…もし本物だとするなら、やふやふさんの居る所でこんな事すると思う?」
青「確かに、スモーキーさんがやふやふさんの敵になるとは思えません。」
張「しかし5年の間に何かあって、心境が変わったのやもしれぬぞ?」
シ「……。」
シャーウッドさんは何かを伝えたいが、それを言うべきか悩んでいるようだった。
沙「シャーウッドさん、二人で話しませんか?」
シ「…そうね。悪いけど二人は先に帰ってて。」
二人の姿が見えなくなるのを確認すると、シャーウッドさんが呟いた。
シ「今日現れた魔物を統べる者は、スモーキーさんじゃないわ。」
沙「今…何て?」
何故そう言えるのか、私には不思議だった。
シャーウッドさんは、徐に写真を取り出した。
シ「この写真は、魔物を統べる者を奇跡的に撮れた写真よ。」
その写真を見ると、にやりと笑うスモーキーさんの姿が写っていた。
沙「…やっぱり魔物を統べる者は、スモーキーさんでしたか。」
シ「早とちりしないで。この写真を…よく見て。」
意味が分からなかったが、とりあえずじっくり見る事にした。
しかし、何処を見てもスモーキーさんにしか見えない。
シ「…何か気付かない?」
沙「何も…シャーウッドさんは何が言いたいんですか?」
するとシャーウッドさんは、私の首筋に手を近づけた。
何をするのかと思えば、スモーキーさんから貰ったドラゴンソウルを手にした。
ドラゴンソウル……6年前、私が今よりずっと未熟だった頃に貰った物だ。
最初は、スモーキーさんが頼んだ物だからって断ったんだよね。
でもスモーキーさんも持ってるからって……あれ?
私はもう一度写真を見た。
沙「……あ。」
シ「気付いた?」
写真に写っているスモーキーさんは、ドラゴンソウルを身に付けていなかった。
沙「でも、失くしたか、もしくは捨てたのかもしれませんよ?」
シ「それは無いわ。」
沙「何でそう断言できるんですか?」
シ「ここをよく見て。」
シャーウッドさんが写真の中を指差した。
指差した場所は、スモーキーさんの胸のあたりだった。
シ「微かにクリスタルが見えるのが分かる?」
確かに、胸元にクリスタルのような物が移っている。
そしてその場所は、訓練人形達を起動させるクリスタルの位置だった。
沙「まさか、昨今現れている魔物を統べる者は訓練人形の零番?!」
シ「全部が全部そうとは言えないけど、でもこれだけは言える。
カセドリア側に現れる魔物を統べる者は、スモーキーさん本人じゃないわ。」
沙「確かに、スモーキーさんが魔物を統べる者ではないとまでは言いきれませんね。
でも今は、それだけで十分です。」
首都に着くと同時に、私は宿舎に向かって走った。
宿舎に入ると、集会所の方から大勢の人の声が聞こえた。
集会所の扉を開けると同時に、ニッシンさん達の怒声が聞こえた。
二「あの野郎、見損なったぜ!」
エ「まったくだ。魔物を連れて暴れまわるのはともかく、隊長が居るのに暴れるとは…。」
皆が口々にスモーキーさんの事を罵っているのを感じた。
や「静まりなさいッ!」
やふやふさんの発言に、集会所に居た全員が固まった。
や「私の話を最後まで聞いて。
確かに、スモーキーさんは魔物側に居るようです。
しかし今日見たのは、スモーキーさん本人ではありませんでした。」
二「どうゆう事だ?!」
エ「張の奴がスモを見たって言ってたぞ。いったいどっちが本当なんだよ?」
や「それを今から確かめるんです。」
沙「確かめるって、どうやって?!」
その時、集会所に居た人達が一斉に私を見た。
どうやら私が聞いているのを気付いていなかったようだ。
や「沙羅さんも見たはずです。」
沙「教えてください、どうやってあれがスモーキーさんじゃないって確かめるんですか?!」
すると、やふやふさんが近づいてきた。
や「確か剣心さんが亡くなった後、訓練人形は倉庫の奥に放置していたはずです。」
二「まさか、隊長が見たのは零番だってのか?」
エ「おいおい、部隊の物資を管理してるのはラウだ。
そのラウが物資に変化は無いって言ってたんだぞ?」
ラ「…でも、訓練人形は管理はしてない。」
や「という事は、見に行く価値はありますね。」
やふやふさんを先頭に、私達は倉庫に向かった。
倉庫の扉を開け、訓練人形が置いてある所に向かった。
訓練人形達は見るも無残な姿で横たわっていた。
剣心さんが亡くなった後、整備できる人が居なくなったみたいね。
エ「まったく、何度見ても気味が悪いぜ。」
状態は悪いが、訓練人形の番号は何とか確認できた。
近くの訓練人形から、順番に番号を調べて記録していった。
しかし、何時になっても訓練人形零番は読み上げられなかった。
他にも幾つかの番号が言われていないが、番号が見えない人形も数体あった。
二「ちょっと待て、零番は何処だ?!」
ラ「…見当たらないね。」
や「ここにあるはず無いじゃないですか。」
そう言うと、やふやふさんが奥の扉を開いた。
その部屋には、数体の訓練人形が横たわっていた。
その中の訓練人形の番号をニッシンさんが確認していった。
しかし、零番と他数個の番号は読み上げられなかった。
や「…やはり、そうですか。」
エ「訓練人形は剣心が戦死する前日まで毎日確認されていたしな。
もしかしたらその後に盗まれたのかもしれん。」
二「しかし、一体誰が?」
や「それは、スモーキーさんに違いないでしょう。」
沙「確かに、でもどうやって?スモーキーさんは首都には入れないはずです。」
リ「おそらく何者かが協力したんだろうな。」
何者かが協力した。
スモーキーさんに協力する人……。
思い浮かんだのは、アトラクナクアとユグドラさんだった。
しかし、ユグドラさんはそんな事をする人には思えなかった。
でも、アトラクナクアなら…。
や「とにかく、この事は内密にお願いします。
外に洩れたら、大事ですからね。」
「「了解」」
訓練人形を厳重に保管した後、私は宿舎を後にした。
そして、ユグドラさんの店に向かった。
しかし店に入っても誰も居なかった。
…外出かな?
少しの間待って居たが、ユグドラさんは帰ってこなかった。
あまり遅くなるとお母さん達が心配するね。
一応書置きを残して、私は家に向かった。
家に着くと、真っ先に佐紀が抱きついてきた。
佐「おかえり、お姉ちゃん!」
沙「ただいま。」
母「ずいぶん遅かったわね。二人で心配してたのよ。」
沙「うん。ちょっと寄り道してただけ。」
部屋に帰り、服を着替えていると、佐紀が箱を持ってきた。
沙「何その箱?」
佐紀が私にプレゼントでもくれるのかな?
そう思っていると、佐紀は持って来た箱をベッドの上に置いた。
佐「ついさっき届いたお姉ちゃん宛ての荷物だよ。」
沙「私に?」
箱は綺麗にラッピングされていて、中身はよく分からなかった。
何だろう?
ベツニキケンナモノデハナサソウネ。
もしかしたらベルからかな?
ラッピングを丁寧に剥いでいくと、どうやら店に売ってある防具セットの様だった。
箱を開けてみると、なんと中身はアゼリー一式だった。
でもおかしい、ベルからのプレゼントなら直接渡してくると思うし…。
テガミノヨウナモノガハイッテイマスネ。
手紙?
よく見ると、箱の中には手紙のような物も入っていた。
もしかして、差出人からの手紙かな?
私は差出人の名前が書いてあるところを見た。
差出人の名前を見た瞬間、私は驚愕した。
~沙羅のフィフス昇格を祝して。 スモーキー~
沙「…佐紀、ついさっきって言ってたわね。それは何時?!」
佐「え?さっきはさっきだよ。お姉ちゃんが部屋に行ってすぐだよ。」
私が部屋に行ってすぐ?
本当についさっきなんだね。
私は窓から外を見た。
しかし、人影らしき物は見えなかった。
スモーキーさんが、いったいどうやって首都に…。
別にアゼリーは俺の趣味じゃないんだからね!(まて byスモーキー
最終更新:2009年03月12日 18:17