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~エスセティア大陸・ワーグノスの地~



何とか逃げることができたわね。
それにしても、力の差があるとは思ってたけど…。

ユ「まさか、ここまでとは…。」

魔力を使いすぎたためか、少し目眩がする。
何とかしてこの事をブルー達に伝えないと…。
その時、近くで物音がした。
今の私では戦うことはおろか、逃げることすらできない。
私は死を覚悟したが、どうやら敵では無かったようだ。

ヒ「誰かと思ったら、ユグドラじゃないか。」

アト「ずいぶんと傷だらけね。誰にやられたの?」

ブ「…まあ、お前をここまでできるやつは限られてるがな。
  遠くからこちらの様子を伺っているな。
  俺が時間を稼ごう。
  アトラクナクアはユグドラを安全な所へ連れて行け。
  ヒロはその護衛を頼む。」

ヒ「大丈夫なのか?」

ユ「今のあの子は……強いわよ?
  私が一撃も当てられないほどにね……。」

一瞬ブルーの顔が引き攣った様に見えたが、すぐに笑った。

ブ「それじゃ精々足掻くとするかね。」

アト「行くわよヒロ!」

ヒ「おう。」








第9話 平和への願い





シディット水域で始まった戦闘は、最初こそ拮抗していたが、今はこちらが優勢だ。
序盤に敵の主戦力であるマーキスオークの集団を倒せた事が大きいね。

ウ「歩兵はそのまま突撃し、弓兵は前線の兵士を援護せよ!我が国の弓術、見せてやれ!」

傭兵将軍ウィンビーンの巧みな指揮の下、私達は着実に前進していた。
気がつけば、遠目に魔物達の本陣と思しきキープが見えた。

べ「このまま行けば、あまり被害を出さずに勝利できそうですね。」

沙「…うん。」

ベルが嬉しそうに話すのを私は軽い返事で返した。
よく分からないけど、何か胸騒ぎがする。
ふと敵キープに目をやると、人影が見えた。
味方の兵士かと思ったら、スモーキーさんだった。
しかし違和感を感じた。
スモーキーさんなら目に見えない位置からでも殺気を感じるはずだ。

沙「どうやら私達相手には訓練人形で十分と思ってるみたいだね。」

べ「しかし人形と言っても、教官のデータを基にした人形ならかなりの脅威ですよ。」

確かにスモーキーさんのデータを基にした人形は脅威だ。
その証拠に、人形とはいえ1体だけでこちらの勢いを止めている。
あれは最近作られたものじゃないね。
顔が少し汚れていて、防具もほんの少し錆びていた。
そして首の後ろに数字が見えた。
番号は……零。
零番と言えば、9年前のスモーキーさんのデータのはずだ。
それなのに、1体だけで押してくるなんて…。
6年前に戦ったときは、まったく歯が立たなかったのを覚えている。
今のスモーキーさんは、あの人形とは比べ物にならない強さなんだろうね…。
今の自分で勝てるだろうか?
エフリシアの力を使える今なら、あの人形を倒せるのでは?
何故だか無性にあの人形と闘いたくなった。

べ「まさか沙羅さん、あの人形と闘うつもりでは?」

沙「…ばれた?」

私が笑顔で返事をすると、ベルが勢いよく近づいてきた。

べ「駄目です!6年前に一度戦って、あの人形がどれ程強いのか解っているはずです!」

強く言い寄ってくるベルに対し、佐紀が反論した。

佐「…6年前の事は解らないけど、今のお姉ちゃんならあの人形に勝てるよ!」

意外な事に、佐紀は今の私ならあの人形に勝てると言ってきた。

べ「何故そう言えるの?」

佐「あの人形から感じる殺気より、お姉ちゃんが本気を出した時の殺気の方が怖いもん!」

結構きつい事を言われてる気がするが、今は気にしないでおこう。

べ「私は沙羅さんが本気を出した時を知りません。
  例えそうだとしても、闘わせる訳にはいきません。
  沙羅さんは私の唯一無二の友達…いえ、唯一無二の親友です!
  その親友を、危険な目に遭わせるわけには行きません!!」

沙「ベル、私なら大丈夫だよ。今の私には、6年前のあの時よりも守るものがたくさんある。
  それに確かめてみたいの。今の私が、6年前のあの時よりどのくらい成長したのかを!」

べ「…言っても聞かないのは相変わらずですね。」

そう言って、ベルは後ろを向いた。

べ「なら私も沙羅さんも信じましょう。
  私が振り向いた時に、目の前に立っているのが貴女だと信じていますよ。」

沙「ありがとう…ベル。」

私は単身で人形に近づいた。
人形は私を見ると武器を構えた。

人「アラートレベル…1、ニンムヲゾッコウスル。」

そう言うと、人形は私から目を離した。
そしてそのまま私の横を通り過ぎた。
…任務?
人形の視線の先には、聖女王ティファリス様が居た。
まさか任務って、ティファリス様を亡き者にする事?!
それはさせる訳にはいかないね。
エフリシアの力を解放すると、人形は振り返って私の方を見た。
そして改めて武器を構えた。

人「アラートレベル…2。ニンムヘンコウ、ターゲットヲゲキハスル。」

言い終わると同時に、私に向かって突進してきた。
エフリシアの力を盾に集中させつつ、迎撃の体勢をとった。
人形は私の数歩前で私目掛けて跳躍した。
私は軽く身を反らすだけで良いと思ったが、何故か横にステップした。
人形は着地と同時に武器を地面に叩きつけた。
傍から見れば、人形が攻撃に失敗した様に見えただろう。
しかし叩きつけられた地面が、まるで地盤沈下したかの様に沈んでいった。
それと同時に、物凄い衝撃波が襲い掛かってきた。
一度だけかと思ったが、合計で3度衝撃波が来た。
さっきの攻撃はドラゴンテイルみたいだね。
人形を見ると、先ほどまで持っていた武器を捨てていた。
どうやら先ほどのドラゴンテイルで武器が壊れてしまったようだ。
それを見て味方のウォリアーが攻撃を仕掛けようとしたが、簡単に殴り飛ばされてしまった。
…さすがに身体能力の方も強そうだね。
私は盾で身を守りながら人形に近づいた。
人形は近づく私に気づくと、ゆっくりと右手を上げ始めた。
その瞬間、人形の右手から殺気の様なものを感じた。
人形が右手を横に払うと同時に、私は盾に身を隠した。
身を隠しと同時に、まるで獣にでも引掻かれたかの様な衝撃が来た。
私は盾を見ると、まるで獣に引掻かれた様な痕があった。
こんな事もできるんだね。
人形は何度も腕を横に払って攻撃してきた。
私はそれを盾で防ぐつつ人形に近づいた。
人形はそれを確認したのか、徐々に衝撃波の威力が上がってきた。
そして人形まで後数歩という所で盾が跡形も無く壊れてしまった。
私は盾だった物を捨て、剣のみで人形に襲い掛かった。
…この状況は6年前と同じだね。
人形は6年前と同じもの、でも私は6年前のままじゃない。
襲い掛かってくる私に対し、人形も拳で殴りかかってきた。
私はそれを紙一重で避けて、そのまま人形の右腕を切り落とした。
さすがに人形だから血などは一切出なかったが、人形は驚いたようだ。
人形は私から距離をとると、緑色の液体とクリスタルを取り出した。

人「アラートレベル…3。ニンムヲチュウシシサイシュウシュダンニウツル。」

最終手段?
緑色の液体に目を凝らすと、それはキマイラブラッドだった。
クリスタルが眩く光ったかと思ったら、人形が見る見るうちに三つ首の獣になった。
ただキマイラになるだけだったら、最初からなっているはずだ。
……まさか!?

人「シシテシカバネ…ヒロウモノ……ナシ。」

そう言うと同時に、キマイラから異様なオーラの様なものが見えた。
最終手段って…自爆する気?!
こんな至近距離であの爆発を受けたら、かなりのダメージを受けてしまう。
万事休す……だね。
私は死を覚悟しつつ、目を閉じた。

?「氷壁よ、我が身を守る盾となれ!アイスウォールッ!!」

キマイラの爆発音と同時に、誰かが魔法を使ったような気がした。
爆発音が収まって、私は自分が何もダメージを受けていない事に気づいた。
恐る恐る目を開けると、私の前に大きな氷の壁が建っていた。
そして私の横に一人の女性が立っていた。

?「危なかったわね。」

沙「貴方…誰?」

二「私の名前はニフィス。安心して、敵じゃないわ。」

どうやらこの人に助けられたらしい。
それにしても、あの短時間でこの氷の壁を出すなんて…。
この人もユグドラさん同様、かなりの魔力を持ってるみたいだね。
私が立ち上がると同時に、佐紀が抱きついてきた。

佐「お姉ちゃん、怪我はない?!」

沙「うん。この人に助けられたわ。」

べ「無事で何よりです。」

周りを見ると、人形を包囲していた味方も爆発に巻き込まれた様だった。


シディット水域での戦闘は、辛くも私達の勝利で終わった。
しかし勝利と同時に、多数の死傷者が出てしまった。
それでも私達は始まりの大地に向けて進攻した。
平和な世界を勝ち取るために。



~エスセティア大陸・始まりの大地~

手元の零と表示されたクリスタルが砕けた。
どうやら零番が壊れたらしい。

ブ「零番は確か…、カセドリアに向かわせたやつだったな。」

しかし砕けたという事は、任務に失敗して自爆したという事だ。
9年前とはいえ、この俺を倒せる奴か…。
思いつくのは二通りだ。
ニフィスが倒したか、沙羅が倒したか。
多分後者だろう。

アト「あの子が人形を倒したみたいね。」

ブ「ああ。あの人形を倒したという事は、かなり成長したみたいだな。」

ヒ「なら次はどうするんだ?5カ国にかなりの打撃を与えたから、今度はこっちから行くのか?」

ユ「5カ国の軍は全てここに向かって来ているわ。」

ブ「ならば話は早い。計画を最終段階に持っていく為にも、迎え撃ちに行くぞ。
  …平和な世界の為にな。」



遅くなったけど生きてるぞ! byスモーキー

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最終更新:2009年08月08日 10:56