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第10話 聖剣と魔槍




訓練人形の零番を倒した事で、私は自分が確実に成長していると確信した。
9年前とはいえ、あのスモーキーさんを基にした人形だからね。
でも人形を倒せたからといって、今のスモーキーさんを倒せるという訳ではない。

べ「あの人形を倒せたという事は、沙羅さんは9年前の教官より強くなったという事ですね。」

沙「…そうだね。でも今のスモーキーさんを相手にして勝てるとは思えないわ。」

佐「そういえば、さっきの人は何処に行ったんだろう?」

周りを見ると、いつの間にかニフィスさんは居なくなっていた。

べ「それにしても沙羅さん、盾が壊れた今、武器はどうするのですか?」

そういえば、盾は跡形も無く壊れてたんだよね。
片手用の剣だけではさすがに心細いね。
しかし予備の武器を取りに行く時間はない。

沙「この剣だけでいけるところまでがんばるしかないね。」

べ「それなら、これを使ってください。」

そう言うと、ベルは一つのクリスタルを取り出してきた。
そのクリスタルが眩く光ったかと思うと、大きな剣が現れた。

べ「これは我シュリッツ一族に代々伝わる剣です。
  名前は【ルグナザド】、言い伝えでは太陽神の力が宿っているらしいです。」

沙「それを私が使って良いの?」

シュリッツ一族に代々伝わる剣…。
それを私なんかが使って良いのだろうか?

べ「とりあえずこの剣を持ってみてください。」

そう言われ、私は空中に浮遊するルグナザドを手にした。
かなり重量があると思ったが、まるで鳥の羽の様に軽かった。
私はルグナザドを軽く振ってみた。
すると、少し離れた場所にある岩が真っ二つに斬れた。
ベルは私がルグナザドを軽々と持っている事に驚いたようだ。

べ「やはり沙羅さんは世界に光を齎す者でしたか。」

沙「何故?」

べ「真の武具は持ち主を選びます。
  その武器を使おうとした者は大勢居ます。
  ある者は手に大火傷を、ある者はあまりの重量に振る事すらできなかった。
  しかし沙羅さんは火傷はおろか軽々とルグナザドを持っている。
  その剣にはこんな言い伝えがあります。
  太陽神の剣を持ちし者、世界に光を齎す。
  剣を翳せば邪気は祓われ、剣を一振りすれば山をも両断する。
  先ほど軽く振っただけで岩が真っ二つに斬れました。
  言い伝えはこの剣の大事さを示すものかと思っていましたが、本当だったのですね。」

新の武具は持ち主を選ぶ…。
そういえば、前に聞いた事がある。
スモーキーさんが持っているフェンリルは、張文遠さんでも扱えない重量だと。
しかし当の本人が言うには、羽の様に軽いらしい。

べ「ルグナザドを聖剣と言うなら、教官が使っていたフェンリルは魔槍ですね。
  あれも教官以外はまともに扱う事ができなかったみたいですからね。」

沙「聖剣と…魔槍。光と……闇。」

べ「沙羅さんが光ならば、教官は闇ということになりますね。」

私は世界に光を齎す者。
そしてスモーキーさんは世界に闇を齎す者。
ユグドラさんは私にエフリシアが憑いてるから、世界に光を齎す者と言った。
ならば世界に闇を齎す者とはいったい?

沙「ねえ、ベル。エフリシアを光とすると、対になる闇って誰かな?」

私の突然の質問に、ベルは戸惑ったようだ。

べ「エフリシアを光とした時、対になる人物…ですか?」

ベルは少しの間思案したかと思うと、急に何かを思い出した様だ。

べ「エフリシアを光とするなら、闇はやはりバルクス・トルクマイヤでしょう。
  破壊王と呼ばれるほど暴虐だったらしいですからね。
  それにエフリシアが乱を起こしたのも、トルクマイヤ帝国ですし。」

トルクマイヤ帝国を建国したバルクス・トルクマイヤは、世間一般には悪だと言われている。
しかし、本当にそうだろうか…?
エフリシアが乱を起こしたのは、トルクマイヤ帝国が6大陸を制してから240年後の事。
それにバルクス・トルクマイヤがトルクマイヤ帝国を建国した時代は、2大王国時代の末期だ。
当時は世界中が荒れていて、それを憂いたバルクス・トルクマイヤが世界を統一したのでは?
カレニハカレノリソウガアッタトオモウ。
デモネンゲツハヒトヲカエ、クニヲカエタ。
…そうだね。
何にしても、私はその時代に生きていないから何とも言えない。

佐「お姉ちゃんにエフリシアが憑いてる限り、世界に平和が来るよ!」

べ「そうですね。…って、沙羅さんにエフリシアが憑いてる?!」

佐紀の言葉に、ベルは驚いたようだ。
そういえば、ベルには話して無かったね。

沙「英霊って言うらしいんだけど、人によって憑いてるものは違うらしいわ。
  私にはエフリシアが憑いてるって言われたの。」

ベルは信じられないといった顔をしたが、少しして頷いた。

べ「沙羅さんに、反乱姫エフリシアが憑いてるなんて……。
  これで今まで謎だった、沙羅さんの神秘的な力の正体が解りました。」

沙「この事は秘密にしておいて欲しいの。
  誰にでも信じてもらえる話ではないと思うし。」

べ「…なるほど。特に聖女王ティファリス様には知らせてはいけませんね。」

イラヌウタガイハサケタホウガヨイデショウ。
…そうだね。
確かに、エフリシアの名を出すだけでも警戒されるだろう。
例え私が、エフリシアが憑いていると確信していても…。


デスパイア山麓にて、私達はネツァワル王国軍と合流した。
しかしネツァワル王国軍を指揮しているはずの獣人王ヒュンケルが見当たらなかった。
変わりに娘のエリスが先頭に居た。
話によると、ネツァワル王国軍もクローディア水源にて魔物達と戦ったらしい。
その時に獣人王ヒュンケルとブルーヘクサが戦い、獣人王が瀕死の重傷を負ったらしい。
国に戻って安静にしていないと命に関わるという事で、軍を返そうとした。
しかしそこでエリスが、自分がネツァワル王国軍の指揮を執るっと言ったらしい。
他の4カ国の軍が戦っているのに、ネツァワル王国だけが軍を返す訳にはいけないと思ったのだろう。
やはり平和を望むのは他の国でも同じなんだね。
そういえば、先ほどから張文遠さんが見当たらない。
一人で何処かに行かれたのかな?


~エスセティア大陸・始まりの大地近郊~

ブルーヘクサは、獣人王ヒュンケルと倒すとすぐに何処かに去って行ったらしい。
ブルーヘクサが去っていった方向は、始まりの大地に向かう方向だった。
まもなく始まりの大地に着くという時に、目の前に一人の男が立ちはだかってきた。

?「悪いがこれ以上行かせる訳にはいかんのでな。」

そういうと男は、突然殴りかかってきた。
紙一重で避ける事に成功したが、男の拳が後ろの岩に当たると同時に岩が粉々に砕けた。

?「なかなか良い反応だ。
  殺すには惜しいな、すぐにこの場から立ち去ってくれるなら見逃してやるぜ?」

いきなり殴りかかってきて見逃すだと?
あの岩を一撃で粉砕した力といい、この男もスモーと同じ力を持っているのか?
しかし武人として、ここは退く訳には行かぬ。

張「断る!強き武と戦う事こそ武人の本懐。さらに見逃してやると言ったな。
  この張文遠、そのような無礼を見逃すわけにはいかぬッ!
  戦う前に御主の名を聴いておこう。」  

ヒ「…やれやれ、せっかく見逃してやるって言ったのにな。
  弱い奴ほどよく吼えるってな。
  まあ良い、俺の名はヒロだ。
  冥土の土産に覚えとけ!」


~エスセティア大陸・始まりの大地~


何度占い直しても正位置の【デス】のカードを出してしまう…。

ユ「ブルー…、残念だけど貴方は今度の戦いで死ぬわ。」

私の言葉に驚くかと思ったが、ブルーは眉一つ動かさなかった。

ブ「それならそれで良い。元々死ぬ覚悟でこの計画を始めたんだからな。」

ユ「…そう。ねえ、本当にこれで世界に平和がくるの?」

ブ「今更どうした?」

ユ「5カ国に共通の敵を作るところまでは解るけども、それを無くさせるなんて…。」

ブ「5カ国の全ての国が互いに協力しあい、共に繁栄できると考えてくれれば計画は成功だ。
  しかしそうならなかったら、また今までの様に血で血を洗う戦いが始まるだけだ。
  俺は、それだけは避けたいと思っている。」

ユ「そういえばあの子、沙羅ちゃんの方も占ってみたの。」

ブ「……結果は?」

ブルーはさも興味がありそうな顔で私を見てきた。

ユ「沙羅ちゃんは何度やっても、正位置の【ザ・ワールド】を引くわ。
  もしかしたら、計画は成功するかもね。」

それを聞くと、ブルーは少しだけ笑った。




~カセドリア連合王国首都・アズルウッド~


金属が壊れる様な音がした為、私は寝室に向かった。
娘が何か騒いでいるのでそちらに目をやると、主人が昔使っていた兜が縦に割れていた。
私は娘が壊したのだろうと思って叱ろうとした。
しかしいくら主人の娘でも、金属の兜が壊せるはずがない。
何か主人の身にあったのだろうか?
何故だろう、すごく胸騒ぎがする…。


かなり間開いたけどまだまだ執筆してるよ!byスモーキー

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最終更新:2009年10月02日 20:50