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らいおんより強いもの

最終更新:2009年09月27日 14:04

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管理者のみ編集可
 食べっぷりのいい美貴ちゃんを見てたら、肉食動物より強いものってなんだろうって思った。
 でも、そしたらあたし…微生物?
 なんかやだ。

「どーしたの? 梨華ちゃん」

 お肉を頬張ってもぐもぐと休むことなく食べてる美貴ちゃんが不思議そーにあたしを見る。

「んー。なんか…オトコノコみたいだなぁって」

 ちょーてきとー。
 まぁ、でも、間違ってはいないんだけど。
 あたしも肉をなんとなくつまみながら、ぼんやりと考える。

 よっすぃもたしかに男前なんだけど、やんちゃのところはそりぁあるんだけどね、なんて言うの? クールで、ちょっと気取ったポーズなんか様になって…。
 中学男子みたいな感じなトコもあるけど、うーん…。やっぱりジャニーズの人たちにも引けなんかとらないなぁっていうときがあって、やっぱかっこいい。

 で、目の前の美貴ちゃんは…っていうと、男前なのよね。性格はもしかしたらよっすぃよりもさばさばしてて…。それに、この食いっぷりはよっすぃにはないんだよね。
 なんだろ…運動部のかわいい男の子みたい。少年って感じ。

「なに? 顔になんかついてる?」

 ぴたって、1秒だけお箸が止まって、けどまたレバ刺しのお皿を抱えたたままもぎゅもぎゅもぎゅ…。
 ナプキンを手にすると、そっと手を伸ばした。

「ん? なに?」
「うん。たれがね、ちょっと気になって」
 口の周りをそっとぬぐってあげると、少しだけ恥ずかしそうに笑った。
「あ、ホント? ごめんね」
「ううん。かわいいよ。コドモみたいで」
「こら!」
「ふふっ。いいじゃん。うそ言ってないもん」
 なんかへんなの。あたしがおなかいっぱいになっちゃったって感じ。
 お箸をおくと、ウーロン茶をすすりながら、猛烈な勢いでお肉を消化していく美貴ちゃんを眺めることにした。
「食べないの?」
「うん。もうおなかいっぱいだよ。それにね…」
 口を動かしながら同じように首を傾げる美貴ちゃん。
「美貴ちゃんを見てるほうが楽しいから」
「ふーん」
 そんなこんなな会話の間にお皿にあった2人前のレバ刺しを平らげると、
「じゃあ、見学料としてここは…」
「割り勘ね」
 にっこりと目を見据える。
 食べてる量から考えたら、それでもあたしのほうが損をしてると思うんですけど…。
 ちぇっ…って舌打ちしたのが聞こえたのは、聞かなかったことにしといてあげるね。

    *

 たとえばライオンより強い動物ってなんだろう。
 ニンゲンとかいうんじゃなくって。

 歩きながら、さっき見た映画のことを話す。
 外に出たら雨が降っていたらしくて、あちこちに水溜り。それをなんとなく避けながら並んで歩く。
 誘われた見た映画はあたしにしては珍しくちょっとした恋愛映画で、普段はつい寝ちゃうあたしだったけど今日は大丈夫だった。それだけ話に引き込まれてたのと、やっぱり隣を歩く彼女のせいなのかも。
 レイトショーだったから、もうすぐ日付は明日に変わる。
「水溜りに映る街もきれいなもんだね」
「どうしたの? 急に?」
「うん? そう思わない?」
 まだ厚い雲が覆う空。足元を見れば揺れる水面にきらきらとネオン。
 こんなことを言い出すのは、やっぱり映画のせいなのかな?
「そうだね」
 見上げた空は風で雲が流れて形を変えて、強くなってきた風。
 そっと手を繋いだ。
「明日は晴れるかな?」
「どうだろう? 天気予報って、あんまりあてになんないからねぇ」
 あったかい美貴ちゃんの手にゆっくりと温められていくあたしの手。
 蒸し暑くって薄着だったから、吹いてくる涼しい風をいいことにこそっと寄り添った。
 そしたら、繋いでる手を離して腕を絡めて、そして指が絡み合う。
 なんとなく目が合って、微笑む美貴ちゃんはすっごく女の子で、かわいいってわかってるのにドキッとした。
「ね、美貴ちゃん」
「ん?」
 二人だけの足音。風の声。暗闇に吸い込まれていく遠い街の音。
 辺りも確認しないで、美貴ちゃんに口付けた。

 足音が止まって、街の音は一瞬なぜか途切れた。
 わずかな時間。きっと10秒もないくらいの。
 でも、触れた時に伝わってきたぬくもりはやさしくて、たったそれだけのことで胸が熱くなった。

 また歩き出す。
 何にも話さなかったけど、その沈黙も心地よかった。

      *

 ライオンも考えてみればネコ科…だっけ。なんだよね。
 そう思っちゃうと、けっこうかわいいかもしれない。

 誘われて美貴ちゃんの家にお泊り。
 雑然とこざっぱりした…なんか微妙な空間。それなりに片付いてるからあたしの部屋よりきれい。
 ベッドにちょこんと腰掛けて、なんとなく唇に触れた。

 何度かしてるのに…ね。
 自然なくらい穏やかで、不自然なくらいに今更のようにドキドキして…。

 やっぱり映画のせいなのかな?
 ふんわりとしたやさしい物語ときれいな映像。さりげない台詞に隠れた互いを思うキモチ。
 二人とも自然と感情移入して見ていた。

「おまたせ」
 飲み物を持ってきた美貴ちゃんが部屋に戻ってきて、あたしは我に返った。
 グラスを手渡しながら、隣に座って顔を覗き込む美貴ちゃん。
「どうしたの? ぼーっとしちゃって」
「ううん。別になんでもないよ」
「ふーん。なら…いいけどさ。疲れてるんだったら誘って悪かったかなぁ…って」
 あら。なんからしくないね。今日の美貴ちゃん。
「美貴ちゃんこそ、どうしたの?」
「へ? なにが?」
 自分じゃ気づかないモンなんだろうね。きょとんとしちゃってるし。
「だって、ねぇ…」
 あんまりかわいいって繰り返すのもなんだから微笑むだけ。
「だって?」
「うん。女の子なんだなぁって」
「なんか言ってる意味わかんないよ。梨華ちゃん」
「ふふっ。いいよ。わからなくて」
 一気に飲み干して、グラスをテーブルに置くと、後ろに回りこんであたしより少しだけ小さな背中に寄りかかるように抱きしめた。
「ただ、すきなんだなぁって思ったの」
「誰が?」
「あたしが」
「誰を?」
「美貴ちゃんを」
「…ふ~ん」
 ぐいっとあおるようにお茶を飲む美貴ちゃん。細い首がごくりと鳴って動いた。
 はっ…と息をついてコトッとグラスをテーブルに置くと、抱きしめた腕に手が添えられた。

 それからなんとなく二人ともしゃべらなくって…。
 あたしは美貴ちゃんの首筋に顔をうずめて、ふわりと香る甘い香りに酔っていた。
 微かに伝わってくるドキドキしている鼓動も、うるさいくらいの自分の心臓の音にまぎれていく。

 首筋にキスをした。
「梨華ちゃん?」
「ん?」
「すきだよ……美貴も」
「うん」
 添えられた手をとって繋いだ。
 なにをするわけでもないし、なんとなくおもちゃにするようにいじりながら、美貴ちゃんの肩に顎を乗っけた。
 ぐーとかぱーとか、きつねーとかやって遊んでたら、きゅって指先を掴まれた。
「ん?」
 顔を上げたら、くすくす笑ってる美貴ちゃんの唇が舞い降りた。
「なんかコドモみたいだね」
「だって楽しいんだもん」
 そしたらよしよしって頭撫でられて、ごそごそと美貴ちゃんが動いた。
 どうやらベッドに上がってくるみたいだから、ずりずりと後ろに動くと、ベッドに上がったミキちゃんが向かい合わせにあたしの膝の上に乗った。

 うーん。どうしよう?
 あたし、食べられちゃう?

 首に回った腕。
 見つめるまなざし。
 笑ってるのに、どうしてかな鋭さを感じるっていうのは。それだけ熱っぽい瞳。

 引き寄せられて、唇が近づく。
 腰を支えていた腕を片方だけ肩へと回して、迎えるように抱きしめた。

 重なった唇は、軽く触れ合ったらすぐに深く繋がった。

 ねぇ、美貴ちゃん。
 ライオンもいつも狩が上手くいくとは…限らないんだよね。

 絡めていた舌を吸ったら、ぴくりと体が震えた。
 力加減を変えて何回か柔らかい舌を音を立てて吸うと、また絡み合わせて舌の裏とか歯とか、丁寧になめていく。
 そうするとね…。
「…っ…ふぁ…」
 ほら。感じやすいみたいでね、とろけちゃってきてるんだよね。
 きゅって首にしがみついて、あたしの頭を抱きかかえて…。
 ちゅっ、ちゅって音を出しながら唇の感触も楽しむ。
 軽く食んでぷるんとした弾力を味わう。なんていうの? たまらない食感って感じ。甘くってね。やわらかいの。
 舌でなぞりながら、角度を変えてついばみながらキスを堪能する。
「んっ…」
 吐息が熱い。
 少しずつ、だけどはっきりと色づいていく美貴ちゃんがかわいい。
 ドキドキいってるあたしの心臓。カラダが燃えるように熱い。

 たぶん、きっとあたしもライオンなのかも。
 美貴ちゃんの前ではね。

 唇からいったん離れて、顔を覗き込む。
 うっとりと閉じていた目をゆっくりと開いた美貴ちゃんは軽いため息をついて、小さく笑った。
 今度はあたしからキス。
 何度重ねても飽きない。
 着ているシャツの中に両手を潜り込ませた。
 わき腹からすいっと滑らせたら、美貴ちゃんの体が揺れた。
 そのままシャツをたくし上げて、唇から鎖骨、そして胸元へとキス。
 背中を軽く触れる程度に指先でなぞりながら、しっとりとした肌の感触を味わう。
「んっ…梨華ちゃん…」
 上目遣いに見上げたら、潤んだ瞳とぶつかった。
「何?」
「うん…」
 困ったように笑って、あたしのおでこにちゅってキス。
 お返しは唇に。
 中途半端に引っかかってるシャツを脱がせて、ブラのホックを外したら、ほら手のひらサイズのかわいい胸。
 形がよくって、白くてやわらかくて、あたしはだいすきだな。
「がお」
 って胸にぱくついたら、美貴ちゃんが「なにそれ」って笑った。
「いいの。気分はとりあえずライオンなの」
「じゃあ、美貴のこと食べちゃうわけ?」
「そうだよ。食べちゃうの」

 ライオンがライオンを食べるわけがなく…。
 現実はどうかわかんないけどね。
 だけど、今のあたしはなんかライオン。

 ぱくって、乳首に吸い付いて舌を絡めると、
「…うんっ…」
 悩ましげな声。
 少しだけ強く吸ったら、
「あっ!」
 首をのけぞらせて、ぎゅっとあたしの肩を掴んだ。
 いったん胸から顔を離して膝の上から美貴ちゃんを下ろすと、
「どっから食べようかなぁ」
 自分の上着も脱ぎ捨ててベッドに美貴ちゃんを押し倒した。
 ほんのりと桃色に染まった美貴ちゃん。
 肩口に口付けて、また胸に唇を寄せた。
 ちゅって一つ音を立てるたびにぴくりと跳ねて、
「あんっ…。…ん!」
 眉を寄せて零れる甘い声。
 すっかり起き上がった乳首は真っ赤に熟れてて、口に含んだらそれだけで、
「…んんっ!」
 って。
 舌で転がして、丁寧に丁寧に愛してあげる。
「はっ…! りかちゃんっ…ぁ」
 唇で食んでから、軽く歯を立てて…。
「…ん…あっ!」
 眉をひそめて、薄く開いたままの唇がどーしょーもないくらい色っぽい。
 もう片方の胸を愛しながら、そっとジーンズに手を掛けた。
 そのまま手を滑り込ませて布越しに触れたら、なんかいい感じ。
「邪魔だから、脱いじゃおうか?」
 はっはっ…って、細かく息を継ぎながら、美貴ちゃんはコクリとうなずいた。

 もちろんあたしも裸になって、美貴ちゃんも一糸纏わぬ姿になって…。
 とりあえず電気を消して、ベッドサイドの明かりをつけた。
 ぼんやりと橙色の光の中に浮かび上がるきれいな白い肌をうっとりと眺めるあたし。
「やっぱりきれいだよねぇ」
「…そんなことないって」
「いいなぁ。色が白い人は」
 汗ばむ肌に口付けて、内股に手を滑らせた。
 足を閉じようとするからカラダを割り込ませてブロック。
「ここからだよ? 美貴ちゃん」
 足を撫でながら、付け根の辺りに口付けて、そのまま舌を這わせた。
「やっ…りかちゃんっ」
 こっからはじりじりと追い詰めていっちゃおうかな。

 のぞきこんだそこは待ちわびるように濡れていた。
 真っ赤な芯があたしを吸い寄せるように震えてる。
 口付けた。
「ふぁっ! あ…!」
 あたしだけが聞ける声。
 滴る蜜を丁寧に舌で掬い取って、指で芯をいじる。
 やさしく、だけど時にいじわるく。

「あっ! あっ…あああっ! んっ! はっ…」

 熱くとろけたそこを舌でなめれば、ほら、こんなに甘い声。
「もっと聞かせて?」
 ちゅっ、ぴちゃってあたしの舌が繰り出す音。

「はっ…りかっ! っん…! あ…あっ!」

 あたしもとろけてる。
 食べてるのに、心はきっと食べられてて…。
 そうだよね。すきなんだもん。
 愛してるんだもん。今…。

 難なく受け入れられた指でかき回して、くすぐって、おねだりがちょっと聞いてみたくなっていじわるをする。
 ぴたりと指を止めたら、泣きそうな目で見つめられた。
 きゅんって、胸がなる。
 そんなにいじらしい目で見ないで? もっといじめちゃうよ? 
「りか…?」
 耳元に唇を寄せた。
「ん? なぁに?」
 言いながら、芯の周りをゆっくりと親指でたどる。時々かすかに触れる程度の力加減がポイント。たぶん…。
 耳にかかった吐息でふっ…て小さく震えて、
「…ねぇ、もっと…」
 途切れ途切れの呼吸。すがるまなざし。あたしのカラダに絡み付いてくる腕。
「……もっと…して?」
 思わず笑みが零れた。
 耳たぶに噛み付いて、唇にキスを落として、また指を動かし始める。
「あっ! ああぁっ! はっ…あ…んんんっ!」
 激しく。壊しちゃうくらいに今度は激しく突き上げる。

 ダメ…。
 これだけのことなのに、あたしもいっちゃいそうだよ…。

「んっ! あっ! りかっ…ぁ…いいよぉっ!!」
「みき…」

 一気に追い込むあたしの指を詰めつける。

「あっ! あっ…あ…んっ! りかっ…りかぁ!」

 ぴんと背中をそらして、弾けた美貴ちゃん。
 指に絡みついた妖しく光る蜜の甘さにめまいがした。

 汗で張り付いた前髪をそっと掻き分けて、やわらかい口付けを落とす。
 包むように抱きしめて、唇を軽く吸って…。
 すりっとカラダを寄せてあたしの肩にトンって頭を預けるから、腕枕をしてあげた。なんかちょっと、男の人な気分。
「愛してるよ」
 なんて言ってみた。
 そしたら、きゅって腕に力がこもって、こそっと耳元で、
「…愛してる」
 だって。
 ぎゅうって抱きしめた。
「だいすき…。みきちゃん」

   *

 ライオンより強いものって、結局ライオンなんだと思った。
 もっともどっちのライオンが強いかなんて、戦ってみなくちゃわからないわけで。
 戦ってみたら、あたしの方が強かった。
 たぶん、それだけ。

 明日はオヤスミなんだよね。
 そんなことを考えながら、眠ってるらしい美貴ちゃんを眺めてた。
 安心しきった寝顔は、なんか赤ちゃんみたいでかわいい。
 そのまま見ていたい気持ちと、あれだけ食べてるんだからまだまだ体力有り余ってるよね…なんて、ある意味、ピンクに染まったあたしの頭が目まぐるしく葛藤してる。
「…んん」
 まぁ、焦ってもしょうがないんだけどね。
 夜はまだ明けないし。
 こうしてるだけでもすごくキモチがいいから。

 それに起きたら起きたで、ね。
 その時はその時ということで…。

 抱き寄せて目を閉じた。
 動物園にでも誘ってみようかな。きっと明日は晴れるから。


(2004/5/11)
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