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  • 黒猫とあたし

たぶん素敵妄想集(爆@ ウィキ

黒猫とあたし

最終更新:2009年09月26日 02:51

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管理者のみ編集可
 ちょっと待ってよ! なんでそーなるの!?

『ペット大集合! ポチたまはこの後すぐ!』って、一緒にやったよ。
 Mステのライブの衣装でも、そんなコスプレさせられたし。

 それに、美貴もそーなった…。

 けど、だからって… だからってさぁ!

 何で梨華ちゃんに耳としっぽがついてんのよー!

                         ■                      ■

 何か触ったんだよね。
 梨華ちゃんのほっそい腰に手を回して抱き寄せようとしたら…。
 そしたら…すすっと絡んできて、『なぁにぃ?』って。なんかね、先の方(?)がくすぐるように手を撫でるの。

 明日はオフ。だから今日は美貴のお家で甘い時間をすごしていたわけで…。
 今梨華ちゃんは…っていうと、美貴を抱いて幸せそうに夢の中。
 やわらかい胸の奥から聞こえる鼓動も穏やかで…。さっきまでの激しさがウソのよう。

  あー、何がとか聞かないように。

 でもね、すっごい愛されてるって感じるんだよねー。だから美貴もがんばっちゃうんだけどねって…
 ちょっと! 何言わせんのよー!

 って、美貴、一人で何やってんだろ…。

 それはさておいて、これってさぁ…

 相変わらず美貴の手の甲をくすぐるそれをぱっと捕まえると、名残惜しいけど、ちょっとだけ体を起こして、そーっと強く握らないように手に触れる毛並みに逆らって撫でてみた。
「ん…」
 かすれた声を零して梨華ちゃんが美貴に擦り寄るように身をよじらせる。

 思わず手が止まった。
 手の中にある長いそれは、ぴたっと美貴の腕に沿うようにくっついて『ダメ』ってたしなめる。

 ドキッ!
 ちょっとまって…。し…心臓に甘ーい痛みが…。

 とにかく、そんなお願いを無視して手を進めると、膨らんだのパジャマのお尻に突き当たった。

 はぁ…。

 がっくし。そう。そうなのね…。

 ということは…。

 腕枕してくれてた梨華ちゃんの左腕をどかして、代わりに美貴が梨華ちゃんの頭の下に腕を通して胸に抱きかかえる。
 それは近づくとすぐに美貴の目に飛び込んできた。薄暗がりの中でもはっきりとわかる三角がぴょこんと二つ。

 ついでにと、そっと髪を撫でながらその三角の付け根の後ろを軽くくすぐってみると、
「う…ん…」
 美貴の腕の中で梨華ちゃんがふ…と息をついて胸に顔を押し付ける。

 うわー! ちょっとぉ! なによー! エロいよーっ! どうしよー!

 って、マジでどうしよ。
 っていうか、とりあえず起こさないとね…。

 ごそごそと布団を上げてベッドサイドの灯りをつけると、腕の中には黒いネコ耳としっぽを美貴の腕に絡めた梨華ちゃん。
 思わずため息。

『…美貴ちゃん、反則だよ…』
 言われた意味がよーくわかった。

「梨華ちゃん…それ反則…」


 眺めること早10分。

 げんじつとーひチックに思い返してもう一つため息。
 とりあえず起き上がった美貴が、梨華ちゃんに膝枕をしてあげてつつ頭を撫でて途方にくれていると、小さくうめく声がした。
「みきちゃん?」
 梨華ちゃんが目をこすりながら不思議そうに見上げてくる。
 あ゛ーもうっ! そんな目で見ないでよぅ! かっ顔が…あつっ!!
「どうしたの?」
「…うん」
 とりあえず理性総動員で平静を装おうと試みる。
 にしても、美貴も気づかなかったから、たぶん気づいてないよねぇ…。
 当の本人はというと、起きぬけでほけーっとしてるし。
「ねぇ? みきちゃん? 寝れないの?」
 って言うと、両腕を伸ばしてうーっって伸びをしたから、なんとなくいたずら心でわき腹を撫でたら…
「うにゃっ」
 って丸くなって、ごろんと美貴に背中を向けた。
 そして、「くすぐったいよぉ」って、困ったように笑いながら上半身だけこちらに向ける。

 やばっ…。まーじーでーやばい! どうしよう……。

 すっっっっっっっっごく、かわいい…。


『この間はほんっとうにゴメン! 美貴が悪かった』
『ふぇ? どーゆうこと?』
『とにかくゴメン! よーくわかったから』
『だからぁ。なにが?』
『鏡…』
『鏡?』
『見てくればわかるから』

 土下座しました。ハイ。
 だってさ、あれはないでしょ。
 破壊力抜群だって。
 美貴もあーだったのかっていうのは棚に上げても、ねぇ。ものっっっっすごい危機感感じるんだもん。地球滅亡くらいなクラスの…。

「みっ…美貴ちゃーんっ!!」
 ドタドタドタドタドタ…。

 そうそう…。美貴もこんなだったよね、たしか…。

 のーてんきにも、まさか自分がなるとはどっかで思っていなかったらしい梨華ちゃんは、
『どっ! どっ!』
『どりふのだいばくしょー?』
『違うってば!』
『どーしよ! 耳! しっぽ!』
『見ればわかるって』
『もう! なんでそんなに冷静なのー!!』
 って、顔を真っ赤にして凄まじいくらいのうろたえぶり。
 美貴、ちっとも冷静じゃないですよー。冷静になれるわけないじゃん。ドキドキしっぱなしだよ…。そんなフリでもしてないと……。


 しかしながら、自分がなったとはいえ、こーゆーことはこれで2度目。
 10分もしないうちに落ち着いた梨華ちゃん。

 どーしよーって目をしてしっぽをじーっと見つめている。
 本人も気にしてる色黒だからかなんだろうか、黒いしっぽと耳。でも、艶があってほんのり赤いベッドサイドの灯りを受ける黒はすごく綺麗。

 本人はお気に召してないようだけど。

「せめて白はダメでもトラがよかったな…」
「いいじゃん。黒で。梨華ちゃんらしくて」
「ええーっ。でもさぁ…」
 しゅんって、耳が倒れた。
 けど、そんな姿もまたかわいいんだよね。理性総動員中でも自然と顔がニヤついてきそうになっちゃう。
「梨華ちゃん?」
 ぽんぽんとひざを叩くと、ぴくっと耳が起き上がって、納得いかないですーって顔をしたままちょこんと向かい合うように美貴の膝の上に乗り、自然と肩には手が。
 だから、自然と美貴の手も梨華ちゃんの腰に回る。

 しっぽが不機嫌にゆらゆらと揺れてる。右手でそれを捕まえると優しく撫でてあげた。
「綺麗だけどなぁ。宝石みたいで…美貴は好きだよ」
「……そうかなぁ」
「そうだって。それとも、美貴の言ってること…信じられない?」
「うーうん。そんなことないよ。でもなぁ…って…」
 舌ったらずな口調。ほんのりと赤く膨らんだ頬。まだちょっと拗ねてる梨華ちゃん。
「…くすぐったい…」
 撫でている手の中からしっぽが逃げようとする。
「うそ」
「うそじゃないもん」
「うそだよ。…気持いいんでしょ?」
 そしたら、いじわる…って呟いて耳まで真っ赤にしてうつむいた梨華ちゃん。
「すきだよ」
 顔にかかった髪を掻き揚げて覗き込むと、強引に視線を絡めたまま、見とれるような黒い綺麗でしなやかなしっぽの先にキス。
 そしたら、ふっ…て目を逸らされて、ぺしってしっぽの先でかるーく頬を叩かれた。

「……えっち…」
 どっちがだよ…。

 理性総動員しても、もう限界。
 なんでかネコになってみると、なんかね、なんていうかいつも以上に甘えたくなる。それはよーっくわかる。
 けど、今日の梨華ちゃんはいつもと違う。
 普段も二人っきりの時は確かに甘えてくれる。でも、二人きりになると、どーしても美貴の方が甘えちゃったりするから、なんだかんだとお姉さんモード。
 でも、なんか今は子猫みたいで、無邪気でなんかいじらしい。

 ねぇ、どこまでが無意識なの? わざとじゃないよね…?

 しっぽがするりと手の中から逃げる。
 空っぽになった右手を顎にやってついと顔を上げさせると、そのまま頬を包み込みこんで薄く開いている唇に、美貴を唇を近づけた。

「…ダメ」

 トンと唇に触れる人差し指。
 その指先をパクって口にくわえて、『なぜ』って目で問いかけても、またすっと目をそらしてうつむいて答えない。
「ねぇ?」
 どうして?

 開放された手でさりげなく頬に添えた美貴の手をとって指を絡める。指先が唇にかすれて触れて、きゅっと戸惑いを浮かべながら唇を結んだ。

 悩ましげな表情に押し流されていく理性。

 腰に回してる左手であやすように背中を撫でると切なげにこぼれるため息。戸惑う瞳は潤んでいて、そこにはちょっといじわるく笑ってる美貴。

 かわされて、じらされて、惑わされて…。

 でも、振り回されるのも悪くない。

 すーっと、ずっとそれまで肩に置かれてた左手が滑り降りて腕をやんわりと掴む。
 背中を撫でる手を止めると、膝の上から降りて、ちょっと横にずれて足だけを膝に乗せたままもたれかかって、右肩にちょこんと頭を預けきた。
「梨華ちゃん?」
 ちょっと睨むように見上げてくるその目がなんだかいじらしくかわいくもあり、妖しげに誘っているようでもあり…。
「なぁに?」
「みきちゃん…ずるいよ…。今日はいじわるだよ…」
「そうかな?」
 そうだよ。だって、あなたが悪いんだよ?
「あんまりかわいいから、ついついいじめたくなっちゃうんだよねぇ」
「えー。いつもいじめてるのに?」
 んーまぁ。たしかに、梨華ちゃんはツッコミどころ満載だからね。だけどさ…。
「いつもいじめてるっけ? 二人でいるときはむしろ梨華ちゃんにいじめられてるほーが…って、いゃひゃいっへ」
 むにってほっぺをつねられた。あーあー。耳まで赤くするんなら言わなきゃいいのに。
 梨華ちゃんはほっぺから手を放すと、ふーっとため息をついた。
「…先回り…しないで…」
「んー? なんのこと?」
「とぼけちゃってぇ…」
「その言葉、梨華ちゃんにそのまんま返してあげる」
「えー…」って、まだ何か言いたげに唇が開いている。
 美貴に思いっきり体重を預けて不安そうに見上げる梨華ちゃんのネコ耳の後ろを撫でると、
「…ん」
 くすぐったいよぉ…って、目を細めて小さく肩をすくめた。
 そのまま髪を梳くように撫でながら、指を下に下に滑らせていく。
「美貴ちゃん!?」
 しっぽがぺしぺしと腕を叩く。
 背骨の上をたどってしっぽのせいで膨らんだパジャマのズボンの中に手を滑り込ませると、しっぽの付け根を軽く引っかくようにくすぐった。
「やぁっ…!」
 ぴんとしっぽと背中を逸らして掠れた声と吐息が耳にかかり、ぎゅっと腕を掴む手に力がこもる。
 目の前が体を走る甘い痛みと弾ける鼓動にくらくらとゆがんでくる。

 梨華ちゃんはもたれかかっていた体を起こして、ガツンと一言。
「…エロ大臣」
 エ…エロ大臣って…
「ひどっ。なにそれ。梨華ちゃんに言われたくないよ」
「だってぇ…。さっきからさぁ…」
 って、ごにょごにょと口ごもり、ズボンの中に入ったままの手首を掴む。
「でも…とりあえず、しっぽ…ちょっと窮屈」
「あぁ、そういえばすっかり忘れた。でもいいじゃん。どーせ結局は脱ぐ…って…いっいひゃいって!」
 今度は両手で頬を思いっきりひっぱられた。
「痛いって。梨華ちゃん」
「だってぇ…」
 あーわかったから。だから、そんないじけたような目で見ないで。押し倒しちゃいそーだから。
「はいはい。わかったから」
 梨華ちゃんもちゃんと穴開けてくれたしね。ハサミを取りにいくのも面倒だったから、というか、この空気を壊すのはイヤなので、足を膝の上から下ろして横座りしてもらうと、梨華ちゃんを思い切り抱き寄せて胸に顔をうずめさせた。
「美貴ちゃん??」
「ちょっとまってて」
 とりあえず、パジャマのズボンを少し下ろして、上着のすそを捲り上げる。

 そして何気に改めて再認識。
 この姿勢、ひっじょぉーにエロいです…。

 しっぽの上辺りを少しだけ裂いて穴を開けてあげると、『美貴ちゃん、なんかとってもワイルド』ってお言葉の後に、
「ありがと」
 だって。
 ごそごそとパジャマのズボンを脱ぎ捨てると、またコテンともたれかかってくる。
 上着のすそから伸びる褐色の細い綺麗な足。
 いつの間にか指を絡めて繋いでる手。
 髪を撫でている指先にうっとりと幸せそうに目を細めて…。
 ここまで我慢してる美貴が正直エライなと褒めてあげられるくらい、いつもより200%(当社比)セクシーな梨華ちゃん。

 なるほど、あのときの梨華ちゃんの気持ちがよくわかる。
 やだなぁ。誰にも見せたくない。今の梨華ちゃん。


 明日はお仕事。

 何せ美貴にはライバルが多い。こんな梨華ちゃん見ちゃったら…いったいどうなることか…。

 はぁっとため息が一つ。あの時してくれたように後ろからだっこした。
「どーしたの? 怖い顔して」
「うん。明日…いくのやだなぁ…って思って」
「どうして?」
「だって、今の梨華ちゃん、見せたくないもん」
 肩口に顔をうずめて強く抱きしめる。
「今の梨華ちゃん、存在が反則だから、なんか怖い…。どうにかされちゃうんじゃないかって…」
 すると、ふわっと頭に梨華ちゃんの手。ゆっくりとなだめるようにあやすように髪を撫でて…。
「気持ちはすごいよくわかるよ。でも、そういうわけにはいかないじゃない。それに、美貴ちゃん、何事もなかったわけだし」
 いや。あった。
「ミケティって飯田さんに言われた」
 しまった、って…一瞬そーゆー顔をして、ぴたっと手が止まった。
「ヤグチさんに爆笑されたし」
 しかも涙流して…。
「辻ちゃんと加護ちゃんとヨシコには『エロい』って言われたし。安倍さんにしっぽおもちゃにされたし」
 絵里ちゃんが引いてましてたよ…安倍さん。
「しげさんがうらやましそうに見てるし、田中ちゃんは動揺するし…。コンちゃんなんか、目…きらきらしてたもん」
 愛ちゃんだけがある意味いつもどおりのリアクションだったわけで。
「そういえば、ガキさんは第一発見者だったよね」
「うん。まこっちゃんの鼻血…」
 驚きから我に帰った愛ちゃんがティッシュをつめてかいがいしく世話を焼いていた様子が思い返される。
「でも、それはあくまでも美貴だったからなわけで…」
 言葉を濁した意味を察したらしく、梨華ちゃんがちょっと唇を尖らせる。
「梨華ちゃんだとシャレじゃすまないよ」
 美少女大好きな飯田さんは間違いなく視姦してくるだろうし、ヤグチさんは困ったように笑いながらたぶん真っ赤になって『梨華ちゃん、えっちだー』ってうろたえるだろうし。つじちゃんとカゴちゃんもさすがに真っ赤になって軽くひくだろうな…たぶん。
「美貴ちゃん…。考えすぎ」
「え!?」
 呆れ顔の梨華ちゃん。どうやら全部口に出てしまってたみたい。
「だって…。心配なんだもん」
「紺野が目をきらきらさてよーと、しげさんがうらやましがって田中ちゃんが動揺しても、高橋が凍りついてもガキさんがそれをほほえましく見てても…ね」
「うん…でも…」
「ね、たとえよっすぃとマコトが鼻血を出しても」
 って言うと、顔だけ美貴に向けて鼻先にチュって…。
「梨華は、美貴ちゃんのもの」
 ふつーなら、キショーイってなるところだけど、もう、わけわかんない! かっ…体が…熱い…。
 梨華ちゃんはそんな美貴を見てくすくす笑ってる。

 あぁーーーっ! もぉーーーーーーーっ!

「やっぱりダメ。梨華ちゃんはお留守番」
「えーっ! なんでーっ!」
「なんでって、ねぇ!」
「怒んないでよ。何でダメなのよぉ」
「だから言ったじゃん!」
「わかんないよ!」
「あーもーーっ!」
「もう! 耳元で怒鳴らないでよぉっ!」
 むーって上目遣いでにらみつけてくるんだけど、明らかに誘ってるようにしか思えなくなってくる…。
「みんなを悩殺してどーすんのよ。それは美貴だけにして」
「へ?」
「気が気じゃないんだから…。心臓に悪いよ」
 そしたらくすぐったそうに笑った。
「やきもちやいてくれるんだ。うれしい」

 こんなやりとり、そういえば美貴の時もしたなーって、なんとなく思い出した。

「よかった。じゃあさ、美貴ちゃん?」
「何?」
「私のこと、守ってくれるよね?」
 ちょこんって首を傾げて、すがるような目を向ける。
「当たり前でしょ」
「だったらさ…」
 うつむくと繋いでいた手を離して、うにうにと手のひらをもんだり、指先でくすぐったりしながらいじり始める。
「お留守番はやだにゃ~。たいくつなんだもん」
 こーなるだろうなって、わかってた。美貴もやりましたから。でも、あーノックアウト。そんな感じ。
「美貴ちゃんと一緒にお出かけしたいな?」
「お仕事ね」
 つっこまれてむっと、また唇を尖らせる。
「りーかちゃん。お芝居したって無駄だよ」
「気づいてたの?」
「そりゃそうでしょ。美貴も同じこと梨華ちゃんにしたもん」
 あーそっかぁって、ちょっと拗ねる梨華ちゃんに、
「けど、すっごいかわいかったよ」
 って、耳元で囁いてすばやく頬にキスをした。

 ぱって目を見開いてきょとんとしていた梨華ちゃんの顔がすーっと赤くなっていく。ぐしゃぐしゃと頭を撫でると、体ごとこちらに向けさせた。
 そして、真正面からまっすぐに目を見つめて言う。
「わかった。一緒に行こう。ちゃーんと守ってあげるから」
「うん」って、とろけそうな満面の笑顔でうなずく梨華ちゃん。
「だって、梨華ちゃんは美貴のものだもん。誰にも指一本触れさせないから」
「ほんとに?」
「ほんと。じゃないと、美貴がどーにかなりそうだもん」
 梨華ちゃんの手がすうっと美貴の首に絡みつくように回る。
「でも、嫉妬に狂う美貴ちゃんも見てみたいかも」
 ちょっと! 怖いこと言わないでよ!
「あー。そんな意地悪なこと言うんだ」
「なによぉ。美貴ちゃんだって言ったもん」
 確かに言ったけどさぁ…。
「愛されてるって感じ、しない?」
「そんなことないよ。じゅーぶん、愛されてるって思ってるよ」
 おでこをこつんって美貴のおでこにくっつけて甘く甘く囁く。
 そっと頬を両手で包み込んだ。
「じゃあ、足りない?」
「…うん」
「欲張り」
 そして、唇にキス。
「美貴も足りない。梨華ちゃんの全部がほしい」
 親指でそっと薄く開いたままの唇をなぞる。

 何もかもをあげる。すべてを感じて…

 噛み付くようなキスをして、荒々しく押し倒す。

 背中に回された腕が切なげに美貴の体を締め付けて、全身をめぐる甘い痛み。
 じらされていた分の熱を吐き出すように、体に触れる指先に熱がこもる。

 あらわにした胸元に口付けを一つ。
 零れ落ちる吐息と掠れた声。

 きっと満たされない。だからすべてをあげる。だから全部をちょうだい。
 それでもたぶん満たされない。
 だけど止まらない。だから愛したい。

 もう、どうなってもいいや。

                           ■                     ■

 結局、梨華ちゃんも元には戻らず、そのまま仕事に行くことに…。

 で、まぁ、予想通りだったわけで。
 飯田さんはじーっと梨華ちゃんを見つめたまま動かない。交信してるのかなとも思ったんだけど、なんかよく見ると視線がこう、たてによこにななめにと…。
 矢口さんは来た早々、梨華ちゃんを見て真っ赤になって、
「梨華ちゃん、それ…やばいって! マジで」
 と、10分の間で23回。
 辻ちゃんと加護ちゃんは飯田さんの後ろに隠れて赤くなってる。まぁ、それはそれでかわいいよね。

「いーなー。いしかわさん」
「「さっ…さゆ!?」」
 横の方から聞こえたしげさんと動揺する田中ちゃんと絵里ちゃんの会話は、たぶん、気のせい。うん。美貴は何も聞いてない 。

 しっぽにじゃれ付こうとしている安倍さんを目でけん制したら、なぜかガキさんが怯えた顔したし。
 コンちゃんのキラキラしたまなざしと、落ちるんじゃないかってくらいに目を見開いてワンダーランドに飛んでった愛ちゃん。

 意外だったのはヨシコ。鼻血は出さなかったものの、鼻の下がずーっと伸びっぱなしでニヤニヤが止まらないといった感じ。肩をもまれてるときの一徹さんよりやばい表情。

 そして、それは起こった。
「あーっ! おっ…おがわー!」
 ヤグチさんの絶叫に全員の目が一点に。
 そこには鼻血を出してへにゃっと倒れたまこっちゃんが…。
「あーあ…。悩殺しちゃったみたいだね」
「うん。でも、ここまで予想通りだと…」
 苦笑いする梨華ちゃん。
 我に帰った愛ちゃんがまこっちゃんの頭を膝の上に乗せて、ティッシュを両方の鼻に詰めたままの頭をよしよしと撫でてる。
 あれじゃあさぁ、鼻血止まんないと思うけど…。
「梨華ちゃーん! おまえエロすぎ!」
「真里ちゃん、ひどーい!」
「だってほんとのことじゃんかぁ!」
「えー。そんなこと言ったってぇ」
 梨華ちゃんのマユゲがハの字になってくる。
「あー。ほんとはヤグチさんだって、メロメロなんじゃないんですか?」
 美貴からの反撃にヤグチさんが耳まで真っ赤になる。
「梨華ちゃんは美貴のものですから。手、出さないでくださいね」
 梨華ちゃんを後ろから抱きしめて、とどめにウインク一つ。完璧です。

「んだょ、梨華ちゃんニヤニヤしすぎだぞ!」
 だって。
 梨華ちゃんは小さくありがとって。
 遠くから『そこーラブラブすぎてあっついんですけどー』とか、『ムスメ内禁止だぞー』とか聞こえてくるけど、気にしなーい!


 で、その次の日、美貴の時もそうだったけど、元に戻った。
 どうして戻ったか? ダーメ。教えないよー。それは、ナイショ!


(2004.1.13)
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